- Amazon.co.jp ・本 (511ページ)
- / ISBN・EAN: 9784846009199
感想・レビュー・書評
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『探偵小説芸術論』を唱えた事で知られている木々。いやぁどの作品も、(言い方が悪いかもしれませんが)トリック自体はさほど凝ってないけれど、作品のストーリーと登場人物の心理の描き方が見事でグイグイ読める、そして面白い。
(連作短篇である『風水渙』なんて冒頭の作者の言葉で漱石の『彼岸過ぎまで』をミステリで狙ってやろうとしてたりとか、とても文学を意識してたのですね)
『心眼』辺りなんかは、純文のアンソロジーに入っててもおかしくないですね。
評論・随筆として『探偵小説芸術論』に連なる諸々が収録されてて、こちらもまた面白かった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
さすがに甲賀三郎と論争しただけあってこの時期の探偵小説の中では群を抜いて文学っぽい作風で、好きな作家である。
後半の短編は、人の心の不思議を描くために事件を設定したような話も多い。
また「風水渙」全8話は警視総監の令嬢と謎の紳士を主人公にした連作短編集となっており、今ではよくある形式だが、ミステリの短編を積み重ねていって長編にするという当時は珍しい試みに挑戦し、実際これが面白い。
今まで木々高太郎といえば大心池先生シリーズが代表的だと思っていたが、他にもいろいろあることがわかった。
評論・随筆篇も、著者の探偵小説に対する真摯な思いが伝わってくる文章ばかりで面白かった。自分にとって探偵小説の理想は、1.問題の解決が完全に数学的であること、2.心理的に完全でなければならぬこと、の2つの条件だけでよいというのはこの人らしいと思う。