トヨタ式 鬼十訓 私が大野耐一から学んだこと

著者 :
  • あさ出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (231ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784860632205

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  • 開始:20071216、完了:20071216

    「時間をかけても確実に「改善力のある人」を育てる。」とあるが、まさにその結果が今のトヨタを支えているのだと思う。自分がいなくなったとしても企業がきちんとまわるようにする、そしてそれをどれだけ長期で考えられるかが、経営者のあるべき姿ではないか。本書は、トヨタの大野耐一氏の弟子が大野さんの言動に触れながらその思想を解説する内容だ。以下、気になった言葉。大野耐一の鬼十訓。1.君はコストだ。まず無駄を削れ。それなくして能力は展開できない。2.始めたらねばれ。できるまでやめるな。中途半端はクセになる。3.困れ。困らせろ。安易を好む人と決定的な能力格差がつく。4.ライバルは君より優秀だ。すなわち君は「今」始めることでのみ勝てる。5.仕事に痕跡を刻め。十割命じられても十一割めを自前の知恵でやれ。6.平伏させず心服させろ。そjのためにはだれより長い目で人を見ることだ。7.「できる」とまず言え。そこに方法が見つかる。8.失敗を力にしろ。真の自身そして運さえリカバリーから生まれる。9.労働強化を避けよ。人間「ラクになるには」に一番頭が働く。10.お客の叱声は成功の呼び声だ。逃すな。いじけるな。考え抜け。トヨタ時代とトヨタを離れてからでは大野さんへの味方ががらりと変わった。大野さんの言っていたことのすごさ、すばらしさを本当の意味でわかるようになったのは、私がそうであるように、トヨタ以外の会社で経営やトヨタ式の普及にかかわるようになってからだった。大切なのは「人間の知恵、人間の可能性を信じる」「人の知恵を活かすことで人を育てる」という姿勢。大野さんの根底にはそれが揺ぎなくあった。不良品を隠すな。大野さんがすごいのはみんなが「仕方のないもの」とあきらめかけていた不良を、本気でゼロにしようと考えていたこと。①視える化、②「なぜ」を五回繰り返す。「不良品=失敗=自己責任」の図式からまず逃げたいのが人間の習性だから、失敗を隠し、「あとで自分でなんとかしよう」と考えてしまう。小さな数字を集めろ、大きなムダが見えてくる。小さな部品だからみんな気にもとめないが、もしお金だったらどうする。拾うだろう。さっき計算したような金額なら、必死で拾うんじゃないか。原価意識は「節約しろ」「コストを下げろ」とただ命令するのではなく、原単位、基準原価を明確にすることでより強く身につくことになる。苦労して作ったデータをもっていくと「なぜ過去の実績がそのまま将来のベースにのなるのか」と根本的な疑問を突きつけられる。「こんなことをする暇があったら現場を見てこい」。鈴村さんはこういわれた。「お前が仕事をすると会社が損をする。黙ってなにもせんのが一番会社のためになる。」一般には過去の実績をもとに将来の予測を立てることが多い。だが、大野さんによれば「過去の実績にはたくさんのムダが含まれている。それをベースに将来を予測するのは、ムダの放置と同じである。まずは、いかにムダを省くかを考えることが先決だ」生産性で自分をはかれ忙しさは生産性ではない。
    ①大量生産方式、見込み生産で「在庫を抱えていてもずれ売れる」と考える、②トヨタ生産方式、市場で売れる「必要数」を厳密にとらえ、売れるモノだけをつくる。モノづくりにおける最大のムダは売れないモノを売れると思って勝手につくること。「必要数」とはなにか、それは「売れ行き」のこと。「必要数は市場から与えられるもの」。見込み生産とは勝手に「これだけ売れるだろう」という需要予測を立てて生産すること。「必要なモノを、必要なとき、必要なだけ」つくるのが仕事。これをトヨタ式ではジャスト・イン・タイムと呼んでいる。わかったつもりになるな。「まだ」に発見がある。「チョークで円を書け」「円の中に立って現場を見てろ、昼飯を食べたら、もう一度ここにたっていろ、どうしても離れるときはだれかに声をかけていけ。」「現場の人たちの作業のやり方を見てみろ。おまえが『改善できました』と言ったがお前がやった改善のせいでかえってやりにくくなっていないか。問題があるとわかったならすぐにもう一度改善しろ。」円の中にたたせることで、①現場をしっかり見ること、②改善の結果を見届けること、を教えた。問題があれば、真因がわかるまで現場でじっと見ている。なにか思いついたらすぐ現場に行ってそれが正しいかを確認する。