庄屋抜地事件と無役地事件 近世伊予から近代愛媛へ、土地をめぐる法と裁判 (広島修道大学学術選書 49)

  • 創風社出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (565ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784860371425

作品紹介・あらすじ

 本書は、愛媛県を舞台に近世の割地制・庄屋役地と近代の無役地事件・庄屋抜地訴訟を一本の糸で結ぶ作業を試みたものである。明治のはじめ庄屋制度が廃止されたのにともない庄屋役地の所有権の所在が問題となり、旧庄屋と村民の間で争われたのが、この両事件である。
 第Ⅰ部では、明治期における両事件の展開を検討した。第一章は、東・中予地方において展開した庄屋抜地事件の発端から終息までを。第二章は、南予地方において闘われた無役地事件について、これも発端から最後の事件までを。第三章は、両事件を人的側面から検討した。すなわち、原・被告という訴訟当事者のみならず、代言人・弁護士という訴訟代理人の検討を通じて別の側面から両事件を浮かび上がらせようとした。
 第Ⅱ部は、両事件で争われた庄屋役地について、江戸時代=藩政期に遡って、その生成から展開、消滅までを検討した。第Ⅰ部において検討した訴訟の過程をみると、両事件において庄屋抜地や無役地とよばれた土地がいかに設定されたかが勝敗のカギを握る場面が少なくなかった。そこで両役地の設定まで遡るとともに、その後の展開も含めて検討しておくことが必要となった。また、これら庄屋役地の設定は、松山・今治・宇和島三藩で行われた割地制度と密接な関係があるらしいことも分かってきた。そこで第一章では、これら三藩の藩政レベルにおいて割地制度の歴史を検討し、第二章では、村落のレベルに降りて、庄屋役地の設定―展開―機能変化という具体的様相について検討した。第三章は明治初年の庄屋役廃止という事態に、各村レベルでどのように対応したかを検討した。第四章は、これまでの考察を踏まえて、全体として庄屋役地の存在と意義、とりわけその所有主体をどのように考えるかなどの問題について理論的に考察したものである。
 これまでにすでに無役地事件なる訴訟事件の存在は知られており、さまざまに検討されてきた。しかし、基本史料となるべき判決文は、そのすべてが研究者の前に提供されていたわけではなかった。したがって、両事件に関する諸判決を研究者や関心を有するすべての人たちの前に提供することは、それ自体重要な意義を有するとともに今後の研究に資するものとして有意義であると考え、最後に「史料集」として、庄屋抜地事件および無役地事件の判決を翻刻して収録した。(はしがき要約)

著者プロフィール

1949(昭和24)年:愛媛県松山市に生まれる。
大阪大学法学部および同大学院法学研究科で学ぶ。
愛媛大学法文学部教授を経て、現在 広島修道大学法学部教授。
専攻 日本法制史、法社会学。

主著
『近代日本の労働法と国家』(1993年、成文堂)
『法史学への旅立ち―さまざまな発想』(共編、2002年、法律文化社)
『法社会学への誘い』(共編、2002年、法律文化社)
『愛媛県の歴史』(共著、2003年、山川出版社)
『近代日本法制史研究の原状と課題』(共編、2003年、弘文堂)
『マンガからはいる法学入門』(2004年、新日本出版社)
『法と地域と歴史と』(2004年、創風社出版)
『近代日本における社会変動と法』(共著、2006年、晃洋書房)
『マンガから考える法と社会』(2008年、新日本出版社)
『庄屋抜地事件と無役地事件 -近世伊予から近代愛媛へ、土地制度と裁判-』 (2010年、創風社出版)
『里山のガバナンス』 (共著 、2012年、晃洋書房)
『沖縄近代法の形成と展開』(共著、2013年、榕樹書林)
『コモンズ訴訟と環境保全―入会裁判の現場から』(共著、2015年、法律文化社)

「2019年 『伊予松山 裁判所ものがたり【明治編】』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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