- Amazon.co.jp ・本 (276ページ)
- / ISBN・EAN: 9784847091797
作品紹介・あらすじ
ピース・又吉直樹、すべての東京の屍に捧ぐ。「東京は果てしなく残酷で時折楽しく稀に優しい」いま最も期待される書き手による比類なき文章100編。自伝的エッセイ。
感想・レビュー・書評
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18歳で上京して以来、東京暮らしをされているピースの又吉直樹さん。
売れない芸人時代から現代に至るまで、又吉さんの目に映った東京を切り取った100編のエッセイです。
文学作品所縁の風景やお金が稼げなかったころの貧しい生活を、独特のユーモアとちょっとの切なさを混ぜて綴った文章は、少し色褪せた写真を眺めているような感じでした。
かと思えば、後輩と「通りすがりの人の魂を吸う遊び」をしながら町を歩いた…なんていう、思わず笑ってしまうエピソードもあったり。
彼の自由律俳句を読んだ時に「この人の目から世の中を見てみたい…」と思ったのですが、本書を読んでさらにその思いを強くしました。
それにしても、彼は今までに何回職務質問をされているんだろう…。
途中から彼が職務質問されていることに違和感を感じなくなってきてしまい、苦笑い。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
とても不思議な感触のエッセイ。
現実と妄想が入り混じった又吉さんの東京がここにある。
「二十五 ゴミ箱とゴミ箱の間」とか東京か?というテーマの回もあるけど、東京だからそんなことも気になるのかもしれない。よく知らないけど。
この本の裏テーマは「自意識の恐ろしさ」ではないかと思う。
又吉さんの過剰な(ご本人談)自意識について繰り返し語られていて、それがまるで催眠術みたいにじわじわと効いてくる。
自分の一挙手一投足が白々しく思えたり、なんかこっぱずかしかったりし始める。
困った…。
一度見失うと何が自然なのか分からなくなる。
感染力「強」。 -
昨夜、『ハリーポッター』を観ていたせい、だろうか。
この本が、
『忍びの地図』の様に思えてしまった。
(知らない方はゴメンナサイ。。。)
「又吉君」と、声をかけなくても、
本を開くと、
東京のあちこちに又吉君の足跡がテコテコと浮かび上がる。
どこへ行く?
と、いうよりも、
何してた?
が、気になって、
何度も何度も地図を開いてしまう。 -
作者は、つくづく面倒臭い人やなあと感じさせてくれます。何かにオドオドして、でも好きな事を突き詰めたい、好きなことは好き。それを通して、今の成功したと言える立場までたどり着いていると言うのはすごいと思います。成功とは程遠いですが、面倒臭いと言う部分では共通する自分と照らし合わせて苦笑いする部分が多々あります。
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素敵なエッセイ。彼の目を通して見る東京がすごく新鮮。
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芸人としてまだくすぶっていた時代の終わらない自己意識が東京という背景の中に描かれているエッセイ集。他の芸人や西加奈子、中村文則といった大好きな作家との関係も描かれてて、そういったファン的な楽しみもある。東京の華々しくも、大きな哀しみを抱えている部分を独特な視点から描いている。「人見知りとは所作のことだ。『あくび』などと一緒で一人の人間が終生背負う名詞ではない。」。これは一番刺さった。
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1/1 ハノイの横断歩道
ベトナム最後の夜に、ビアホイでしこたまビールを飲んだ後に上司と行ったカラオケで、コンパニオンを務めてくれた女の子と次の朝にも会うことになった。彼女はカーペンターズを二曲歌って、わたしは何知ってる?と聞いたら返ってきた「恋するフォーチュンクッキー」「TSUNAMI」「踊るポンポコリン」を従順に歌った。一曲毎に頑張ってねと応援された。トイレから戻ってくると、扉の前に彼女が立っていて、トイレに行くのかなと道を開けると、彼女は戸惑うような笑みを浮かべてやはり立ったままで、わたしもまた戸惑っていた。バレーボールもないのにお見合いしてる私たちを、出迎えに来てるんだよと上司が笑った。仕事は楽しいかと聞くと、少しと答えた。日本人の客が多い店で、日本語もほとんど喋れなくて、英語さえ拙いことにも安心した。上司が朝珈琲でも誘えばいいじゃん、と言うのを、いやいやと笑って流すつもりだったけれど、上司についていた女の子が律儀に訳しており、意外にも彼女は行こうと乗り気だった。その時、珈琲はあなたのおごりだよと嬉しそうに付け加えるのを忘れなかった。無理して笑わないで欲しいと思っていたので、全然気にしなかったし、仕事を離れて改めて会えることは嬉しかった。翌朝、彼女はわたしのホテルの前まで迎えにきた。着いたとラインが来たのに姿が見当たらず、どこにいる?と聞いて、顔を上げると彼女が笑って立っていた。どうやって来たかと聞くと、タクシーだと答えたので、少し驚いた。何も言われないことに対して、何も言うことができなかった。珈琲ショップまで20分くらい歩いて、開店まで30分くらいあったので、近くのため池のほとりに座って時間を潰した。