WWF黒書―世界自然保護基金の知られざる闇

制作 : Wilfried Huisman  鶴田 由紀 
  • 緑風出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784846115166

作品紹介・あらすじ

世界90カ国、500万人以上の会員を擁する世界最大の自然保護団体WWF(世界自然保護基金)。パンダのシンボルマークで知られるこの団体が、モンサントやコカコーラ、シェブロンなどの世界的な多国籍企業と結びつき、実は自然破壊の先兵として、先住民族や地元住民を追い出し生活を破壊していると聞いたら、あなたは何と思うだろうか?本書は、WWFの実態を世界各地に取材し、WWFによる書店への圧力、発売差し止め訴訟を乗り越えて出版された告発の書!

感想・レビュー・書評

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  • WWFは大きくなりすぎ、昔ながらの自然保護主義者はいなくなってしまった。代わりに幹部になったのはマーケティングのスペシャリストで、自分たちをただの資金調達係だと思っている。そして金の出どころはこだわらない。
    メキシコのサパティスタでさえコカコーラと契約してしまった。そしてコカコーラは、WWFを2000万ドルで後援することになった。WWFのパートナーである、モンサント、BP、エクソンモービル、マリンハーベスト、シェル、マクドナルド、ウェアーハウザー、アルコア、世界最大のパームオイル会社ウィルマーなどが、巨大な環境破壊や資源の乱開発に手を染めている。そしてWWFのパンダマークが彼らをグリーンな企業に変えてくれる。
    アフリカの自然保護区は、白人が散々狩で動物たちを殺しまくった後に、将来的にも狩が続けられるように作ったものだ。保護区は先住民のいるところだけで、白人が定住しているところには決して作らない。それまで何千年も動物たちとうまくやってきた先住民たちを追い出し、アフリカだけで1400万人もの自然保護難民を作り出した。良識ある白人たちが、あわれな黒人たちに自然保護を教えて動物たちを守る仕事につかせてやっていると思い込んでいる。
    インドではトラの保護のための寄付金が役人のポケットに消える。保護区の中にはゴージャスな宿泊施設があり、トラを見るツアーは1万ドルもする。保護区内は当然立ち入り禁止だが、トラ見学のジープのために渋滞することもある。保護区にはトラの研究者たちが集まり、麻酔銃で眠らせて発信機を取り付けるが、トラが怖いので麻酔を多くして、トラがショック死することが多い。WWFは寄付金でカメラトラップを仕掛けているが、先住民はトラの居場所を知っているので、そんなものは必要ない。役人や研究者にとっては、トラの登録数が多いほど金になるので、40年も前からトラがいなくなった地域にも住んでいるとされているところがある。国立公園の成り立ちは、土地収用と似ている。その第一歩は、先住民族から土地の所有権を奪うことだ。旅行代理店はエコ・ツーリズムで手っ取り早く金儲けし、薬品や食品の多国籍企業は遺伝子の宝庫である太古の森から資源を略奪する。彼らは生物種が絶滅する前に、データを集めて応用しようとしている。遺伝子の使用権の交渉テーブルにはたいていWWFがいる。保護区のコアゾーンから先住民たちを追い出せば、森林の周縁部の鉱山や農地に安い労働力が供給される。次々と作られるプランテーションで、現代の奴隷として働かされるのだ。ツアー産業に職を得るのはほんの僅かで、その仕事にすら誇りのかけらもない。
    ドイツのボンに本部を置くFSCもインチキである。このマークの付いた木材は持続可能な林業を行っているはずだが、実際は生物多様性の全くないプランテーションから切り出されたものだ。
