新書七十五番勝負

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レビュー : 9
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784860110802

感想・レビュー・書評

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  •  渡邊の著書を読むのは3冊目。これは『本の雑誌』連載の新書評の書籍化だ。

     1冊の新書につき3ページほどの短い書評が並んでいる。書評集であると同時に読書論でもあり、読書の愉しみを飽かず語りつづけた読書エッセイでもある。

     文章が、紹介する新書とは関係のない自分語りから始まるものが多い。新聞書評などではあり得ない、『本の雑誌』連載ならではの自由なスタイルだ。

     「この書き出しからどうやって新書紹介に着地するんだ?」とハラハラしながら読み進めると、アクロバティックな跳躍のすえ、見事に着地。紹介する新書の魅力の核を正確に伝える内容になっている。なかなかの芸だと思う。

     当ブログに感想をアップしている新書もけっこう取り上げられていて、それを読むと著者の書評子としての力量がわかる。私にはできない形でその新書の魅力を伝える文章が少なくないからだ。

     たとえば、池谷裕二氏の名著『進化しすぎた脳』を取り上げた回。
     著者は同書を、各紙誌の書評が「高度に専門的な内容を平易に説いた点が珍しい」と絶賛したことに異を唱える。

    《自然科学の学者が「自分の専門分野の最新知見を平易に書く」のは、いまや当たり前。「狭い専門分野のフェンスをふみこえて科学の思想を語る」ことにこそ拍手を送るべきである。》

     つまり、科学の細分化が行きつくところまで行き、「すぐ隣りの研究分野についてさえうっかりモノを言うなんてリスクはおかせないという学者が多数派」のご時世にあって、脳の機能のあらゆる側面にあえて言及したところこそが、同書の最大の美点なのだ、と……。
     この指摘には、なるほどと膝を打った。

     その他、印象に残った一節を引用する。

    《真の表現とは、受け手を変化させる前にまず、表現者自身を変化させるものでなくてはならないとわたしは思う。
     「だいじょうぶだよ、そばにいるから」式のポエムをわたしが軽蔑するのは、それは受け手の心を励まし和ませるテクニックだけで書く言葉だからだ(その効果すらあやしいけどね)。表現者自身は、心の動く現場に立ち会っていない。そのポエムを書くことによって表現者自身の立脚点が危うくなったり、心が揺らいだりしない。安全地帯にいるのである。動かないのだから進化も成長もない。そんなの表現といえない。》

    《徹底的にわかりやすいのが善、アホでもわかる子どもでもわかる猿でもわかる、ということを絶対的価値として信奉しているのは、世の中でもTVと出版社だけなのである。》

    《国民総消費者となったこの末期的日本社会では、われわれは毎日、どんなささいな行動も、「それはなんの役にたつのか、カネを払う価値があるのか」と互いに監視しあっている。でももううんざりだ。現在「それはこれこれの仕組みでこういうことの役にたつ」とわかっているものなんて、メシを食っていくための色褪せたルーティンである。なんの役に立つのか皆目見当がつかないものからしか、新しい価値、つまり未来は生まれない。》

  • 日本の森林 国有林を荒廃させるもの
    「複雑系」とは何か
    知性の織りなす数学美
    昆虫の世界へようこそ
    なんでも測定団が行く
    装?列伝 
    廃墟巡礼
    おいしい<日本茶>がのみたい
    ワニと龍
    人体常在菌のはなし
    中国の大盗賊・完全版
    漢字と日本人
    感性の起源
    「おろかもの」の正義論
    先生はえらい
    世間のウソ
    レンズに映った昭和
    日本全国 路面電車の旅
    水族館の通になる
    人名用漢字の戦後史
    日本語の森を歩いて
    行動分析学入門
    カラー版 絵の教室
    落語名人会 夢の勢揃い
    俳句という遊び
    駅伝がマラソンをダメにした
    奇妙な情熱にかられて
    人間は遺伝か環境か?遺伝的プログラム論
    環境問題のウソ
    巨人軍論
    科学者という仕事
    明治天皇の一日
    日本神話とアンパンマン
    自閉症
    昆虫-驚異の微小脳
    水の道具誌
    十年、働いてきました
    ゼロからわかる アインシュタインの発見
    非対称の起源
    一神教の闇
    書評書<狐>の読書
    進化しすぎた脳
    新聞社 破綻したビジネスモデル
    テツはこう乗る
    生物と無生物のあいだ
    プリオン説はほんとうか?
    データはウソをつく
    地図に訊け!
    旧かなづかひで書く日本語
    甲骨文字の読み方
    ホームラン術
    死物学の観察ノート
    武玉川 とくとく清水
    変わる方言 動く標準語
    直筆で読む「坊ちゃん」
    座右の名文
    日曜日に読む荘子
    日本の色を歩く
    生態系ってなに?
    日本人はなぜキツネにだまされなくなったのか
    巨匠の傑作パズル ベスト100
    新版 行政ってなんだろう
    数学でつまずくのはなぜか
    日本の美意識
    向田邦子と昭和の東京
    電車の運転
    伝説 柳田国男
    「自分だまし」の心理学
    信じない人のための<法華経>講座
    「名医」のウソ
    建築史的モンダイ
    岡潔
    世界最大の虫食い算
    日本人の<原罪>
    対談 昭和史発掘
    精神科医は腹の底で何を考えているのか

