- Amazon.co.jp ・本 (205ページ)
- / ISBN・EAN: 9784847019524
感想・レビュー・書評
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ジャーナリストの松瀬学氏の視点で綴られる、俳優 藤本隆宏さんのエピソード本です。
藤本さんを初めて知ったのは、NHKスペシャルドラマ『坂の上の雲』で、広瀬武夫少佐(死後、中佐に昇進)を演じたことがきっかけです。『坂の上の雲』という、明治初期から日露戦争までの、世界中を巻き込んだ壮大な物語であることはさることながら、本木雅弘さんをはじめ、実力派俳優・女優、大御所が目白押しのドラマ。
にも関わらず、それまで(個人的に)知らなかった藤本さんに、何故か目を追わずにはいられませんでした。それほど強烈に印象的でしたし、藤本さんが演じたのが広瀬武夫だからなのか、広瀬武夫を演じたのが藤本さんだからなのかはわかりませんが、藤本さんや広瀬武夫に強く惹かれ、ネットや本をはじめ様々な資料や書籍を読み漁るに至っています。
この書籍(正確にはネット)で初めて知った、藤本さんの異色のキャリア。ソウル、バルセロナにも出場経験のある、個人メドレーのオリンピック代表選手。当時、僕は小学生~中学生に差し掛かる年代でした。大してニュースも見ずに遊びに熱中していた毎日。中学受験に向けた必死の勉強と、中学に入ったら入ったで勉強や部活に明け暮れ、当時はオリンピックと言われても、その地でその祭典が開かれた、という事実くらいでした。
強いて挙げれば、ソウル五輪で金メダルを獲得した、背泳ぎの鈴木大地選手、バルセロナ五輪で金メダルを獲得した、平泳ぎの岩崎恭子選手。やはり、メダルを獲得した選手ばかりが記憶に残っていて、その裏で、たとえ素晴らしい結果を残したとしても、『メダル』という形には残らない悔しい思いをしてきた選手も多くいた。藤本さんもその一人だったのです。
俳優に転身しても、決して平坦だったり、一気に上昇するような毎日ではなかった。10代の年下に嘲笑される毎日。出来ない自分を責め、一人悔し涙を流す日々。
それでも彼は諦めなかった。「『逃げる』『辞める』は、僕の辞書には無いのです」という言葉通り。『坂の上の雲』で描かれる登場人物の生き様を、文字通りなぞるかのように、ただひたすら前を向いて、たとえゆっくりでも、一歩一歩努力して歩いて行った。
そういう姿に惹かれたのではないかな、と思いました。
誰よりも自分に厳しく、誰よりも人に優しい。しかもそれが押しつけがましくなく、息をするのと同じくらいさり気無い。小器用なところはほとんどなく、磨き抜かれた程に純粋。
自分がこれまで、苦渋な思いを味わってきた、辛酸を舐めてきたからこそ、そういったオーラが滲み出ているのかもしれません。この本自体、難しい言葉が押し並べられているわけでもなく、ただ過去を回顧し、朴訥に語られるだけにも関わらず、重みがある。そう感じずにはいられないのです。
利己主義の空気が蔓延する現代社会の中で、自分自身の矜持と無私の志を持った人は、一体どれくらいいるんだろう。それよりもまず、僕自身はどうなのだろう。彼のように、たとえ負けそうで逃げたいと思えるような毎日でも、耐え抜き、立ち上がり、向き合うことが出来るだろうか。
彼のそういった生き方を目の当たりにすると、鏡に向かって自問自答している自分自身がいます。目標にしたい、そう思わせる男の物語だと思います。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
福岡出身の水泳の元オリンピック選手、今は俳優の藤本隆宏さん。「坂の上の雲」の撮影のこと、少年時代・選手時代のこと、その後の役者を目指しての下積みの日々。大学の後輩である全盲のスイマー、河合純一さんとの交流のことも。
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藤本隆宏さんの半生記。
選手時代のことはまるで知らなかったのでその頃の話は興味深かったです。
面倒くさがりな自分には彼ほどの努力は絶対出来ないなと脱帽。ますます注目したくなりました。
次のドラマ出演が楽しみです。