楕円の流儀: 日本ラグビ-の苦難

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  • 論創社
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  • Amazon.co.jp ・本 (371ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784846010256

感想・レビュー・書評

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  • 「藤島大」のラグビー記事を精選した作品『楕円の流儀―日本ラグビーの苦難』を読みました。

    「藤島大」の作品は、『知と熱―日本ラグビーの変革者・大西鐵之祐』以来なので、ほぼ7年振りですね。

    -----story-------------
    独自性の喪失、無策への失望、再生への期待…ジャパンのこの10年は“空白”なのか。
    日本ラグビーの危機とその可能性。
    ジャパン、早稲田、明治などの他、新聞・HP掲載コラムも精選収録。
    -----------------------

    先日、花園ラグビー場に高校ラグビーの応援に行った際、近鉄東花園駅前の交差点で「藤島大」とすれ違ったんですよねぇ… 青信号を渡っている最中だったので、声をかけるタイミングもなかったのですが、、、

    きっと試合の解説だったんでしょうね… そんなこともあり、「藤島大」のラグビーに関するコラムや記事を集めた本作品を読んでみようと思いました。

     ■プロローグ
     ■第1部 ジャパンの軌跡
      ・日本ラグビーの自信喪失―二〇〇一年四月十五日・対NZU
      ・ジャパンが果たさねばならないこと―二〇〇二年七月十四日・対韓国
      ・ジャパン・ファーストへの旅―二〇〇三年豪州遠征レポート ほか
     ■コラム1 楕円球が呼んでいる
      ・「わたしの釜石」が負けた
      ・報じられぬ大遠征
      ・静かに笑う天才 ほか
     ■第2部 早稲田と明治
      ・熱き「実利主義」の勝利―二〇〇三年一月十一日・早稲田大学‐関東学院大学
      ・すべては涙を流すために―二〇〇五年度早稲田大学・清宮克幸監督退任
      ・悲願のトップリーグ撃破―二〇〇六年二月十二日・早稲田大学‐トヨタ自動車 ほか
     ■第3部 挑戦
      ・苦境のセクシー・ラグビー―ウェールズ
      ・栄光と懊悩を乗せて―近鉄ライナーズ
      ・二百点差からのチャレンジ―鳥栖工業高校・佐賀西高校・龍谷高校 ほか
     ■コラム2 友情と尊敬
      ・カマラデリィー
      ・キャプテン
      ・想像力とユーモアの笛 ほか
     ■あとがき
     ■初出一覧

    6年前に上梓された作品なので、当然、前回のラグビーワールドカップの内容は反映されておらず、ワールドカップで1勝しかできていない世界の中でマイナーのメジャーという位置づけの「ジャパン」(ここでは本書の記述に合わせ「ラグビー日本代表」を「ジャパン」と表記します)が前提ですが、、、

    そんな危機的な状況の「ジャパン」やラグビーという競技そのものへの思い入れ、愛情が感じられる熱いコラムや記事が多く、読んでいると感化されてきて、プレーヤーとして接していた頃のラグビーやラグビー仲間への熱い想いが蘇ってきましたね。

    プレー経験のない方には、非論理的に感じられるかもしれませんが、ラグビーって、他の競技以上に精神性がプレーを大きく左右するんですよね… 裏切れない仲間がいて、プライドがあって、闘争の覚悟が生まれ、それが弛緩すると、それがチーム全体に伝播して勝敗にも関わってしまう、、、

    それが顕著に出る競技なので、熱い想いがないとプレーできない競技なんです… その精神性が巧く表現してあり、驚いたし共感できました。


    2003年の第5回ラグビーワールドカップでの「ジャパン」の番狂わせを期待して書かれた記事の中に、ミラクルが起きるタイミングは、

    「完璧な挑戦者と崩れた強者、その稀なる交錯の瞬間」

    と定義されており、「ジャパン」が挑む条件として、

    「素早さ(加速力、俊敏性)、巧さ(巧緻性)、スタミナ(持久力)」

    が挙げられており、まさに前回(もう一昨年になるんですね…)の2015年の第8回ラグビーワールドカップでの「ジャパン」vs.「南アフリカ」の試合のことだよなぁ… と感じました。

    著者にとっては、待ちに待った瞬間だったでしょうね。(もちろん私にとってもですが…)


    あと、本書で印象に残ったのは「カマラデリィー(camaraderie)」という言葉… 同士愛として訳されることが多いようですが、本書で紹介される伝説の「SH ガレス・エドワース」の次のコメントが全てを語っていますよね、、、

    「試合後に敵味方入り乱れてビールを酌み交わすラグビー文化が消滅するのであれば、オープン化(プロ容認)には反対します」

    そうなんです… ラグビーって、敵味方含めて友情を培う競技なんですよね。

    試合だけじゃなく、アフター・マッチ・ファンクションを含めて、初めてラグビーの文化を知ったことになるんだと思います、、、

    私も社会人になって初めて知った文化ですが、とても大切だし、大事にしたいこと… 著者が提言しているように、中学生や高校生の試合で交歓会・交流会が自然に行われるような文化が醸成されるといいですね。

    日本ラグビーに不足しているものは、芝のグランドとアフター・マッチ・ファンクション… という著者の意見に大賛成です。

  • この10年間の日本ラグビー(日本代表)への、私たちファンの期待と失望に答えてくれる内容。今日はサモア戦。期待したい。

  • ジャパンのここ最近の記録は本当に苦いもので、読んでいて泣けてくる。その苦い記憶を忘却しないためにもこのように書籍としてまとめられることは重要だ。たいして売れないのではと推測しているので、版元にたいしては応援していきたい。

  • ここ10年間のラグビーの動向がジャパンの話を中心にまとめられている。ずっと失敗を続けていたジャパンは、ジョン・カーワンの下、結果を出すことができるのかな。

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著者プロフィール

ふじしま だい スポーツライター、ラグビー解説者。
1961年東京都生まれ。都立秋川高校、早稲田大学でラグビー部に所属。卒業後はスポーツニッポン新聞社を経て92年に独立。著述業のかたわら都立国立高校、早稲田大学ラグビー部のコーチを務めた。2002年『知と熱 日本ラグビーの変革者・大西鐵之祐』(文藝春秋)でミズノスポーツライター賞を受賞。著書に『楕円の流儀』(論創社)、『ラグビーの情景』(ベースボール・マガジン社)、『人類のためだ。 ラグビーエッセー選集』(鉄筆)、『知と熱』(鉄筆文庫)、『北風 小説 早稲田大学ラグビー部』(集英社文庫)、『友情と尊敬』(スズキスポーツ)、『序列を超えて。ラグビーワールドカップ全史1987-2015』(鉄筆文庫)などがある。

「2020年 『ラグビーって、いいもんだね。』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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