世界史劇場 ナチスはこうして政権を奪取した

著者 :
  • ベレ出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (291ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784860644819

作品紹介・あらすじ

まるで劇を観ているような感覚で、楽しみながら世界史の一大局面が学べるシリーズ。なぜ、当時世界で最も民主的と言われたドイツのワイマール憲法下で、ナチス独裁政権が誕生したのか? 本書では、ヒトラーの生い立ち、イタリアの全体主義にも触れつつ、第一次世界大戦直後から全権委任法成立までの欧米の歴史を描きます。歴史が“体感できる”“見える”解説とイラストで、独裁の成立過程の実態に迫ります。

感想・レビュー・書評

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  • この人が書いた本わかりやすいですよ。絶対読んだ方がいい

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/688322

  • 2010年完済したとみなされる賠償金支払いはドイツ経済破綻主因ではないという説もある
    理解りやすい解説だが他の解説も色々読んでおく必要はある

  • 当時のドイツ政権の仕組みとは?ヒトラーは一体何をした?分かりやすくコミカルに学べる歴史本。

  •  河合塾の先生による「世界史劇場シリーズ」の、第一次世界大戦が終わってから第二次大戦が始まるまでを扱ったもの。ドイツを中心としたヨーロッパ全体の動きが分かる。逆に言えば、ドイツ国内の話だけではなく、国際連盟の話からヴェルサイユ体制、イタリアの話、世界恐慌の各国への影響なども含めて、どういう事情でドイツが追い込まれ、最終的にヒトラーが出てくるのかというプロセスが分かる。
     この著者の本は4年前に読んで以来の2冊目だが、「歴史エヴァンジェリスト」を名乗るだけあって、やっぱりだいぶクセがあることがだいぶ気になった。「汚い真実」みたいなのをとにかく強調しまくるというクセ、やたら難しい漢字とか変な(この「変」にカタカナで「オーセンティック」と読ませたくなるような)ルビが多いというクセ、「しかし。」「のみならず。」という活動弁士?のような文体上のクセ、と色々あるけど、その辺が気にならない人にはとても面白く、当時のヨーロッパ各国のややこしい動きが頭に入ってくる構成になっている。
     ナチスとかホロコーストに関わる本は何冊か読んでいたけど、例えばゲッベルスが1932年11月の選挙で「共産党と手を組めば、一気に政権を獲れる!」(p.263)とか考えていたとか、1933年3月の選挙ではヒトラー自身が「『憎っくきユダヤ人ですら味方につけねば』とばかり、自ら『ユダヤ批判』すら封印してまで臨んだ」(p.274)とか、後で徹底的に敵にする人たちにもその過程ではこんなことがあったんだというのを知らなかった。あとはヒトラーの暗殺未遂の話は有名だけど、その1つミュンヘンのビアホール「ビュルガーブロイケラー」で起こった演説、「ヒトラーは予定通り午前8時に入店し、まもなく演説が始まりました。例年9時20分ごろに演説は絶頂を迎え、30分ごろに終わるのですが、まさにその9時20分。突然、ヒトラーの立つ演壇を中心に爆弾が爆発!!」(p.184)したけど、「じつはこの日に限って、彼はどうしてもベルリンに戻らざるを得なくなり、急遽、演説時間を予定より早く切り上げ、爆発の8分ほど前に店を出ていたため、まったくの無傷でした。」(同)とあるけど、これが本当なら、でもどうせ爆発させるなら演説を人々に聞かせる前に爆発させた方がいいだろうになんで終盤で爆発することになったんだろう、とか思う。ところで、暗殺されるのを防ぐため、「通常独裁者は『スケジュール通りの行動』を取りたがらないもの」(同)というのも、言われてみればそうなのかもしれないと思った。あとドイツ以外のヨーロッパのことはちゃんと勉強したことないので、「対ソ防疫線」として「民族自決」を適用して、フィンランドからユーゴスラヴィアまで並ぶ一直線の国を独立させたということすら知ってなかったが、その「防疫線」というのはフランス語でコルドンサニテールというらしい。英語にそのまま訳せばsanitary cordonとなるけど、何なんだろうと思ったら「ペストなどの伝染病が発生したときにこれを食い止めるために張られた防御線のこと。つまり『社会主義』というイデオロギーを『伝染病』になぞらえた」(p.67)というのが、妙に納得。あと「ドーズ公債」で、「資本がアメリカ→ドイツ→英仏→アメリカとぐるぐる回るように」(p.200)して、「資本のメリーゴーランド」を作る、なんて、こういうことをパッと考えられる人は頭が良いなあと思う。あと「マジノ線」という「ドイツとフランスの国境、南北に約400kmにわたって建設された長大な要塞」(p.247)というのも知らなかった。なんか万里の長城か、ハドリアヌスの城壁か、そういうのがあるんだ、と思った。しかも調べてみたら、その要塞があるから大丈夫、という「マジノ線心理」という言葉まであるらしい。あと、これは社会科では常識なのかもしれないけど、条約の「採択」「調印」「批准」「発効」の違い(p.42)というのも、実はあんまりよく分かってなかった。そして「『締結』という言葉は、採択・調印・批准までの流れを曖昧に表現した言葉ですので、文脈によってどれを指すのかは変わって」(同)くるらしい。へえ。
     あと、この本は歴史の捉え方とか法則性といったものを教えてくれるが、印象的なのは2つあって、1つは「飛躍の前に苦境あり、苦境のあとに飛躍あり」(p.196)という、ヒトラーやナポレオンの例と、もう1つはナチスが「反対派集会への殴り込み」(p.269)といったことを公然とやったことについて、「現代日本の価値観からは信じられないことですが、当時のドイツ国民は、そうした暴力行為に対して国民が『頼もしい』と喝采を送り、暴力に敗れた政党に対して『情けない」と見限る風潮がありました。そういう社会背景があったればこそ、ナチスも暴力行為に走ったのであって、もし国民が暴力に嫌悪感を持つなら、ナチスだって暴力に訴えるはずがありません。選挙に負けてしまいますから。」(同)ということで、「そんなことは当時どこの政党でも多かれ少なかれやっていたこと」(同)だそうだ。ほんとそういった「社会背景」を受け入れるのはとっても難しく、それほど少なくともおれがいかに「現代日本の価値観」から解き放たれていないか、というのも驚きだった。
     色々クセはあるけれど、クセになりそうな本で、他のシリーズも読んでみたい、と思ってしまう。(18/12/23)

