ポッターマック氏の失策 (論創海外ミステリ 77 ホームズのライヴァルたち)
- 論創社 (2008年5月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (351ページ)
- / ISBN・EAN: 9784846007850
感想・レビュー・書評
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倒叙ミステリの創始者らしく、良質な倒叙もの。
犯行のうまさと、事後に発覚する齟齬の数々。
うまさとハラハラのバランスがよく、最後まで引き込まれる面白さ。
探偵側のソーンダイク博士も、魅力的。
その鋭さは痛快だし、まなざしがあたたかい。
読後感もよい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
靴あとからの偽靴の作り方にしろ、盗難紙幣のばら蒔き方にしろ、手が込んでるなぁ。そこら辺の描写が詳細でなかなか面白い。まあ、あれそもそもソーンダイク博士だって気付いてたしねぇ。昔でもあのトリックが通じたのは運が良かっただけじゃないのかなぁ(検死やった人が素人だったとか)似たようなトリックは短編の方でも使われてるけど、骨格見ただけで人種まで解るとかすごいな
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予想以上に早く殺害してしまったので、残りのページ数がもつかと心配したのだが、読み終えてみると、その構成力の巧みさには舌を巻いた。慣れるまでは読み難かった。ひとつの段落が長いし、何事もとことん説明してくるので、そのしつこさには困惑させられた。そして何より、どこまでいっても地味なのだ。
しかしそれもこれも、作者のフェアなスタンスを思えば当然なのかもしれない。追い詰められた犯人が次にとる動き、そこから犯罪の姿を確信する探偵──この辺りのストーリー展開に作者の自信が垣間見える。そしてラストの素晴らしさ。読者の願望をすべて実現してくれたようで文句のつけようがない。倒叙ミステリのひとつの完成形がこの時代に書かれていたとは……さすがホームズの母国。