本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
本 ・本 (320ページ) / ISBN・EAN: 9784860114398
作品紹介・あらすじ
大改造!! 服的ビフォーアフター
ああー にほんのー どこーか にー
あなたにー 似合ってるー スーツが あるー。
メンズファッションウォッチャーの内澤旬子が、服屋に行くのが、面倒くさい、怖くて入れないーーそもそも服を買いに行く服すらない!?友人知人の中年男性たちを、スーツ・ソムリエの力を借りながらシュッとカッコイイジェントルマンに変貌させる、スーツ・マジック・エッセイ!
「本の雑誌」の大人気連載が、ビフォーアフター姿をカラーグラビアで堂々掲載の上、待望の単行本化!
感想・レビュー・書評
-
コンセプトは良いと思った。
「(ヨーロッパは顔のでかい樽みたいなオヤジでも、スーツをかっこよく着ている人は山ほどいるのに)日本では、ピシッとかっこよく着ている人はとても少ない。昔の日本映画を観て愕然とした。みんなちゃんとスーツ似合ってる。何が違うんだ?」
体型の問題じゃない。なんなのだろう。本書はそうやって「かっこいい」を追い求める。
ahddamsさんのレビューで、探検ノンフィクション作家・高野秀行が大変身していると聞いて紐解いた。てっきり写真集かと思いきや、ガッツリ300ページもある専門書?だった。
恋人でもない、家族でもない、友人というだけの女が、あれやこれやと衣服に頓着しない男(←私だ。衣服に使う費用は年間総費用の0.5%-1%)の普段着をこき下ろし、着せ替え人形化する話である。暫くして読むのが苦痛になってきた。第一、服の名称がわからない。第二、内澤旬子さんの「かっこいい」の基準がわからない。
第一段が宮田珠巳さんで、第二段が高野秀行さんのようだ。せめて第二段までは行こうと、我慢して読み進める。
ええ!?赤のパンツにするの?似合うの?ようわからん!写真見ても似合うかどうかわからんかった。先行き不安。
さて、高野秀行だ。講談社ノンフィクション賞受賞会場で着る服だそうだ。フォーマルなのかよ。私服のセレクトじゃないのかよ。その時点で、姪の結婚式にもダブダブのだらし内閣ならぬだらしスーツを着て行ったわたしは、あまり参考にならないのでは?と身構えた。ただ、このときに鴨田さん(バーニーズ ニューヨーク六本木店)のスーツソムリエたるプレゼンが登場するのである。
ぴったり合わせば大胸筋が目立ち、腹が引っ込むのは当然として、足が長く見えるのか!!こ、これは確かに魅力的。でも、オーダメイドでもなく、お買い得と言いながら15万円前後。遠い目‥‥。
というところで宮田さんが、テレビ映り用の着こなしを試しだした。フォーマルじゃない!ここで止める予定だったのにズルズルと読み始める。
お、こんなんでテレビに出れるのか。臙脂色のジャケットと白のシャツ、参考になります。
断捨離コーナーに入ると、再び読むのが嫌になってくる。わたしも30年来服を捨ててない。どんどん捨てまくる内澤旬子に(自粛用語)さえ覚える。
本の雑誌編集長のお話は、参考にも何もならないのでカット。
高野秀行さんの本にちょくちょく登場するカメラマンの森清さんの服選び。うーむ、このノーネクタイのスーツがなぜ「胸元の開き方に、やりすぎ感なし。いやらしくなく、程よくセクシー」なのか、さっぱりわからない。詳し過ぎるほど説明しているんだけど、さっぱりわからない。でも、ネクタイしちゃいけないシャツは実際の首周りより1センチ小さいのを選ぶというのは覚えておこう。でも流行で裾丈を選ぶのは納得いかない。流行も何も、わたしは40年前から短めでっせ。
ここで内澤旬子は、「体型だけでいうと、腰の締まった高野秀行がセクシーなのに、(ウエストがそれほど締まっていない)森清の方が色気がある」という、またもや謎の言葉を発する。なんだよ、それ。写真じゃ全然わからんよ。「袖口って、色気の溜まり場なんだなあ」って、色気ってなんだよ!!
