はるか南の海のかなたに愉快な本の大陸がある

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レビュー : 26
  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784860112295

作品紹介・あらすじ

学術本-それはエンターテインメントの宝庫だった。日本史、世界史から、民俗学に地誌学、はては宇宙論まで真剣なのになぜか楽しい、ボケてないのに面白い。宮田珠己がおくる脱力エッセイ的ブックガイド。

感想・レビュー・書評

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  • 宮田珠己さんのブックレビュー本が、おもしろくないわけがない!
    …ということで、手に取ってみたところ、期待を上回るおもしろさ、もうお腹いっぱいです。

    本書で取り上げる本のことを、宮田さんは前書きで「メガラニカ本」と呼んでいます。
    「メガラニカ本」、すなわち「幻想であれ史実であれ、そんな世界があったのか、とエキゾチックな嗜好を満たしてくれる本」のこと。(ただし超自然やスピリチュアル系は除く)
    どの本もかなり興味をそそられる内容なのですが、ただ棚に並んでいるだけだったら私は手に取らないだろうな~、という本ばかりなのです。
    宮田さんの本に対する嗅覚のよさにほれぼれ。

    さらに、紹介されている本に対する宮田さんのツッコミがすばらしすぎます。
    例えば、『完本 八犬伝の世界』(高田衛/著、筑摩書房)の紹介。
    この本では、八犬伝のストーリー中の言葉遊びやこじづけを取り上げ、詳細に読み説いていると紹介しています、。
    著者の説に対して、なるほど、辻褄は合っていると書いた上での次の一言が、「だから何なんだ」。
    いや~、笑いました。
    でも、そういったツッコミも、著者や本に敬意をこめてのツッコミだということがわかるからすてきなのです。
    ここでも、こういった言葉遊びの無意味さが「八犬伝や西遊記の荒唐無稽な面白さの秘密ではないか」と書かれていて、ついつい興味が惹かれてしまいます。
    1冊1冊のメガラニカ本に、宮田さんの愛着が感じられるのも本書の魅力の1つだと思いました。

  • 「タマキングこと宮田珠己さんの新刊はブックガイド」と聞きつけ、発売翌日に本屋さんで購入。お洒落な装丁と、ちょっとロマンチックなタイトルが素敵。

    人文社会・芸術などの学術本を、高尚な分析を抜きに「スットコ面白ネタ本(超自然は除く)」として読み、紹介する雑誌連載をまとめた本。連載でちびちび読んでいたときには「なんだかなー」としか思わなかったのですが…まとめて読んでみるとこれが面白い!宮田さんの好奇心の幅の広さはともかく、そのツッコミがまったくフツーの感覚でありながら、「そこに疑問を持ったら元も子もないでしょー」と本の根幹を揺るがすもので、ついつい笑ってしまうし、うなずいてしまう。木に羊がなるという「スキタイの子羊」の、伝聞が真面目な見聞記に変容する可笑しさや、四方を打ちつけた目なし船に乗せた僧を西海へ送り出す行「補陀落渡海」を、どれも真面目で深刻な本質が奥にあることをふまえつつ、軽やかに評する。特に後者は、私も井上靖『補陀落渡海記』を読んだときに、「なぜこんなに難儀というか、無茶苦茶な行が」と強烈に印象に残っていたので、「自殺のような旅行のような」と評されることに、妙に納得してしまった。

    本でとりあげられた論の運びや図版を「難しい話は苦手だ(まえがき)」とかわして、上っ面だけ楽しみ、へらへらと紹介していらっしゃるように見えるけれども、宮田さんはどの本もかなりきっちりと読みこんでいらっしゃるのではないか?と9割くらいの確信で私は思っている。じゃないと、こんなにヘンな本たちを的確に選べないし、嬉々として、しかもバランス良く紹介できない(笑)。

    こういったスットコ分析とは別に、ファンタジー小説の世界の良しあしを地図の出来から判断するという、宮田さんご自身の読み方も紹介されており、こちらも楽しかったです。そこは自分にはない視点で新鮮でした。あの和製中華ファンタジーはアカンのか、タマキング。

    こんなに面白い本たちに自分の目が届かなかった、あるいは知っていても手に取らなかったことに、半笑いしながらもちょっと悔しくなってしまう楽しい本で、この☆の数。下ネタもキワモノもトンデモも澄ました顔で読めるのが、学術本のいいところだ(と思う)!

