日本文明の謎を解く―21世紀を考えるヒント

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  • 清流出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (259ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784860290658

感想・レビュー・書評

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  • 竹村氏の著書は4冊目。前回読んだものより10年ほど前に発刊されたものであり、内容としては重なった部分も多かった。
    とはいえ、相変わらず、歴史を違う視点で見ようとする著者の試みは、好奇心がくすぐられると同時に、もっと読んでみたいという意欲がわいてきます。


    <目次>
    新・江戸開府物語―なぜ家康は江戸に戻ったか
    ダ・ビンチの水循環トリック―なぜモナ・リザは永遠の美を獲得したか
    間引かれた情報のパワー―誰が情報を作るのか
    女性の進化を目撃した世紀―なにが寿命を伸ばしたか
    フーバーダムの遊び―なぜカラスは遊ぶのか
    地形に救われる日本―本当に海面上昇はあるのか
    ローマ街道から見る日本―なぜ道路後進国となったのか
    ローマ衰亡から見る命の水道―なぜ乳幼児の死亡が低下したか
    大地を造る知恵―なぜエジプト人はピラミッドを造ったか
    閉じこもる日本―なぜ日本人はロボット好きなのか
    うっとうしい日本列島―なぜ韓国は「恨」なのか
    気象が決める気性―なぜ日本人は勤勉で無原則なのか
    情報公開は全てのインフラ―何を長良川河口堰から学ぶのか
    映像は感動の情報―なぜ説明はむずかしいのか
    やるせない川―いかにして歴史と文化を失ったのか

  • 応仁の乱以来、100年以上、戦国武将達は農地を巡って戦い続けたが、これはパイの大きさが決まっているゼロサムゲームであった。家康はこの状況を打破すべく、関東平野で新田開発を行った日本史上、国土を最も劇的に転換させた人物。

    事の本質に迫る情報は何か?訴えたい適切な情報は何か?その情報にたどり着く為には情報の山を削り取り、情報を間引きする事が必要。この実行には二つの条件が必須で、一つは「専門分野に関する深い見識」もう一つは「社会に関する広い知識と経験」。

    江戸時代の女性の平均年齢は56歳。男性は63歳。江戸から大正までは男性は横ばいだが女性が男性に追いつく。これは社会に水道ができ、家事が劇的に楽になったから。大正から昭和にかけてさらに女性の平均寿命は伸び、1990年は83歳(男性は77歳)。炊飯器、冷蔵庫、洗濯機等家庭内インフラが充実し、さらに家事が楽になった結果。

    平均結婚年齢は江戸時代は20歳、大正時代は21歳。1990年は26歳。末子成人時年齢は江戸時代は55歳、大正時代は50歳、現在も変わらず。大正時代までの女性と動物は繁殖期が終わると体力が弱り死んでいくが、現代の女性は繁殖期よりも長い老年期がある。寿命だけを考えると、ヒトが猿から別れて進化した500万年を女性は80年で成し遂げたよう。

    現代の女性は、子供の養育から解放される50歳から生涯時間の40%は自由に生きる事ができる。短い生涯の中で、「種の為の生と個の為の生」という二つの生を経験する事になった。

    6000年前の縄文海進期の気温は現在よりも2度高く、海面は5-7メートル上昇していた。

    水道の普及により、雑菌だらけの水が家庭に届くようになり、乳幼児の死亡率が上がったが、大正10年に塩素殺菌され安全になった。この塩素は、シベリア出兵がすぐに終了した事により、毒ガス兵器として製造された液体塩素の使い回しがきっかけであった。

    世界の12文明の中で雪国は日本文明しかない。また島国も日本だけ。地勢と気象に閉じ込められた人々は座り込み、モノを「凝視」する。そして手を使い「細工」を続ける。

    日本人の文明の特徴は、「凝視」と「細工」。

    地勢と気象の制約のない文明人はすばやく動き回り、相手と出会い、交渉し、戦い、隙をみてさらう。

    日本人は細かく細分化し、詰め込む。それをしない人は「不細工」であり、「詰らない人」と蔑視される。幕の内弁当、箱庭、扇子、折りたたみ傘等。

    20世紀は大量生産大量消費の拡大開放系の文明。21世紀は資源の枯渇と環境の激変が待ち受けている以上、縮小閉鎖の循環系への文明となる。これは日本人の得意分野。

    縮小と循環の性向を持っている日本人が未来文明の先頭に立つ事。ただし、日本人ほどリーダーに不向きの民族もいない。ただただ国内で心ゆくまでモノを見詰め、モノを縮小していく趣味に溺れきっていればよい。「縮小と循環の文明」のモデルを創り、それを世界に見せれば十分責任は果たせる。ただし、上記の言葉では誰も奮い立たないので変換できる言葉を創る事。

