着せる女

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感想 : 28
  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784860114398

作品紹介・あらすじ

高野秀行さんや宮田珠己さんなど、どんな服を着ていいのかわからない友人・知人とともにメンズアパレルショップで服選び。すっかり変身するビフォア・アフターの様子に大感動! 服選びの基本がここに。

感想・レビュー・書評

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  • もう最高!ケラケラ笑いながら読んだ。「本の雑誌」での連載時はもっと長かったと思うが、一番面白いところをうまくまとめてある。タマキングや高野さんの変身ぶりなど「素材」が傑作なのは言うまでもないけれど、やはりこの楽しさは内澤さんの文章の力だろう。イキオイがあって小気味がよく、私としては三浦しをんさんのエッセイと双璧の好ましさ。前著「ストーカー戦争」はあまりにリアルで読むのがつらかったが(あ、でもたくさんの人に読んでほしい一冊です!)、これは心から楽しめた。

    「本の雑誌」炎の編集杉江さんのスーツ姿を見た娘さんが「お父さん、岡田准一みたい」と言ったそうだが、それを読んだ高野さんがツイッターで「バーニーズのスーツには幻覚作用があるのか」と書いていた(笑)

    男性陣のスーツ話がほとんどなのだけど、時折言及される女性のファッションについての指摘にもうなずけるところが多々あった。ほんと、中年以上の女性が「きちんとした服」を着ようとすると「PTAおばさん」になってしまいがち。内澤さんの言うとおり、イギリスのメイ首相(当時)とか、上野千鶴子さんとか、「きちんとしつつオシャレで、貫禄を感じさせる」お洋服をお召しなのだ。高いものも(いやまあ買えないんだけど)安いものも何着ても似合わないトシになっちゃって、もう何着ていいかわかんないや!と思う今日この頃、まったくスーツをちゃんと選ぶだけで大変身できる男性はうらやましい限り。

  • まさに一気読み。ものすごくおもしろかった。
    服装に無頓着な中年男子に似合うスーツをつくらせる、って話だけど、スーツ買にいってスーツ売り場の達人みたいな人が一式コーディネートしていくさまを文字で読んでるだけなのに、ものすごおおくわくわくする。この高揚感はいったいなに?っていうくらい。これぞ著者内澤旬子さんの筆力?
    コーディネイトされる人たち、例えば高野秀行さん、宮田珠己さんのキャラが素敵っていうのもある。宮田さんがえんじ色をこんなカサブタの色??って言ったり、しわ加工のシャツを前に、こんなシワシワでいいの?!って言ったりするのはもはや、かわいい!って感じで笑える。
    もちろん、スーツについてあれやこれや奥深い知識も得られるし、スーツ着ない女性でもファッションアドバイス的に読めるところもたくさんあって楽しい。おまけに、内澤さんが直面している中年女性のなに着ていいかわからないって悩みも出てきて共感しまくったりもする。
    ちょっと「クィア・アイ」ってアメリカのいわゆる変身番組を思い出したりもした。あくまで押し付けるんじゃなくて、どんな感じが好きなのか? どんなふうになりたいのか? っていうのを本人にきくところからはじめて、スーツに腰が引けてる人に自信をもたせるような感じなのもいいなあと。
    人の目なんて気にせず自分が着たいものを着ればいいってのも一理あるけれども、社会で生きていくうえでは自分が人にどう見られたいか、どういうふうに自分の立ち位置を表すかっていうようなことも大切だっていうのとか、「服装」との向き合い方、みたいなことを考えさせられるところもあって、そういうのもすごくよかった。

    そして、なんでかよくわからないんだけど、スーツつくるのにすべて同行した編集の杉江さんはじめ、みずからもスーツつくった「本の雑誌社」社長浜本さん含め、こんな本をつくってくれた「本の雑誌社」すごい!と思って、なんというか「本の雑誌社」への愛がめばえたような。まあ今までだって好きな出版社だったけど、これから特別に応援していきます!みたいな気持ちになった。

    もっと読みたいので、続編とか女性編とかなんでもいいけどまた出してほしいー。

  • 作家でイラストレーターでもある著者が、作家仲間、編集者、カメラマン、の一張羅を見立ててあげるドキュメントエッセイ。
    著者のスーツへの思いと熱量が半端ない。また、本書の陰の主役ともいえるバーニーズニューヨークのフィッターの人の神業ぶりの描写もすばらしい。
    口絵で各人のビフォーアフターが紹介されているので、本文と併せて参照することで、各人のファッションポイントもビジュアルで理解できるのもGood。