「シンプルなのに華やかで目立つっていうのは、お洒落の王道である」ふーん、そうなんかい。で、それが写真の浜本さん(本の雑誌社社長)のスーツなわけか。デブじゃないけど、十分初老のハゲのおじさんが、スッキリ見せるスーツを、流石鴨田さん、見事に選んでいる。正直、浜本さんが1番私の体型に似ている。コレは流石に写真のビフォア・アフターがハッキリしている。見違えるとはこういう事を言うのだろう。社長も、吉永小百合と一緒に金屏風でツーショットを撮るのだと張り切ってる。洋服の青山で、これぐらいのを選べないかなぁ。
この日は同時に本書編集者の杉江さんのスーツ選びも兼ねているという。奥様に「若い女の子と浮気か」と呟かせたというから、うーむ鴨田マジック恐るべし。
最後に鴨田&内澤対談があって、2013年から2019年にわたるメンズ着せ替え企画のお店側からの裏話が聞ける。高野秀行は逆三角形の筋肉質で、合わせやすいのかと思いきや「癖だらけ」で難しかったと言う。いろいろと物事を極めるのは大変なんだとわかった。そして物事の極意は、現場でしか身につかない。何故ならば、たくさん失敗してたくさんお詫びして身につくものだから。尤も、殆どは私なんかとは縁がないビミョーなところに極意があるのだろう。と思った所で「あとがき」に恐ろしいことが書かれていた。
「この本を手にとって読んでみても、スーツの知識についてはほんの入り口程度のことしか出てきません。お洒落初心者がビビってウンザリしないように少な目に書いた。鴨田さんはこの何十倍も教えてくださいました」
ぐぐぅ、最後まで「かっこいい」の意味がわからなかった読者の感想でした。
結局、すぐ投げ出すと言いながら、最後まで読んでしまった。内澤マジック恐るべし。 -
ブク友の皆様、新年あけましておめでとうございます!本年もどうぞ、宜しくお願い致します。
2025年 記念すべき第1冊目は、高野秀行氏の貴重なスーツスタイルが拝める『着せる女』。
メンズファッション、とりわけスーツに関しては、知識どころか興味もゼロに近かった。去年発足した「だらし内閣」を見るまでは…。
あの組閣写真の衝撃は、未だに脳裏に強く焼き付いている。試着もせずに、サイズの大きい既製品の服をそのまま着たような内閣総理大臣及び他大臣。締まりのない表情が、より一層だらしなさを際立たせていた。
「もっとマシな服装を着れば、カッコよくなるのに…」
「だらし内閣」ではないが、著者もそのような想いを男性たちに抱かれていた。
特に彼女は、「生まれ変わるなら男性になって、存分にスーツを楽しみたい」とさえ思うほどのスーツ・フェチ。(レディース・スーツはメンズが比べ、バリエーションに乏しいとの事…ほんと何とかならないかな) だから道行く企業戦士たちも隈なくチェックするのだが、その度にガッカリされている。だって揃いも揃って、みんなどこかしらキマっていないから。
積年のモヤモヤを晴らすべく、著者は(授賞式というハレの場に臨むこととなった)高野氏や宮田氏を筆頭に、同業男性陣のコーディネートに挑んでいく…。女の自分も新年から襟を正すつもりで、本書のスーツ着こなし講座に臨んだ。
「しかしなんだろう、この快感、上手に原稿が出来たときのようではないか。ああ、メンズファッション楽しすぎる。もっと見繕いたい!ぎゃあああっ」(P 28)
「スーツ着こなし講座」と言ったが、著者自身ほぼ素人である。シュッとした全体写真から、てっきりその道のプロかと思っていたけど、本職は文筆家でイラストレーター。(ついでにファッションの面倒見が良くて、めちゃノリの良い姐御) だから小難しいことは抜きにして、一緒に面白がってスーツ・ワールドを覗けた。
一番気になる高野氏は、緊張のあまり借りてきたネコ状態。あの高野氏が、だ。それがバーニーズ銀座店 鴨田さんの魔法で大化けし、授賞式当日は大ウケしたという。(「代理の方ですか?」と混乱を招かなかったのか、個人的に気になるところだが笑)
そんなダンディー高野氏を含む、男性陣のビフォーアフター写真は必見である。
「しかし袖口って色気の溜まり場なんだなあ。手首の骨のでっぱりが見え隠れするのは本当に素敵。だからこそ、ここに高い腕時計を添えたがるわけなんだな」(P 153)
