列車に御用心 (論創海外ミステリ 103)

  • 論創社
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  • Amazon.co.jp ・本 (316ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784846012298

感想・レビュー・書評

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  • 短編集。ほとんどにオックスフォード大学英文学教授ジャーヴァス・フェンが探偵役として登場しています。
    どれもフェアな正統派本格小説といった趣で粒ぞろいの良作でした

    【列車にご用心】
    列車からこつ然と姿を消した運転士。列車にのっていたはずの強盗も見つからない。乗客はそれぞれのアリバイを証言できるし駅は警察が固めており誰も出ていない。
    ちょっとややこしかったですね…。

    【苦悩するハンブルビー】
    正当防衛で決着したはずの事件の意外な真相。これは…最後はどういうことなんだろう…う~ん。

    【エドガー・フォーリーの水難】精神薄弱者の男によって川に突き落とされ死んだエドガー・フォーリー。フェン教授が見抜いたおかしな点とは。
    これはストーリーの展開にびっくり。

    【人生に涙あり】完全犯罪とはなにか?作曲家の殺害方法の謎。タイトルがお洒落です。これは、犯人はかなり危ういことをやっていると思うんですが。

    【門にいた人々】警察から暗号解読を依頼された男が、文書を盗まれた上に殺害される。わたしには難しかったです。しかし、この後の展開には驚き。ストーリーが上手い。

    【三人の親族】三人の遺産相続人の内のだれが犯行を成し得たか。トリックは分かるんですが、これ実行するのは難しそうです。

    【小さな部屋】結婚式当日に失踪し自殺した花嫁の事件の真相。
    家に残る痕跡などいかにも訳ありっぽいのが不気味で楽しい。表向きも裏の真実も花嫁の悲劇で情緒的。

    【高速発射】余命わずかな老人の遺産を巡る事件。殺人の動機を持つ親族が一堂に会し、庭での発砲事件へと繋がります。
    発砲音からの推理と、それぞれが獲物を狙っているような現場の緊迫感が楽しい。

    【ペンキ缶】ペンキを塗ろうとしたところを殴られ、ダイヤモンドを盗まれた宝石商の男。
    被害者の人となりを巧みに見抜いたフェン教授の慧眼。描写がさりげなさすぎて二回読みました。

    【すばしこい茶色の狐】不可解な脅迫状、そしてそれと関係して起こったように見える殺人。凝った作品です。表面上見える真相、ウェイクフィールドの推理、フェン教授の推理とちょっと混乱。

    【喪には黒】とある田舎で発見された他殺体。しかし、あるべきはずの犯人の姿がどこにもない手掛かりとなるネクタイが良いアイテムとなっておりタイトルもかっこいい。犯人の行方が分からない、という問題から見事な反転。

    【窓の名前】密室で死んだ男。ダイイングメッセージとして窓に書かれた犯人の名前。
    そんな都合のいい名前なんて。密室やDMと楽しそうなアイテムが二つもありますが、予想外の展開でした。

    【金の純度】父に殺意を持つ息子。犯人はほぼ確定しているものの証拠がない。タイトルの通り金の純度についてが肝ですが、地味な豆知識。

    【ここではないどこかで】愛憎劇を繰り広げる三人の男女。その内の一人が殺害されるも他二人にはありばいが。ドロッとしか人間関係で、結末も皮肉的。

    【決め手】指輪を目的として腕が持ち去られた死体。犯行の決めてとなるのは?刑事の勘と策略が冴えわたる1編。急展開のラストも楽しい。

    【デッドロック】少年と少女の深夜の探偵ごっこの最中におきた事件。多くの人々の行動と状況から導き出された全貌。しかし、少年はもう一つの真相を知っていた…。少年と少女の成長と心情も切ない良作。

  •  ジャーヴァス・フェンものを中心に12編の短編集。ハンブルビイ警部の話をもとにフェンが謎解きをするという安楽椅子もので、トリックはバラエティに富んでいてまずまずおもしろい。玉石混淆ではあるがそれほどひどいハズレはない。強いて言えば冒頭の表題作か。これはとうていありえないと思うけどイギリスではこうなのか。

  • 短篇集。ジャーヴァス・フェン教授シリーズ(最後2作だけは別モノ)。
    紙面の都合上文字数が制限されていたであろう新聞に掲載していた作品だからでしょうか、ホントに必要最低限まで装飾をそぎ落とし、事件のネタ披露→解決の流れが最短距離で描かれています。そのため、クリスピンの味わいどころである英国テイスト満載のコメディ描写が若干少ないのが残念ではありますが、事件の謎はどれも魅力的で面白かった。

  • 超ショートなボリュームの中に配された伏線を回収とラストでのひっくり返しの手際が見事。『小さな部屋』『すばしこい茶色の狐』『ここではないどこかで』『デッドロック』あたりが好み。

  • ミステリ短編集。ジャーヴァス・フェン。
    一編が短くて物足りない印象。

  • 最後の2作以外はジャーヴァス・フェン教授もののクラシックミステリ短編集。
    クリスピンはこれまで読んだ長編ではいまいち印象が薄かったが、ミステリの旨味を凝縮したような短編の方がいいのかもしれないと思った。