    正常と異常の見分け方は、自分の矛盾を矛盾として抱えていれば正常。

    世界191カ国のうち、月と星の国旗は53カ国(28%)。太陽の国旗は13カ国(7%)。太陽と月の両方を使っているのはフィリピンのみ。

    近代産業国家をいち早く形成したのは、イギリス(北緯50-60度)、フランス(北緯43-50度)、 ドイツ(47-55度)、米国(38-50度)、イタリア(37-45度)、日本(35度前後)であり、みな勤勉の可能な温帯に属していた。

    日本人は「無原則性」の性格を持つ。これはあまりにめまぐるしく変化する気象条件から起因していると思われる。激しい気象変動についていかないと生きていけなかったから。

    日本は世界の大地震の20%、活火山の10%を持つ地震、火山大国。1世紀の間に5度も1,000人以上の死者を出す地震に襲われている。日本人はこの不条理な死を何千年も受け入れ続けてきた。理念的な原則を持たず、自然に歩調を合わせるほかなかった。

    ユダヤ教の三条件と日本文明の対比
    永遠⇔無常
    無限⇔有限
    絶対⇔非絶対

    情報を全部出して初めて信用してもらえる。徹底した情報公開が必要。

  • 水道の後藤新平の塩素消毒のところを見たくて借りたが面白くて読んでしまった。いつも飛ばすがよませるのが大したものだ。

  •  フェイスブック上で知人が話題にしていたので読んでみました。
     竹村公太郎氏の著作は初めてです。竹村氏は建設官僚OBですが、本書で紹介している主張は「公共投資礼賛」といった役人然としたものではなく、多彩な観点から「公共事業」についての新たな視点を拓いてくれるなかなか興味深い内容でした。
     特に、「徳川家康の関東平野創造」の話や「ピラミッドの建設理由の新説」などは、私にとっては、とても刺激的でワクワク感満載でしたね。気楽に読める楽しい著作です。

  • 久々にすいすいと読み進めた本。
    タイトルの通り、謎がすらすらと解けていく。

  • 超おもろかった。近畿地方整備局主催の講演会も聴きにいったが、面白かったです。なんかの雑誌で建設省職員時代の長良川河口堰や、有明干拓事業のことで対談してる記事も、とても印象に残ってます。

  • もと完了の竹村公太郎氏の記した本。
    非常に興味深く深い洞察から構成されており、視点は土木的な視点ながらもとてもおもしろい。
    第3章 間引かれた情報のパワー
    情報を削るには二つの条件が必要
    ・専門分野に関する深い見識
    ・社会に関する広い知識と経験
    資料がパワーを持つかどうかはトップが情報の作成に関与したかどうか。一番情報をにぎっている。トップが多くの情報の中から意味ある情報を選びぬき、それを示しえたかどうかに意味がある。

    第8章 ローマ衰亡から見る命の水道
    後藤新平が国家機密である液体塩素を民生転用して、今の水道インフラがある。今の日本の寿命にも関係しているし、非常に重要である。

    第9章 大地を造る知恵
    「からみ」といって杭を打ち込むことで、その周辺で潮の早さが落ちるため、土砂が沈む。それにより沈降し、堆積し、ダムができる。自然の力を利用した大地の創造である。

    第10章 閉じこもる日本
    日本人は物事を細分化し、詰め込んでいく。それをしない人は不細工であり、詰まらない人となる。日本の美学は詰めることで、ともかく根を詰め、物事を詰め込む。幕の内弁当。詰め込む大自然庭園。箱庭。傘を折りたたみ傘にし、ラジオをウォークマンに。時間も詰め込んだカップラーメンなどなど。

    第12章 気象が決める気性
    日本は海外に比べ、変化が非常にあり、限られた時間内で一年分の食糧を蓄積する必要があるなどから、勤勉にならざるを得なかった。日本伝統びゅんかはすべて太陽の下で生まれ育っていった。昼間の労働について、熱帯では「危険で苦役」で温帯では「健康出喜び」となった。一神教の三原則「変化しない永遠」「限りない広さの無限」「過ちを犯さない絶対」すべて砂漠がもとになっている。
    絶対は難しいが、これも「ものがないからこそ絶対」となっている。もんがあれば、必ず変質し、朽ち果てていく。日本人はこの朽ち果てていく不完全なものに意識を凝らし、もののあはれやわびやさびの独特の世界を作り上げていった。

    第13章 情報公開はすべてのインフラ
    地味に情報を出し続けていれば、マスコミは信用し、感情ではなく、理によって判断される。情報公開こそがマスコミとの会話の土台となり、信頼につながる。逆にそれ以外ありえない。