かんばんが「見つからないと言うがなぜ見つからないかわかるか」「簡単だ。おまえが見つかるまで探してないからだ。」「見つかりました」と報告すると「よくやった」ではなく「それで対策はとったのか」だった。1000個のうち不良の3つはあきらめるべき例外ではなく、大切にすべき例外なんだ。改善したところをまた改善zしてさらに改善しろ。自分の改善したところをさらに改善できる人が真のプロフェッショナルである。改善は死ぬまでの仕事だと考えていた。みんなを困らせるのが仕事だ。台数増やす必要があったら、「人を増やさずにやれ」。トヨタ式は増え続ける注文に少ない人数でいかに応えるかを必死で模索する中で生まれてきた側面がある。仕事は「可能か」で決めるな、つねに「必要か」で決めよ。段取り替えには二種類ある。①内段取り、機械を止めなければできない段取り替え、②外段取り、機械の稼動中、あるいはあらかじめ行える段取り替え。不可能に見える目標は人をとことん困らせると同時に、いったん「よし。やろう」となったら人の挑戦心をかきたて、頭脳をフル回転させる。リーダーは「あのとき大野さんが『シングルでやれ』と言わなかったら、シングル段取りのアイデアは生まれなかったかもしれない」と語っている。不可能と思える課題は思いもかけないアイデアを生む。「やる前からなぜできないとわかる?おまえは易者にでもなったつもりか」。トヨタ式の基本は「まずやてみよ」である。「そうか、それはよかった。わしも自動搬送機を撤去しろと言ったものの、その後どうしたものか正直言って自信がなかった。作業者に迷惑がかかっているのではないかとずっと考えてきた。現場というものは追い込まれると驚くような知恵を出すもんだ。そうか、本当によかった。」絶対に答えを教えることはしない。大野さんの改善の基本は「現場の人たちをいかにラクにするか」にある。
    部下指導のやり方、言いたいことが10あってもそのうち2ぐらいしか言わない。あとの8は言われた人間が自分で考える必要がある。「ここにムダがある」とは言うものの「どこをどう直せ」という答えは絶対に教えてくれなかったものだ。部下指導としては非常に時間と忍耐のいる方法だが、大野さんは「自分で考える」ことこそが大切であるという信念を貫いた。手取り足取り教え、答えを教える上司がいると「お前は教育ママだから部下が育たない」と手厳しくしかっていた。人間はとことん困り果てて「どうするか」を考えると知恵が一つ二つ生まれてくるものだ。人を動かすには気持ちを揺さぶる、揺さぶるには困難を持ち込む。夕方「ここを直しておけ」と言った場合には、翌日の朝早く「直ったか」と見にくるのもざらだった。①問題に気づいたらすぐ直す、②直ったかどうかは必ず目で確認する。「君もやっとやる気になったか。君たちがやる気になったらそれでいい」。「今度やります」と先延ばしする姿勢を大野さんはもっとも嫌っていた。ヤマやタニをつくらず、ひごろから平準化しておけば、ヤマにあわせて人を採る必要はない。「わしの言う通りやるやつはバカ、やらんやつはもっとバカ。もっとうまくやるやつが利口。」人間の知恵がつかないと競争には勝てない。人件費の安さだけを頼って安いモノをつくろうと工場を海外に移転すると、その国の人件費が上がると、さらに安い所を求めて移動を繰り返すことになる。人件費の安さに頼らず、知恵に頼って安くていいモノをつくるのがトヨタ式だ。
    「本物のかんばん」が協力会社の体質を強化するのに対し「嘘のかんばん」は協力会社をつぶす恐れすらある。在庫を持ちたくないという理由で、かんばんを協力会社に押し付けるから。教えるな、気づかせろ。「お前の役目は全部を用意することではない。みんなの知恵を引き出し、この会社の人が自分たちの手でラインをつくる手伝いをすることだ。勘違いするな。」怖い存在ではあったが大野さんは権限や権力をふりかざす人では決してなかった。その態度はつねに一貫していた。力で平伏させるのではなく、態度で心服させるのがトヨタ式上司である。「仕事は権限や権力でやるもんじゃない。自分の職務、権限をどんなに大きくしたって、決していいモノができるわけじゃない。必要なのは、現場の人たちに対するねばり強い理解と説得なんだ。結局のところ、モノづくりは人づくりであり、ひとの指導の仕方いかんなんだ。」時間をかけても確実に「改善力のある人」を育てる。抵抗する現場の人を納得させるためにもっとも重視したのは「やってみせ、つくってみせる」ということだった。「部下に命令なり指示を出すときは、同時に自分もその命令、支持を受けたと思って考えにゃいけんぞ、ということをよく言って聞かせるんだ。」「部下が『どうしてもできません』と言ってきたときに『ああそうか』と言うだけでアドバイスもできんならそんな命令出すなと言いたい。」できない言いわけをいくら上手にしたところで問題が解決するわけではない。