自在化身体論 ―超感覚・超身体・変身・分身・合体が織りなす人類の未来

  • エヌ・ティー・エス
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感想 : 8
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784860436858

感想・レビュー・書評

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  • 人間拡張工学、超人スポーツ等、独創的な研究で知られる稲見昌彦教授。彼が主導する「稲見自在化身体プロジェクト」の経過報告が本書である。(超人スポーツはとても面白い試みなので、ネットで検索してみてほしい)

    自在化身体プロジェクトの研究テーマは5つ。①感覚の強化、②物理身体の強化、③心と身体を分離して設計、④分身、⑤合体だ。①と②のテクノロジーで拡張された身体は、③〜⑤のテーマにより自在化へと飛躍する。未来を先取りしたかのような先進的な技術の数々にワクワクさせられる。

    興味深いのは、これが単に科学技術の話に終わるのではなく、脳科学、認知論、心理学、人類学、メディア論と極めて多岐にわたる学際的なプロジェクトだということ、さらに現実世界だけでなく、バーチャルな情報空間をも内包した話であることだ。
    たとえば、ロボットアームを人間に取り付けたとして、それは脳地図のどこが支配領域になるのか、その腕は、本人は元より他者は受け入れられるのか等、研究テーマは果てしない。

    本書は途中経過。2022年末のプロジェクト終了時、また成果を発信するとのこと。世界は暗い話だけではない。

  • すごく面白かった。身体と精神を分離させてそれぞれ自由自在に変容させる、自在化身体の研究内容が紹介されていて、身体に新しい腕や指を追加した時、それをどこまで自分の身体とみなし得るのか、機械によって通常よりも速く・遅く行動するような支援があった時、それをどこまで自分の行動とみなし得るのか、などなど、すごく面白そうな研究が行われているのがよく分かった。
    メタバースという言葉を目、耳にする機会がかなり増えたけれど、よく言われている、現実とは違うものとしての仮想空間ではなく、現実の延長、拡張する先である仮想空間だという捉え方、現実の身体もアバターも、ひとつの自分であるという捉え方はとても面白いと思った。この研究が実際のサービスに適用されるところまで、少しでも早く実現されると良いなと思う。
    220727

  • ロボットやサイボーグやVRの話…かと思いきや、それらに対する人間の知覚、心の話が中心的な印象。新技術がもたらす、新たな環境にヒトはどう順応するか、影響されるか、という心理学、認知科学の観点の紹介が多かった。単なる新技術の紹介ではないところがミソで、面白かった。
    スマホの普及で、自分たちの視点は明らかに変わったと思うが、今後新たな技術が出てくることで起こりうる変化を想像させる一冊。

  • 自在化身体プロジェクトに携わる各研究者の研究内容などが書かれているがどれもSFのような世界。

    しかし驚くべきことにそれらの多くはすでに実用段階に近づいているという点。

    AIやテクノロジーの技術進歩にも驚くがそれ以上に脳の順応能力の高さに驚かされる。

    身体になんらかの欠損がある人にとってそれを補うための道具としてこれらの技術が役に立つのは間違いないし、その分野の進歩も楽しみだ。

    だが、それよりも自在化身体プロジェクトによって人間の身体の潜在能力が開花するのではないかと思いました。

    とても面白かったです。

  • バーチャルリアリティの研究の流れをずっと追えてなかったのですが、私が知っている頃とはまるで視点が異なってきているのだなと感じましたら。
    もちもんここで語られているが最先端でオリジナルなものだから、ということもあるのですが、脳科学や神経科学、それらをHIntと今は呼ばれる、人間とコンピュータの統合に繋げていくという切り口。そこに通底するコンセプトが、身体的、精神的に自在化した身体であると読み取れました。

  • 機械やIT、AI技術を利用して、人の身体行動を拡張する考え方。
    2022年終了の稲見自在化身体プロジェクトについて、プロジェクトに参加しているメンバーが、自分の研究について説明。
    わかりやすい文章であるが、分かったような、わからないような感じ。
    人と機械、ネットワークとの繋がりが、これから急速に進化していくのだろうという事は理解できた。

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著者プロフィール

稲見昌彦(東京大学)

「2017年 『ロボット制御学ハンドブック』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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