沈む日本を愛せますか?

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  • Amazon.co.jp ・本 (365ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784860520939

作品紹介・あらすじ

極論、暴論、しかし読めば読むほどに正論。稀代の論客ふたりが真正面から政治を語った、初めての対談集。

感想・レビュー・書評

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  • とにかく1つの対談が長い。長いだけあって、どんどん予想外の展開をし、「小沢一郎はナロードニキで、鳩山はロシア貴族である」とか奇想天外の結論に到達する。民主党への政権交代とロシア革命との近似性なんて奇説だけど面白くて仕方ないです。(以下引用)

    (内田)何にお金を使うかっていうと結局、医療、教育、介護でしょ? こういうところにどんどん税金を投入して、雇用創出していけばいいんじゃない。(中略)薄給でもいいからさ。でも学校の先生ってものすごくやりがいがある仕事じゃない。給料安くても、生徒から「先生、ありがとう!」とかって言われたりするともう、ぼろぼろ涙が出ちゃって、「ああ先生になってよかった」って思っちゃうんだから。(中略)教育、医療、介護、それから観光。要するにホスピタリティが機軸になっている業種。そういうのって最後にお客さんに「ありがとう」って言ってもらえるから。(P.169)

    (内田)あのさ、大胆な予言をしようか。在日韓国人の3世とか4世とかいう人の中から、どこにも党派的なしがらみのない人が出てくるんじゃないかと思うの。(中略)そういう第三極的な人が出てきて「俺がみんなまとめて面倒みようじゃないか」って調停しちゃうの。(P.206)

    (内田)「核の傘」って言葉って、すごく日本人の中にビジュアルイメージがあって。アメリカが傘を持ってんのね。その端っこの方が日本にかかっているわけ。(中略)で今回はじめて「核の傘」の柄が沖縄に刺さっているということがわかった。(P.234)

    (高橋)テレビはリモコンができてから変わったって言われてる。(中略)最初の5分間で視聴者の興味をひかないとそんないい番組を作っても見てくれない。(P.279)

    (内田)彼らはとにかく「政局」が大好きだから。だって政局だと「通」になれるから。日本の新聞の政治部はアメリカ国務省筋のコネクションのある記者なんていないけど、個人的に付き合いのある政治家はいっぱいるでしょ?そこから記者たちには裏情報がリークされてくる。一般市民にはアクセスできない情報源からの記事が書ける。これが彼らの優越感をくすぐるんだよ。(P.301)

    (内田)縮んでいく日本、静かな日本、人口の減る日本。僕はそれでいいんじゃないかと思うんだ。(中略)縮みながらでも文化的に暮らせて、自尊感情が維持できて、国際社会の中でできる範囲で立派な役割が果たせる国になれれば、それで上等じゃない? なのに相変わらず「右肩上がり」でしょ?(P.309)

    (内田)「普通のレベルの国になる」というとりあえずの国家の目標が達成された段階で、次の目指すところがなくなっちゃったんだよね。本当はさ、そのあとに「アメリカからの自立」っていう国家目標が出てこなくちゃいけなかったんですよ。でも誰もそれを語らなかった。(P.341)

    (内田)アメリカってほんとに、完全にイデオロギーの国家だから。なんの必然性もなくて。まず国家理念が先行して作られた国だから。でも理念だけでできた国民国家ってのは、ほんとに強いね。日本みたいに、もともといた列島民が、住んでるうちになんとなく「じゃぁ国でも作る?」って作ったのとモノが違うわけよ。(P.350)

  • 雑誌「SIGHT」の連載対談。09年の政権交代あたりから2010年12月というタイミングで、日本はそこから3ヶ月後ぐらいに本当に「沈む」ことになってしまい、地獄はまだ続いているのだから、いま読むとちょっと呑気なもんだなーという部分もある。

