- Amazon.co.jp ・本 (533ページ)
- / ISBN・EAN: 9784846010560
感想・レビュー・書評
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うーん、どうしよう。
犯人捜しなのに、なんと誰ひとり怪しいと思えない。
誰もが、若しくは誰かが怪しいと思いながら読んだミステリは何冊もあるけれど、誰もが怪しくないミステリとは……これ如何に 笑
舞台はロンドン郊外の架空の州ミッドサマー。
アマチュア作家サークルのメンバー、ジェラルド・ハドリーが自宅で惨殺される。
殺害される直前、ジェラルドか何かに緊張しているのを他のメンバーは不審に思っていた。
事件はその夜、サークルがゲストに招いたプロ作家マックス・ジェニングズと関係があるのか、それとも……
バーナビー主任警部と相棒のトロイ刑事が、錯綜する人間関係に挑む。
閉じられた小社会である小さな村ミッドサマー・ワージー。
そこで起きた殺人事件の犯人は被害者の身近な人物なのだろうけど、わたしには全く姿形が見えなかった。
その一因となったのが、被害者ジェラルド・ハドリーの素性を誰も知らないこと。
一番近しいはずのサークルメンバーたちにとってもそれは同じことで、ジェラルドと親しい間柄といえる人物は、村には皆無だった。
物語は犯人捜しを中心としながらも、被害者の周囲の人々、主にサークルメンバーたちの人生についてページのほとんどが割かれている。
しかし、そこにも被害者との接点が描かれることはないので(彼に片思いをしてる女性もいるのだけれど)、どうしてもじりじりとしてしまう。それでも、メンバーひとりひとりの描き方が丁寧かつ興味深いので、ついミステリを読んでいることを忘れてしまうほどの面白さがあるのも確かなのだ。
特に家族に悩まされながらも、前向きにユーモアを持って支えあう2人の女性には好感が持てた。彼女たちの物語は、もうミステリじゃなくてもいいんじゃないかと思えるほどで、犯人とは思えない……というか、思いたくなかった。
反対に、ある2人の言動には、無性に腹が立って仕方がなかったので、登場するたびに「くたばっちゃいなっ!!」と毒づいてしまった(コホン、失礼!)。それでもその2人とて犯人だとは思えない。
だからこそ、ページ数が残り少なくなってからのプロ作家マックス・ジェニングズの再登場、そこからの怒涛の展開、被害者の過去や犯人が明らかになっていく山場には、一気に気持ちが高まっていく。
時には辛辣であるけれど、生き生きとした人物描写が魅力的なフーダニット。
〈クリスティーの衣鉢を継ぐグレアムによる英国女流ミステリの真骨頂〉との帯の文句に、なるほどなと思わず頷くミステリだった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
イングランドの小さな町でアマチュアのライターズ・サークルが定例会にプロの作家を呼んだ。その作家が帰ったあと、会場だったジェラルドの家でそのジェラルドが頭を僕打され死んだ。バーナビー警部は捜査にのりだすが、謎に満ちたジェラルドの生活と、7人のメンバーそれぞれの生活のきしみが見えてくる。
謎が明かされ、メンバーの生活の膿?が出され、それぞれ新しい生活へと向かう。
謎ときは、驚きに満ちた被害者ジェラルドの過去だろう。設定は発表と同時期のようだ。場所は解説によれば、ミッドサマーという架空の場所だが、ロンドンからさほど遠くない、テムズ河沿いのオックスフォードシャーとかバッキンガムシャーあたりだという。
サークルメンバーは、被害者ジェラルド、中学教師夫妻、領主館に住む姉と義妹、骨董店経営の女性、退役軍人。中でもジェラルドはアイルランドでの貧しい生まれ、領主館に住む義姉妹の生活が、50年代のイメージ。そしてバーナビーの部下トロイは高卒で労働者階級で教養が無い、といった描き方。
すごく厚い本で幅4センチもあり重くてまいった。長いわりにわりとさくさく読めた。サークルメンバーの生活が聞き取りによって、個人の背面の意識が露わになる過程がおもしろい。
著者のグレアムは1930年生まれなのだが、メンバーの娘の部屋からニルバーナが聞こえてくるとか、生徒のTシャツがガンズ・アンドローゼズだ、などという記述があり、年齢を考えると驚く。クリスティだったらこんな筋でははい、などという文も出てくる。
バーナビー警部はNHKで2002年4月~10月に13話が放送された。名前の記憶はあった。
1994発表
2010.9.25初版第1刷 図書館 -
モース警部ほどエキセントリックではない穏やかな捜査官のバーナビー。しかもごく狭い範囲で起こる事件。現代版のミスマープルの如き味わいもある。助手のトロイの屈折具合も可愛い。アガサ好きな方にはお勧め。
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7冊ある「バーナビー警部」の原作のうちの邦訳3冊目。500頁が日本語だと一気に読めるから嬉しい!