  • 16編の短編が収められたパズラー好みの短編集。密室あり、アリバイあり、不可能犯罪に安楽椅子探偵と、本格のサブジャンルをたっぷり味わえる。各話が短いので、雑誌の懸賞パズルに挑戦するつもりで、謎解きに挑んでみるのもいいかも。

    内容は、フェアで緻密な正に本格の王道。手掛かりの提示やストーリー運びなど、読み手想いの作品に好印象。こういう良作を読むと背筋がぴんと伸びるからいい。こんな本格はもう旧作でしか読めないのかなあ。

  • 『列車に御用心』
    ジャーヴァス・フェンが乗る列車の運転手が消えた。食事をとりに出かけたと思われていたメイコック駅長。ゴジェットと呼ばれる泥棒の警戒のために駅に張り込むハンブルビー警部。消えた運転手の遺体発見。

    『苦悩するハンブルビー』
    戦争中の友人だったガースティン・ウォルシュの元を訪れたハンブルビー警部。訪問の前夜、ガースティンの元従卒だったブレッブナーがガースティンを襲い逆にガースティンに射殺される事件が起きた。ハンブルビー警部の前で見せたガースティンのおかしな行動。

    『エドガー・フォーリーの水難』
    川から引き上げられたエドガー・フォーリーの遺体。川に転落する直前に彼の妻に対して暴力をふるっていたという。全裸の状態で発見された遺体。彼が履いていたブーツ。

    『人生に涙あり』
    フェンとウェイクフィールドが語る完全殺人。作曲家アラン・バスモアの殺害事件。事件直前に被害者に届いた手紙。手紙の返事を書くことで立証されたアリバイ。

    『門にいた人々』
    フェンが目撃した撲殺事件。被害者は犯罪組織の残した暗号を解読するブロウリー大佐。奪われた暗号。警察内部に潜む内通者。内通者をあぶり出すためにフェンが仕掛けた罠。

    『三人の親族』
    会ったことのない親族と食事会を開いたボルサーバー。彼の持つ財産に惹かれてやってきた三人の親族。食事会で起きたボルサーバーの毒殺事件。毒薬を入手できたのは誰か?

    『小さな部屋』
    福祉団体のためにミセス・ダンヴァースの館を訪れたフェン。彼女の姪であるリジョンの死の秘密。結婚式の夜に失踪しある夜自殺体で発見されたリジョン。ミセス・ダンヴァースの部屋でフェンがつかんだ秘密。

    『高速発射』
    瀕死の富豪モーリス・クランダルの遺産を相続するイヴとジェームズ。親族で遺産を受け取るボウヤー夫妻の家で狙撃されたイヴ。イヴをジェームズが狙撃したのを目撃しジェームズを射殺したヒラリー・ボウヤーの証言。銃声と狙撃の距離からの推理。

    『ペンキ缶』
    ペンキを塗っている途中に何者かに殴打され意識を失ったチャーチ。直前まで彼と口論していた甥のメリック。チャーチの証言の矛盾。

    『すばしこい茶色い狐』
    フェンが訪れた友人のマンシーの家での事件。2人の娘エレノアールとジュディス。ジュディスと婚約を破棄しエレノアールと婚約したオーデル。オーデルタイプライターで打っていた脅迫状の謎。何者かに殺害されたオーデル。

    『喪には黒』
    殺害されたデリンジャー。タイラー巡査が発見した遺体。ロンドンに出かけ駅で目撃されたデリンジャー。駅から徒歩で帰ったが徒歩ではタイラーの発見した時間に現場にはつけない。車を使用した様子もない。デリンジャー宅に侵入した謎の賊。

    『窓の名前』
    建築家サー・チャールズの殺害事件。サー・チャールズに招かれた客たち。密室の小屋で殺害されたサー・チャールズ。死の直前に窓に書かれたOTTOの文字。逮捕されたドイツ人青年オットー。サー・チャールズのライヴァルだったサー・ルーカス。

    『金の純度』
    フェンが発見した瀕死の状態のリーヴィスの父親。現場に落ちていた金の時計。時計を自分の成人の祝いと語るリーヴィスの父親。金の純度からリーヴィスの父親の嘘を見抜くフェン。

    『ここではないどこか』
    ハンブルビー警部のオフィスでシェリーをの見ながらの推理。殺害されたジョシュア、ジョシュアとヴァシュティを巡って対立したペンジ、ペンジに求婚するジョシュアの姉シサリー。殺害されたジョシュア。シサリーの証言とペンジのアリバイ。

    『決め手』
    ブランチ・ビニー殺害事件。消えた指輪の謎。コッパーフィールド警部の仕掛けた罠。

    『デッドロック』
    マーガレットと共に夜中のヨットハーバーに出かけた僕。その夜に殺害されたマーガレットの姉の婚約者マーチソンの殺害事件。ぼくの足についた血痕の謎。

  • はじめに
    「列車に御用心」
    「苦悩するハンブルビー」
    「エドガー・フォーリーの水難」
    「人生に涙あり」
    「門にいた人々」
    「三人の親族」
    「小さな部屋」
    「高速発車」
    「すばしこい茶色の狐」
    「喪には黒」
    「窓の名前」
    「金の純度」
    「ここではないどこかで」
    「決め手」
    「デッドロック」
    解説・亜駆良人

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