1980年12月8日 ジョン・レノンのいちばん長い日 (P‐Vine BOOKs)

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  • Amazon.co.jp ・本 (365ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784860204075

作品紹介・あらすじ

あの日、ジョン・レノンは順調な1日を過ごしていた。『ローリング・ストーン』誌の写真撮影に始まり、ラジオのインタヴュー、家族そろってのランチ、そしてスタジオ・セッションと、再スタートを切ったばかりのロック・スターとしてはこれ以上ないほどの完璧な1日だった-凶弾によって命を断たれるまでは。

感想・レビュー・書評

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  • 2012年12月8日

    <DECEMBER 8, 1980:THE DAY JOHN LENNON DIED>
      
    訳者/刈芽由美
    デザイン/小野英作

  •  1971年に発表されたジョン・レノンの『ハッピー・クリスマス(戦争は終った)』“Happy Xmas(War Is Over)”といえば今なおクリスマスソングの定番として歌い継がれている名曲だ。「ベリー・メリー・クリスマス、アンド・ハッピー・ニューイヤー」と歌いあげる美しいメロディは、「君が望めば戦争は終る」という鮮烈なメッセージと共に聴くものの胸に深く突き刺さり、ドラマチックな余韻を残すだろう。

     そして1980年12月8日。クリスマスソングが街に溢れ始める季節、ジョンはこの世を去った。一人の男の凶弾によって。
     本書はジョンにとって、そして世界中のファンにとって最も衝撃的な一日となったその日を軸に、ジョンの軌跡を綿密に描く伝記“December 8,1980:The Day John Lennon Died”の訳書である。
    <みんながジョンを愛していた。/ただし、今はみんな泣いていた>(p278)
     雑誌の撮影、ラジオのインタビュー、家族とのランチ。ロックスターにとって申し分なく完璧な一日は、如何に悲劇へと向かっていったのか。

     執筆したのはニューヨーク・タイムズのベストセラー作家キース・エリオット・グリーンバーグ。カットバックの手法を多用し、ジョンの生涯と、彼に凶弾を放ったマーク・デイヴィッド・チャップマンの行動を切り刻んで交互に描き出していく。時系列もバラバラにされているため、ビートルズやジョンに関する知識をまったく持たない人は戸惑うかも知れない。なので帯には<ポップ・カルチャー史上最悪の事件を分刻みで追う>と書かれているが、実際はそういう感じではない。
     たくさんの人々の切り刻まれた運命の中で、ジョンとチャップマンの運命が交錯するまでを克明に描き出していく、緊迫のノンフィクションである。

     これを読むと世間ではジョンの強烈なカリスマがよく語られるが、実は孤独で人間味あふれる人物だったことがよくわかる。昔から死に異常な執着を持っており、自分が死ぬ時について<飛行機に乗ってるときにお陀仏になるか、頭のおかしいヤツに殺されるか、どっちかだろうな>(p103)と語っていた。
     一方チャップマンも異様な執着をジョンに向けながら冷静に破滅に向かっていく。彼を取り押さえた警官は語る。<イカレているという感じではありませんでした。それに礼儀正しくて、『ヘイ、マザファッカ』とかなんとか言っているような、どうしようもないやつらとは違っていた>(p259)
     今ならストーカーと呼ばれて一括りにされていただろうが、その心の闇は本人以外知りようもない。

     この本の大部分はビートルズ時代のエピソードに費やされる。もちろんそれがジョンの人生にとって最も重要な時期だからだ。そして1970年に事実上解散する頃には、ビートル同士が訴えを起こし合う程に関係はこじれてしまっていた。それは若くしてロックスターへと駆け上がってしまった運命のいたずらと、スターの周囲に集まる様々な人間たちの思惑に飲み込まれてしまった結果だろう。
     しかしこのビートルズという巨大な引力が彼らの人生に大きな影響を与えるような出会いを引き寄せていくのだ。
     今、ビートルズといえば世界中で知らない人はいない偉大なロックバンドである。ジョン、ポール・マッカートニー、ジョージ・ハリスン、リンゴ・スター。個性的な4人は衝突を繰り返しながら世界的スターへと成長していく。

     私事で恐縮だが、1980年12月8日は私の誕生日でもある。もちろん時差の関係もあるので厳密には違うのだろうけど、世界的ロックスターの命日と自分の誕生日が同じ日であるという事はどうも居心地が悪い。誕生日の度に大物ミュージシャンに「ところでお前はその齢になって何を成し遂げたのだ」と問われている気がする。きっと私と同じ日に生まれた人は多かれ少なかれ同じような思いを抱いているのではないか。

     ジョンは20代前半でビートルズとして成功を手にし、気も狂わんばかりの命運を駆け抜けながら40歳で死んだ。私は既に31歳である。それはとりもなおさずジョンがこの世を去ってそれだけの年月が過ぎたという事だ。それだけの年月を経てもなお我々の精神に影響を与え続けている―それだけでも恐るべき事だ。
     世界がジョンを失って30余年。当時、CBSのアンカーは<これほど多くの人に悼まれる国王や大統領がはたしてどれだけいるでしょう>(p316)と語った。
     偉大なカリスマを失った我々は、本書中である人物が語る通り、<今こそ大人にならなければならない>(p304)のだろう。

     ジョンの誕生日である10月9日から命日である12月8日までをファンらは「ジョン・レノン・シーズン」と呼んでいる。せめてこの時期だけでも、世界がジョンのメッセージに思いを馳せれば。

     なお、本書はジョンの命日に合わせ、2010年の12月8日に刊行されている。(Amazonでは何故か違う日付になっているが)

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