活字と自活

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レビュー : 25
  • Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784860112066

作品紹介・あらすじ

東京・中央線での暮らし方、読書の楽しみ、就職しないで生きる方法。

感想・レビュー・書評

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  •  前著にあたる『古本暮らし』がよかったので、著者の単著第2弾を読んでみた。

     内容はおおむね前著の延長線上にある。著者の地元である高円寺の香り、ひいては中央線の香りムンムンの、古本とフリー物書き業をめぐるエッセイ集である。

     「あとがき」によれば、「雑誌みたいな本にしたい」というのが著者たち(著者・編集者・デザイナー)の共通の願いだったという。その願いどおり、写真も随所に盛り込まれ、いい意味で雑然とした作りになっている。高円寺あたりの古本屋がそっくり部屋の中に入ったかのような、著者の自宅の本棚の写真もいくつかある。

     文章といい、内容といい、終始一貫しょぼくれていて貧乏臭いのだが、そのしょぼくれた味わいが、読んでいてむしろ心地よい。

     『活字と自活』という書名のとおり、物を書いて自活していくことのたいへんさと楽しさを綴った文章も多い。とくに、著者自身の駆け出しライター時代を振り返った一連の文章は、たいへん身につまされた。身につまされすぎて、まるで昔の自分を見るような気分になった。
     たとえば、こんな一節――。

    《無署名の原稿をいくら書いても次の仕事につながらない。つながることもあるのかもしれないが、わたしはつながらなかった。
     無名の書き手の場合、何人もの人に断られてから、ようやく原稿の依頼がくることが多い。そうした仕事は、連休前、お盆、正月あたりに集中する。「明日までにおねがいします」といわれて、明日までに書く。「助かりました」といわれるが、それっきりである。何の準備もなく、何の取材もせず、短時間で書いた原稿だから、出来はよくない。二日ほど徹夜で書いた原稿を渡したあと、原稿料を値切られたこともあった。》

    《プロ野球でいえば、全国のエースで四番だったような人たちのよりすぐりが、プロになるわけだが、自分をふくめたフリーライター仲間を見ていると、社会人の予選があれば、コールド負けするような連中ばっかりだった。朝起きれんわ、挨拶はできんわ、時間を守れんわ……以下略。》

     著者のお気に入り本をめぐるエッセイも多いのだが、そのセレクトにも著者のこだわりが感じられる。ことさらにマイナー志向というわけではなく、古書で高値がつくような本ばかりを取り上げているわけでもないのだが、世間のメインストリームからは微妙にずれているのだ。

     「よーし、読むぞ!」と身構えて読むような本ではなく、ふとした時間のすき間に本棚から引っぱり出して何ページか拾い読みする。そして、いつの間にか読み終えている……そんな読み方がふさわしい本。

  • 考えすぎて疲れたら魚雷さんの本を読むと良い感じに力が抜ける。文体や取り上げる話もそうだし、何より魚雷さんのスタンスにホッとする。古本からいろんな本が紹介されていたので、あとで読みたくなった。

  • 新宿から西に延びるJR中央線。井伏鱒二等の文士が住み、
    言葉で表すのは少々難しい独特の文化を持った地域だ。

    専門学校や社会人になってから出会った友人・知人の
    なかでも、デザイナー、イラストレーター、演劇関係、
    音楽関係の仕事に就いている人の多くがこの中央線
    沿線の住人だった。

    サブカルチャー指向が強いと言ったらいいのかな?
    でも、とんがっている訳でもなく、なんだかゆる~く
    生きている知り合いがほとんど。

    本書の著者も中央線文化のなかで生活をしており、そんな
    中央線沿線で過ごす日々や、音楽、本についてのエッセイが
    詰まっている。

    掃除して、洗濯して、散歩がてらに古本屋を覗いて、喫茶店で
    本を読みながら一休みして、夜になったら酒場へ出かけ…。

    同じ著者の『本と怠け者』もよかったけれど、本書も力を抜いた
    生活がうかがい知れる。

    「やりたくないことはやらない」

    作家・山田風太郎の座右の銘だそうだ。著書もそんな風に生きて
    いるように思う。

    でも、年金は払った方がいいと思うけど。

  • スカイルBF

  • 高円寺系で古本屋マニアで売れないライター
    携帯電話もクレジットカードも持たず、国民年金も払っていないが
    結婚はしている

    なんか不思議な人

    1969年生まれの人だが、本の好みも渋い

    マンガで言えばあすなひろしや永嶋慎二
    作家で言えば尾崎一雄とか辻潤とか

    マイク・ロイコは図書館にあったから、
    そのうち読んでみよう

  • 高円寺在住のライターである著者が中央線での暮らし方や身の回りの出来事について綴った一冊。本についての記述多し。著者のオススメ本には気になったものが多かったので今度読んでみようと思う。「中央線沿線は貧乏人には寛容だが文化格差(差別)みたいなものは他の町よりも厳しい」という一文は、思わず笑いながら首肯してしまった。