    チリではサケの養殖に大量の抗生物質が使われているが、規制がないためにノルウェーの800倍の量が使われた年もある。1つのケージに20万匹のサケがギュウギュウ詰めにされており、酸欠になるため常に酸素圧縮機が稼働している。さらに発がん物質の防カビ剤が投入され、ケージには貝の付着などを防ぐ防汚塗料が塗られている。生育環境があまりに悪いため、ケージごとに1日に3,000匹ものサケが死んでいる。ケージの下にはパイプや古いネットやケージの部品、腐敗したエサや厚い層を形成したサケのフン。死んだムール貝やヒトデやウニなどが積もっている。海の底では何もかもが死んでいる。養殖産業は海をゴミ捨て場にしている。養殖のサケが出す排泄物は、チリ国民1400万人が出すのと同じ量だ。WWFはそんな現状を変えようともせず、マリンハーベストとパートナーシップ契約を結んだ。ケージを修理するダイバーはろくな装備もなく法律の制限を超えた深さまで潜らされるため、一年で18人ものダイバーが死んだ。サケのエサは濃厚飼料であるフィッシュミールとフィッシュオイルで作られているが、1kgのサケを生産するために4〜6kgの野生魚が殺される。今、世界の漁獲量の半分以上はサケや食肉用動物の濃厚飼料になっている。養殖サケは自らが供給するより多くの動物性タンパク質を必要とするのに、どこが持続可能なんだ?
    この問題を解決できるのは遺伝子組み替えのモンスターサケだけだ。通常の倍の早さで成長するこのサケは、すでにカナダで認可され、アメリカのFDAも認可しそうだ。そのうち持続可能のラベルもつけられるだろう。
    チリの漁獲量の95%がサケや牛やブタ、ニワトリのための濃厚飼料となる。漁師たちは誇りのかけらもないそれらの仕事をこなし、卵を産む月齢にもなっていないアンチョビをエサ工場に出荷する。
    チリではサケの養殖が劣悪過ぎたために、ウィルスが万延してほとんどのサケが死んでしまった。ノルウェーでも同様のウィルスが万延したが、養殖場が離れていたのでそれほど被害が大きくならずに済んだ。だが、ノルウェーの教訓はチリでは生かされなかった。チリの状況は、資本主義は最後に自らを食い尽くすというマルクスの言葉が正しかったことを証明している。
    自然保護を理由にした先住民族の立ち退きは、アメリカ人が発明した。1851年、カリフォルニアのヨセミテバレーが最初だった。バーネット州知事が、谷に住むインディアンたちに壊滅戦争を仕掛けたのだ。なんとか生き残った者たちも、ナチュラリスト、ジョン・ミュアーによって片付けられた。ミュアーはタンパク源としてアリやハエを食べるインディアンたちを嫌悪して、あんな下等な生き物を排除して国立公園に指定するように圧力をかけた。歴史を歪曲して、約4000年間にわたりその地に住み続けてきたネイティヴインディアンたちがただの遊牧民だと言い続けた。ミュアーは世界最初の巨大自然保護団体、シエラクラブの創設者である。
    1964年、アメリカで原生自然保護法が制定され、人の手の及ばない自然の楽園というロマンチックなフィクションの法的な地固めができた。ヨセミテ国立公園はWWFやコンサベーション・インターナショナルなどの団体のモデルとなり、世界中にそのスキームを広げた。WWFは国立公園イデオロギーを駆使して自然保護の名の下にこれまで世界中で2000万人が再定住の犠牲になった。これらの自然保護難民はイヌイット、黒人先住民、インドのアディバシ、アフリカ中央部のピグミー、ダヤク族、パプアの先住民など、一人の例外もなく有色人種である。
    WWFはショック作戦と呼んだコマーシャル戦略を考え出した。動物虐殺のむごたらしい写真を集めてデイリー・ミラー紙と契約し、一面にはサイの親子の写真を載せ、今すぐ行動を起こさないと絶滅する…と読者を脅した。四日間で2万人が寄付をしたが、WWFはこの最初の資金集めキャンペーンの収入を、絶滅寸前のサイを救う事業には1ペニーも使っていない。12年経ってようやく使われたようだ。