スーツは一人ひとりの体型に合わせられ、ほんの一工夫でスマートに魅せられる魔法の服。確かに一見さんには手厳しそうだし、オーダーメイドも自分で指定しなきゃいけない点が多く、全くのおまかせではない。
でも裏を返せば、好きにカスタマイズできるってことだから、なりたい自分の姿へと一気に近づける。鴨田さんのようなフィッターさんとガンガン話し合っていけば、自分をグレードアップさせてくれるスーツが必ず見つかるって、ここでも検証されていることだし。
鏡(できれば姿見)の自分を見て、「俺このままでいいのかな…」と少しでも多くの男性が開眼してくれる年であってほしい。あの「だらし内閣」然り。-
akikobbさん、
「エンタメノンフ文芸部」って面白そうな活動ですね!しかも「エンタメノンフ」って高野氏が考え出した分野みたいで、自分も入...akikobbさん、
「エンタメノンフ文芸部」って面白そうな活動ですね!しかも「エンタメノンフ」って高野氏が考え出した分野みたいで、自分も入部したいです笑
宮田氏も不思議な雰囲気で著書を調べてみたら、過去に読んだ『ニッポン47都道府県 正直観光案内』も書かれていたことを今日知りました(^^;; そちらもめちゃ面白かったので、高野氏・内澤氏同様開拓していきたいです♪
自分は、大体高野氏のXで本を拾うことが多いですね…(彼が紹介する本は大体当たりが多いので) 本書も高野氏がXで触れていて、「スーツ姿の高野氏だと!?」と飛びつきました笑
元々旅エッセイも好きなので、蔦屋書店のような大型本屋さんに行けば大体そのコーナーを眺めていたりします。ずっとノンフィクション寄りなので、今年こそはフィクションにも触れねばと思っています…!
長文になりましたが、akikobbさんの『着せる女』レビューを楽しみにしております♪2025/01/05 -
最近、だらしスーツ着たばかしです。
だって、ピッタリ合わせるのって、高いんだもの。
でも、高野秀行さんのは見たい!最近、だらしスーツ着たばかしです。
だって、ピッタリ合わせるのって、高いんだもの。
でも、高野秀行さんのは見たい!2025/01/06 -
kuma0504さん、おはようございます。
はい…べらぼうに高くて、途中意識が吹っ飛びそうでした。皆さまは、それこそハレの日用だったり、「こ...kuma0504さん、おはようございます。
はい…べらぼうに高くて、途中意識が吹っ飛びそうでした。皆さまは、それこそハレの日用だったり、「ここぞという時」といった特定の場面用に誂えていらっしゃいました(^^;;
(あの内閣は、あれだけ高い給料を貰っているのに、何故あのような着こなしになったのか…)
高野氏は痩せマッチョ(死語?)体型らしく、スーツを纏うとめちゃサマになっていましたよ!ぜひチェックしてみてください♪2025/01/06
-
-
タイトルに偽りなし、正に「着せる女」。
ファッションのプロでもなんでもない著者の内澤旬子さんが「身の回りの男性に、素敵にスーツを着てほしい」という熱意だけで、出版業界の男性知己たちにスーツを合わせ買わせていく。“買わせる”なんていうと悪意がただよってしまうが、スーツに縁がなかったり、一応着てはいるがその着こなしに全く自信がなかったりするような中年男性たちが、ニューヨークバーニーズ銀座店のフィッター鴨田氏の手腕と内澤さんの介添えにより、試着しながらみるみる顔色が変わり、自信にあふれ、喜んで買い物していく姿は、特に服好きでもない私が見ていてもワクワクしてしまう。
内澤さんは、ウィキペディアによると宮田珠己さん、高野秀行さんとともに「エンタメノンフ文芸部」なるものを結成しているらしいのだが、エンタメノンフ文芸ってこういうものか!と開眼する思い。深くもないけど浅くもない、深いっちゃ深いし、浅いっちゃ浅い、そんな加減が楽しかった。
秘境ライターの高野秀行さんの変貌ぶりがわかりやすい見どころではあるが、個人的には、「スーツを着るダサいサラリーマンになりたくない」という反骨心からの脱皮を衒いなく語るに至った、本書担当編集の杉江由次さんのストーリーが心に残った。
本書はahddamsさんのレビューがきっかけで読みました。ありがとうございます!