  • ヒトラーが台頭した理由。それはドイツだけでなく、それを取り巻く第1次世界大戦後の世界関係(複雑な利害対立)を、糸をほぐすように読み解かないとわからない。それがよく理解できました。

  • 第一次世界大戦から第二次世界大戦までの世界の動きをドイツを中心に解説。1919年からの20年間を5年ごとの4期に分ける捉え方が理解しやすくて、神野節歯切れがいいですね。パリ講和会議で日本が提議した人種差別撤廃要求から廃案までの流れに触れていますが、我が国が太平洋戦争に至る素因のひとつです。また、米仏同盟案をパリ不戦条約に拡大、無力化した米国の手口は、日英同盟の末路と同じですね。独裁者は、一瞬の隙を突き、支配します。

  • 以前、ヒトラーは酷いこともやったけれど、彼は当時のドイツ国民に正当な方法(選挙)で選ばれて、大統領に信任されて首相にまで上り詰めた、という本を読んでいたので、ナチスが政権をとったという解説については、ある程度理解していました。

    この本で私にとっては初めてだったのは、第一次世界大戦に負けたドイツ(及びその同盟国)がどのように賠償金を決められて、天文学的と言われた賠償額が最終的にどうなったのかについて、書かれていたことでした。

    この本を読む限り、フランスの振舞いが、ドイツを追い詰めってしまったと思いますが、それほどまで、フランスはドイツを恐れていたということも理解できました。

    ナチスはヒトラーが党首になってから、トントン拍子に覇権を握ったとばかり思っていましたが、紆余曲折があったのがよくわかりました。初めて神野氏の本を読みますが、流石、現役予備校の講師だけあって、わかりやすく面白い解説ですね。調べたら多くの本を既に出している様です、他の本も是非読みたいです。

    以下は気になったポイントです。


    ・第一次世界大戦の講和会議には、敗戦国(独・墺・洪(ハンガリー)・勃(ブルガリア)・土(オスマン))は呼ばれていない(p17)

    ・国際連盟は、預けられた地を適当な国(旧宗主国)に統治を委任して、野蛮人たちが自立できるように導くということから、植民地から、委託統治領と名を変えた(p25)

    ・国際連盟は、英・仏・伊・日の常任理事国と、耳(ベルギー)・希(ギリシア)・西(スペイン)・伯(ブラジル)の非常任理事国で発足した(p39)

    ・いくつかの国の代表が集まり、一定条件下で合意されると「採択」、署名すると「調印」、国民の信任を得ると「批准」、条約が動き出すと「発効」、締結とはこの流れを曖昧に表現している(p42)

