図鑑を見ても名前がわからないのはなぜか?: 生きものの“同定"でつまずく理由を考えてみる
- ベレ出版 (2021年12月14日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (183ページ)
- / ISBN・EAN: 9784860646769
作品紹介・あらすじ
生きものの種を確定させることを「同定」といいます。「同定なんて図鑑をパラパラめくって同じのを探せばいいんでしょ」と思う人もいるかもしれませんが、そんな簡単なことではありません
「似ているのが多くて同定に自信がもてない」「どうしてパッと見で同定ができないんだろう……」。生きものが好きな人のなかにもこのように思っている方はたくさんいます。
「なぜうまく同定できないのか」「どういうプロセスで同定ができるようになるのか」を真剣に考えたのが本書。
勤務先の敷地内で昆虫とクモ800種以上を同定してきた、同定大好きな著者がお届けする、図鑑と同定のことをトコトン掘り下げた一冊です。
感想・レビュー・書評
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道端の雑草の名前を知ったからと言ってどうなるの?‥‥そう思う人は、政府官僚になっても庶民の一人ひとりの気持ちに寄り添わない政治家になってゆく様な人なんだろうな。
あ、いや、ごめんなさい。
今日の散歩途中にそんなことをつらつら思ったのは、この散歩の十数分間だけでも、ブロック塀やその下に少なくとも5種ぐらいの「苔」を観察したのだけど、「おそらく」ハマキゴケかな、ハイゴケかな、ギンゴケかな?これってなんだろ?とか、全然「同定」出来ない自分に心がささくれ立って落ち込んだからであって、雑草の名前に興味がない貴方を責めたわけじゃないんです。
「おそらく」じゃダメなんです。
庭の萩に似た花の同定が出来なくて、秋のひっつき虫に大いに困った様に
松たか子と松嶋菜々子の区別がつかない問題が時々勃発する様に
ソックリさんを間違って証言をしたことで、事件がとんでもない方向に行く様に
キチンと「同定」しなくてはダメなんです。
と、いうわけで本書を紐解きました(←前振りが長い!)。
物凄く楽しい本でした!
同定には「目をつくる」ことが大切です。綺麗な写真を使って、かなり分かり易く、楽しく書かれています。因みに最初のハエトリグモ見分け問題を、私はクリアしたのだけど、たまたまみたい(ポイントは脚の関節長さと思ったけど、目の位置だった)。
著者の目指すのは、専門家への道ではなくて「⚫︎⚫︎の観察を楽しめる程度に見分けられる」レベル。つまり私の目指すレベル。
詳しい演習問題として、著者と共に初めてシダの「同定」に取り組みます(著者の専門はハエトリグモ)。以下注目点を箇条書き。
・入門向けハンドブック図鑑とやや詳しい図鑑を入手。
・前者で「同定に必要な特徴」「同定形質」を覚える。←ここまでは、私は既にやっている。
・写真に撮り、場合によっては簡単な図も入れつつ、特徴を書き出す。
・気づけた特徴をもとに図鑑を引いて、候補を見つけたら、キチンと解説を読む。再度確認して種名を確定。自信のないものは、ひとまずTwitterで質問。あとは季節や場所を変えて、気にしてゆく。
・写真だけでなく、標本採取は大切。
「同定は、この星の生物多様性をダイレクトに味わうことのできる、心躍る営みです」
著者は本を書く目的があるからか、そもそも他の分野ではプロだからか、一年で近所のシダは全て同定できたようです。でも反対に言えば、著者のようなハイレベルアマチュアでも一年かかったのだと思えば、励ましになる(←私は未だ半年)。
以下、その他参考にすべき点。
・サイト上の写真は参考にはできるけど、同定の根拠にすべきではない。
・その分野の先人に教えを乞うのが1番の近道(観察会や植物園や博物館)。
・ホームページやTwitterにメールで質問も手段。マナーには気をつけて。
・やがてはAI同定(写真画像解析ややがてはDNA解析)で簡単に同定出来るかもしれないが、著者は「野外で身一つで、自分の知識と感覚のみをたよりに」同定出来るかも喜びは「失われない」から続けると言っている。よくわかる。
5月3週jubeさんレビューで発見。ありがとうございます。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
多くの人が「面白い」と感じることのできる本だと思います。
著者は30歳そこそこの小学校の理科の先生です。
この先生に教わる児童たちは理科の時間が楽しいだろうなと思います。
コロナ禍で近所の散歩をする機会が増えたのをきっかけに雑草観察を始めたところ未知の植物だらけでした。