以下は、その他備忘メモ。
・「ヒョットコテイスト」と形容される宮田珠己さんの本もいつか読んでみたい。ネクタイだけ冒険できるの、なんかわかる。(私もファッションには自信がないが変なピアスよく付けてた)
・本の雑誌社社長の浜本茂氏の巻にて、出版社でファッションイメージを語り合う業界人トークすごい。平凡社?白水社?筑摩書房?東洋文庫?ちがう、法政大学出版局だ!て。
・小説宝石編集長田中省吾氏の味わい深いメール。「でも、この前お会いして以来、仕事でうまくいかないことがあると全部自分のスーツ(姿)のせいにしています」。味わい深いのはこの前後なんですけどね。-
ahddamsさん、めちゃめちゃ楽しみました。ありがとうございました!
森さんに関しては、巻末の鴨田さんとの対談(鼎談?)で、「普段私ども...ahddamsさん、めちゃめちゃ楽しみました。ありがとうございました!
森さんに関しては、巻末の鴨田さんとの対談(鼎談?)で、「普段私どもが接客することが多いのは森様のようなお客様です(だからあのような攻防は当たり前)」とおっしゃるのを見て、そういやそうだわねと思いました(笑)内澤さんがいないと店に入れない森さん以外の男性たちの気持ちもよくわかり、私は女性ではありますがどちらかというと高野さんたち側の視点(それもおこがましいが)で読んでました^^;
そのため、ahddamsさんのように実生活へ反映しようといった発想は皆無でした…むしろ私にも内澤さんがほしいです。2025/01/15 -
akikobbさん、
楽しんでいただけて幸いでございます♪
内澤さんの押しの強さは私も憧れます…!バーニーズのような敷居の高いお店というのは...akikobbさん、
楽しんでいただけて幸いでございます♪
内澤さんの押しの強さは私も憧れます…!バーニーズのような敷居の高いお店というのは女性でも入り辛いので、終始舌を巻きっぱなしでした(^◇^;)
「スーツでキメる!」って機会が訪れたら私の中のプチ内澤さんを召喚し、心して踏み込んでいきたいと思います笑2025/01/15 -
「プチ内澤さん」いいですね!
スーツに限らずですが、良いもの(=素敵に着こなしているスーツ姿)をたくさん見て目を肥やしておくことがまずは重要...「プチ内澤さん」いいですね!
