パリ職業づくし―中世から近代までの庶民生活誌

制作 : ポール ロレンツ  F. Klein‐Rebour  Paul Lorenz  北沢 真木 
  • 論創社
3.69
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  • レビュー :11
  • Amazon.co.jp ・本 (251ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784846001674

作品紹介・あらすじ

水脈占い師、大道芸人、幻燈師、錬金術師、抜歯屋、拷問執行人、民間医療師など、百を越える職業を克明に掘り起こす、歴史の歯車の中で翻弄されながらも、しぶとく、したたかに生きてきた庶民たちの世界を知るための恰好のパリ裏面史。図版多数。

感想・レビュー・書評

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  • 今は無き職業が多数。
    この本、江戸時代の職業と対比させると面白いです。
    立ち売りや流しには、
    視覚と音声が大事なところが共通してる♪

  • 2015年12月に、改訂新版が出ました。内容確認はまだですが、う~ん、表紙のデザイン、特に色がね~。

  • 21

  • バルザックの<人間喜劇>はもちろん、エミール・ゾラの<ルーゴン・マッカール双書>などにも多種多様な職業の人達が登場する。

    たとえば<ルーゴン・マッカール双書>の第7巻『居酒屋』の主人公のジェルヴェーズは、亭主にも逃げられ、ふたりの子をかかえて困窮した生活とたたかいながら懸命に生きていこうとする。
    彼女は、洗濯女として日々頑張って働き、自分の店を持つというと夢を持っていた。
    そんな彼女の日常に職人の男が現れる。真面目な仕事振りのその男とジェルヴェーズは再婚する。
    小金も貯まって念願の洗濯屋をオープンさせた彼女の人生はやっと順風満帆なものになるように思われたが、
    再婚相手は足に怪我をしてから仕事をしなくなり、数年前に出て行った亭主が転がり込んだり、羨望の眼差しを送っていた世間はたちまち冷たくなって繁盛していた洗濯屋は、アッという間に傾いていく。店も手放さなくならなかったジェルヴェーズは、酒びたりになって死んでしまう。
    ジェルヴェーズと再婚相手との間に生まれたのがナナで娼婦になり、このあたりは第9巻の『ナナ』に詳しいが、話を元に戻して、ジェルヴェーズの洗濯稼業は、現代のクリーニング屋に通じると予想されても労働の中身は時代を反映している。
    機械化が進んでいないジェルヴェーズの時代の洗濯稼業は、重い肉体労働であり、それでも自立しようと懸命な女の生き様が詳細に描かれている。

    古今東西、どの国でも多くの職業があり歩みがある。

    本書は、チェコ出身でフランスで多彩な文芸活動を行ったポール・ロレンツが監修した中世から近代までのパリの消滅もしくは衰退していった職業をまとめている。

    パリに限らず時代変化によってさまざまな職業が生まれ、先駆的であったはずの職業が消滅していく。
    日本でも昔はあったよね という職業もたくさん載っている。
    行商人、紙芝居屋、手作りおもちや屋、煙突掃除、糸紡ぎ女、乳母など懐かしそうな職業もずらりと並ぶが、パリ(またはヨーロッパ)特有の職業もある。

    一番面白かったのが、「ツケボクロ師」という職業で、黒い黒子は、肌の白さを引き立たせるという理由で16世紀末大ブレイク。ツケボクロ・ブームはヴェネツィアにはじまったらしいが、ヨーロッパ中に広がり18世紀まで続いたという。
    日本にもお歯黒なんていうのがあったが、このツケボクロ・ブームは聖職者にまで及んだという。
    黒子も単なる黒子ぽいものだけではなく、星形、ハート形、人物柄などさまざまな色や形のホクロがつけられたとか。