    そして、誰にも似合うスーツは必ずある、という一言は心強い。
    できれば著者に私のスーツ選びにもぜひ同行してもらいたい。そして、これからは町中、あるいはテレビ等でスーツ着ている人への見方が変わる、と思った。

  • 誰かに何かをすすめるすべての職業の人にすすめたい。
    内澤さんが自分の周りのパッとしない服装の男性たちと一緒に素敵なスーツを買いに行く話なのであるが、すこぶるつきのおもしろさだった。ビフォアアフターの写真があるのもよい。スーツってかっこいいなあ。
    何よりも、内澤さんがいちばん頼りにしていちばん多く登場するバーニーズニューヨークのフィッターである鴨田さんがすごい。どうでもいいことだが巻末に対談があって、顔写真が乗っているのだがイメージしていたのと全然違う感じの人だった。もっと落ち着いた感じの年も上の感じだろうと想像していた。
    彼のことばが文頭に書いたことにつながる。
    どうやって仕事を覚えて、技術を身につけてきたのかという話の中で、例えば採寸をするのに、研修はもちろんある、でも研修で学ぶのは知識であって技術にはならない。「手を動かしてお客様のお身体に触れてメジャーで測って、はじめて身に付くものです。」とか、鴨田さんは自分のフィッティングの技術が他の人より特別優っているわけではない、違うとしたら話術だと思う、と。「スーツに関して正しい知識をあまりお持ちでない方に対してちゃんとしたご案内をするためには、今までと同様のご案内方法ではダメなんだと思ってます。ある程度お客様にもお洋服を知っていただくために、きちんとお話できるようにならなければならない。そのために必要な表現方法とか知識というものを技術とは別に持ち合わせてないといけない」と。これは、ほかの職業、とくに我々にも当てはまることだと膝を強く打ったのだ。
    何かの書評にも書いてあったのだが、自分が理想とするスーツの雰囲気を出版社で表すとこが、分かる分かる!となる。

  • 《「スーツを着るのは窮屈な人生」みたいな思い込みはさっさと捨てて、能動的にスーツを着こなす大人になるほうが、ずっとかっこいいと思うのだが。》(p.274)

    《「ほわあ……」杉江さんの顔が照れとうれしさで変な風に綻んでいる。無理もない。だって足も長く見えるし、背丈だって、まったく低くみえないし。背中のラインも綺麗に見えてる。カッコイイよ、感無量だ。》(p.187)

    《「似合うスーツを着せてもらったら、スーツの方がカッコイイし、仕事をしている今の自分に、合っている。取引先でも楽に振舞えるし。というわけで一気にこれまでのやせ我慢が崩れたんです。もっとスーツ着たいです」》(p.224)

    《「おかげさまでオンラインショップが蔓延しても、スーツだけはどうにもならないので、商売が成り立っています」
     まさに!! 生地のテクスチャーと顔との相性ってのは、CMYKでもRGBでも再現できない。あ、高そう!(すみません下品で)という生地感というのは、どうにも再現できないのだ。》(p.246)

    《もちろん一般人が、謝罪の相手や内容にもよるけれど、そこまで気を遣う必要はないとは思う。思うんだけれども、この数年の謝罪会見ラッシュで、私たちは無駄に謝罪を見る目を肥やしてしまっているようにも思える。なんだか窮屈な世の中になって嫌だけれど、時代の趨勢に抗って、謝罪相手に不機嫌になられてしまっては、大いに困る。男性が謝罪をする場合には、ダークスーツを着ておくのがどう考えても無難であろう。》(p.266)

    《鴨田 答えがあるって言うとおおげさになっちゃいますが、何か一つ着地点を見つけなければいけないって言った方がいいですかね。スーツはあえて大きめに着たり小さめに着たりすることを良しとはしないものだと思っています。》(p.299)

  • 萌える(笑)
    文章だけでもテンションがわかる。
    スーツ好きの女史が
    身近な男性のスーツ選びに帯同した記録。

    業界の、普段はラフな服が多い人たちが
    プロのサポートでスーツを着たら
    あら、まぁ、見違えちゃった!