スーツに限らずですが、良いもの(=素敵に着こなしているスーツ姿)をたくさん見て目を肥やしておくことがまずは重要そうですね。私も内なる内澤さんを育てていきたいと思います!2025/01/16
-
-
もう最高!ケラケラ笑いながら読んだ。「本の雑誌」での連載時はもっと長かったと思うが、一番面白いところをうまくまとめてある。タマキングや高野さんの変身ぶりなど「素材」が傑作なのは言うまでもないけれど、やはりこの楽しさは内澤さんの文章の力だろう。イキオイがあって小気味がよく、私としては三浦しをんさんのエッセイと双璧の好ましさ。前著「ストーカー戦争」はあまりにリアルで読むのがつらかったが(あ、でもたくさんの人に読んでほしい一冊です!)、これは心から楽しめた。
「本の雑誌」炎の編集杉江さんのスーツ姿を見た娘さんが「お父さん、岡田准一みたい」と言ったそうだが、それを読んだ高野さんがツイッターで「バーニーズのスーツには幻覚作用があるのか」と書いていた(笑)
男性陣のスーツ話がほとんどなのだけど、時折言及される女性のファッションについての指摘にもうなずけるところが多々あった。ほんと、中年以上の女性が「きちんとした服」を着ようとすると「PTAおばさん」になってしまいがち。内澤さんの言うとおり、イギリスのメイ首相(当時)とか、上野千鶴子さんとか、「きちんとしつつオシャレで、貫禄を感じさせる」お洋服をお召しなのだ。高いものも(いやまあ買えないんだけど)安いものも何着ても似合わないトシになっちゃって、もう何着ていいかわかんないや!と思う今日この頃、まったくスーツをちゃんと選ぶだけで大変身できる男性はうらやましい限り。 -
まさに一気読み。ものすごくおもしろかった。
服装に無頓着な中年男子に似合うスーツをつくらせる、って話だけど、スーツ買にいってスーツ売り場の達人みたいな人が一式コーディネートしていくさまを文字で読んでるだけなのに、ものすごおおくわくわくする。この高揚感はいったいなに?っていうくらい。これぞ著者内澤旬子さんの筆力?
コーディネイトされる人たち、例えば高野秀行さん、宮田珠己さんのキャラが素敵っていうのもある。宮田さんがえんじ色をこんなカサブタの色??って言ったり、しわ加工のシャツを前に、こんなシワシワでいいの?!って言ったりするのはもはや、かわいい!って感じで笑える。
もちろん、スーツについてあれやこれや奥深い知識も得られるし、スーツ着ない女性でもファッションアドバイス的に読めるところもたくさんあって楽しい。おまけに、内澤さんが直面している中年女性のなに着ていいかわからないって悩みも出てきて共感しまくったりもする。
ちょっと「クィア・アイ」ってアメリカのいわゆる変身番組を思い出したりもした。あくまで押し付けるんじゃなくて、どんな感じが好きなのか? どんなふうになりたいのか? っていうのを本人にきくところからはじめて、スーツに腰が引けてる人に自信をもたせるような感じなのもいいなあと。
人の目なんて気にせず自分が着たいものを着ればいいってのも一理あるけれども、社会で生きていくうえでは自分が人にどう見られたいか、どういうふうに自分の立ち位置を表すかっていうようなことも大切だっていうのとか、「服装」との向き合い方、みたいなことを考えさせられるところもあって、そういうのもすごくよかった。
そして、なんでかよくわからないんだけど、スーツつくるのにすべて同行した編集の杉江さんはじめ、みずからもスーツつくった「本の雑誌社」社長浜本さん含め、こんな本をつくってくれた「本の雑誌社」すごい!と思って、なんというか「本の雑誌社」への愛がめばえたような。まあ今までだって好きな出版社だったけど、これから特別に応援していきます!みたいな気持ちになった。
もっと読みたいので、続編とか女性編とかなんでもいいけどまた出してほしいー。 -
作家でイラストレーターでもある著者が、作家仲間、編集者、カメラマン、の一張羅を見立ててあげるドキュメントエッセイ。
著者のスーツへの思いと熱量が半端ない。また、本書の陰の主役ともいえるバーニーズニューヨークのフィッターの人の神業ぶりの描写もすばらしい。
口絵で各人のビフォーアフターが紹介されているので、本文と併せて参照することで、各人のファッションポイントもビジュアルで理解できるのもGood。
そして、誰にも似合うスーツは必ずある、という一言は心強い。
できれば著者に私のスーツ選びにもぜひ同行してもらいたい。そして、これからは町中、あるいはテレビ等でスーツ着ている人への見方が変わる、と思った。 -
誰かに何かをすすめるすべての職業の人にすすめたい。