    「周辺国の米軍基地が縮小してるのに、沖縄だけ強化されてるのは核があるからだ」というのは結構当たってるかも知れないな、という気がした。

  •  政治学者や政治評論家ではない二人(加えてインタビュアーという立場で渋谷陽一も参加)による政治対談集。
     2009年4月21日に第一回目の対談が行われ、2010年8月29日に第六回目の、及びそれまでの総括的な対談が行われている。
     大雑把にいえば、「第45回衆議院議員総選挙」で自民党が大敗、民主党圧勝、いわゆる政権交代が起こり、その後民主党が急速に支持率を下げ、「第22回参議院議員通常選挙」により自民党が民主党を上回る議席を獲得、いわゆる「ねじれ国会」が始まるまで、この期間に行われた対談である。
     それを何故今頃よんでいるのか、といえば、今頃になって当書を買ったから、というただそれだけの理由なのだが。
     改めてその当時を振り返る感覚で読んでみると、これがかなり面白い。
     対談されているお二人(渋谷氏を含めれば三人)には申し訳ないのだが、その後政治がどのように動いていくのかを知っているというのは、「似非優越感」を抱きながら読み進めるということなのだろう。
     あくまでも「似非」であり、しかも政治的思想に基づいた「優越感」ではないので、毒にも薬にもならないが。
     例えば本書の中で「自民党はもう再生しないよね」的な発言があるのだが、その後、民主党と自民党がどうなっていったのか、それを僕たちは知っている訳だ(自民党が再生したのかどうかは疑問もあるだろうが)。
     まさにどうでもいい「似非優越感」なのだし、正直手放しで面白がることも出来ない。
     なぜなら、当書の中で語られている言葉の意味は、今現在、結果を知っている僕らが持っている言葉の意味と大差なく、僕らが現在持っている言葉の意味だって、数年後には「似非優越感」の餌食にならないとも限らないから。
     そういう意味では、面白く読めたと同時に、そら恐ろしい気持ちにもなれる本なのかもしれない。
     まぁ、読んでいると政治的な与太話に思えることもあるんだけれど、それは当書的に言えば「イデオロギーじゃなくて、コロキアルで表現」しているからなのかも知れない。
     もう一つ、あの3.11が起こるのがここに掲載されている総括的対談が行われてから約半年後のこと。
     政治的にも多いに影響のあったことはいうまでもなく、あの未曾有の大災害で大きな被害を被ってしまったのちの対談はここには収録されていない。
     それは続編の「どんどん沈む日本をそれでも愛せますか?」に掲載されているとのこと。
     そちらもいずれ読むことになると思う。
     自民党が政権復帰を遂げた後(つまりつい先日の出来事)の対談があるのであれば、そちらも、出来ればリアル・タイムで読んでみたいと思う。
     ただ、対談があって、編集して、印刷して、本屋の店頭に並ぶころには、現実の政界がガラリと変わってしまっている、なんてこともありそうだから、この手の本ってのは、なかなかリアルと同期を取って読むことは難しいだろうなぁ。

  • 主権国家として自立すれば、国民は投票行動に対して真剣になるし、政治を語る言語も真にリアルになると主張されていました。果して現政権もこれからの政権もそのようなことが可能なのでしょうか。いや、国民が政治家に国の運営を丸投げするのではなく、一緒に政治に参加することによって、その道が拓けてくることに期待しているように思いました。だから、有権者は落ち目のタレントが立候補してきたら首を傾げないとダメでしょ。

  • 最高の娯楽のひとつ。雑誌を、パラパラっていう気軽さで読める、だけじゃなく、話の飛躍やアイデアの突拍子のなさはさすが。特に高橋源一郎のそれと、渋谷よういちの直感。渋谷よういちにもう少ししゃべらせてほしい。内田はかたいなぁーまぁ一人はこういうのも必要だな!政治かも人間だ。小沢一郎サイコーや。
    一方で、くそ、年よりどもが、と思わないでもない。

  • 民主党政権誕生。自民党の大惨敗。あの頃は誰もがこれから良くなる日本に期待した。この著者たちも例に漏れず、民主党を小沢一郎を鳩山由紀夫を持ち上げている。今、この本を読むと虚しい。子供手当、高校無償化、普天間基地返還、事業仕分・・・。うまい話には裏がある。結局、民主党という戦後最大の詐欺集団に騙されて、途方に暮れているのが今の日本国民だ。騙されて失ったものは金銭ではないが、政権交代の時に抱いた希望はすっかり失ってしまった。

  • 今はもう懐かしい民主党時代だけれど、言いたい放題の対談が、本当に改めて面白い。政治に関係ないお二人だけれど、あっなるほどそうだったのかと、すっと腑に落ちることもあり、分かりやすい日本政治論だと思う。

  • この対談は民主政権誕生直後からの1年半の間に行われています。
    第2次安倍内閣の発足から1年経った今読むのもなかなか面白いですね。
    続きも是非読んでみたいと思いました。

    内田先生が「沖縄には核がある」と言う。
    そりゃトンデモだ、と思考停止するんじゃなくて、
    我々国民だって、限られた情報からでも状況を推測することはできるはずですよね。
    しかしあんまりしないわけで。

