同姓同名小説

著者 :
  • ロッキングオン
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  • Amazon.co.jp ・本 (214ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784860520090

感想・レビュー・書評

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  •  川島なお美、広末涼子、小泉孝太郎。松尾スズキ初の短編集に収められた各作品には、有名芸能人たちが主役として登場している…という訳ではなく、あくまで彼らは<同じ名前の別の人>なのだそうだ。
     演劇界の鬼才が放つのは、奇天烈な『同姓同名小説』。あの人と同姓同名の人が抱腹絶倒の活躍をする短編を13編収めている。

     いやいやこれってどう見ても本人やん!などとツッコんだら負けである。深く考えずに有名芸能人(と同姓同名の人)が繰り広げるドタバタコメディを楽しめばいい。軽妙な筆致で爆笑のストーリーが紡ぎ出されていく。
     上祐史浩、田代まさしといった際どい面々を臆することなく取り上げているのも松尾スズキらしい。最初に取り上げられているみのもんたも、今となっては…である。
     こういう、取り上げる人物のチョイスが絶妙なのである。荻野目慶子とか竹内力とか中村江里子とか、脇役だけど原田理香とか、そうきたか!という意表の衝き方が良い。
     他にも文中の比喩表現で<『ディアマンテス』のライブのクライマックスのごとし>(p186)という言いまわしが出てきて、その登場するタイミングに笑った。

     登場人物が芸能人と同姓同名、と聞いて僕が真っ先に思い出したのが津原泰水の幻想的短編「聖戦の記録」(創元推理文庫『綺譚集』所収)だったのだけど、もちろん感触は全然違います。ああいうのは期待しないように。
    ※感触は全然違うけど「聖戦の記録」は、近所のペット戦争を独特の魔術的な文体で書き込んでおいて何故か美しい神話のような余韻を残す、というシリアスなのかギャグなのかよくわからないアクロバティックな作品。未読の人は一読の価値あり。

     作中、芸能界を知り抜いた松尾スズキは的確な人物評をさりげなく繰り出している。あくまで本人ではなく「同姓同名の別の人」なんだけど…。そしてそれを笑いに変えるセンスが只者ではない。それって「芸能界」という不思議な場所の滑稽さを遠回しにネタにしているようで、何気に切れ味は鋭い。で、繰り返すがそれが笑いになっている所が彼の本領発揮なんである。
     なもんでやりたい放題やっている。「田代まさし」の話なんか、わざわざ前後編に分けているのに後編で続きを書くのを放棄して好きな事を書き散らす、という荒技をやってのけている。いいのだろうか、と思うがこの作者ならいいか、とも思う。
     失言で深夜番組『トゥナイト2』を降ろされた「乱一世」の話なんか、面白いんだが冷静になってみると空恐ろしいラストである。
     また「モーニング娘。」の話では中年男の情事とアイドルグループの趨勢の関係性が描かれているんだけど、バカバカしさの中にどこかトマス・ピンチョンの『重力の虹』のような不安感を覚えました。たぶん穿ち過ぎだけど。

     この小説は音楽雑誌「BUZZ」1999年7月号から2002年7月号に連載されたものだ。当時の編集長の言葉によると<人を愛して愛して愛しすぎて、(松尾)氏の妄想と欲望の産物である架空の小説世界の中に登場してしまった>(松尾スズキ公式サイト「松尾ヶ原」より ※更新停止中)という事なのだそうだ。
     うむ、確かに愛は感じる。愛のあるイジり方だ。それぞれの人物の描き方には相当な思い入れがあるんだろうな、とは思う。思うが…。
     そんなこんなでハチャメチャやってきた作者が最後に責任取るように題材にするのは「松尾スズキ」。本人だ。血圧を気にする齢になった松尾氏は兄の人生を振り返る。自分さえもネタにし、虚実が入り交じった怪しい物語は収束していく。
     坂本千明という人が描くイラストも有名人の特徴がコミカルに再現されてていい味を出している。

     作中の主人公を実在の有名人(と同じ名前)にしてしまう事は、読み手がその人物を想像しやすいので作中の世界観に入り込みやすい。一編ごとにエッセイ風だったりシュールだったりと文体が変化するが、違和感なく没入できるのはやはりそのキャラの名前が持つ力なんだろうな。
     まあ各編がそんなに長くないので読み疲れないというのも大きいんだけど。

     有名人をネタにしている以上、世相や時代性が強く刻み込まれているのも特徴だろう。上祐史浩のエピソードでは、平田信や高橋克也、菊地直子といった面々がまだ逃亡中だし、中村江里子がなんかのレッドカーペットをドレス姿で歩いている姿も最近は見かけなくなった。テレビというメディアが作り出した芸能界という虚栄の世界を、演劇界出身の作者は茶化していく。
     90年代の後半から2000年代の前半にかけての、そんな世の中の趨勢も読みとってみるのも一興。あまり真剣に考えずに大笑いしながら読める小説として単純に楽しむのも正解。
    <なんでしょう。なんだろな。どういえば納得してもらえるんだろう、この気分>(p119)
     こっちのセリフだ!

