山口恵以子エッセイ集 おばちゃん街道 ~小説は夫、お酒はカレシ~

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  • 清流出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (236ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784860294342

感想・レビュー・書評

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  • 山口さんが文学賞を受賞したときは「食堂のおばちゃんが作家に」と話題になったもんだ。食堂のおばちゃんだっていうし、著作の『食堂のおばちゃん』からもおふくろの味を繰り出すようなおばちゃんを何となく想像していたけど、かなりスパイシーかつ古漬けのような味あるおばちゃんだった。
    ストーリーを作ること、書くことがとにかく好きで、そこに人生の核を据えてきたような人。結婚もしてないし長らく派遣社員として稼いできたというから世間的にはお気の毒さまというような人生なんだけど、本人が気にしてないというか納得しているというか、そういう人は強いのだ。世間の物差しでは測れない、(何となく)分度器のような人とでもいっておこうか。
    軽いエッセイのつもりで読み始めたら、生きる肥やしになりそうな要素がいっぱい。読んで元気になれる本。

  • 人気作家の第一エッセイ集(2015年刊)。

    小説家になるまでの道筋(最初はマンガ家志望、次に脚本家を目指してデビューは果たしたものの芽が出ず、その後小説家に転身)を中心に、来し方を綴っている。

    軽妙なユーモアにくるんで印象的なエピソードをつないでいくスタイルで、たいへんリーダブルだ。

    マンガ家を目指したときから数えれば、著者が55歳にして松本清張賞を受賞して脚光を浴びるまでは、30数年かかっている。

    苦節の年月を経た遅咲きの作家ということになるが、そこまでの道のりを綴る著者の文章は終始楽しそうである。「私は書くことが大好きで、書いていれば幸せでした」とあるように、書くことに苦しさなど感じない人だったからだろう。

    物語を書いて食っていくという夢を実現するまでの著者の奮闘と、その夢が実現したあとの高揚と喜びが力を込めて綴られ、すがすがしい。

    全体の総括のような第四章「崖っぷち人生」は名言連発で、強い印象を残す。たとえば――。

    《人間の悩みには二種類しかありません。どうでも良いことと、どうにもならないことです。》204ページ

    《私は〝自分探し〟というのが一番理解出来ません。今ある自分が嘘の自分で、本当の自分が世界の何処かにあるという考えまでは理解出来ます。しかし、本当の自分が嘘の自分より素晴らしいと信じる根拠は何なのでしょうか? 普通に考えたら、本当と嘘があったら嘘が素晴らしいに決まっていますよ。だって本当は現実、嘘は願望なのですから。》209ページ

  • 元食堂のおばちゃん作家の山口恵以子さんの初エッセイです。とても面白かったです。
    松本清張賞受賞後の怒涛のテレビ出演、お見合い相手、食堂時代の騒動など、きちんと記録を取ってあり、とても具体的で説得力があります。
    最初から最後まで2度続けて読みました。
    とても男前な性格でいらっしゃるようで、飲みすぎの武勇伝、生きていく上での(悩みのことなど)お考えなど、とても興味深く読みました。
    山口さんのエッセイをもっと読みたいと思います。

  • 何だかお疲れみたい、、、

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    「食堂のおばちゃん」作家、初の書下ろしエッセイ集!アラ還、独身、大酒飲み...異色の経歴と個性で注目を集める著者の赤裸々エッセイ
    http://www.seiryupub.co.jp/books/2015/08/post-117.html

  • いいエッセイに出会えました。エッセイにありがちな過剰な自虐はなく、潔くて、出会いへの感謝は丁寧。ご自分が手放したものと、大事にしてきたものに迷いがない生き方に脱帽しました。ご自身に正直な方なのでしょう。猫ネタ、43回のお見合いネタ、お酒ネタは楽しくて、一緒に居酒屋で飲んでいるような錯覚。いじめなど人間関係で苦しかったことはストレートに表現され、ご自身で時間を経て折り合いつけたことが分かります。大事にしてきたご家族の写真には涙があふれました。恰好よさが、装丁に溢れてます。読めばわかる…。ほれぼれしました。

  •  食堂のおばちゃん(既に食堂は退職されている)作家、山口恵以子さんのエッセイ集。お酒を愛し、43回のお見合いを経ても独身で、飼い猫2匹からはDVを受け、介護が必要な母親の世話をしたり、少女漫画家になる夢を抱いてから脚本家へシフトし、やがてその夢も破れて、小説家になった時には、職業は食堂のおばちゃんだった。

     やりたいことを諦めず、置かれた状況で精一杯努力するところや、変に夢を見ずに冷静に自己分析して、トラブルや壁にぶつかっても、有効な手段と戦略を持って行動できるところが素晴らしく、自分も逞しくあらねば、と思った。
    ご自身のこれまでの人生における出来事や生い立ちも、読みごたえがあるけれど、雑誌の人生相談の話から自由に語られる持論がとても説得力を持っていて、潔くて、読んでいて清々しい気持ちになれて良かった。

  • 面白かった。けっこう、エッセイって、途中から読むのが面倒になるけど、けっこうずっと読めた。

  • 変なお見合い相手の話や食堂での苦労話、最終章の人生訓が興味深く良かった。あしたの朝子の表紙そのままの御母堂の写真は必見。著者の人となりがとても良くわかる一冊。

  • この前、初めて、山口恵以子さんの作品、「食堂のおばちゃん」を読みました。
    とても良かったので、どういう方なのか気になって。
    山口さんの半生が、ぎゅっと詰まっていて、一気に読んでしまいましたが、一気に書かれたものでもあるようです。

    パワフルに頑張って来られたんですね!
    松本清張賞を受賞されて、この作品こそは何としても売ってあげようと、可愛い「我が子」である『月下上海』のために取材やテレビ出演に頑張る様が印象的でした。
    取材陣を自宅に招いたり、職場である某社員食堂での撮影にも応じたり…
    そして、ごはんを振る舞う、振る舞う。
    できるかぎりの努力はすべてする、というのが、山口さんの生き方です。

    書くことが大好きで筆も速いということなので、面白い作品をどんどん、読ませてほしいです。

  • 2016.12.29読了。図書館で借りた。

    著者の事はテレビでは何回か見ていて、興味があった。小説はまだ読んだことはない。
    豪快な方であるけど、どことなく品を感じる方だと思っていた。エッセイは読みやすく、エピソードは思っていた以上に豪快な物もあった。けれども文体は丁寧で、独りよがりではないと感じた。

    色々励まされる内容。母親と仲が良くて結婚出来ないという点は、自分には考えられないこと。若い時のお見合い写真は綺麗だなと思った。
    小説も読んで見たい。

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著者プロフィール

1958年、東京都江戸川区生まれ。早稲田大学文学部卒業。松竹シナリオ研究所で学び、脚本家を目指し、プロットライターとして活動。その後、丸の内新聞事業協同組合の社員食堂に勤務しながら、小説の執筆に取り組む。2007年、『邪剣始末』で作家デビュー。2013年、『月下上海』で第20回松本清張賞を受賞。その他の著書に「婚活食堂」「食堂のおばちゃん」「ゆうれい居酒屋」シリーズや、『風待心中』『ゆうれい居酒屋』『恋形見』『いつでも母と』、共著に『猿と猿回し』などがある。

「2023年 『婚活食堂9』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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