  •  中村光夫や黒田三郎についての文章は読めて楽しかった。

  • フリーライターの著者がオススメの古本を紹介したり、自身の半生を綴ったりする本で、結構なボリューム。
    この本を読むまで荻原魚雷さんを存じ上げなかったが、本当に活字、本、古本を愛していることが伝わってきた。
    なにかと愚痴っぽいところも多かったが笑、フリーで食べていくことの辛さ以上に人生訓みたいな話が多くて、「活字と自活」というテーマを超えて、あらゆる職業の人を励ましてくれるような本だった。
    また、著者自身、数々の書物を読むことで作家達からメッセージを受け取り、自分のものにしている様子を読み、やはり一冊の本との出会いは一人の人間との出会いに匹敵するものだと改めて確認した。

  • 『本と怠け者』と前後して届いたこっちの本も、たらたらと読んでいた。『古本暮らし』という本を出したあと、二冊目の単行本をつくろうとしていたのが、いろいろあって白紙になり、それが本の雑誌社から「うちで出しませんか」と打診され、しかも立ち消えになった本の担当だった人が本の雑誌社にはいって、この本の編集担当になった、という本(読んだことがあるような…と探したら、出た頃に『古本暮らし』を読んでいた)。

    1 高円寺暮らし
    2 わたしの本棚
    3 夜型生活入門

    という3つのパートに、なにやら時代をさかのぼったような写真があちこちに入って(これは荻原さんの本棚なんかなアと思われる写真もちらほらとある)、デザイナーさんが「雑誌みたいな本にしたい」と言ったとおり、ちょっと厚い、字の多い雑誌みたいにも見える本になっている。

    高円寺で暮らしつづけていることや、勤め人にならなかった暮らしのことのほか、いろんな人の本(古本が多い)を読んだ話があれこれと書いてあって、荻原さんが読んでどう思ったかというのもたらたらと書いてある。出てくる本がややシブいこともあって、読んでいて、坪内祐三の『ストリートワイズ』とか『三茶日記』を思い出すところがあった。

    「2 わたしの本棚」のなかで、関川夏央の『「名探偵」に名前はいらない』に、「学習塾を経営し、原発に労働者を送りこむヤクザの話」が入っているというのを読んで、最近『ヤクザと原発』という本が出てたっけなーと思った。荻原さんは「ここ数年、階層社会、格差社会という言葉がしきりにいわれているが、関川作品では70年代末からすでにそのことをとらえていた」(p.83)と書きとめている。

    杉山平一の『低く翔べ』を、仕事のあいまにつまみ読みしながら、荻原さんはこんなことを書く。
    ▼正しい意見をいうことはたやすいが、その意見を通すことはむずかしい。
     自分の考えですら、腹が減っていたり、食うに困る状況になったら、おもわぬ方向に変ってしまうかもしれない。まあ、そんなことをいちいち気にしていたら、何もいえなくなってしまう。
     大げさなことはいわず、低い声でしゃべる。そうするとなかなか耳を傾けてもらえない。
     それでも杉山平一は静かな、低い声で自らの意見を語りつづけようとする。(p.213)

    そして、「健康」というタイトルの文章を引いてある。《有無をいわせぬ、平和とか聖戦とか、きれいごとが出てくるときは、嘘つけ、と私は呟く》などと。

    巻末の表題作「活字と自活」は、荻原さん41歳の時、たぶん去年書かれたものだ。もとは「この十年」と題して書いたものだという。この十年の、荻原さんの愚痴のようなものが書いてある。この「活字と自活」の前のところまでにも、30をすぎ、40が近くなり、40になって、昔は読んでもぴんとこなかったことが分かるなあと思うようになったとか、10代や20代の頃にはこんなことを考えていたが今は…といった話があちらこちらに書いてあって、私も、あーそれわかるなーと思うことがいろいろとあった。

    ▼「三十歳まで続けることができればどうにかなる」という言葉の意味はわかるようになった。そのくらいの齢まで続けていると、ほかの選択肢がどんどんなくなってくる。
     どんな仕事にも、向き不向きがある。
     やりたいことを考えるのもいいが、やりたくないことを考えるのもいいのではないかと思う。
     冷静に自分の欠陥、欠点を見つめれば、できないことの範囲が定まってくる。
     おそらく好きな仕事に就くことよりも、自分のやっている仕事を好きになることのほうが簡単である。

     そのことを昔の自分に教えてやりたい。(pp.246-247)

    ふと、「路頭に迷う覚悟があれば」と、20年ほど前に先輩から言われた言葉を思い出す。その頃の自分に「覚悟」があったとは思わないが、先輩にそう言われた道を選んで、そこからまた転々としてきたなーと思う。

    (12/23了)

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著者プロフィール

【著者】 荻原魚雷(おぎはら・ぎょらい)
1969年三重生まれ。文筆家。著書に『古書古書話』『日常学事始』(以上、本の雑誌社)、『本と怠け者』(ちくま文庫)、『古本暮らし』(晶文社)ほか、編者をつとめた本に『吉行淳之介ベスト・エッセイ』(ちくま文庫)、梅崎春生『怠惰の美徳』(中公文庫)ほかがある。

「2020年 『中年の本棚(仮)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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