  • 松尾スズキ、初の短編小説集。
    松尾スズキが好きで好きで、戯曲だけじゃ全然足んねえ、と思っていた頃に刊行。
    そらハードカバーで買うわ。1500円、出しますわ。

    初読は2002年。
    ユーロが流通して、雪印がなくなって、ソルトレーク五輪があって、日韓W杯もあって、自衛隊は東ティモールに派遣されて、鈴木宗男が逮捕されて、石井館長も逮捕されて、田中さんがノーベル賞もらって、金正日が拉致事件認めて謝罪して蓮池さん達5人が帰ってきて、タマちゃんは神出鬼没で、猫も杓子もベッカム様だった。
    そして私は色々中途半端ながらもとりあえず身分的には社会人1年目だった。

    芸能人の名前いっぱい出てくるけど「実在の方々とは何の関係もありません。同じ名前の別の人、としてお読みください」とのこと。

    甘えん坊さんの大学生から心の準備体操なしで社会に飛び込んでしまい、泳いでるのか溺れてるのか解んないアップアップの中、築30年のアパートでひとり膝を抱えながら読んだのを思い出す。
    読みながら、「こういうパロディって風化しちゃわないのかなあ」とか余計な心配をして、でもとにかく面白くて、こんなブッ飛んだ小説を書く松尾スズキがいる世界にいられて良かった、みたいな事まで思って、そんでインスタントラーメン食べて寝たのを思い出す。

    先日、久々に再読。
    ホント芸能人って、架空の存在だなあ。空想上の生き物だなあ。河童の類だなあ。ヒロスエ回が全てを物語っていると思いました。
    今はもういなくなってしまった人たちもいるけど、松尾スズキのキレキレのギャグは全く色褪せていないよ!

    第1話「みのが、みのであるために」―みのもんた
    第2話「ピンクレディー復活の日」―ピンクレディー
    第3話「蚕谷村奇譚・なお美の夢」―川島なお美
    第4話「間違えたいの!」―中村江里子
    第5話「上祐の夏」―上祐史浩
    第6話「乱の乱」―乱一世
    第7話「力の魂」―竹内力
    第8話「田代の一番長い日」―田代まさし
    第9話「女優・荻野目」―荻野目慶子
    第10話「広末の秘密」―広末涼子
    第11話「総理の息子と呼ばないで」―小泉孝太郎
    第12話「モニと私」―モーニング娘。
    第13話「上161下105の男」―松尾スズキ

  • ばかばかしすぎなのがお好きな方はどうぞ。ヒロスエがおもしろかった。

  • やる気も無いがルックスがいいのでモデルで小銭を稼ぐ俺は
    公園でみのもんたと出会った。
    それからみのはちょくちょく俺の部屋に来るようになったが
    テレビを全然見ない俺はみのが何をしているのか知らなかった。
    隠し通せないと思ったみのは自分の出ている番組を見せ、
    どちらが本当の自分なのかわからないと言う。
    有名人と「同姓同名」の主人公たちの13編。
    装丁・デザイン:関万葉 イラスト:坂本千秋
    デザイン;遠藤康正、穴井優

    どこまでちゃかしているのかわからなくなりそう。
    何も考えずに苦笑しながら読めばいいと思います。
    断り入れてあるとは言えこういうのって
    芸能人のイメージ戦略的に大丈夫なのかなぁ。

  • みのもんた、広末涼子、小泉孝太郎、安田圭、名前がたまたま一緒な彼が繰り広げる奇行。
    「同姓同名小説」と言い切ってしまってここまでやってしまうのが松尾スタイル。

  • いや、前半笑ったなー。
    みのもんた、川島なお美、昼休みにお弁当食べながらだったんだけど、笑って食べれないくらいだった。

    オウムでは震撼とした。
    出てくる名前がいちいち全部覚えている。顔もはっきり出てくる。
    でも笑える。

    最後の章、だれだったっけ。
    でもあのお兄さんの話って半分フィクションかな。
    とても物悲しくなった。

    松尾スズキ、いいね。

  • 図書館にて。
    同姓同名の別人の話、って書いたからって
    こーんなこと書いちゃっていいのかね???
    この人らしいけど、ご飯食べながらは読めません。

  • 中のイラストも(^^)v

  • 松尾スズキという方の、圧倒的ユーモアセンスがビリビリ伝わってくる作品。


  • 松尾スズキさん、本当に大すきです。
    頭の中、覗かしてください。

    読みながら、これはフィクションだ、フィクションだ、と思いながら読まないと頭がおかしくなるかと思った。





    いや、誰だってそうだ。黙ってろ。黙って死ぬのを待っていろ。

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