- Amazon.co.jp ・本 (508ページ)
- / ISBN・EAN: 9784846012045
感想・レビュー・書評
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仁木悦子少年小説コレクション3巻。
最初の長編「タワーの下の子どもたち」以外は大井三重子名義の童話です。未発表の作品まで収録されており、非常に豪華でした。
全3巻すべてハイクオリティで、装丁も素晴らしい。
前から好きな作家ではありましたが、この全集によって仁木悦子という作家がわたしにとって特別な存在となりました。
とても楽しい読書の時間を過ごせたことに感謝です。
【タワーの下の子どもたち】
5年生の仲良し6人組と犬1匹が大活躍の冒険小説。
担任の先生が行方不明になることから事件がはじまりますが、生徒がお見舞いに行かなければ発覚はもっと遅かったでしょう。こういった生徒と教師の繋がりは今ではあまりない気がします。
悪漢に捕まったり脱出したりはこれまでの作品とも同じパターンですが、
東京タワーをシンボルとした当時の活き活きとした様子などはやはり楽しい。先生の行方不明の謎にも一捻りありました。
【水曜日のクルト】
登場人物は少年と童画家の男だけ。
いたずらっ子な不思議少年に男が振り回されますが、それがなんとも可愛らしくほんわかします。ラストもすごくお洒落で素敵。
【めもあある美術館】
些細なことで家を飛び出した少年が迷い込んだのは「めもあある美術館」。少年のこれまでの人生の一瞬一瞬が絵として飾られているという摩訶不思議な場所です。良い思い出だけでなく、悪い思い出や忘れていた思い出も絵に残されているのが良いです。自分を顧みるとともに、まだ何も飾られていない額だけがずっと続く景色も素敵。ここにどんな絵を飾るのかは自分次第という、希望に満ちた童話でした。
【ある水たまりの一生】
水たまりが消えるときは哀しい描写になるんじゃないかと思っていたんですが、それが幻想的で微笑ましく素晴らしかった。
【ふしぎなひしゃく】
魔法のような便利なひしゃくが人々にどのように影響するのか、というこういった啓発的な物語はありきたりなんですが、傲慢な王様がふしぎなひしゃくで行おうとしたことには驚きました。ふしぎな男が最後にしたこともお茶目。不思議で少し不気味で、でも楽しいお話です。
【ピコポコものがたり】
姉のピコピコうさぎと、弟のポコポコうさぎを主人公とした童話集。なんてことのない姉弟の日常なのですが、可愛らしく、懐かしく、読んでいて幸せな気持ちになれました。「こたつ」がお気に入り。
他未収録作品集。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
タイトルにある「タワーの下の子どもたち」はよみうり少年少女新聞へ連載された長編。今までの1,2巻でも取り扱ってきたような少年少女探偵団が活躍する物語ではあるが、6名の子ども達を交互に活躍させながら展開していく物語の二転三転ぶりは圧巻。筋立ても複雑ですが読んでる読者が混乱しないような心配りも感じられて、面白かった。
残りは大井三重子名義で発表された童話たち。「めもあある美術館」他どれも素晴らしいですね。「ものずきな あくま」なんかファウストの別解答のようで面白かった。