    ほか、写本師、蜜蝋燭師、鎖帷子&兜職人、薬草師、錬金術師、抜歯屋、泣き女、移動便器屋・・・

    王樣のおまる係と棉係なんていうのもある。

    先日、『トイレの文化史』という大矢タカヤスさん訳のパリのトイレの歴史の本を読みましたが、フランスという国は、トイレに関してひどく遅れていた様子がよくわかりました。
    ヴェルサイユ宮殿は、世界屈指の豪奢な宮殿ですが、トイレは造られていませんでした。
    お金持ちの貴族は綺麗な城が汚物でいっぱいになり住めなくなると自分のほかの領地の城にうつったといいます。

    そういうお国事情なので、「王樣のおまる係と棉係」は当時必須の職業で、この特権的職業に就くのは当然のごとく貴族。
    穴あき椅子を用意し片付ける係りと用を足したあとにワタを差し出す係りの二人一組が事に当たったという。
    ルイ16世治下からは大枚をはたいてこのポストを手に入れた平民がこの任務に就いたらしい。

  •  パリを中心に、ヨーロッパにおける古代から近代までの様々な職業を紹介す
    る事典的啓蒙書。
    ただ、原題はMetiers Disparusとあり、直訳すると【消えた職業】となろう
    か。内容を的確に表しているのは原題の方で、まさに泡沫のごとく生まれては
    消え、消えては生まれた職業を、図版や典拠を示して網羅する。
     興味深いのは、それぞれの職業が組合を作り、守護聖人を戴いていることで
    ある。自分たちの権利を守り、商売敵となる職能集団は徹底的に排除する。例
    えば、刃物の製作と研磨を行う「強物師」と「刃物師」は刃物師組合を形成し
    た。しかし、ただ研磨のみを請け負う「研ぎ屋」たちは彼らとは一線が引かれ
    て、刃物師組合には入れず、自分たちの組合を作って聖女カタリナを守護聖人
    としたこと(P119)などはその典型であろう。
     また、商売に関わる様々な事柄について、法律で事細かに規制されることも
    日本ではあまり聞かれないことである。
     「照燈持ち【ファロティエ】」においては、「その雇用者の使用する手燭
    は、パリ市内の香辛料取り扱い業者もしくは同製造業者かた購入するものとす
    る。この手燭は黄色の上質の鑞製で、パリ市のマーク入りの、重量一リーヴル
    半のものでなければならない。また、この手燭は均等に一〇等分され、最後ま
    で完全に燃焼しうるよう、燭台の受け口差し込み分として各三プース分の余裕
    を見込んだものでなければならない。(略)」P89

     中世から近世にかけての日本と比較して驚くのは、その不潔さである。
    「中世の街路は、胸の悪くなるような汚泥にまみれていた。その成分について
    は深く追求しない方が良いだろう。中でもパリのぬかるみは、ルーアンの梅毒
    と並び称されるくらい悪名高かった。しかも、当時の人々は手づかみでものを
    食べていたから、食べ物の汁が服に垂れた。」P125