    第14章 やるせない川
    情報が集まる交流拠点それが、その時代の情報を制し、権力を制していく。物資や人間という情報を運ぶ手段はかつては水運であった。しかし、急な高度成長や予算のないまま至急対応を迫られる中、川の側面は親水地などなく、交流拠点とは程遠いものとなってしまっている。

  • 291.初、並、カバスレ、帯付。
    2010.2/13.松阪BF。

  • 養老孟司氏推薦

  • 竹村氏は、国土交通省の河川局長を勤めた人。石油や水、森林や河川などの下部構造から日本の文化や歴史を洞察し、ユニークな視点からの日本文明論を展開する。この本の前に読んだ、養老猛・竹村広太郎著『<a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4569701949?ie=UTF8&tag=ishiinbr-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4569701949"> 本質を見抜く力―環境・食料・エネルギー (PHP新書 546) </a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=ishiinbr-22&l=as2&o=9&a=4569701949" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;">』が、きわめて興味深かったので、続けてこの本も読むことにした。まったく期待を裏切らなかった。新鮮な視点から多くを学ぶことができた。

    本書は、雑誌に掲載された15の論文からなるが、そのうちとくに興味深かったものを取り上げよう。まずは第7章「ローマ街道から見る日本」だ。ローマの昔から道路ネットワークの発達した西欧では、蒸気機関が登場したと同時に、車の動力としてそれに注目した。馬車から自動車へは当然の流れであった。しかし日本は、歴史の経過の中で牛車も馬車も姿を消し、車の移動を可能にするような道路そのものが発達しなかった。その理由は何か。中国から牛車や馬車が入ってくると同時に、その動力である牛や馬の去勢技術も入ってきた。しかし家畜を家族の一員のように扱う日本では、牛馬の去勢が徹底しなかった。去勢していない牛馬は、時々暴走がありきわめて危険なのである。江戸幕府も人が車に乗るのを禁止したが、それは車の発達が社会を発展させ幕藩体制を不安定にするからではなく、たんに牛車、馬車が危険だっからではないのか、というのが著者の見解である。

    第8章「ローマ衰亡から見る命の水道」も、著者独自の発見に満ちている。ローマ帝国衰亡の原因が水道の鉛毒だったという説がある。『ローマ人の物語』の塩野七生は、この説に否定的だが、ただひとつだけ確実なことは、原因が何であれローマ人が弱くなり、その結果ローマ帝国が衰亡したのは確実だと著者はいう。著者は、「水道の鉛害」説も充分可能性があると考えているようだ。ここまでを導入とし、論文は「日本人も水によって命を脅かされたことがあった」という予想外のテーマを展開する。まず大正10年頃に、それまでむしろ微増していた日本の乳児死亡数が急激に低下しはじめ、それと同時に日本人の平均寿命が劇的に伸びていく。その原因が何かということが思わぬところから明らかになっていくのだ。話は大正8年のシベリア出兵とも深く関係している。この論文には、謎解きの面白さもあるので、あえて答えに言及するのは控えよう。ひとつだけ付け加えれば、水道普及の初期のころは、水道が普及すればするほどむしろ乳児死亡率は増加していたのだ。では大正10年以降、何が起ったのか。ぜひ本を読んでいただければと思う。

    それでも、乳児死亡数の急減の理由をぜひ知りたいという方には、私の別ブログでこの件をクイズ形式にしたものがあるのでそちらをご覧いただきたい。

    <a href="http://histons.jugem.jp/?eid=68">乳児死亡数の激減</a>

    <a href="http://histons.jugem.jp/?eid=69">乳児死亡数の激減(2)</a>


    ともあれ本書は、ユニークな洞察と発見、時には謎解きの面白さに満ちており、読んで興味尽きない。

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著者プロフィール

竹村 公太郎(タケムラ コウタロウ)
元国土交通省河川局長
1945年生まれ。1970年、東北大学工学部土木工学科修士課程修了。同年、建設省(現国土交通省)入省。以来、主にダム・河川事業を担当し、河川局長などを歴任。2002年、国土交通省退官後、リバーフロント研究所代表理事を経て現在は研究参与。日本水フォーラム代表理事。2017年から福島水力発電促進会議座長も務める。2017年度土木学会賞(功績賞)受賞。著書に『水力発電が日本を救う』(東洋経済新報社)のほか、『日本史の謎は「地形」で解ける』(PHP文庫)シリーズなどがある。

「2018年 『水力発電が日本を救う ふくしまチャレンジ編』 で使われていた紹介文から引用しています。」

竹村公太郎の作品

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