TさんやSさんのアドバイスを受けながらなんとか解決策にを見つけることができた。上司は部下が考えることを助け、自分の頭で考えることのできる部下を育てる責任を負う。考えることを部下に丸投げし、答えも持たず、なんのアドバイスもできないようなら、その人は上司である資格などないというのがトヨタ式の考え方。大野耐一さんがトヨタ生産方式を確立するうえで、ヒントをもらったのは、①豊田佐吉さんの「自働化」、②豊田喜一郎さんの「ジャスト・イン・タイム」、③フォードの流れ作業、④テーラーの科学的管理法、かんばん方式はスーパーマーケットから。「読んだことはあまり役立たんもんだ。やってみなくてはいけない。」人間、なかなか人の言うことは聞かないものだが、ところが実績のあるものには弱いんだな、当時アメリカは偉大だったし、日産やいすづのほうが数段進んでいるとうちの連中はみんな思っていた。だからそれを利用して「これはアメリカでやっているらしい」とか「この方法は日産でやっているから」といってやらせたときもあった。とにかく思ってもやらんきゃなんにもならないからね。「知恵がない、知恵がないから、時間がない、人がいない、ということになる。もっと知恵を使って仕事をしろ」「おまえには多くの部下がいる。人間は真剣になれば、どれぐらい知恵が出るかわからん。なのに部下たちの知恵をまったく無視して、できませんとはなにごとだ」。やる前から「できません」と言い、部下の知恵を引き出そうとしない態度にがまんがならなかった。この管理職は部下の知恵を信じないうえ、知恵の出る部下を育てようという意識がなく、その結果、重要な「まずやってみる」姿勢が欠けていたことにある。大野さんの信条は「人間はすごい。人間の知恵は無限だ。」すべてはまず自分がやること。「よそがダメ」を理由にするな。「自分のところはいいのですが、よそがダメなのでうまくいきません」と報告すれば、「問題があっても代案を考えないのは、『越権行為だと遠慮する』のではなく責任転嫁である」というのが持論。多忙を改めてたいなら、仕組みを改めることだ。仕事ぶりに目を奪われてしまうと改善ができなくなる。危機イコール「知恵を出すチャンス」であった。「これまでだれも経験したことのない危機的状況になって、そのときに最後までがんばるか、途中で音をあげるかで人間の値打ちが決まってくる」大野さんは問題を発見すると「すぐに直せ」と怒る短気な面がある一方で、人を育てることに関しては実に忍耐強かった。「嘘をつく人間は悪いが、だまされるほうはバカだ。」現場の改善ができるレベルを「治療士」という。現場はたんに診断しただけではダメで、治療、つまり改善をすることで初めてよくなる。
    最終的には「あの工場を黒字にしてこい」という経営レベルの治療士へと育てあげていった。「利益を出さないと仕事をしたことにはならないぞ」という言葉は経営改善ができるレベルにまでなった部下が巣立つはなむけの言葉だったんかもしれない。利潤で決めていいが、利潤だけで決めてはならない。流行でロボットを入れるな。大切なのは原価低減。ロボットを入れれば3人抜けますよ、というが、3人抜いたとしてその3人はなにするんだ、と聞いた。人間を機械の万人にするような人間軽視の考え方が大嫌いだった。つくれないものを外注に出すのか?トヨタがうまくつくれないものを外注に出して、もっとうまくつくってくれると期待しているのか。もしそういう会社があったら頭を下げて教わりに行け。もちろん給料はその会社以下だ。外注に無茶を言ったり、犠牲をしいたりするようなやり方はいっさい認めなかった。サプライヤー育成は大切であり、一番むずかしい仕事こそトヨタが率先して引き受け、そこから得たノウハウをサプライヤーに教えていくことこそ大切だというのが大野さんの考え。トヨタ式に「前工程は神様、後工程はお客様」という言い方がある。部品や部材を供給してくれる協力会社は自分たちにできないことをしてくれる「神様」であり、後工程はすべて「お客様」と考えて絶対に不良などを流してはいけない、という意味だ。お客様は消費者だけではなく、自分の前後左右にたくさんいる。むずかしいことはやさしく言え、やさしいことは繰り返し言え。「一緒にやる」ことの大きな意味。現場の人たちと一緒に知恵を出した、みんなが残業していれば最後まで付き合った。「大野のいうようなやり方をしていたら、会社はつぶれてしまうという批判がありましたが、こっちはこっちで『おまえらのようなやり方をしていたのでは、逆に会社はつぶれてしまう』と思っていましたからね」。

  • 実際に現場にいた方の著書だけあって具体例から「どうしてトヨタはあんなに強くなるのか」が透けて見える本です。十訓に纏めるあたりが巧いところですよね。

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