写真を撮りまくったのですが、なんだか分からない草花が多くて名前を調べつくすのはあきらめました。
魚、草花、昆虫、など頻繁に新種が見つかる生物は種類が多すぎて、ざっくりと識別するのが精いっぱいです。
私は鳥が好きで、「ぱっと見わけ観察を楽しむ 野鳥図鑑」を重宝しています。
似ている鳥の見分け方の説明には、実写でなくイラストが使われており、識別ポイントが分かり易いのも気に入っています。
とはいえ、よく観察される鳥は限られているので見分けやすい生物だと思います。
家の近くに堀切菖蒲園があるのですが、品種改良された200種類があります。
私にとっては全て"菖蒲"という植物です。
もう少しだけ分類しても、ハナショウブ、アヤメ、カキツバタ、に分けられるのですが、その識別すらできません。
アイリスと呼ばれる花もありますが、私には区別できません。
植物を見る目はこんな程度なので、「シダ」の種類も見分けたことはありません。
本書ではシダの種類の識別方法も書かれていて、簡易版の図鑑でも80種類、詳しいものでは260種類に分類されているそうです。
同じように見えていた「シダ」も随分と違いがあることが分かりました。
日本で見つかる「クモ」は1000種類以上いるとのことで、これも識別せよと言われたらできそうにないです。
生き物の名前を調べることは、こどもが大好きな2つの絵の間違い探しに似ているなと思いました。
「クモ」の場合、比べるのが2つでなくて1000ということです。
科学が進歩した現在では、遺伝子解析での識別も行われているのでしょうが、数が多いので全ては無理でしょうね。
宇宙人が地球に来て生き物の分類をしたら、人間はどのように分類されるか?と、ふと思いました。
調べてみたら、
ヒト科ヒト亜科ヒト族ヒト亜族ヒト属ホモ・サピエンス の ホモ・サピエンス・サピエンス が現在地球に生存する"ヒト"という生物らしいです。
トム・クルーズと大谷翔平と私が同じ種類に分類されるのはおかしいような気がします。
「ヒト」って個体差(形の異変)が大きいんですね。 -
めっちゃ面白いです。
筆者の須黒先生はクモ屋で、私も愛クモ家の端くれとして、ハンドブックなど愛用させてもらっております。
もちろんクモの同定の話もあるんですが、特に面白かったのが、専門外のシダの同定をするドキュメントや、ハバチの同定。まさにリアルRPGです(昔、流行った、選択によって違うページに進んで、エンディングが変化する本。今でもビデオゲームではコモン)。最初にどんな図鑑やフィールドガイドを選ぶか、フィールドでの観察の時に、どういうところに目を付けるべきか、どの部分の写真を撮っておくべきかなど、なるほど、こういう風に説明すればいいのか!!目から鱗がぼろぼろぼろ!!私自身、色々と質問されたときに、うまく説明できずにモヤモヤすることがあるので、こうした書物は大変参考になります。
筆者の友人の鳥屋おでんやさんも登場されて、ウグイスの同定のところで、とてもいい説明を読むことができます。
よく、目をつくらんとあかん、と言われますが、
どうしたら”目”ができるのか?
というのが、よくわかる参考書、ハウツー本です。
昆虫、鳥、植物、糞、なんでも興味のあるものの同定をしたい!と、思い始めた人や、長いこと気になっているが、どうしても目が養われない、ていうか、なにをどう初めていいかもわからん、という人も、読んでみてはいかがでしょうか。
目から鱗が落ちること間違いなしかと
単に読むにも面白いので、おすすめです。
p80
「画像での同定が困難な場合もしばしばあるので、SNSでのやり取りは万能ではありません。」
「初期ほど、人に尋ねて教えてもらうという過程が、同定技術の向上にはほぼ不可欠。」
”ただし、付け加えておくと、同定に関して「詳しい人の意見は常に真実」ではありません”
そこらへん、詳しい人も間違いますし、
自称詳しい人も多いので要注意でございます。 -
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https://www.mdn.co.jp/design/DESIGNDIGEST/2134
図鑑を見ても名前がわからないのはなぜか?|書籍案内|ベレ出版
https://www.beret.co.jp/books/detail/818 -
図鑑みたってわからないって確かに思ってた。
だから、本書を読んで安心したし、勇気をもらった感じがした。
同定はそもそも時間がかかるし難しいことなのだと知ることができた。
著者の同定への真摯な向き合い方は同定だけでなく他の事柄にも通じる大事な姿勢なのだと思った。
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同定の道を進むため(?)に読了です。
カテゴリはもちろん、調査士!