  • 2014/7/3 偏りがあるけど、読んでみたい新書ばかりだった。ドキリ、ピリリ、そんな感覚を味わいたいのだ。

  • 本の紹介とは、かくあるべし。
    そんなお手本にしたくなるような書評集である。
    選ぶ視点がいい。選んだ本がいい。つい読みたくなるように紹介してある文章がいい。
    おかげで、買った新書が4冊、買おうと思っている新書が8冊。
    ああ、また積ん読本が増えてしまう。
    でも、渡邊十絲子の書評、もっともっと読んでみたい!

  • 新書の書評。
    読んでいるものもあれば、まったく気がつかなかったものもある。1冊3ページ程度だが、もう少し中身に触れてほしいし、最初の前フリが変に長く冗長に感じる。

  • 面白い本をたくさん紹介しているという点で特筆できる。
    文章もわかりやすく、書評の一つのお手本になるだろう。

    人のことは言えないが、書評の中身としてはいまいちなところが多い。
    表面的な紹介になっていて、切り込みが鋭くない。

    それが渡邊十絲子流だと思えば、そうなのかとも思う。
    本の雑誌社で、書評を書いて、切り込んで売れなくなってしまっては元も子もないことは解る。

    自分がやろうと思っていた企画を先に実現されてしまったので、嫉妬かもしれない。
    昨年、岩波新書とブルーバックスの書評をそれぞれ500冊書こうと決めて、現在、半分まで来たのに、先に本にされてしまった悔しさかもしれない。

    出版社に気兼ねしない書評本を出せる出版社を探しています。

  • 『本の雑誌』で連載していた(している?)新書の書評をまとめたもの。
    人が薦める本はすべて魅力的に見えるのは何故なんだろう。
    個人的に得心がいったのは『数学でつまづくのはなぜか』(小島寛之著:講談社現代新書)の紹介で引用された以下の文章。

    この本は(中略)『数学を役立てられなくたっていいじゃん』ということを説いた本だ。
    誰かと友だちになりたいなら、まず、そいつを何かに利用しようなんていう浅ましい考えは捨てることだ。
    (中略)そいつの話をじっくりと聞き、いいところも悪いところも知ろうとすることだ。
    (数学は実用の役に立つという主張について)その背後には『役に立つものなら認めてやろう』『役に立つものしか必要ない』といった発想が見え隠れすることも見逃せない。
    それは、極端な喩えをするなら、(中略)『自分の利益になる人とだけ友だちになります』というような浅ましい根性と同じなのである。

  • 「本の雑誌」の連載分は既読。でも、改めて読み直すと、読んでみたい新書を続々発見。書き下ろし分も充実している。お勧め。

  • 2010.02.28 朝日聞で紹介されました。

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著者プロフィール

渡邊十絲子(わたなべ としこ)
1964年東京生まれ。早稲田大学文学部文芸科在学中、鈴木志郎康ゼミで詩を書きはじめる。卒業制作の詩集で小野梓記念芸術賞受賞。詩集『Fの残響』『千年の祈り』(以上、河出書房新社)、『真夏、まぼろしの日没』(書肆山田)。書評集『新書七十五番勝負』(本の雑誌社)。エッセイ集『兼業詩人ワタナベの腹黒志願』(ポプラ社)。ことばによる自己表現の入門書『ことばを深呼吸』(川口晴美との共著、東京書籍)。本を読み書評を書くこと、スポーツ観戦、公営ギャンブルに人生の時間と情熱をささげる。月刊専門誌「競艇マクール」のコラムは連載14年め。

「2013年 『今を生きるための現代詩』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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