「みかんの島」の介護日記 ~ 23歳のリエとナオミが挑んだ不器用で誠実な福祉の道 ~ (ワニブックスPLUS新書)

著者 : 山口放送
制作 : 山口放送 
  • ワニブックス (2010年8月6日発売)
4.25
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  • Amazon.co.jp ・本 (284ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784847060083

「みかんの島」の介護日記 ~ 23歳のリエとナオミが挑んだ不器用で誠実な福祉の道 ~ (ワニブックスPLUS新書)の感想・レビュー・書評

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  • 図書室をうろうろしていたときに、表紙を見せておいてある本のなかに、「みかんの島」という文字が見え、その脇には「山口放送」とある… これは周防大島のことか?と手に取ってぱらぱらっと見ると、はたして「みかんの島」は、やはり周防大島のことだった。

    ここ数年、冬には周防大島でKさんがつくっているみかんやその他の柑橘類を食べていることもあって、借りてきて読んでみる。周防大島は宮本常一のふるさとでもあって、『宮本常一著作集』にはみかんに言及した箇所もあるとKさんに教えていただいたこともある。

    さて、「みかんの島」の本は、テレビでやったドキュメンタリー(NNNドキュメント'06「笑って泣いて寄り添って~リエとナオミの介護日記~」)をもとに、再度取材を重ね、2人の若いヘルパーとお年寄りたちの日々を構成した、というものらしい。

    周防大島は「長寿の島」とも呼ばれているそうで、人口は2万人余り(と本にはあるが、2014年4月時点の人口統計では1万8千人余り)、高齢化率は46%(2014年4月時点の人口統計では49%、山口県全体の高齢化率は30%)、島民のほぼ半数が65歳以上。

    サブタイトルに名前のあるリエは青見理絵さん、ナオミは中津尚美さん。2人は2001年にNPO法人として訪問介護の会社をおこした。「24時間、365日、いつでも対応できること」が会社の自慢。島内の高校で福祉科の同級生だった2人は、卒業後にそれぞれ大きな施設で働いた。数年後の同窓会で再会し、ともに「介護が「作業」になってしまっている」という悩みを抱えていることを知った。

    集団生活の施設で、何人もの利用者を相手に介護をしていくなかで時間に追われ、一方でお年寄りのためにも次のヘルパーのためにも「後ちょっとだけ」と思うことがよくあった2人。そこで「仕方がない」とは考えず、できる範囲の中で「作業」ではなく「介護」をと思っていた。

    そんな2人は、お年寄りの家を訪ねて介護する「訪問介護」を考えるようになる。在宅なら1対1で対応できる、家族の声を直接聞いて、自分の仕事に繋げていくこともできる、自分たちのやりたい「温もりのある介護」ができるだろうと。勤務先を辞めて、まず訪問介護ステーションで働きながら、自分たちの会社をつくることを2人は考えていった。

    本は、心の通う介護をしたい、巡り合ったお年寄りを最期まで見守りたい、という「志」を支えに働く2人を追う。年中無休の介護と初めての会社運営のなかで、2人が若さと体力にまかせて眠る暇もないほど働いた1年目から、10年経つ今までを、お年寄りとの関わりの現場、2人の悩み、苦労もまじえて記している。

    リエとナオミが関係してきたお年寄りのすべてが、「家で最期を迎えたい」(p.239)と言って亡くなったという。ナオミは「自分も家で家族に囲まれて死にたい」(p.240)と言う。ナオミの実家では、リエがほぼ毎日のように介護に入りながら、ナオミの祖父母3人をナオミの両親が在宅で最期まで見ようとしていた。

    それは、多くのお年寄りが望むことで、2人にとっての理想かもしれないが、「家で」とか「家族」というものの見方に、読んでいる私はちょっと引っかかりもする。

    たとえば冒頭では、二人の関わり方がこのように書かれている。
    ▼お年寄りたちの生活では介護保険でまかなえない部分も多い。
     「おはじきで遊ぼう」
     「昔の写真を見て欲しい」
     「テレビが映らないよ」
     そんな要求にも、お年寄りの心を充たすために、二人は笑顔で応える。
     当然、無償だ。
     困っていれば家族がそうするように、何をおいても駆けつける。
     介護の常識では考えられないような深い関わり方をしていた。(p.8)