  • タマキング、渾身の(#^.^#)脱力系書評集です。 本の雑誌で連載されていたものだけど、 よくもまぁ、こんなに面白い(とんでもないとも言う)本を発掘し、実際に足を使って購入し、と ホント尊敬しちゃいます!.
    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

    いいなぁ、宮田さん、大好きです!(#^.^#)

    宮田さんいわく、地理学や歴史学、民俗学、文化人類学などの周辺をうろうろする本、
    (つまり、かなり胡散臭いってことだよね)の中で気に入ったものを取り上げ紹介する本。
    でも、ムー大陸系じゃないよ、とこれは何度も出てくるので、スピリチュアルだったり、超自然的なものに対する確固たる線引きが宮田さんの中ではなされていて、それがまたカッコいいんですよ。

    たとえば、マルコ・ポーロの「東方見聞録」よりももっとでたらめで秀逸(#^.^#)であると太鼓判を押す
    「東方旅行記」。
    現代のイラクあたりに女人国アマゾンがあったり、
    身長30センチの人間が鶴(なんで鶴??(#^.^#))と戦う島、
    あまりの暑さに人体が溶解し、お尻が脛まで下がってしまうインド周辺の島・・・。

    奇想、空想、勘違いの一大ショーケースと絶賛(あはは・・!!)する目線がホント、可笑しくて、私のような実直な(大汗)人間には真似できないです。

    ホントか嘘か、という基準ではなくて、(だって、ホントじゃないのは決まってる!)いかに勘違いしているか、なぜそんなに出鱈目が書けちゃったのか、を上から目線ではなくて、心底面白がっている宮田さんがいいなぁ、ってそればっかりだけど。

    そうかと思うと、「お世継ぎの作り方」で江戸時代の武家社会の子づくりについて。
    下層武士は月に三日ほどしか登城せず、その他の余暇はセックスに費やされていた、むしろそれが本務だった。で、セックス過多で早死にする場合も少なくなかったから葉隠の「武士道とは死ぬこととみつけたり」の真意はこの1点にあった、という著者に ほんまかいな!と突っ込む宮田さん。(#^.^#)

    そう、しょっちゅう出てくるこういった段落最後の突っ込みが実にいいんですよ。

    宮田さんといえば、「石」なんだけど、
    日本国内約千か所を軽のワンボックスカーで三年かけて回り、石を訪ねた「日本石巡礼」を絶賛(これは文字通り(#^.^#))し、

    半端な情熱で出来ることじゃない。私も世界各地のジェットコースターを140機乗り倒して本を書いたことがあるけど、まったくくらべものにならん、もっとジェットコースターに乗らないとなぁ、とわが身を顧みて反省した。

    とくる!!(#^.^#) (#^.^#)
    反省の方向が違うんじゃないですか、と、これはもちろん本人もわかって書いているんだろうけど、
    このストンと落とす筆力(#^.^#) に、ただ脱帽。

    正直、ここで取り上げられた珍本たちを実際に読んでみたいか、と言われると、タマキングの解説のみでもうお腹いっぱいです、なんだけど、書評を読んで元気になる、生き方さえ楽になる、みたいな感覚を与えてくれる人ってそうはいないよなぁ、と心底思ってしまうんですよ。(#^.^#)

    ホント、面白い本でした。

  • 発売即購入していたのにいつものように放置して、やっと手にした。

    購入即読む本と購入安心放置本の分かれ道がどこかはわからないのだが、タマキングは圧倒的に後者となってしまう。
    読み終えるのが惜しいのか、別に読まなくてもいいやなのか、面白い本が手元にない時の保険としておきたいのかは自分でもよくわからない。

    『本の雑誌』連載中に一応全部読んでいるはずなのに、新鮮で面白いのは中身をキレイさっぱり忘れていたのだろう。
    「これ面白そう」「これ読みたい」とチェックしつつも、タマキングがこう読んだならその感想(書評)だけで満足だからもう読まなくてもいいかとも思ってしまう困ったブックガイドです。

    タイトルに★★★★★

  • なんかおもしろそうな学術書を、これ笑える、という視点で紹介していく本エッセイで読みたい本がどっさり増えてしまって困った。頭のいい人ってやっぱりへんなひとがおおいですね!

