「反原発」異論

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  • 論創社
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784846013899

感想・レビュー・書評

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  • 吉本隆明、戦後最大の思想家、と呼ばれる彼が、あの原発事故を生きてるうちに経験したうえで、どのように考えるか。とても気になっていた。

    しかし、編者あとがきにもあるように、「考えに考え抜いた考えを変えることはなかった。「変えない」という姿勢が思想家にとって大事だ。」

    その内容は、おそらく単純な論理に依っている。原発推進派、反対派、という枠ではなく、「原発は科学であり、科学とはこうなんだ」という一貫した姿勢である。ただ、「こうなんだ」ってとこの視点が時間や空間を超越しているというか。いや、思想、思考だから超越しているのは当然なんだが。やはりそこを理解するのって難しい。

  • わたしは東北地方の災害に関する吉本隆明のかんがへを知りたいとおもひ、すこし文章を集めてゐた時期があった。あまりまじめにやらずに、ほとんどのものを見逃すていたらくだったが、それでも彼男のかんがへを充分に知れるほどには読んだつもりでゐた。それから数年がたって、補足するべきところもでてきたやうにおもへてゐたが、その必要はなかったことがわかる。
    反原発派は無知蒙昧を組織し恐怖をあつめることでなりたってゐる。かういう煽動はきちんとした論理によって破壊しなくちゃいけない。再稼働派は原発をただ経済の問題としかかんがへない。原発の技術を運用体制をすべて明らかにして、民衆の不安を払拭するやう努めなければならないのに、すべての安全対策をあいまいにしたまま経済上の理由だけで原発を再稼働させやうとしてゐる。国家や企業などの共同性が、あやういところはすべて隠してあいまいに済ませやうとするのはすべて駄目なんだ。どちらも空疎な論理語じゃないか。
    〈原発〉とは原子から直接エネルギーをとりだす技術だ。機械機構からエネルギーをとりだし、化学反応からエネルギーをとりだしてきた人類は、原子から直接にエネルギーをとりだしこれを制御する方法を得た。これは人類の進歩でなくてはならない。進歩した要素のある面が害であるといって、進歩のすべてを否定するものは退廃でなくてはならない。人体や精神が原子の微細な作用でうごいてゐるといふところまで現在の倫理は到達できてゐない。これが原子力の問題をむつかしくまた混乱したものにしてゐる。しかし原子力の制御をより確実にしてゆくほうにしか、人類の進歩は存在しない。それは人間がみずからの手や目として科学を発達させてきた、その本質から見てはっきりしてゐる。吉本隆明はこれだけのことをきちんと述べてゐる。

    cf. 反原発も再稼働もともに反〈原発〉でなければならない http://c4se.hatenablog.com/entry/2015/04/12/011609

  • 先崎明容せんざきあきなか、東日本国際大学教授、近現代史。書評。

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著者プロフィール

1924年、東京・月島生まれ。詩人、文芸批評家、思想家。東京工業大学工学部電気化学科卒業後、工場に勤務しながら詩作や評論活動をつづける。日本の戦後思想に大きな影響を与え「戦後思想界の巨人」と呼ばれる。2012年3月16日逝去。

「2018年 『吉本隆明全集 第16巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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