内澤さんが自分の周りのパッとしない服装の男性たちと一緒に素敵なスーツを買いに行く話なのであるが、すこぶるつきのおもしろさだった。ビフォアアフターの写真があるのもよい。スーツってかっこいいなあ。
何よりも、内澤さんがいちばん頼りにしていちばん多く登場するバーニーズニューヨークのフィッターである鴨田さんがすごい。どうでもいいことだが巻末に対談があって、顔写真が乗っているのだがイメージしていたのと全然違う感じの人だった。もっと落ち着いた感じの年も上の感じだろうと想像していた。
彼のことばが文頭に書いたことにつながる。
どうやって仕事を覚えて、技術を身につけてきたのかという話の中で、例えば採寸をするのに、研修はもちろんある、でも研修で学ぶのは知識であって技術にはならない。「手を動かしてお客様のお身体に触れてメジャーで測って、はじめて身に付くものです。」とか、鴨田さんは自分のフィッティングの技術が他の人より特別優っているわけではない、違うとしたら話術だと思う、と。「スーツに関して正しい知識をあまりお持ちでない方に対してちゃんとしたご案内をするためには、今までと同様のご案内方法ではダメなんだと思ってます。ある程度お客様にもお洋服を知っていただくために、きちんとお話できるようにならなければならない。そのために必要な表現方法とか知識というものを技術とは別に持ち合わせてないといけない」と。これは、ほかの職業、とくに我々にも当てはまることだと膝を強く打ったのだ。
何かの書評にも書いてあったのだが、自分が理想とするスーツの雰囲気を出版社で表すとこが、分かる分かる!となる。 -
萌える(笑)
文章だけでもテンションがわかる。
スーツ好きの女史が
身近な男性のスーツ選びに帯同した記録。
業界の、普段はラフな服が多い人たちが
プロのサポートでスーツを着たら
あら、まぁ、見違えちゃった!
個人的にはイタリアンより
ブリティッシュが好き。
しかし、著者も言ってるけど
いいものはケタが違うよね…。 -
屠畜紀行などで有名な内澤旬子さんが知り合いの男性陣のスーツを選ぶエッセイ。
小難しいスーツ豆知識もたくさん出てきて勉強になるのだけど、ブログ(死語?)のような口語調の文体ですらすら読めるし笑える。
自分のファッションに自信はなくても、服に関する文化や技術に関心のある人や装うことが好きな人は楽しめると思う。私は女性だけど、男性が読んだら、もしかしたら少し押し付けがましさを感じるかもしれない。
本書には受賞やテレビ出演などを機に、スーツを買う羽目になるおしゃれ偏差値が低めな出版業界の男性陣が出てくる。彼らの「スーツを着る大人になりたくなかった」「おしゃれしないのが本当の格好よさ」みたいな感覚も、内澤旬子氏の「服に自意識を込めるのに疲れた」的な気持ちもとてもよく分かる。特に女性は歳とともに似合う服も流行もTPOで求められるものも劇的に変わるし、まだまだ女性管理職の服装も確立していないし、スーツ1着でオフィスワークも御前会議も立食懇親会も対応できる男性と比べて、考えることがありすぎる。
本書にアドバイザーのような立ち位置で登場するバーニーズニューヨークのフィッター鴨田さんから学ぶことも多いが、綴られる内澤氏の心の内に共感して楽しむタイプの本だと思った。なので内澤さんとある程度価値観を共有できる人でないと面白くないのではと思う。「嫌いじゃない政治家ほどひどい着こなし」とか、私は大きく頷いて噴き出してしまったけど、いつもおしゃれな麻生さんの支持者の方とかはこの本を楽しめるのか分からない。保守的な価値観を全面に出す英國屋ではなく、バーニーズニューヨークに行くだけある(私の勝手なイメージです)。スーツはクラシカルな装いではあるが、保守的というわけではなく、奥が深い。
おしゃれな男性は婦人服の幅の広さを羨ましがることが多いけれど、型の中でいかに個性を出し、服を自分に従わせるかを勝負する紳士服もとても素敵だと思った。
労働着の服にはお金をかけたくなくて、UNIQLOばかり着ていたけど、ロロピアーナのジャケットとか買ってみようかなと思った。 -
ファッションが苦手だ。もう少し細かく言うと、洋服を選ぶことが苦手だ。さらに詳しくすると「流行やトレンドをいい感じにとらえて、自分の体型なども踏まえて似合うものを選ぶ」ことが苦手だ。だったら我が道を行くのもひとつの手ではあるけれども、そこまで突き抜ける度胸もなければ、「あの人古い服着てるよね」と思われるのも絶対に避けたい。
仕事でも、取引先とのきっちりした打ち合わせからオフィスカジュアルまで、友達とのいいお店でのご飯からフランクな飲み会まで、保護者会、面談、運動会…とそれぞれ適した服が変わってくる。そのうえで流行が変わる。厄介すぎるんだよ!