  • せっかくおすすめしてくれた本の中で私も読みたいってなったのはなかったけど、この本自体はおもしろかったです。

  • 南半球に存在すると信じられたメガラニカという大陸にちなんで、
    幻想、史実問わず、そんな世界があったのかーという本を集めたという本書『はるか南の海のかなたに愉快な本の大陸がある』を読みました。

    人文書が中心ですが、確かに変わった本が多くて、よくわからない本もある。

    ただ、価値観を根底から覆してくるような本が結構あって読んでいてたびたび「何!?」となりました。

    以下で、面白かったものをいくつかピックアップして紹介していきます。

    ーーーーーーー

    『アボリジニの世界』

    「人間のDNAを分析するとアフリカの一人の女性に行きつくが、アボリジニだけはその女性に行きつかない」という話が書かれている。

    アボリジニは他の民族とは根本的に異なる風習を持つことも多いそうで、性交を他人に子供に見せるのを良しとしたり、時間という概念がなかったりするらしい。


    ーーーーーーー

    『隠れキリシタンの聖画』

    江戸期の隠れキリシタンたちの信仰が、もはや元々のキリスト教の教義とかなり違ってしまったことや、ヨハネの掛け絵を日本風にアレンジして変な感じになった話など、があげられる、

    隠れキリシタンたちはキリスト教の根本になる唯一神の概念まで変化していて、多神教に近いところまで行っていたというから驚きだ。


    ーーーーーーー

    『夜這いの民俗学』

    昔のムラ社会では、夜這いが盛んだったので、誰の子かわからない子が生まれたりすることはよくあったが、それを深刻に考えるものはいなかったという。

    母親同士が相談して、あんたのムスコはうちがオトコにするから、うちのムスコはあんたがオトコにしたって、みたいなのも意外と多かったという。


    ーーーーーーー

    『中世の借金事情』

    一般にキリスト教は利子を禁じているが、中世でも利子付きの貸し借りはあった。

    今と違うのは、一定額まで利子が増えると、それ以降は増殖しなかったということだ。だいたい元金の2倍くらいで止まったそうだ。

    もしかして、これ理想的なんじゃ・・・

    ちなみに日本はというと、鎌倉時代は10年で借金帳消しのルールだったらしい。

    これは驚きだが、意外と踏み倒す人は少なかったようで、人間関係をリセットしていきなおせる時代ではなかったからとのこと。

    そういえば、今も飲み屋のツケとかは5年くらいで時効なんだけっか。いつの世も払う人は払うし払わない人は払わないということでしょうか。


    ーーーーーーー

    『狂気の起源を求めて』

    パプアニューギニアの高地の民族では、村の誰かがけがさせられたり、豚を殺されたりすると、加害者のむらの者に復讐したが、その復讐の対象はその村のモノならだれでもよかったらしい。

    なるほど、確かにムラ対ムラと考えればそれで成立するのか。
    すごいな、究極のムラ社会やん。
    でも、急にとなりのむらの人どなりこんできたりするの怖い。

    もうひとつ面白かったのが、積み荷崇拝という信仰。

    いつしか、ヨーロッパ人の持つ優れた富は実は自分たちの祖先のモノだと言い出す宗教指導者が出てきて、いつしかそれを飛行機で運んでくるだろう。という信仰。白人は祖先が姿を変えてやってきたという信仰になったらしい。