    ・敗戦国の代表は、パリではなく、別の場所(ドイツ:ヴェルサイユ、オーストリア:サンジェルマン、ハンガリー:トリアノン等)に呼ばれた(p46)

    ・オーストリア帝国は、国土の88%、人口の85%を失ったばかりか、経済基盤・地下資源の豊かな地域を悉く失った。(p64)

    ・リトアニアは、海を持っていなかったので、メーメルを強引にドイツから剥ぎ取った。ポーランドもポーランド回廊と、ダンツィヒを得た(p67)

    ・イタリア国王は、古代ローマに倣って、あくまでも「1ケ年の時限権力」として、独裁権(得票率25%を得た最大政党が議会の3分の2を得る)を認めた(p91)

    ・ムッソリーニは教皇と「ラテラン条約」を結んだ、イタリア政府はバチカンを独立国家として認める代わりに、教皇は政治に介入しない(p101)

    ・ドイツへの賠償金額は、1320億金マルク(変換返済額:60億、期間:30年、金換算:47310トン)、フランス:52%、イギリス:22%、当時の賠償金額は50億金マルク程、大戦だと考慮しても、120-150億程度だろう(p144、147)

    ・ドイツはソ連と、ラパッロ条約を1922年に締結、国交自由化(初のソ連承認)・相互に賠償請求権放棄・軍事訓練地の提供(p150)

    ・ドイツ政府は、ルールの石炭・鉄鋼の生産が停まっているのに、「ストで働かない労働者」にも給料を払い続けた。社会が価値を生んでいないのに紙幣だけを増産したので、紙幣価値が下がり物価が上昇する(p164)
    ・市民にとって地獄だった超インフレは、農民にとっては追い風、借金はチャラ、農作物が重要な価値を持ったから(p170)

    ・北ドイツ(ルター派)のプロシアに、南ドイツ(カトリック)が併合されたと考えていた人もいた(p171)

    ・1923年11月、新札レンテンマルクを発行し、1兆分の1に通貨を切り下げた(p192)

    ・大恐慌により、アメリカがドイツへの資本投資を1年間凍結する、ことにより、ヤング案(アメリカのドイツへの潤沢な融資と資本投下によりドイツは賠償金を払う)の前提が崩れた、アメリカも承諾した(p239)

    ・4回目の賠償問題を討議する会議(ローザンヌ、1932)にて、1320億マルク→(支払い済の45億+30億マルク)、3年間の支払い猶予、対米戦債の相殺が条件であった。アメリカが批准しなかったので、発効できず。ヒトラーが一方的に破棄してしまい、賠償金は支払わず(p246)

    ・全権委任法は全5条、4年間の時限立法であったが、政府立法は憲法に優越する(2条)という条項があった(p282)

    2016年9月22日作成

  • 河合塾講師、神野による世界劇場。

    このシリーズは、秀逸。


    ナチスが政権を握る過程を、
    他国の動きを絡めて、多面的・多角的に考察しており、
    教養本としても、受験傍用としても活用できる。

  • 米国は国際連盟軍を創設したかったが、イギリスが反対し、フランスが折衷的に連盟陸軍をフランス主体とすることで賛成したため、結局はついえた。

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著者プロフィール

河合塾世界史講師。世界史ドットコム主宰。ネットゼミ世界史編集顧問。ブロードバンド予備校世界史講師。歴史エヴァンジェリスト。
1965 年、名古屋生まれ。出産時、超難産だったため、分娩麻痺を発症、生まれつき右腕が動かない。剛柔流空手初段、日本拳法弐段。立命館大学文学部史学科卒。
教壇では、いつも「スキンヘッド」「サングラス」「口髭」「黒スーツ」「金ネクタイ」という出で立ちに、「神野オリジナル扇子」を振るいながらの講義、というスタイル。
既存のどんな学習法よりも「たのしくて」「最小の努力で」「絶大な効果」のある学習法の開発を永年にわたって研究し、開発された『神野式世界史教授法』は、毎年、受講生から「歴史が“見える”という感覚が開眼する!」と、絶賛と感動を巻き起こす。
「歴史エヴァンジェリスト」として、TV出演、講演、雑誌取材、ゲーム監修など、多彩にこなす。「世界史劇場」シリーズ(ベレ出版)をはじめとして、『最強の成功哲学書 世界史』(ダイヤモンド社)、『暗記がいらない世界史の教科書』(PHP研究所)、『ゲームチェンジの世界史』(日本経済新聞出版)など、著書多数。

「2023年 『世界史劇場 オスマン帝国の滅亡と翻弄されるイスラーム世界』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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