気象災害を科学する (BERET SCIENCE)

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  • ベレ出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (271ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784860643942

作品紹介・あらすじ

「これまでに経験したことのないような大雨」「近年にない大雪」「観測史上最大規模の台風」「甚大な被害をもたらす河川の氾濫や土砂災害」…。科学技術が発展した現在でも、気象災害で亡くなる方が後を絶ちません。本書では、日本で発生した気象災害の事例をふまえて、激しい気象や気象災害はどういうメカニズムで発生するのか、予測はどこまでできるのかを解説。命を守るために私たちがするべきこと・考えておくべきことも紹介します。

感想・レビュー・書評

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  • [2015.2]雨や雪、台風や竜巻などの気象現象が起きる原因と、それらがもたらす災害にどう対処するか考えさせられる本。
    気象予報士試験のような複雑な計算式などではなく、言葉で気象現象の原因を説明してあるので、誰でも理解しやすいと思う。
    2013年と2014年に豪雨災害を経験したことが、どうすれば気象災害を防げるか、または被害を軽減させることができるのかを考えるきっかけになった。
    自分にできることは限られているが、勉強していざという時に情報発信によって人の命を守れる人間を目指したい。

  • 巻末に1988年までは死者・行方不明者100名を越える主な気象災害(台風、豪雨、豪雪、竜巻)を89年以降は25名以上の主な災害が掲載されている。

    1945年枕崎台風、1947年カスリーン台風など5年間で死者は5100人、行方不明者は2900名を越えた。50年代伊勢湾台風だけで死者4697名など死者/行方不明者11000以上/3200名以上、60年代死者1968名/325名、70年代死者939名/41名、80年代832名/38名、90年代死者行方不明者合計553名、2000年代以降は14年2月の大雪まで788名、もちろんこの中に含まれていない災害はまだまだあるが60年代以降気象災害による被害者数が
    激減している事がよく分かる。それでも90年台以降は平均すると年間50名を越える犠牲者が出ている、今年も8月の広島土砂災害で74名という過去30年で最大の被害者を出している。99年6月29日に同じく広島で発生した豪雨災害がきっかけで土砂災害防止法が成立したが今回被災した個所の一部も警戒区域に指定されていなかった。

    ゲリラ豪雨という言葉は1969年8月に使われた記録がある。広く用いられるようになったのが2006年ごろからで2008年には流行語大賞に選ばれた。特に2008年8月豊島区の雑司が谷の下水道工事で5名の方が流された極地的な豪雨でそれまではあまり意識されていなかった都市での集中豪雨による災害がクローズアップされた。この時大雨洪水警報が出たのは事故の50分後で、現場近くの雨量計は1時間に43mmの雨を記録している。現場で雨が降り始めたのが11時40分、マンホールを通じ今日は作業が中止になるかも知れないと注意をしたころ急に雨が強まり、避難支持をしたが間に合わなかった。

    つくばの防災科学技術研究所で当時そこにしかなかったXバンドMPレーダーでデーターを解析したところ実際には1時間に109mmという雑司ヶ谷付近だけの局地的な豪雨だということがわかった。東京都の雨量計が100mmを越える雨量を計測したのは過去10年で2回ほど。通常の豪雨では雨域が数十キロに渡るのに対しこの時は関東地方で100を越える積乱雲が発生したにもかかわらず、激しい雨が降ったのはわずか2.75平方kmと豊島区の1/4程度の範囲だけだった。アメダスの観測網は17kmおきでしかなく、この豪雨は捉えきれなかった。

    大雨をもたらす積乱雲が発達するしくみはこうだ。湿度の高い空気が何らかの理由で上空に持ち上がったとする。上空に行くほど温度が下がりある高度を超えると水分が凝結して雲が出来る。水が蒸発するときに熱を奪うのとは逆に凝結すると熱を発するので熱の下がり方が緩やかになる。自由対流高度を超えると周囲の空気よりも雲のある場所が温かくなりさらに上昇していく。雲の上部では上昇気流が発生して周囲から風が吹き込みさらに雲が成長していく。早送りで積乱雲が成長する姿が見えるときこういうことが起こっている。

    雨が降るのには2通りのモデルがあり水滴同士がくっついて自然落下する温かい雨と、一旦氷晶ができてから成長し霰となってから解ける冷たい雨がある。雲の下部では雨粒の落下や融解や蒸発で空気が冷やされたりが原因で下降気流が出来る。この組み合わせを対流セルと呼び通常1つの対流セルは30〜50分で成長して雨を降らせ衰弱する。一つの対流セルが降らす雨の量は日本の夏の場合せいぜい20mm、豊島区のケースでは同じ場所に入れ替わりで5つの対流セルが発達したと考えられる。気象庁のレーダーでもこの事が裏付けられた。また激しい雨がふるとその下降流が周囲の空気を持ち上げ新たな対流セルを作る事も分かった。

    梅雨前線のように冷たい空気が温かい空気のしたにもぐり込む様な場合では雲が移動した後に新たな対流セルが生まれるバックビルディングという現象が明らかになったのだがゲリラ豪雨の場合「なぜ同じ場所に」というのはまだはっきりしないらしい。気象レーダーでは雨雲の3次元構造を解析するのに5分ほどかかり、空間解像度も1kmほど。1分間隔で解析できるフェイズドアレイレーダー(イージス艦か!)が今年配備される予定だとか。ただそれよりも自分が住むところの流域を理解する方が実際には役に立ちそう。雑司ヶ谷の下水道はもとは弦巻川のあったところで周辺の水が流れ込む地形になっていた。2010年の内閣府のシミュレーションでは荒川が北区で決壊すると想定したところ地下鉄17路線97駅が満管という駅またはトンネルの上端にまで浸水している。皇居の西側の新宿から青山辺りの台地部分を除けばほぼ水防対策なしでは満管になっている。

    竜巻の出来方もなるほど。上空と地面近くで風向きが違うと地面に水平に風の渦が出来上がる。それから渦のどこかが上昇気流で持ち上がると縦の渦になり、引き延ばされると渦の径は小さくなる代わりに回転が早くなる。フィギュアのスピンと同じ理屈だ。また豪雪の被害も目立たないがなかなか減らない。被害の多くが雪下ろしによるものだからだ。

  • 気象災害の仕組みや、それを軽減するための取り組みが分かりやすい。
    気象予報士試験には直接は関係ないけど、気象の知識がない人でも読みやすいと思う。

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著者プロフィール

1964年、福島県生まれ。
防災科学技術研究所 水・土砂防災研究部門 部門長 総括主任研究員。
筑波大学 生命環境系 教授(連携大学院)、鹿児島大学 客員教授、東京理科大学 客員教授。
名古屋大学大学院理学研究科 大気水圏科学専攻 博士後期課程 修了。
博士(理学)(名古屋大学)。科学技術庁 防災科学技術研究所、文部科学省 研究開発局開発企画課などを経て、2016年4月より現職。
専攻は気象学(雲物理学)で、災害を引き起こす激しい雨の発生機構や、降雪粒子のモデル化について研究している。
趣味は天体観測(月面スケッチ)、水泳、相撲観戦など。

「2020年 『47都道府県 知っておきたい気象・気象災害がわかる事典』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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