    知らぬ間に先祖にされた白人はさぞびっくりしたと思う。


    ーーーーーーー

    『動物裁判』

    中世ヨーロッパでは、人に危害を加えた動物たちに対し、裁判が行われたしい。
    よく訴えられたのは豚で、急に暴れて子供殺したりがあったらしい。
    で、告訴があれば出頭を命じられ、応じなければ欠席裁判でちゃんと弁護人をつけて、生存権や土地所有権を主張して争われたという。

    何やってんねんという感じだが、街に出てきて裁判なしで打たれてるクマとかみると、動物たちにとっては現在よりも生きやすいのかもしれない。


    ーーーーーーー

    『奴隷になったイギリス人の話』

    モロッコあたりの海上では海賊により船員が拉致られ、奴隷とされるケースが良く怒っていたらしい。

    白人奴隷たちは改宗を命じられるが、これに応じると少し対偶が良くなったらしい。しかし、改宗者は、祖国からの開放要求時のリストから除外される。

    この苦渋の選択のジレンマ。自分だったらどっち取るだろうかと考えさせられた。


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    『戦場の精神史』

    戦国時代の武士はフェアプレイの精神なんてまったくなかったそうだ。
    上杉謙信が敵に塩を送ったのも嘘で、だまし討ちは美談として奨励されたという。

    嘘はいけないと書いてある書物はあるが、それは、
    「何時も嘘をつくと肝心のときに敵が騙されないから」だという。
    裏切りなどは人生で2-3回にしなさいということらしい。

    で、武士道みたいな話は平和になってから後付で作られた空想の産物だという。
    なるほどなあと思う。

    ーーーーーーー

    『お天道様で読む戦国時代』

    日本ではお天道様って結局何なのかよくわからないけど、みんあそれをスルーして受け入れている。このあいまいさが宗教対立を避けたという説。

    ちなみに、数ある宗教の中で、キリスト教だけがなぜ禁止されたのかというと、排他的な教義のためだったという。

    ほかの宗教は多神教の紙が一つ増えるだけなので特に問題なかったが、キリスト教はほかの宗教を邪教と呼んで排他しようとしたため禁止されたという。

    もしもイスラム教とかはいってたらとんでもないことになってそうだと思いました。


    =======

    本書を読むと価値感というか、自分の世界観が普段意識しない方向に広がりました!
    オススメです!

  • 世間に対して斜に構える人、ゲテモノ好き、アマノジャクな方ならば知的好奇心をそそられる数々の書評集です。

    特に「補陀落渡海」の話など、中世の日本人のシュールさには心底参りました。

  • 本を読むとき、どうしても趣味に影響される。
    どんな展開の話が好きか
    どんな文章が好きか
    どんな背景を持つ話なのか

    この本は、読んだ本の作家さんのお友達という
    初めて読んだ作家さんだが、
    その作家さんが好きな本を紹介する内容。

    といっても、今まで読んだ書評とは全く違って
    違いすぎて愉快なくらい!

    『トンデモ本』というジャンルがあるなら
    きっとこの推薦図書の中には、きっとその類が多いと思う。

    『インドの不思議』魅惑的嘘八百という副題
    『スキタイの子羊』羊が生えてくる木があるという〜
    『アボリジニの不思議な世界』穏やかな印象を変えちゃう
    『中世の東海道をゆく』
    『戦場の精神史』なんかだめじゃん?な武士の世界
    『アマゾン文明の研究』
    『『江戸知識人と地図』
    『庶民に愛された地獄信仰の謎』
    『17世紀のオランダ人が見た日本』
    その他

    学術的価値のある作品から、
    行ったことのないのに書いてるみたいな
    眉唾ながら、そのあまりに勘違いが
    かえって面白いみたいなものまで。

    参考に読んでみると、面白そうな本多数!
    読書の本棚に毛色の違った一冊を。

  • 堅苦しい書評をお探しの方には不向きです。ポーカーフェイスと腹筋に自信のない方は電車の中での読書にご注意を。この本を読んだせいで更に本代が嵩んでも、クレームは受け付けません。悪しからずご了承ください。
    (ドゥンヤザード・S)

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