私鉄3.0 - 沿線人気NO.1・東急電鉄の戦略的ブランディング - (ワニブックスPLUS新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (223ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784847066184

感想・レビュー・書評

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  • 東急電鉄を鉄道ではなく沿線開発や不動産の観点から記した本。筆者の実体験に基づいて書かれているので、その部分は面白かったです。また、外部からはうかがい知ることが難しい社風や会社としてのスタンスが書かれており、面白かったです。

    読んで思ったのはやはり東急は不動産の会社である。ということです。ただ、いくつか気になったのは、自社を持ち上げる為に、他を軽んじるような記述が散見されることです。東京東部の災害リスク云々というのも、自由ヶ丘あたりの密集地帯は危険だし、田園都市線の遅延も他社線が原因と書いていますが、今日も田園都市線のトラブルで半蔵門線が遅延して遅刻した私としては、鉄道にきちんと金をかけろよ。と思ったりしました。

  • タイトルは私鉄の未来を示唆するようなものだが、
    ほぼ東急の歴史を追った内容。
    しかし、こと日本における東急の役割というのは大きなものなので非常に読み応えがある。
    グランベリーモールのくだりなどは驚きが大きかった。

    致し方ないが、いかんせん東急バイアスがかかっているなという点は否めない。
    しかしいわゆるMaaSの文脈で考えたときに、実は東急という会社は、それこそ田園都市を構築したときからMaaS的ビジョンを持っていたのかもと思わされた。
    武蔵小杉の現状に対する自省も感じられ、今後の東急に期待が持てる一冊だった。

    なので、結局本のタイトルと内容はけっこう乖離。そこは残念。

  • 郊外に住宅地を造成して都心に職場や商業地を集積することで、安定的な鉄道利用と沿線経済循環を実現する―小林一三が考案し、五島慶太・昇親子が首都圏南西部で育てた東急のビジネスモデルを「私鉄1.0」とすると、人口減少時代に転じて沿線の高齢化やライフスタイルの変化に対応するために「私鉄2.0」「私鉄3.0」へとそのビジネスモデルを革新していく必要がある。

    この本のタイトルにある「私鉄3.0」は、正直まだ朧げなコンセプトが独り歩きしている状態であり、東急を含む多くの鉄道会社は偉大なる先達たちの創り上げた「私鉄1.0」の事業から脱却できずにいる。光明があるとすれば、従来は社内論理や沿線開発といった閉じられた世界観のなかで語られていたような、ビジネスモデルの革新をオープンイノベーションの形で様々な異分野異業種と新結合し始めていることだろう。その中で中心的役割を果たす著者の考え方だからこそ、説得力がある。

    荒れ地を宅地化し、ひたすら郊外に鉄道路線を伸ばしていけば経済成長できた正解のある時代は、とっくに終わっている。むしろ沿線において様々な課題が出てくる中で、東急と住み続けたいと考えてもらうにはどうしたら良いのか。お客様とディベロッパーという一方通行の関係性からさらに踏み込んで、地域住民や行政、関係機関と協働していきながら沿線地域の価値を高めていくプロセスにこそ、私鉄ビジネスモデルの未来があるのだろう。

  • 東急の執行役員である東浦亮典氏による著書。
    東急の戦略を中心に、大手私鉄(JRは除く)の経営に関して述べた本です。
    私鉄に関する本であるのはもちろん、いろんなビジネスに通用する考えが述べられていると思います。

    東急は、鉄道部門をもつ会社ではありますが、東急の沿線を中心とした都市開発にも力を入れている会社です。
    しかも、鉄道部門も都市開発部門も、短期的な利益を追うのではなく、長期的な利益を大切にし、都市開発における長期的な視点、都市の利用者・居住者の利便性などを重視しており、非常に大きな視点で、より多くの人々の生活の向上を考えている印象を受けました。
    また、東急だけよければいい、という考えではなく、他の私鉄や他業種との連携、自治体や地域コミュニティとの連携も丁寧に行っていて、非常に好感の持てる業務の進め方をしている会社だと思いました。

    自分も一度だけ、東急の方と仕事をしたことがありますが、本書を読んで、一緒に仕事をした東急の方たちの姿勢を思い出し、納得しました。
    いつかまた、東急の方と一緒に仕事してみたい、そんなことを思いながら読み終えた一冊です。

  • 東急グループはサービス産業中心で労働集約型の企業が多い。
    IoTやAIなどを活用し効果的にサービスを提供していきたい。
    MaaSにより移動する自由が保証される。
    「3.0」では各種サービスがTPOに合わせてスマートに提供される。

  • 東急電鉄の社員による、東急線やその周辺地域の歴史について。

    東急線を生まれた時から使っているものとしては、東急線の沿革が知れて非常に勉強になった。

  • 東急沿線は独特の雰囲気を醸し出しているが、単なる鉄道会社に留まらず、ディベロッパーとしての側面が強いのだなと改めて実感した。
    本書では私鉄3.0と形容されているが、人を運んで終わりではなく、ユーザーの生活そのものをトータルサポートしなければ未来はないというのは、人口減少が必至の日本における鉄道会社にとっては、共通の課題認識なのだと感じた。