    「当然、無償」というのは介護保険でまかなえないという意味もあるのだろうが、「困っていれば家族がそうするように」という箇所とあわせて読むと、家族の無償の働きを、そんなに当然のように思ってええんかなと考えてしまう。すくなくとも私自身は、「何をおいても駆けつける」のは気持ちのうえで無理があると思うし。

    親の介護をすることで感じるもの、見えてくるものもあるのだろうと思う。たとえばナオミの父は、自分の父親を介護した経験をこう述べている。

    ▼「介護をするということは、親父の体に直接触れるということだった。肌を通して親父の優しさを知った。親父との距離が縮まっていくのが分かった。それまで忘れていた昔のこともおのずと思い出した。速かった親父の山歩き。高かった肩車。大きかった胸。毎朝、介護の前に親父の頭を撫でた。『今日も一日一緒に生きていこう』と。僕にとっては、何ものにも替え難い日々だった」(p.275)

    ナオミの母は、夫とそのきょうだいのことを「親の介護を通して、姉弟が一つになったんですよ。一つの命が終わる時に、家族が一つになったんです」(p.276)と語っている。在宅介護の苦労のすえに、そんなこともあるのかもしれない。

    それでも私は、「家族」や「身内」が介護をするキツさを思ってしまう。「家で」「地域で」というエエような言葉の向こうに、どんな介護があるんやろうなーとぼんやり考える。

    この本の冒頭から私が気になってしかたなかったのが、リエとナオミの2人が身を包んでいるという「介護服」のこと。本文をずっと読んでいても、2人はほとんどいつも「介護服」でうろうろしているようなのだが、介護のための服? 図書館で働く人の多くがエプロンをつけているようなものか?

    (12/27了)

    ※リエとナオミのNPO法人「海祐会」
    http://npo.pref.yamaguchi.lg.jp/ninsho/000046.html

  • 23歳のリエとナオミ・・・。
    自分たちの想い描く、介護を実現するため、NPO法人「海祐会」を立ち上げ、24時間365日介護を行う二人の女の子のドキュメンタリー。

    いわゆる茶髪ピアスで、ヤン車に乗るような子でも、お年寄りに対して真っ直ぐに向き合い、心通う「介護」の実現を目指す姿に心打たれる。

    2002年からテレビ取材をした5年間の記録に加えて、2009年〜2010年ん井掛けて追加取材をして構成されたドキュメンタリ。
    著者はこのドキュメンタリーを担当する山口放送の方。
    とても読みやすく、描いておられるが。

    『僕達に取ってのハプニングは、彼女たちに取っての日常なのだ』

    このことばの通り、狙った映像やヤラせなどではな描けない物語。

    この映像は、『笑って泣いて寄り添って-リエとナオミ-10年の記録-』として、全国放送されたとのこと。

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    【内容(「BOOK」データベースより)
    瀬戸内海に浮かぶ過疎の周防大島で、NPO法人「海祐会」を立ち上げ、訪問介護からグループホーム設立へと、理想の24時間365日介護の実現に邁進する青見理絵と中津尚美の9年間の記録。
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  • 純粋におじいちゃんおばあちゃんが好きだから、笑顔を見たいから
    、二人の介護士の山口の小島での奮闘記。

    この島では「笑って他界」出来るおげんきクリニックもあるんです。
    http://ogenki-clinic.com/index2.html

  • この五月に周防大島に行ったときは一泊しかしなかった。それにごく一部の場所しか見なかったし。それまでハワイ移民を多く出した島という認識しか無かったのが正直なところ。
    でも短時間の訪問でも過疎が進んでいることは感じ取れた。温暖で本土とは橋で行き来できる。大きく立派な病院がある。比較的恵まれた島だと思う。でも、若い人は出て行く。
    本書でもこの若い二人にあるべき「福祉」の姿を求める。その基本には家族がある。しかし、その家族が居なくなって、若い人が居なくなっていく現実をどうするのか。
    同じ瀬戸内海の兵群島にも一泊した。最近は魚が少なくなり釣り客も少なくなりつつあるという。小学校に生徒が居ないのだ。若い人が居ないのだ。「そのうち猫しか居なくなってしまうかも」と島の人も言っていた。「福祉」といってもそれを支えるべき家族、若者が居なければそれをどう実現するのか。

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