タイトル通りの本でしたー
私は、そもそもの図鑑の見方から間違っていました。。
同定に興味を持ったのは、著者のようにそのものの名前が知りたくて知りたくてたまらない…‼︎
という感じではなく、境界木というものがある、というのを知ったからなのです。
地域によって、境界の目印となる木を細い木では3尺、太くなるものでは確か6尺、境界から離して植えることがあるということでした(うろ覚え。
いくつかその地域によって植物はなんとなく決まっているようでしたが、基本的に、通常はそこに自生しない木本で繁殖しにくいもののようです。
まぁ、その辺に生えてたらどれが境界木なのかわかりませんしね…
たいして業務をやってないので、境界木らしきものに出会ったのは一度だけ。
それは書物に書いてあるような種類ではなく、そこいらにもある梅の木でした。
その木の後ろに立って見ると、なるほど境界を示しているようでありました。
単純な私は、これはちょっと勉強せねばならぬのでは⁉︎と思ってしまったのです。
補償の関係でも樹木の同定は必要だし、コレは!と。。
まぁ、そんな簡単なものではないことは想像に難くないですね。
さて、本書では、まず違いを見つけるための“目”の作り方から始まり、実例を交えながら図鑑の使い方、検索表の使い方を教えてくれています。
いやいや、深いよ、同定。
そら専門の学問があるくらいやもんなぁ。
舐めてたわけじゃないですが、1日にしてならず、ですよ。
緑豊かめの現場に行く時は、ちょっとずつ目を作るところから始めてみます。
今年の一つの課題です。 -
タイトルがいい。すぐれた問いかけ。
そうだよねえ、と思いながら手に取った。
この感じは「オフサイドはなぜ反則か」と言う本を見たときにも感じたものだ。
『言葉と目』というタイトルでもいい。
かたちの問題は、わかる人には見ればわかるので、なにが違うのかを言葉にするのはむずかしい。
「目をつくる」「目ができてる」という言い方で説明するのだが、目をつくるためには、言語化の努力が必要だと言う指摘も重要だ。
生き物業界の図鑑の検索表の使い方は初めて知ったが、細かい記述で、そこで言われている部位がどれかがわからないと使えないので、ここでも目が必要になってしまう。
わかると言うことの中には、言葉と目の循環構造があるのだ。
娘にも読ませたいが、虫の写真が並ぶので無理かも。
同じ趣旨で、建築様式の本を作ればいいのではないか。
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面白かった。図鑑を見て本当に名前をわかるようにするには,積み重ねとただの図鑑だけじゃなくてなんなら検索表も辞さないくらいの準備と観察眼が必要だなという気もした。
魚について,写真をちょっと撮ったくらいじゃ区別できないところはたくさんあるので,趣味レベルでは「〜〜の仲間」止まりでも満足するしかないのかなという気もした。 -
はい、私も図鑑がうまく生かしたことがありません。
そういう生物リテラシー(?)のない読者にも、親しみやすい語り口で語りかけてくれる、貴重な一冊。
なぜ名前がわからないのか。
では、どうしたらいいか。
それがわかる。
なんと画期的な。
ただし、急いで付け加えておきたい。
どうしたらいいかはわかる。
でも、実行するのはかなり難しいことも、はっきりわかってしまう。
本書では、種を同定する作業を、豊富な写真をしめしながら、読者にも仮想体験させてくれる。
「検索表」という、同定のためのポイントをまとめた便利なツールもあるそうだ。
しかし、それがあっても、スイスイ作業が進むとは限らない。
手に入れた標本が、典型的な特徴を持っているとは限らないからだ。
捕まえる段階で、体の一部が壊れてしまっていることもある。
時期により、特徴的な形質が見えないこともある。
検索表もない生き物となると…、素人の自分にはその大変さは想像を超えてしまう。
同定というのは、自分が考えていたよりはるかな道程なのだ。
色や柄はわりとあてにならない、ということを知ることができただけでも、私には有益だった。
なにしろ、色と柄しか見ていなかったからだ。
なるほど、これじゃ、名前がわからないはず。
図鑑は入門者用のものと、少し詳しいものを2冊持つとよいそうだ。
図鑑を見るにも、スキルは必要。
絵だけではなく、解説をしっかり読むのがコツらしい。
とはいえ、ここが難しいところだけれど、言葉で説明されていても、観察の経験がないと伝わらなかったりするらしい…。
自分なら、ここでめげそうな気がする。
が、図鑑で、どこが見分けのポイント(同定形質)なのかを予習してフィールドに出る。
観察の場数を踏んでいけば、なるほど、たしかに「目の解像度が上がる」状態になると思われた。
最後はどれだけ生き物が好きか、かな。 -
べらぼうに面白かった。文章の読みやすさも手伝って、一気に読んでしまった。
この筆者はわからない人の気持ちがわかるというか、他の人の立場で物を考えることができる人なんだろう。こういう先生に教わる子供は幸いだと思う。
あとちょいちょい笑わせるポイントがあるのもよかった。