本で床は抜けるのか

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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784860112677

感想・レビュー・書評

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  • 本で床は…抜けますね。
    しかし、本で床は抜けるのかというテーマで1冊がまとめられることがスゴイ。そしてそれが出版されることがすごい。本で床が抜ける心配をしている人がそんなにいるんですね。
    著者は、床は抜けなかったけど、妻と娘に籍を抜かれました。物質としての本が、人をどんなに追い詰めるか、取材先の誰より、著者の経験が重いと思いました。

  • 書痴というのは業の深い生き物だなあと…( ̄◇ ̄;)。

    私は乱読で、読書はエンターテインメント!と公言している人間。大した蔵書でもないけど、それでも引越しの度に蔵書の処理をする苦労、ちょっとは判る。

    作者の蔵書は約2000冊。これを電子化するか、処分するしかない訳だけど、どっちもイヤでずるずる引き延ばしているうち、遂に妻子が出て行ってしまう。泣く泣く一人暮らしのため、蔵書処分。大半を電子化。本好きの目線からはなかなか胸が苦しくなるエピソードだけど、女の目線から見ると、いかにもロマンチストな男性らしい行動で、苦笑も禁じ得ない。

    私は人生初の引越(実家→ワンルーム)で、約700冊を処分。実家には1冊たりとも残すなとの母の厳命により、半分を古本屋へ、半分を持って家移りした。その後も何度か引越を重ね、だいたい蔵書量は400〜500冊に留めるようになった。マイルールは、本棚のキャパを超えたら売る、本棚には横置きしない、ハードカバーは購入しない、の3点。そして、図書館の向かいに終の住処としてマンションを購入した。図書館にある本は個人蔵する必要なし!

    まあ作者はライターなので、図書館にない資料をしこたま必要とする。処分したら2度と入手できないものも多いだろう。それでもやっぱり、もっと早く整理していれば奥さん出て行かなかったよなあ…と感じるのでした。

    個人的に、読みやすさは電子書籍より断然紙媒体の方が上、という意見には全面賛成。iBooksはもう利用してるし、いつかiPadは買う気がするけど、利用はせいぜいマンガとエッセイくらいかな。キングとか宮部みゆきとかの長編は、電子版で読んだらつまんなさそうだなあ…。そして図書館の書棚を徘徊し、本屋の平台をチェックする楽しみは、何物にも代え難い!

    てことで、なかなか他人事でないドキュメンタリーでした。面白かったし、我が身に当てはめていろいろ考えさせられました。吹き抜けの書庫、うらやましいなあ…。

  • 床抜けも危機だが、この展開には参りました。

  • 本で床は抜けまーす!

    前に[「あなたの本好き、病気じゃないですか?」](https://shimirubon.jp/columns/1674261)というコラムを書いたことがあります。
     その中で、本をあまりたくさん溜めこみすぎるのはまずいと反省し、蔵書の一部を処分したことを書きました。その後も気をつけていて、これまでのように書店で見つけた本を衝動買いすることは控えるようになりました。衝動買いしちゃった本って、買っただけで満足して、読まずに積み上げたままになることが多いんですよね(笑)。おかげで、毎月、本の購入にかかっていた出費が、かなり減りました。
     ところがですね、つい先日、久しぶりにやっちゃったんですよ、書店で見つけた本の衝動買い。
     だって、こんなタイトルの本を見かけたら、買わずにはいられないでしょう!?



    :book:386192:本で床は抜けるのか:


     タイトル通り、「本で床が抜ける」ということについて、徹底的に調査し、考察した本です。
     著者の西牟田靖さんはノンフィクション作家。2012年、それまで仕事場に使っていた鉄筋三階建てのシェアハウスから、木造二階建て四畳半のアパート(築50年)に引っ越しました。しかし、運びこんだ大量の本が床を埋め尽くし、足の踏み場もなくなったことから、「床が抜けるのでは」という不安にかられます。
     そこでツイッターやフェイスブックに、こんな文章を書きこみました。

    > 【緩募】よく「本の重みで床が抜ける」という話をききますが、実際に体験した人に会ったことがありません。もし実際に経験した人、観たことがある人がいたら連絡ください。(後略)

     するとたちまち反応が。〈当時いた2階の部屋の床は抜きました〉〈家が傾いたことがあります〉〈父の兄の嫁さんがぶち抜きました〉といった報告が次々に寄せられたのです。新聞を調べると、床が抜けたせいで住人が負傷した事件も何件もあったことが判明。どうも本で床が抜けることは、日本各地で起きているらしいんです。
     著者は本格的な調査を開始します。たとえば床はどれぐらいの重みに耐えられるのかを建築士に訊ねます。一般的な住宅の積載荷重は1平方mあたり180kgだとか。畳半畳で144kgぐらいですか。ちょっと本を積み上げたら、あっさり超えてしまいそうな数値です。
     実際に床を抜いてしまった人たちにも取材します。アパートの床を抜いてしまった人は、数百万円の弁済金を払わなくてはならず、いっぺんに貧乏になってしまったとか。お気の毒……と言いたいところですが、よく考えたら自業自得ですね。
     さらに著者は、東日本大震災の時に、蔵書家の自宅や図書館にどんな被害があったかも調査します。このへんは僕も他人事じゃありません。1995年の阪神淡路大震災の時に、本棚が7つ倒れて数百冊の本が散乱し、復旧するのに何日もかかりましたから。
     また、蔵書家が亡くなった時に、その本を遺族がどうやって処分すればいいのかという話。どこかに寄贈するにせよ、古書店にまとめて売るにせよ、かなりの手間がかかります。遺族にとっては頭の痛い問題です。
     そして、必然的に出てくる「自炊」をめぐる問題。
     作家の中には、自炊代行業に強く反対している人も多いです。確かに本を丸ごと電子データにコピーするというのは、著作権法的におおいに問題はあります。
     ただ僕は、自炊を代行して欲しい人の心理も分かっちゃうので、やみくもに反対もしたくないんですよね。家が広くて、本の収容能力にまだ余裕があるなら、自炊は必要ないはず。それに、本の冊数がそんなに多くなければ、自分の手で少しずつ自炊するでしょう。それなのに他人に代行を頼む人というのは、何千何万冊もの本を所有しており、なおかつ急を要する事態──早く蔵書を電子化しないと、まもなく床が抜けてしまうような状態にまで追い詰められてるんじゃないかと思えるんです。
     自炊代行が禁じられているために、本の重みで床が抜けてしまう人がいるかもしれません。床が危険な状態になっている人に関しては、特例として認めてあげてもいいような気がします。著作権よりも人命の保護の方が優先事項でしょうから。