    1967年、イギリス海峡でBPのチャーターしたタンカーが座礁し、英仏の海岸線は200kmにわたり大量の原油で汚染され、15000羽の海鳥が苦しみながら死んだ。戦後初めての原油漏れ事故だった。石油産業は世間から集中放火を浴びたが、WWFだけは礼儀正しくしていた。BPなどを非難しないのは、資金集めに差し障りがあるためだった。WWFは企業パートナーが起こした大混乱の掃除役を買って出ることにした。水鳥アピールで集めた資金で鳥たちの油を落とし自然に帰るお手伝いをした。まさにマッチポンプで、未来のビジネスモデルである。
    WWFでは、10万ドル払えば、世界の動植物保護に特別の貢献をしたと認められたゴールデンアーク勲章を手に入れることができる。
    タンザニアのンゴロンゴロクレーターの250平方キロメートルに及ぶ平原には、何千頭ものゾウ、バッファロー、サイ、フラミンゴ、ライオンが生息する。このクレーターはまさにエデンの園だ。世界の8つ目の不思議としても知られている。セレンゲティを追い出されたマサイ族は、ここに再定住を許された。しかし大規模再定住の2年後、タンガニーカがタンザニアとして独立すると、WWFは国立公園の保護のために流入する資金をコントロールした。自然保護ロビーは、マサイ族を新たな定住エリアから再び強制移住させようと、この新興国政府に執拗に圧力をかけた。ンゴロンゴロ自然保護区は過放牧だ、マサイ族は水を使いすぎる。1974年にマサイ族はまたしても強制的に立ち退かされた。抵抗したマサイ族は棍棒で殴られ、投獄された。戻ってきた牛は、撃ち殺された。マサイ族がいなくなった途端、観光ビジネスが即座にやってきて巨大テントの建つキャンプ場を作った。シエラクラブのプロモーターたちは欧米の観光客に豪華なテントを提供し、羽毛マットレスのベッドや熱いシャワーや氷のように冷たいビールで歓待した。氷は発電機を使って作られ、その発電機は夜も昼もクレーター中に凄まじい騒音を響かせた。もはや水不足の事など問題にされなかった。1992年、やっとタンザニア政府はクレーター盆地でのキャンプを禁止したが、その後まもなく、保護地区のど真ん中で、豪華ホテルが建つこととなった。生態系にダメージがあるのは目に見えていたが、自然保護区の役人たちは、お偉いさんにひれ伏すしかなかった。1996年にオープンすると、サファリ観光がブームとなった。ピークシーズンは一泊630ドルで、1日150台のジープがクレーターの中でうなりを上げた。Safariでスリルを味わったら、今度はマサイ族の民族舞踊を見る。ホテルは伝統的マサイ族の村への見学旅行を提供する。気高い遊牧民たちは、観光業の施しで生きる、踊る物乞いとなった。
    アガ・カーンのホテルと、その後その近くにできたホテルは、大量の水をクレーターから組み上げているので、クレーター内の塩湖から地下水に塩分がどんどんしみ出してきた。クレーター内の森は今、塩類化のせいで死にかけている。しかしこの危機の責任は、またしてもマサイ族のせいにされて、3度目の再定住が議論されている。
    1987年、WWFはオックスフォード大学の経済学者ジョン・フィリップソンに包括監査を委託した。監査を希望したアントン・ルパートは、WWFの国際プロジェクトが実際に効率的に行われているかどうか、そして、運命状況をどのように改善できるか知りたかった。監査の結果、WWFの長期的な実績はほとんどなかった。そして、発展途上国において地元スタッフを差別的に扱い、自己中心的で新植民地主義的であると批判された。地元スタッフたちは、現地での自然保護活動について相談されたり、情報与えられることがないと、腹を立てていた。WWFの財政状況は悲惨であり、報告文書のないプロジェクトがごまんとあり、資金の配分先についてなんの記録もない現地プロジェクトもあった。

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