日本演劇史の分水嶺

  • 論創社 (2024年11月10日発売)
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  • 本 ・本 (328ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784846024871

作品紹介・あらすじ

現代演劇はいかに転生されてきたのか。



伝統演劇から現代演劇にいたる、連続性と非連続性をひもときながら、

戦後演劇のキーワードである「新劇」「アングラ」「小劇場」「不条理」を再定義し、現代演劇を問う画期的論考!

感想・レビュー・書評

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  • 1. 日本演劇史を通覧する視点

    伝統演劇と近現代演劇は相互に影響し合いながら発展
    演劇の本質は「俳優と観客が一つになる」こと
    日本人の演劇的特質は外来文化を受け入れ、消化し、独自の文化として再構築する点にある

    2. 能の現代化

    能が継承された要因は様式化された演技術と「家」制度による肉体的伝承
    三島由紀夫の「近代能楽集」や岡本章の「現代能楽集」など、能を現代演劇に取り入れる試み
    岡本章の『無』は能の進化系として評価される

    3. 実験と革命の演劇 - 1920年代の小劇場運動

    築地小劇場を中心に、ヨーロッパの前衛芸術運動と呼応した実験的演劇運動が発生
    村山知義らのプロレタリア演劇や宝塚歌劇団など多様な演劇活動が展開
    都市への人口集中を背景に地方出身の若者たちが才能を開花

    4. 戦争と演劇

    十五年戦争(満州事変から敗戦まで)は人々の内面に深い影響
    戦後の新劇は社会的意識を持った北欧派が主流となる
    リアリズムが当時の最新の演劇手法

    5. アングラ・小劇場運動

    1967年を起点として1980年代にかけてアングラ・小劇場演劇が勃興、成熟
    唐十郎や佐藤信らが既存の新劇の枠組みを打破
    つかこうへいの登場で観客層が拡大し、野田秀樹ら第三世代が小劇場ブームを牽引

    6. 新劇からアングラをつなぐ人々

    木下順二は思想と演劇を結びつけ、現代劇作家のモデルとなる
    三島由紀夫は「近代能楽集」で伝統と現代を結びつける試み
    福田善之は新劇からアングラへの過渡期を歩み、同時代の若者に影響

    7. 小劇場の持続と多様な広がり(1986-2002)

    バブル経済以降、情報消費社会の中で演劇が変質
    フェミニズム演劇や在日韓国人の演劇活動など多様なテーマが展開
    日韓の演劇交流が本格的に開始

    8. 危機と再生から21世紀へ(2003-現在)

    イラク戦争や東日本大震災など社会的危機に対する演劇の応答
    「ロスジェネ世代」の劇作家たちは議論を通して問題を探求する姿勢を持つ
    2.5次元ミュージカルの商業的成功や国際的な演劇フェスティバルの開催

    9. 新劇の意義と限界

    明治以降の近代化過程で生まれ、リアリズム演劇の社会派に継承
    戦後は民主主義を旗印に観客の組織化や劇団の企業化を進める
    現代の劇作家たちは新劇の良質な面を評価しつつも批判的に捉え直す

    10. 九州の劇作家列伝

    木下順二、流山児祥、つかこうへい、野田秀樹など多世代の劇作家を輩出
    共通点は近代史との格闘や中央政府・権力への抵抗精神
    明治維新後の反政府運動の拠点や原爆投下の経験が創作に影響

    11. 「大いなる時代」の終焉

    ピーター・ブルックやゴダールなど20世紀芸術界の巨匠たちの死
    戦前・戦中・戦後の時代を経験した世代と現代の若者たちが直面する状況の違い

    12. 演劇史を問う

    現代の劇作家たちの歴史的事象への向き合い方
    過去の演劇運動や概念の再定義、歴史的位置づけの必要性

    13. 武智鉄二の特異性

    歌舞伎演出から前衛的実験演劇、映画製作、政治活動まで多岐にわたる活動
    日本人独自の身体性を捉え直し、根源的な文化批判を展開

    14. 太田省吾の革命性

    「沈黙」や「訥弁性」を武器にした演劇で新劇の「雄弁さ」に疑問を呈する
    「身体」の重要性を提唱

    15. 演劇の本質

    グロトフスキーの「引き算」理論:演劇の本質は俳優と観客の存在とその関係
    近代から現代演劇へのパラダイム転換の鍵は「身体性」

    16. 新自由主義以降の1980年代演劇

    情報化・消費社会の中で演劇が変質
    小劇場演劇の多様化と商業演劇との境界線の曖昧化

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著者プロフィール

西堂行人(にしどう・こうじん)
演劇評論家。1954 年10 月、東京生まれ。早稲田大学文学部(演劇専修)卒。同大学院中退。 1978 年から劇評活動を開始。60 年代以降の現代演劇を中心に、アングラ・小劇場ムーブメントを理論化する。80年代末から世界演劇にも視野を広げ、韓国演劇及びドイツの劇作家ハイナー・ミュラーの研究。90 年代以降は近畿大学、明治学院大学などで演劇教育に関わる。「世界演劇講座」を2006年から開講。
主な著書に、『演劇思想の冒険』『ハイナー・ミュラーと世界演劇』『劇的クロニクル』『日本演劇思想史講義』(以上、論創社)、『[証言]日本のアングラ―─演劇革命の旗手たち』『蜷川幸雄×松本雄吉――二人の演出家の死と現代演劇』『ゆっくりの美学 太田省吾の劇宇宙』『新時代を生きる劇作家たち――2010年代以降の新旗手』(以上、作品社)、 『唐十郎 特別講義――演劇・芸術・文学クロストーク』(唐十郎との共著、国書刊行会)、『韓国演劇への旅』『現代演劇の条件』『演劇は可能か』(以上、晩成書房)ほか多数。
国際演劇評論家協会会長、日本演劇学会理事、日韓演劇交流センター副会長、読売演劇大賞の選考委員などを務める。

「2024年 『日本演劇史の分水嶺』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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