  • 私鉄3.0 東浦亮典
    ・東急がまちづくりデベになったのは、田園都市線で極めて大規模で面的に開発したことと渋谷、横浜の2大都市を結ぶ東横線を持っていたから。特に田都は鉄道事業をやるために鉄道を通したのではなく、あくまでも利便性を上げるために鉄道を通したから元々開発志向の路線。だから、駅前広場をしっかりとって住宅地までの動線を描き、生活利便施設の配置も最初から立地をイメージして都市計画を考えることができた。
    ・自分がこの会社でやりたいことはなんだろう。線路跡地に町に足りないピースを埋める仕事、それにより住む人の利便性向上やくる人が増えるような施策(ハード)、民泊事業・アウトドアサービス事業・ヘルスケア事業などの新規事業立案。企画して、収支計画をして、様々なステークホルダーと良いものを作り上げる。エリマネ、PR活動などはすでに目的地があるときに真価を発揮する。二の次。誰向けに事業を行うのかも明確に。
    ・以前の鉄道会社は「マーケティング」という概念がなかった。マーケティングや経営戦略を学ぶために自らビジネススクールに通っていた。
    ・ポスト多摩田園都市の成長事業が育っていなかった頃は、長期視点で継続的に街に投資して、「街と東急の関連事業を成長させ」、「地域ブランドを確立し」、「継続的に資金回収する」というサイクルが作れていなかった。
    ・西武は流行に敏感な若者の心を掴むのが得意だった。東急は少し経済的に余裕のあるシニア層がターゲット。
    ・世田谷線と池上線は駅周辺に大規模な開発余地がほとんどない。今の景観を壊さずに、リノベーションで中身をアップデートしていくような事業が必要。良い街の条件の一つは、活気のある商店街や個性的な個人経営店がどれだけあるか。ショッピングセンターなどで均質化した街ではなく、創意工夫を凝らした個人経営店がどれだけ残っているか、車の往来を気にせず歩ける道があるかなどが街の価値向上にこれからの時代はつながっていく。
    →街の個性を沿線の界隈ごとにまとめたい。
    ・場所を選ばない働き方が主流になってくるが、そこに対して良質な選択肢を提供することが鉄道会社の仕事。
    ・住む、遊ぶだけでなく、働く、集う、学ぶことができる場を提供する。 
    ・エリアマネジメントは、行政の財政難や規制重視ではなく地域実情に合わせた公共空間の活用を促すために、民間セクターが中心となって「治安維持やイベントなどで地域価値を高めていく一連の活動」である。現在は、大手企業が集中した大丸有のようなエリアや札幌などサポート力の手厚い行政のもとでしか行われていない。郊外などの地域でどのように行うかが課題となっている。そのヒントの一つにBIDがある。これは、特定のエリアに不動産を持つオーナーがエリマネ組織に一定額を支払う仕組みのことである。地域再生エリアマネジメント負担金制度等を活用していく事例がいくつか見られる。
    私鉄はどう稼ぐか
    ・スタンプラリーの目的は、小さい子供にファンになってもらうことや夏休みなど売上が下がる時期に需要喚起策の一つとして行う。しかし、販促費や人件費を考えると大きな収益を見込めるものではない。都市開発や観光地開発と合わせて行なっていくことで鉄道の価値を発揮できる。
    ・観光路線はシーズンごとにキャンペーンを打ち出すことで需要を生むことができる。
    ・デベには「狩猟型」と「農耕型」がある。鉄道会社は後者。長期間一定の場所に投資を繰り返し、地域価値を高めていく。また、数年で結果が出るような農耕型ではなく、数十年のスパンで市場をゆっくり育て収穫を得る「林業型」も今後は必要だと思われる。大切なのは、自分たちは狩猟型ではなく、農耕型や林業型である覚悟と自負の念。短期思考ではなく中期思考で物事考えていくこと。
    私鉄3.0とは
    ・私鉄1.0は、郊外で宅地開発して、通勤に使ってもらい、都心に百貨店を構え買い物をしてもらうビジネス。小林一三が築いたモデル。
    ・私鉄2.0は、郊外は再生ステージに入り、中間エリアでは職住近接のワーク・ライフスタイルを確立し、鉄道は交流鉄道になる。
    →地域再生のノウハウは武器になる。
    ・私鉄3.0は、一つのICTプラットフォームとして鉄道のサービスを使ってもらう。また、利用者各々の趣味嗜好、ライフスタイル、TPOに合わせてサービスをカスタマイズできる。痒いところに手が届き、過剰にならない程度にタイムリーに自分のニーズにあったサービスを受けられ、使えば使うほど自分を優遇してもらえるようなサービスを提供する。
    →この一つのヒントにMaaSがある。TPOに合わせて好きなモビリティをストレスなく選択できるもの。


  • 私鉄の成り立ちからこれまでの歩みが整理されている良書

  • 読書メモ

    現役東急社員による私鉄の未来像

    勝手なテーマはターミナルからハブへ


    以下、読書メモ

    1.0 阪急小林一三が紹介した後藤慶太による田園都市構想の貯蓄
    都心↔通勤鉄道↔郊外住宅地
    2.0 多摩川ライズに代表される中間地域の交流拠点
    都心↔交流鉄道↔交流拠点↔交流鉄道↔郊外住宅地
    3.0 MaaSによるパーソナルオンデマンド対応
    都心↔MaaS↔交流拠点↔MaaS↔郊外住宅地

    コミュニティリビングという概念とそれを補完するサービスの開発育成

    不動産資本の開発、棚卸、再投資
    賃貸住宅の流動性と高齢化の遅延策

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著者プロフィール

東浦亮典(とううら・りょうすけ)
1961年東京生まれ。1985年に東京急行電鉄入社。自由が丘駅駅員、大井町線車掌研修を経て、都市開発部門に配属。その後一時、東急総合研究所出向。復職後、主に新規事業開発などを担当。現在は、東急株式会社常務執行役員、フューチャー・デザイン・ラボ、沿線生活創造事業部長。著書に『私鉄3.0』(弊社刊)がある。

「2022年 『東急百年 - 私鉄ビジネスモデルのゲームチェンジ -』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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