ただ、自分の服選びに関して言うと、ついに「金で解決」という手段を手に入れて、プロに選んでもらう、というところに着地し、ストレスから解放された。
で、夫である。
自分の服選びすらままならないのに、メンズはもっと分からない。しかも夫は服に興味がない。放っておくと「無印良品でMサイズを買えばいい」みたいなところに着地する。悪くはないが、40半ばでそれですべて済むと思うなよ……と膝から崩れ落ちることになる。
というわけで、ときどきデパートのメンズフロアに一緒に行き、ベーシックな雰囲気のものを扱うブランドで、店員さんにまるっと相談して一気に買いしたりしている。
で、だ。
このまるっと相談、というのが、そもそもスキルが必要なことだったんだな、と、この本を読んで改めて思った次第。
個人的に文字ベースで生きている人間なので、ファッション誌の写真から今年のトレンドを読み解け、みたいなのはとても苦手なのだけれども、「こういう場所でこういう風に見られたくて、こういうアイテムを探している」というのを言語化するのは得意。
多分、この本で内澤さんが担っていたのはそこだよね。
というわけで、読んでいてとても楽しかった。ファッションの、文字化!ありがとう!
そして、ほとんどがスーツ選びなんだけれども、メンズスーツの奥深さよ。そして、みなさんの変わりっぷりよ。
そしてそして、バーニーズ……。あの、ドアマンがいる感じね。何度か入ったことがあるものの、突き刺さる「お呼びでない」感。あぁ、あの先にはこういう方がいて、こういう世界があるのだな、と。新しい世界も楽しめました。
そして、すっかりスーツを着なくなった夫に、一着新しいの買わせようかしら、と思わせたくなるマジック。
みなさんの変身写真出てるけど、変身しすぎでしょうよ…。この写真だけでも見る価値は大きいと思います。
というか、高野秀行さんの変身っぷりを読みたくて読んだんですよ。すごかった。
あと、最後に内澤さん自身のスーツ選びもされているけれども、個人的には女性のスーツもいろいろやりようはあるかなとは思う……ものの!トレンドもあるかもだけど、セットアップで男性ほど締まった感じにならないのは何だろうなとずっと疑問ではいる。そして、求められるのは存在感のある(価格がゴージャスな)アクセサリー…。スーツだけで完結しないのは、やっぱりあくまでメンズから派生しているからなのかな。
最後に、そういえば結婚式の引き出物はバーニーズのカタログギフトにしたなと思い出した。
著者プロフィール
内澤旬子の作品






内澤さんの「かっこいい」がわから...
内澤さんの「かっこいい」がわからない(そう言われると私もわかっていたのか自信がなくなりました笑)ながらも、情熱と有言実行ぶりには圧倒されますよね。
まさにこれを皮切りに、内澤本、宮田本へと手を伸ばしてみております!『屠畜紀行』面白かったですよ、テーマの重軽はありますが、内澤さんこちらもノリノリです。
服オンチのわたしには結局わからない世界ではありましたが、それでも最後まで読ませる内澤さんは凄いです。
「...
服オンチのわたしには結局わからない世界ではありましたが、それでも最後まで読ませる内澤さんは凄いです。
「屠殺紀行」は、この文体で突っ切るんですか!
それは、ちょっと魅力的かも。
いつか読みたいと思います。