「ゴジラ」とわが映画人生 (ワニブックスPLUS新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (268ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784847060274

作品紹介・あらすじ

巨大な破壊兵器としてのゴジラ、ラドン、キングギドラなどの怪獣たちに、昭和の観客は経済繁栄に走りはじめた日本への警告を、エンターテイメントに留まらないメッセージを感受した。それは監督・本多猪四郎の永い戦争体験、それでも失われることのなかったヒューマニズムへの、人間へのぎりぎりの信頼、映画人としての理想と誇りがなさせるものだった。常に映画と共にあり、映画を愛した一人の日本人の真率な記録。

感想・レビュー・書評

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  • 初代ゴジラ映画を監督した本多猪四郎監督との対話形式書籍。
    この書籍を手に取ったきっかけは、ゴジラとはなんぞやも知らずに「ゴジラ-1.0」を観たこと。
    そもそもゴジラはなぜ海から現れるのか?なぜ強度を増していくのか?
    初代ゴジラの設定を読むとイメージできるかな。と考えたから。
    当時の特撮モノを創り上げることがいかに未来の科学との交わりを踏まえていたのか、怪獣ありきではない物語の背景に重きを置いていたのかを感じた。
    結果、当時の特撮モノを観たくて仕方がなくなることとなった。

  • 1960年代を中心に量産された「明るく楽しい東宝映画」。その代表選手の一人が本多猪四郎監督であります。東宝、いや日本映画の良心を一手に引き受けたやうな作風。それでゐて抜群に面白い。
    「ゴジラ」で世界に名を知られましたが、わたくしは本多監督ほど不遇な映画人はゐないと考へます。実力以上になぜか過大評価される監督が多い中、一方でこの人のシャシンが語られる時、ゴジラとか円谷英二の方が話題になる不本意な現象が起こるのです。

    当の本多監督はどう考へてゐたのでせうか。本書『「ゴジラ」とわが映画人生』では、その思想の一端を垣間見ることができます。山本真吾氏のインタヴューに応へたものを編集した一冊なのです。
    故郷山形での映画との出会ひから、忌はしい軍隊生活の経験。八年間も兵役にとられてゐた為、戦後東宝に復帰した時には、後輩が次々と(役職上)自分を追ひ越してゐました。山本嘉次郎門下生三人組(本多・黒澤明・谷口千吉)の中でも、一番先輩だつたのに監督デビューは最も遅れたのであります。こんなところにも、本多監督のツキのなさを感じます。

    ところで、監督でも俳優でも、軍隊生活を経て戦後復帰した人の中には、兵隊に行く前とはまるで顔付、目付が変り、明るかつた性格もなりをひそめ、人間が変つてしまつたといふケースが多い。それほど戦争体験は恐ろしいものなのでせう。
    しかし本多猪四郎氏は八年間耐へました。「戻つたら必ず映画を撮るんだ。その為に今の経験も無駄にすまい」との一念で、変にならずに済んだとのこと。お陰で、日本映画界は優れたヒューマニズムの映画作家を失はずに済みました。

    「結局、ぼくは本当の「悪」というものを描けないんですよ。本当の悪というのは、ぼくにはとても......」「ぼくは、どの作品でもそれ(やりたくない作品)はないですね」「大衆と共に楽しむ。それが私の心情だ」......最後の言葉は、「私の信条」全9条の第一番目のものです。ほかにも「主役の花を見に来た人々が、こんな処にこんな花がと見てくれる」とか、「右にかたよっても、左にかたよっても、権力につながるものには反撥する」などと、本多監督らしい言葉が並んでゐます。

    インタヴューは、ほぼ時系列で本多氏の人生、映画作品について尋ねてゐます。しかし駆け足の印象が強く、一つの作品について、もう少し突込んだ話が聞きたいなあと思つたのですが、これは第一稿として概観を語つてもらひ、より詳しく各論に入る予定だつたさうです。しかし本多氏が他界し、それは叶ひませんでした。まことに残念。語りによる本多猪四郎自伝の完全版を読みたかつた喃。

    巻末には子息の本多隆司氏のあとがきが付されてゐます。本多猪四郎監督といへば、万人が「穏やかな人柄」「怒つた姿を見たことがない」と評します。きつと家族には裏の姿(素の姿)を見せてゐたのではないか。実は家庭では暴言を吐いたりDV加害があつたりしたとか......
    そんなことを思ひながら読みましたが、息子さんの言葉でも「“監督は優しくて、おおらかで、怒ったのを見た事が無い!”これが父の監督としての一般的な評価です。事実、その通りです」ああ、さうですか。さういへば夫人・本多きみ氏もさう述べてゐたつけ。

    何はともあれ、名著を復刊してくれたワニブックスに感謝であります。

    http://genjigawa.blog.fc2.com/blog-entry-685.html

  • 2010年12月15日、初版、並、カバスレ、帯無し。
    2014年7月12日、白子BF。

  • 私が初めて見たゴジラ映画は「ゴジラVSスペースゴジラ」で、もう既にVSシリーズになっていました。
    先日、初めて1954年に公開された「ゴジラ」をDVDで拝見し、人間の科学技術使用に対するメッセージ性の強さに感心しました。

    本多監督の数ある作品の中で「ゴジラ」「ゴジラVSモスラ」しか見たことはないため、その他の作品の振り返りについては読み取ることができませんでした。

    監督自身の仕事に対する考え方や戦争体験は、映画ファンのみならず読むに値する内容だと思います。

  • 先日、本多猪四郎生誕100年記念イベント(調布映画祭)でこの本の存在を知って早速読んでみました。円谷英二さんが特撮サイドの雄で、本多猪四郎さんは本編サイドの雄。本多猪四郎さんの作品を全部みたくなりました。怪獣系の特撮はほとんど観ているので、観たことのない戦争映画も見てみようと思い「さらばラバウル」を借りてきましたが、ゴジラと同じ年の映画なのですね。
    怪獣映画と戦争映画のつながり、本多猪四郎さんの映画への思いを垣間見ることができる良著でした。

  • 去年が黒澤明生誕100年なら、今年は「ゴジラ」第一作から東宝の特撮映画を担ってきた本多猪四郎監督の生誕100年です。1991年に行われたインタビュー集の再刊。多くの著作や文献がある黒澤監督に対して、本多監督についての本は意外と少ないのですね。もっともっと多くのエピソードを伺いたかった。

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