     そこで洗濯女や染み抜き屋の出番となるのだが、染み抜きと言っても染みを
    布から叩き出すだけだし、洗濯と言ってもやはり川で洗濯物を木ベラで叩くだ
    けだった。しかし、「一七世紀、セーヌ川の何個所かがひどく汚染され、ここ
    で洗濯したリネン類の使用は公衆衛生上危険な状態になっていた。」P190
     川の汚染はもっと前から続いていたらしい。そのため、パリ市民は川で飲み
    水を得ることが出来ず、「水売り」から水を買っていた。
    「セーヌ川のモベール広場からポン=ヌフにかけての水は、「汚染のため」汲
    んではならない、という通達が水売りには出されていた。」P209
     一二九二年には水売りが五八名登録されていたし、一六四三年には三〇の給
    水所があったという。さらに、革命の起こる前には二万人の水売りがいたとい
    うから、その汚染が全く改善されぬまま五百年近くが経っていたことになる。
    一昔前は、「外国では水を買って飲んでいる」というのが日本人にとっては驚
    きだったが、まさかかつてはこんな理由で水を買わざるを得なかったと聞けば
    なおさら驚いただろう。
     そのほか、貸し風呂屋に移動便器屋、おまる係に棉係…。今から思えば全く
    想像もつかないような職業がずらりと並んでいる。ざっと読み飛ばすだけでも
    充分面白いし、小さいながら図版を多く添えてあるのもよい。
     読んでいて、大変好ましいのは訳者北澤氏の姿勢である。訳者あとがきに、
    「原著にはわずかに()による割注があるだけで、それ以外には一切註がな
    い。このため我々日本人にはなじみが薄いと思われる慣習、名称については訳
    註により極力おぎなったつもりである。従って、本文中()で括ってあるのは
    原註であり、訳註に関しては、脚註とは別に、簡単な記載は〔〕で括り本文中
    に挿入した。「歴史家《三字傍点》モンティーは……」のように、〔〕では括
    らず、入手した資料に基づいて原文を多少ふくらませてある場合もある。(略)
    ただ、どうしても該当する資料が発掘出来なかった事例がいくつかあり、これ
    については〔不詳〕ないし〔?〕と記させていただいた。」P248
     原文を読むだけの語学力のない者は、訳者の原文に対する姿勢に随分左右さ
    れる。このように原文を忠実に再現しようとしてくれる方の日本語は、やはり
    読んでいて清々しい気分にさせてくれる。
     ただ、読んでいてもどかしいのは、本文中に出てくるお金や重さの単位がさ
    っぱりわからないことであった。
    「重さ一六分の一リーヴルの砲弾用で、砲身の長さは四ピエ」P97
    「奥山じゃ、たんと危うい目もみてる
     一一フランと引きかえに…」P33
    11フランが当時どの程度の価値があったものか、目安程度でよいから物価や
    度量衡を示してもらえたらなおありがたかった。

  • 原題はMétiers disparus。まったく文字通り現代のパリにはもう存在しない、消えてしまった様々な職業人の素描である。著者についての知見もないまま、図書館でなんとなく借りて、なんとなく読み始めたが、なかなか悪くない。

    学術書ほどには堅苦しくも難解でもなく、かといってそこいらにありがちな歴史的雑学本のように、やたらと軽佻浮薄であるわけでもない。私的には、バランスの取れた良書と思う。特に薬草師(apothicaire)や錬金術師(alchimiste)などの記述のある第9章が面白い。ただし、それぞれの職業の記述もあくまで素描に留まっており、少々あっさりしすぎているきらいはあるが……。

  • その名の通り、色んな職業があって面白いです。時計屋がないのはなんでやと思ったら、初めは鍵屋とかが作ってたらしいです。これをとっかかりにして、他に知識を広げるのもありかと。

  • 昔パリの街にどんな仕事があったのかという本。
    近代までと書いてあるけど、昔の職業の印象の方が強い。
    現代に繋がってくる職業もあれば、それで本当にお金を稼げたんだという職業まで色々載っています。

    事典という体裁をとっていないけれど、感覚的に事典。
    多少読みにくい感はあるし、イラストなどがカラーで載っている訳ではないので、イメージがし難いかもしれませんが、文化や歴史に興味のある人にはお勧め。

    欲を言えば収入の程度とか書いてくれればもっと面白かったのに、と。

  • 面白いけど、近代までって書いてある割には、思ったより19世紀に言及している部分が少なかったので残念。
    「それら」が、何故、どのようにして廃れていったか、或いは現代的になっていったかという面も知りたかったし、おそらく19世紀後半が過渡期だとふんでいるんだけど…。
    そういう面に冠しては、一部にしか触れていなかったなぁ。

    図版が多いのがとても良いです。文がギッシリでお得な分、しかし図版が小さめだったのは勿体ないかな。
    中世〜18世紀くらいのことを知るには、手元に置いておくべく、買って読んでも損のないことでしょう。
    読み応えを求め、知識欲を満たすには、まったく充分です。

  • ウーブリー売りの威勢のいいかけ声や、昔の床屋さんの幅広い仕事内容まで、へぇがいっぱいの本。

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