劇画暮らし

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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784860112103

感想・レビュー・書評

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  •  2009年に『劇画漂流』で手塚治虫文化賞マンガ大賞を受賞するなど、再評価著しい辰巳ヨシヒロの自伝。タイトルと表紙から『劇画漂流』の続編劇画のような印象を与えるが、こちらは文章による自伝である。

     ただ、『劇画漂流』では描かれなかった時期の出来事まで触れられており、こちらのほうがより網羅的な自伝となっている。子ども時代から70代の現在までがひととおり書かれているのだ。
     ……などと書いているが、じつは『劇画漂流』はまだ読んでいない私。よって、『劇画漂流』と本書の違いについてくわしく述べることはできない。ともあれ、本書も独立した作品として十分読みごたえがある。

     辰巳は「劇画」という語の提唱者であり、おもに大阪を拠点に貸本マンガ文化の一翼を担った作家である。また、連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』に登場して知名度が高まった桜井昌一(役名は戌井慎二)の実弟でもある。
     本書は、その辰巳のマンガ少年時代から説き起こされ、貸本マンガの勃興から衰亡までを自身の歩みと重ねて描く部分が中心となっている。

     意外だったのは、辰巳が手塚治虫と深いかかわりをもっていたこと。『新寶島』などに感銘を受けて手塚を神のごとく敬愛していた辰巳は、中学生時代に手塚邸(まだ宝塚に住んでいた)を訪問する機会を得て、その後も「手塚詣で」をくり返したのだという。
     その意味で本書は、“もう一つの『まんが道』”であり、“関西を舞台にした、もう一つのトキワ荘物語”でもある。藤本弘に安孫子素雄という相棒がいたように、辰巳の創作の相棒となるのは次兄「オキちゃん」――すなわち、のちの桜井昌一(本名は辰巳義興)だ。
     そして、桜井や水木しげるが生きた貸本マンガの世界を別角度から描いたという意味で、本書は“もう一つの『ゲゲゲの女房』”でもあるのだ(水木は少ししか出てこないが)。

     マンガ表現の拡大を模索するなかで、「劇画」という言葉が生まれるまでのプロセス、さらには「劇画」が辰巳の手を離れて世に広まっていくプロセスが、つぶさに綴られている。その点で、本書はマンガ史の資料としての価値も非常に高い。
     また、のちのマンガ界の大物たちの青春物語としても面白く(さいとう・たかを、つげ義春、佐藤まさあきらの若き日の姿が活写されている)、ドラマ化・映画化してもよさそうだ。

     印象に残る場面も多い。
     たとえば、劇画ブームに乗って辰巳が初めて『少年マガジン』に寄稿する際のやりとり――。

    《「ぼくのような者の作品を載せると、『マガジン』の部数が落ちますよ」
     編集部でぼくは忌憚のない意見を述べた。
    「結構です。『マガジン』の発行部数が落ちるほどの影響力のある作品は大歓迎です」
     担当編集者と同席した副編集長は、自信満々に胸を張って答えた。》

  • 前半は漫画「劇画漂流」にかぶるうえに、やはり漫画のほうが面白いので割愛。後半はとてもおもしろかったです。

  • 劇画の歴史をたどれます。

  • 「劇画漂流」の方も読みたい。

  • 大阪の日の丸文庫をメーンにした
    貸本マンガ時代の話が中心
    あと神保町で「コミック・ドン」開店

    大阪時代の手塚訪問
    さいとうたかをらとの交友

    金が入るとすぐ飲み歩いて散財する(預かり金でも)
    さいとうが、大阪まで他人の原稿とりにいって、一緒に遊んでしまうとか
    318 大友克洋が穴あけ(パチンコ)て穴埋め依頼がきたり

    筆者で言えば、一時雑誌の発行も
    約束勘違いしていて一晩に50枚描くはめになったり
    アシスタント4人やとっていたり

    身長、高校で178あったそう
    手塚治虫と並んだ写真があったが、意外と手塚も大きい

    「劇画」と「マンガ」
    兄(桜井昌一)が、ストレプトマイシンで良くなる
    など、時代の流れを感じる中で
    自分も知っていた「コミック・ドン」の話がでてきて、なんかびっくり

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著者プロフィール

1935年大阪生まれ。漫画家。中学で手塚治虫に傾倒。高校2年時の作品「こどもじま」でデビュー。54年、大阪日の丸文庫に持ち込んだ「怪盗紳士」が採用となり、以後、主に日の丸文庫で活躍。従来のマンガに比べリアルな表現を追求、57年暮れ、その手法を「劇画」と名付ける。60年代後半にはメジャー雑誌を巻き込んだ「劇画ブーム」が起こるが、一方で本来の意味を失った「劇画」に幻滅。社会の底辺を描いた短編連作を手がけるようになる。これらの作品は発表当時こそ大きな反響はなかったものの、近年は国内外で評価され、仏アングレーム国際BDフェスティバル遺産賞、米ウィル・アイズナー賞、日本の手塚治虫文化賞大賞など受賞歴多数。主な著書は『劇画大学』『劇画漂流』など。

「2014年 『再び大阪が まんが大国に甦る日』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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