異常気象と気候変動についてわかっていることいないこと (BERET SCIENCE)

  • ベレ出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784860644154

作品紹介・あらすじ

毎日のようにニュースに出てくる異常気象や気候変動の話題。気象学では異常気象や気候変動について、どこまでわかっているのでしょうか。日本の天気を見ているだけではわからないことも、地球規模に視野を広げていくと見えてくるものがあるのです。
本書は、異常気象や気候変動の基本的なしくみを説明し、最新の研究を紹介。気象学の最前線で活躍する研究者たちが、地球規模でリンクする異常気象と国境なき気候変動について解説します!

感想・レビュー・書評

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  • 温暖化による異常気象の影響というのはあるのか、あるとすれば一体どういうメカニズムか、そもそも異常気象とは何なのか、それが知りたくて手に取ってみたが、内容的には期待外れであった。

    偏西風の蛇行が異常気象の原因、その偏西風の蛇行についての定性的な理解を深めるきかっけにはなったが、その程度。

    温暖化を確実視している著者、IPCC執筆者も含まれる、ゆえにIPCCをベースとした考え方である。温暖化の影響を議論するとき、シミュレーションの結果は妥当性に疑問が残る。本書の中でもまだまだわからないことが多いとしているので矛盾を感じた。


    ◯ベースの気候
    ・平年とは過去30年の平均を表す、気象庁は10年おきに1がつく年に更新。
    ・日本の南の海は太平洋の中でも暖かい領域
    ・テレコネクション: 遠く離れた地域の気象がある関係を持って変動すること。
    ・PJ(pacific Japan)パターン: 気圧の凹凸の波の間隔は数千キロ単位であり、熱帯での気候が日本に影響。
    ・熱帯太平洋では偏東貿易風が吹き、温められた表面の海水が西に運ばれるため西側のが温度が高く、対流活動が活発。
    ・エルニーニョはこの東風が弱くなり、西の海水温が上がらず、東(ペルー沖)の海水温が上がる現象、ラニーニョは逆。台風の発生場所もずれる。
    ・季節変動: 30〜70日くらいの周期の変動、梅雨の中休みと呼ばれる晴天などはこの対流活動の変動によるもの。台風の発生や進路にも大きな影響を与える。
    ・シミュレーションを難しくする一つの理由は大気海洋相互作用で、活発な対流活動により積乱雲が日射を遮ることと、多量の降水による冷却効果で、西部太平洋だけは水温上昇と降水量の増加の傾向が逆になる。
    ・冬の西高東低は季節風を生み日本列島に寒気をもたらす。これは大陸で放射冷却により大気が冷え重くなることにより高気圧になり(シベリア高気圧)、海洋側は暖かいために相対的に低気圧になる(日本の東のアリューシャン高気圧)関係により形成される。
    ・夏は太平洋高気圧が暑さをもたらす。

    ◯偏西風の蛇行と異常気象
    ・高度10kmまでの対流圏で、夏も冬も中緯度から極地までの間は西風領域、赤道付近は東風。特に安定した中緯度でよ西風を偏西風という。
    ・偏西風は冬の方が最大風速が平均40mほどと強い(北半球南半球で交互)
    ・高度は10kmちょいが風の強い領域でたジェット気流という。同じ緯度でも地域によりその強さは異なる。
    ・上層ほど偏西風が強くなるのは、赤道側の気温が高く、極側の気温が低い状態を表す。ろ
    ・偏西風が蛇行すると、高緯度側にズレるところと低緯度側にズレるところが生まれ、それぞれに異常気象が起きる。特に冬に多い。
    ・偏西風はそもそも蛇行している。北半球から見て同心円ではない。ヒマラヤゆロッキーのような山脈、海と陸の間の熱的コントラストが蛇行をもたらす。
    ・偏西風の蛇行が季節風に与える影響
    1. 西太平洋パターン
    偏西風が日本付近で平年より南下、このときシベリアの中心付近で東風が強くなり、ヒマラヤの方へ向かい、山脈に跳ね返されて極東中緯度域を寒波で覆う。
    2. ユーラシアパターン
    中央シベリア付近で高気圧性循環、その前後ヨーロッパ付近と極東中緯度付近で低気圧性循環になり、日本の冬の季節風が強まることになる。
    3. シルクロードパターン
    夏場、大陸は暖まり、湿った季節風がインド洋から吹くため山脈に雨を降らせる、これにより暖まりジェット気流を北へ蛇行させる。この蛇行が日本まで伝わり高気圧性循環をもたらし暑い夏をもたらす。
    ・他にも色んな蛇行パターンがあるが、総じて蛇行の原因はよくわからない。
    ・エルニーニョやラニーニョも偏西風の蛇行をもたらす要因の一つ、異常気象は様々な要因をもとに偏西風が蛇行して起きる。

    ◯温暖化との関連
    ・人が生活している上で感じる気性の変化はほぼ間違いなく自然変動によるもの。
    ・平均的な雪の減少

    ◯大気汚染
    ・PM2.5は新しいものではなく、高度経済成長期には高い状態にあったが、09年まで環境基準が定められてなかったちめ多地点での観測がされてない。
    ・PM2.5と光化学オキシダント(太陽光に当たって生成される酸化物質)が日本中広範囲で基準を満たしていない
    ・エアロゾル(大気中の粒子状物質)は0.2μmと4μmに分布が集中。エアロゾルは太陽光や赤外線を散乱させたり、雲が形成される時の核となる。エアロゾルは放射強制力を強めるメカニズムも弱めるメカニズムも含まれているが、総合すると弱める効果のが大きい(IPCC)雲の量がふえたりすることで太陽光を拡散しやすくする「

  • 気候学、気象学の知見を知ることができる。「政治の言葉」抜きで。
    気象現象は複雑で、人間がすべてを理解できたとは言えないと考えるのが妥当であり、こうした知見を踏まえないような言説には賛同できないとの思いを新たにすることができた。

  • http://lifememo​.jp/books/clima​te-abnormal-wea​ther-book/?utm_​source=dlvr.it​&utm_medium=twi​tter

  • 温暖化、大雪、PM2.5など、一般の人にもなじみの深い気象現象などを第一線の科学者がわかり易く説明してくれています。
    データは専門的でもかみくだいて説明されているので、専門でなくても理系の高校生(おおざっぱな理解なら中学生でもなんとかいけるか)や大学教養くらいなら充分理解可能かと思います。

    第五章では近年話題のPM2.5について詳しく説明があります。
    ・PM2.5の濃度が高くなり、大気が霞む状態を、気象用語では「煙霧」という、とのこと。
     ・・・ 以前、東京が非常に霞んで、TVで「煙霧」が発生と言っていましたが、状態を表す気象用語と、その実態が何であるかという知りたい事はまた別ということなんですね。気象はとても身近なので、天気予報や気象用語の意味するところをざっと知っておきたいと思いました。
     
     
    第一章 熱帯と異常気象 (梶川義幸)
    第二章 偏西風の蛇行と異常気象 (高谷康太郎)
    第三章 寒波と異常気象 (堀正岳)
    第四章 日本の雪と異常気象 (川瀬宏明)
    第五章 大気汚染と気候変動 (竹村俊彦)
    第六章 太陽紫外線と気候変動 (竹下秀)

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著者プロフィール

横浜国立大学教育学部 准教授

「2019年 『ニュース・天気予報がよくわかる気象キーワード事典』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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