カフェで、彼女は抹茶フラペチーノと抹茶ケーキを頼んだ。わたしは珈琲フラペチーノを頼んだ。フラペチーノは多くて二人とも残した。なにか今朝のお礼をしたくて、日本の彼女にお土産を買いたいからという口実でお店まで案内してくれるように頼んだ。彼女は靴を欲しそうにしていたけれど、実は君にの実はが実はにならない気がしたので、バッグの中でどれがいいと思うかを聞いたものの、本当に彼女が欲しいものを回答してくれているのかという、計画の根底を揺るがす疑問を今更ながらに思い、とはいえ好きなものを買っていいよと言うのは厚かましいので仕方なくレジに向かうと、二つ買うと安いから靴を買ってくれないか?と彼女から言ってくれたから助かった。彼女は靴を、黒と茶のどちらがいいかをわたしに尋ね、どちらがいいかは持っている服によって変わると思うので困りながらも、今日の格好から判断する限りでは黒と答えるべきだったのだけれど、彼女には関係のない、変化を楽しみたい私のタイプと価値観に則って茶と回答すると、彼女がじゃあ茶にするというから、本当はどちらかというと黒が欲しいのに気をつかってるんじゃないかと不安になり、本当に大丈夫かと何度聞いても大丈夫だと答えるので、安心するどころか不安がいっそう募ったけれど、仕方がないのでレジに向かうと、わたしがバッグの値段と思っていた値段で、靴も一緒に買うことができた。バッグも結局流れのままというか、一緒に買うからこそ靴も自然に買えたのだけれど、バッグもあげてしまうと現在の関係性に対してやり過ぎだと思ったので、持って帰ることにしたけれど、日本の彼女にあげるならその子のことをもっと考えて自分で選びたいし、そもそもこだわりが強いので使ってくれるか怪しいなと思いつつ、案外自分のこだわりから解放されたプレゼントの方が喜んでもらえたりする気もして、どうしようか迷っている。お店からはその子の家の方が近くで、家まで送ると私が言うと、ホテルまで送ると言い張るので、ため池をぐるっと遠回りして一緒に帰った。ハノイには最近、横断歩道が増えてきているものの、横断歩道が現れるのを待っているといつまでたっても反対側に渡れないので、車とバイクでごった返している道路を歩行者は突っ切るのが普通だけれど、車やバイクもそのことは承知しており、私たちがゆっくり歩いてさえいれば、その動きを予想して、避けて走ってくれる。とはいえ、まだハノイ2回目で慣れていない私は、全然渡るタイミングがつかめず、ずっと二の足を踏む羽目に陥るのだけれど、今日は彼女が引っ張ってくれたから、危険で安全な道路を何度も渡ることができた。道路を渡る時、彼女は私の二の腕を掴むようにした。連行されているような、情けない感じに側からは見えている自覚があって、多分腕が体から離れているのが良くないから、もう少しカップルぽく見えるように腕を体に近づけようと思ったけれど、腕を掴まれていることを嫌がっているように彼女が感じてしまうのが嫌だったので、結局ぎこちなく手を動かせただけだった。道路を渡り終えても彼女はしばらく腕をつかんだまま歩いた。歩道が整備されていないので、わたしが不注意に道路にはみ出さないようにしているとも思えたし、もしかしたら手を繋ぎたいのかもとしれないとも思ったけれど、ベトナムで手を繋ぐことがどれくらい意味のあることなのかがわからなかったので、頼りなさだけは共通して、ただ引っ張られていた。わたしはここでも従順だった。ホテルに近づくにつれて話題がなくなってきて、好きな色を尋ねると、彼女は黒と答えた後に、茶色と答えた。数時間後、搭乗時間を待つ空港のロビーでなぜか左足が痺れていた。
行きのフライトで「東京百景」を読んだ。東京から離れて「東京百景」を読むことがオツに思えて、急いで取り寄せ、なんとか前日の夜に受け取ることができた。行きのフライトでほとんど読んでしまって、ホテルでは時間稼ぎにちびちびとスープをすするように読んだ。努力虚しく、出張半ばで読み終えてしまった。準備の時に鞄にいれようか迷った、長年の悲願となってしまっているカラマーゾフの兄弟を持ってこなかったことを悔いたけれど、結局帰りのフライトでは要らなかった。わたしの東京のハイライトはなんだろうか。
付き合い始めてすぐに、彼女が上京してきた。新しい住まいが見つかるまでの間、布団を敷けばもう足の踏み場もないくらいの狭い単身用のアパートに二人で暮らしていた。とある日曜。せっかくの休みなので、体を二つ窮屈に並べ、時々互いにはみ出しながら、ごろごろ惰眠を貪っていると、彼女が突然「パセリのものまねして」と言い出した。わたしは唸りながらも、パセリになる努力をした結果、あまりのアホらしさがわけもなく面白くて、二人でしばらく笑い転げた。近くの雑司ヶ谷霊園が、確かに夕暮れを深めていた。 -
以前読んだ「第2図書係補佐」は単純にエッセイとして面白かったが、
こちらはそれプラス小説的な要素もあり、楽しめた。
特に気に入ったのが、過去に同棲した彼女との
出会いから別れが綴られている「池尻大橋の小さな部屋」
映画とまでは言わないが、鉄拳のパラパラ漫画を見ているかのように、
映像が目の前に広がり、最後は切なくて心がジュワーっとなった。
プツリと切れる終わり方がいい。切なさの余韻が胸を締め付けた。
著者プロフィール
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