     ちなみに著者は、この本の執筆中に離婚しているそうです。妻との関係が壊れた一因は、やはり本が多すぎたことだとか。
     僕も本が好きです。でも、酒を飲みすぎると害になるように、本も多すぎると害になるということも事実です。本によって人間関係が壊れたり、床が抜けて負傷したり、あるいは大損害を出して貧乏になったりする前に、増加する本のことを真剣に考えなくちゃいけないんじゃないでしょうか。
     ちなみに、僕の仕事場は鉄筋なので床が抜ける心配はないんですが、木製の本棚が壊れかけてきてるんですよねえ。うーん、やっぱり1段に2列の本を並べちゃだめなのか……。

  • タイトル通り、本当に『本で床は抜けるのか』がちゃんと取材して、体験談をもらって検証していく感じでした。
    抜けない人もいれば、本当に床が抜ける人も様々…。さすがに建築士の方や施工業者の方のお話があって、個人的に面白かったです。
    結果的に電子書籍に出来るものはそちらに移行して、お気に入りで持ちたい作品は、紙媒体で持っているのが良いんだなって思いました。持ちすぎは床や家にも悪いし、紙媒体が好きな人々にはかなり苦渋の選択ではあると思うです…特に好きな作品とか。そういう所も考えさせられる良い機会だなって痛感しました。

  •  蔵書で床が抜けかけたライターが本当に本で床が抜けた人がいるのかに始まり、多すぎる蔵書を巡る様々な取材に出る。

     本が増え過ぎたらどうすればいいのか。本好きなら誰もが考えたことがある課題だろう。取材で出てくる人は作家やライターの方々で、読むというより資料として何千、何万の本がたまっているケースが大半なのだが、なぜか他人事のような気がしない。
     自炊による電子化や本格的な書庫の建造、亡くなった後に資料館として残された著名人の蔵書など、多岐に渡り本棚を巡る話題が続いていく。その一つ一つのエピソードから多すぎる蔵書の所有者達の人生が見えてくるのが面白い。作者の最後のエピソードも含めて、つくづく本棚というのは人生なんだなぁと思う。

     「電子書籍は紙の本にかなわないからやっぱり本がいいよ」なんて簡単に言う人も必ずこの本読んでほしい。

     本好きは必ず本棚にこの本を入れておこう!

  • 唯一無二(?)の本の床抜け本。
    後半怒涛の展開が。

  • たまに見かけるニュースの
    建物が重みで…というあれ。
    あれは本当にあるのか。

    まぁニュースになるぐらいですから
    珍しいものではあると思います。
    呼びかけたら、結構数があつまったようですし。

    題名が題名なので、その話が延々あるのか、と思ったら
    そうでもなかったです。
    抜けないためにどうすればいいか、から始まり
    どう書斎(?)を建てればいいのか。
    そして最後は…何だか悲しい現実がまっていました。
    本が崩壊、ではなく…。

  • 自分も本の整理にはつねづね悩んでいて、その都度売ったり処分したり自炊したりしているのだけど、そこまで手間と時間と場所とお金をかけてまで所有しなければいけないものかとかいろいろ考えてたところにこの本。
    …いやぁ自分まだまだ甘かったです。
    世の中人生まで変わってしまうひともいるのです。

    本って物以上のなにかがあるから悩ましいですね。

  •  本というモノの物理的なチカラを感じる。
     なんつーか。付喪神化してませんかあなたたち。
     ヒトにチカラを与えることもあれば、束縛する鎖ともなるし、命綱ですらあるような気もする。本についての本。これは面白い。

     でも、活字中毒の身としては、地下書庫のある家は憧れる!

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著者プロフィール

フリーライター。1970年(昭和45年)大阪生まれ。旅・現場・実感にこだわった作品を発表し続けてきた。近年取り組んでいるテーマは、日本が抱える国境離島の問題と防衛のあり方、さまざまな親子のかたちと共同親権、入管法改正案や移民の是非など。こうした賛否の分かれる国内の政治的な課題について、イデオロギーに追随しない、まっすぐで公平な取材・執筆にこだわっている。旧日本領のその後を訪ね歩いたルポ『僕の見た「大日本帝国」』(2005年、情報センター出版局)、書斎の床が本で埋まった体験を出発点に本と人の共存を考えた『本で床は抜けるのか』(2015年、本の雑誌社)、爆発的な経済成長を遂げた中国を四半世紀ぶりに回った『中国の「爆速」成長を歩く』(2020年、イースト・プレス)など話題作多数。

「2023年 『誰も国境を知らない 令和版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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