「歌」を語る 神経科学から見た音楽・脳・思考・文化 (P-Vine Books)
- スペースシャワーネットワーク (2010年10月15日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
- / ISBN・EAN: 9784860204037
感想・レビュー・書評
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「歌」
音楽が人間の脳の進化に関与し、それと共に音楽も発展した。
音楽脳を解するのに必要なのは「相対化」「表象」「再配置」
音楽により創造性を獲得することが、生存上の優位となった。
多種多様な歌があるが、それは大まかに以下の6つに分けられる。
友情
同じ歌を歌い、同期した協調運動(ex軍隊の行進)をすることによって帰属意識、有意義な社会的絆が作られる。
人間は社会的な動物であるが、社会を形作ることは副作用も孕む。
それは競争心、嫉妬、支配欲求、食料・伴侶獲得のための競争である。
しかし、歌を用いることで、これらが和らぐ。
喜び
ストレスを解消し、ストレス時に増えるコルチゾールによりもたらされる過剰なエネルギーを燃焼する
音楽の練習をさせられたあとでは血中のオキシトシンが放出され、お互いに強いきずなを感じるようになる。
喜びを寿ぐことで、他人の共感を呼び覚まし、社会や協力的な集団を形成する
慰め
孤独を癒し、他者からの理解を得たという感覚
悲しい体験が美的なものをもたらしたというインスピレーション
知識
情報符号化して再配置し、保存する
正確な再生を促す
宗教
特定の時間と場所に結びついた儀式的な振る舞い
ある要求(ex雨乞い)を行う時にコミュニティのメンバーをまとめる
<i> そして音楽は、こうした考えは人々の記憶に焼きつけ、儀式や式典が終わったずっと後まで、そして天啓や啓示が終わった遥かあとまでそれを維持するのに貢献してきた。音楽にこれができるのは、その内部構造のおかげだ。言語と同じく、人間の音楽は極めて構造化、組織化され、階層的だ。(略)この研究で驚くべき結論は、人間の乳児がどうやってそれを行うかという点だ。(略)この研究でワクワクさせられるのは、それが言語と音楽の習得に関して極めて効率の高い説明を提供してくれることだ。またなぜ音楽がこれほど記憶に残るのか(略)
そしてなぜ音楽が文明の知識にとってこれほど有効な記憶装置となり、儀式や宗教慣行に従うときに有効に作用するのかという説得力のある説明も提供してくれる。
その理由は、戦慄とリズムが形式と様式の制約を受けることで、複数の埋め込まれたヒントが生じ、それが一連の統計的なマップとして符号化され、最終的には統計的な示唆をもたらすからなのだ。
これまで書かれたもっとも美しい歌のいくつかは宗教化、神をたたえる歌だ。宗教的な思考は我々を自分の外に連れ出し、高みに上らせ、日常と簿運用から持ち上げて、世界の中で自分の役目や世界の将来、存在そのものの性質を考えるようになる。前頭葉にある予想中枢と違うことを示唆する音楽の力、大脳辺縁系の情動中枢を刺激し、脳幹神経節と小脳の運動系を活性化する能力は、我々の存在のおけるこうした違う神経化学状態を美的に結わえあい、爬虫類脳を霊長類と人の脳に結び付け、思考や運動や記憶、希望、欲望と結びつけているのだ。</i>
愛
<i> 愛は自分自身や自分の心配より大きなものがあるという感情についてだ。(略)愛は根本的に、何か自分より大きな何かという概念に対する強い献身なのだ。
至高の愛とは、我々の存在に対する愛だ。あらゆる欠点、あらゆる破壊性、あらゆるつまらない恐怖、ゴシップ、競争心全てを含めた人間性への愛。(略)このすべて、そしてそれについて描けるという能力-そしてそれを歌にして寿げる能力-こそが、我々を人間たらしめているのだ。</i>詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
エッセイだと思えば楽しめたかも知れないけれど、学術論文のつもりで読んだため、物足りなかったです。