    メディアは現在も基地の移設賛成か反対かの話に終始してばかりで、
    アメリカの西大平洋地域での中長期的な軍略についてはあまり触れませんしね。

    素人のお二人ですが、専門家の話よりは数倍面白い内容でした。

  • 参院選が近付いてきました。最近の報道を見ると、自民党の先生たちは、株価の動きを注視しているのだそうです。
    株価が急落すれば、安倍政権の支持率が急落し、参院選の結果に直結するからです。
    先日、とある新聞で、今度の参院選の候補者と陣営幹部が実名表記で「株価が下がれば、厳しい戦いになる」という趣旨の発言をそろってしているのを読み、私は訝しみました。
    これは「こいつら目先の金のことしか気にしていないから、株価次第で離れるぞ」と堂々と言っているのと同断だからです。
    それは恐らくかなりの確率で事実でしょうが、そこは建前でも「私は、有権者はそんな短期的な株価の動向で投票先を変えるほど愚かではないと思います」と鷹揚に構えて言ってほしい。
    つまり、政治家は国民を信頼していないのですね。そして、合わせ鏡のように国民も政治家を信頼していない。それを政治家も国民も、特段おかしなことだとは多分もう思っていない(だって、こういう記事が堂々と紙面に載ってしまうんですよ)。
    これが現在の政治状況の「常態」なのだと、記事を読んで改めて感じた次第です。
    本書は、2010年10月の発行ですから、今度の参院選どころか昨年末の衆院選も話題にしていません。扱っているのは民主党への政権交代前夜から鳩山政権、菅政権、そして日本の政治をある意味では体現している小沢さんが代表選に敗れるまで(2009年3月~2010年10月)の政治動向。今や日本の知性を代表すると言っても過言ではない(かなりユニークですが…)内田樹さんと高橋源一郎さんが、面白おかしく縦横に語り尽くしています。
    読む人によっては、ニヒリズムに走り過ぎている嫌いはあるかもしれませんが、巷間目にすることのない鋭い政治批評となっていて、何度も膝を打ちました。
    たとえば、民主党政権誕生前夜の自民党の状態について、高橋さんは「小泉さんのところで死ぬ予定だったのに、延命装置で薬ガンガン打たれて、無理矢理生かされて。安倍さんも福田さんも『早く呼吸器外してくれ』って、ふたりとも自ら外したのに」ですって(笑)。「ゴルバチョフが小泉だった」なんて卓見だと思います。
    一方、民主党の致命傷は「日本語下手」とか。
    「日本語が下手っていうのが、民主党が対抗的な、自民党の生産的な対話者になれない最大の理由なんだと思う。菅直人も、鳩山由紀夫もダメだしね。とにかくみんな言葉が下手なのよ、コロキアルな言葉がね。それは自民党のほうが達者だよ。政策のホット・ポイントを『あ、これはですね、平たく言えばこういうことなんですよね』って、普通の人にわかった気にさせる技術は」(内田さん)
    菅政権発足時の支持率が66%(!)だったことについては、内田さんが次のように指摘しています。
    「現に菅直人は、前政権の副総理で財務相だったわけで、もし鳩山内閣が政策的にダメで、機能不全だったとすれば、副総理はその共同責任者でしょう。逆にもし彼が、鳩山時代には影響力をまったく行使できなくて、本当はやりたいことがあったのだができなかったということであれば、副総理でありながら、総理大臣の政策決定に関与できなかった無能な政治家ってことになる」
    本当にその通りですね。
    「小沢さんは吉本隆明だ」というのも、すごい洞察力だなと感服します。
    「大衆の原像を抱えているから、どんなに敗北してもくじけない」(高橋さん)
    「(小沢さんは)検察・霞ヶ関・マスコミっていう、日本のエスタブリッシュメントに対するある種の批評性なんだよ」(内田さん)
    なるほどなぁ、と思いました。
    ほかにも、いろいろありますが、そろそろ疲れてきたので止めます。忙しいし(なら、レビューなんて書くな)。
    参院選が近付いてきたので、あらためて政治について考えようと本書を手に取った次第ですが、率直な感想は「そりゃ、政治不信も深まるわけだ」でした。おしまい。

  • 本人たちは嫌だろうけど、今(2013年)読むと最高に面白い。皮肉でなく今読まれるべき本。

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著者プロフィール

東京大学フランス文学科卒業。武道家。凱風館館長。専門はフランス現代思想、ユダヤ文化論、映画論。『私家版・ユダヤ文化論』で小林秀雄賞、『日本辺境論』で新書大賞。第三回伊丹十三賞受賞。

「2018年 『待場の読書論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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