    個人的にはイタリアンより
    ブリティッシュが好き。
    しかし、著者も言ってるけど
    いいものはケタが違うよね…。

  • 本書の初出は、活字中毒者の愛読書「本の雑誌」の連載企画「着せ替えの手帖」。メンズファッションウォッチャーの著者が付添人となり、ファッションに疎い出版業界の7名が【至高の一着に出会い魅惑の変身を遂げる』企画。

    そこに頻出するメンズファッション用語。
    例えば〈段返り〉〈ドロップ〉〈本切羽〉…、意味どころかどう読みゃあいいの?って、読者の大半は思ったはず。僕は高1からメンズクラブを読んでるから理論武装はばっちりだけど、「服買うお金があれば躊躇なく本」を選ぶ読者をつかまえてのこのファッション企画はどう考えたって異質&異端な光を放つ。

    当企画は著者が懇意にしている作家 宮田珠己からテレビ出演時の服装相談を受けたことが端緒となる。続いてノンフィクション作家 高野秀行からは受賞パーティー時の服装相談を受ける。ただこの段階では本の雑誌側もまさか大化けする企画に変貌を遂げるとは微塵も思っていなかったんでは…。

    さて作家先生のおふたり。
    アイロンかけなきゃいけないから…という理由でシャツはNG、タートルネック愛用の宮田氏、秘境探検にはスーツは無用の長物の高野氏。そんなご両名がスーツに着替えれば、見違えるばかりのエエ男。「男性のスーツフェチ」著者はあらためてスーツパワーに魅了されるとともに、そんなふたりを見事に変身させたのはスーツソムリエ〈バーニーズニューヨーク銀座店フィッター鴨田氏」の凄腕にただただ刮目する著者。ごくごく普通の中年をシュッとしたスーツジェントルマンに変身させるんですから…。

    該博な知識を背景に、イメージしやすく、ウザくなく、キザにに流れず簡潔な言葉で希釈した見事なプレゼンテーション。

    以後「あの野暮ったい宮田さんや高野さんがあんなにスタイリッシュになった!」という事実を前にひれ伏さんばかりの編集者が、マエストロ鴨田の前に居並ぶ。

    本書を1/3ぐらい読み進め、これは〈1着のスーツをめぐる冒険譚〉というドキュメンタリーであることに気づく。鴨田氏のプロポーザルは体型はもちろんのこと、スーツ新調の目的、ファッション感や遍歴も加味し数着用意。そこから試着とシャツやネクタイとのコーデを重ねベストな1着に至る。

    このドキュメントにライブ感を与えるのは著者の毒気フレーバーがトッピングされたツッコミが、before/afterの見事なコントラストに色を添える。

    本書に登場した7名のおじさんたち、皆驚嘆に値するほどカッコ良く、セクシーにキュートにダンディに生まれ変わる。

    そうそう、この「魅惑の変身」企画、あくまでもスーツ費用は自己負担。本の雑誌社長 浜本氏はスーツ〜靴まで総額30万円超の大人買い。

    本書巻頭グラビアにはbefore/afterの画像を掲載。これを見れば、たかがスーツとは口が裂けても言えない。

    スーツの世界は奥深く、哲学が備わり、高価なスーツには身体を美しく見せるための巧緻な仕掛けが施されていることを再認識。無性にパリッとしたスーツを新調したくなり、悶々としています。

  • 2021/11/19

  • 中高年ファッション弱者の心の声をよくぞ代弁してくれた本。
    「服を買いに行くための服がない」に深い肯きしかなかった。

  • 資料ID:593.3/U25
    請求番号:1067560


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著者プロフィール

1967年生まれ。神奈川県出身。文筆家、イラストレーター。緻密な画風と旺盛な行動力を持つ。異文化、建築、書籍、屠畜などをテーマに、日本各地・世界各国の図書館、印刷所、トイレなどのさまざまな「現場」を取材し、イラストと文章で見せる手法に独自の観察眼が光る。2011年、『身体のいいなり』(朝日新聞出版社、のち朝日文庫)で第27回講談社エッセイ賞を受賞。他に『世界屠畜紀行』(角川文庫)、『ストーカーとの七〇〇日戦争』(文藝春秋)、『着せる女』(本の雑誌社)など多数。

「2021年 『飼い喰い 三匹の豚とわたし』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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