構造デザイン講義

著者 :
  • 王国社
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本棚登録 : 341
感想 : 34
  • Amazon.co.jp ・本 (235ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784860730406

作品紹介・あらすじ

東京大学における講義の集成。建築と土木に通底する構造デザインとは何か。実践に裏打ちされた構想力による建築家の次代へのメッセージ。

感想・レビュー・書評

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  • 構造について、経験知・体験知を大切にし、総合的に考える力を養うことの大切さ、そしてそれを翻訳するデザインという行為を行うにあたっての姿勢が語られている。

    多くの例が挙げられており、わかりやすいだけでなく、具体的なレベルから理解を深めることができる。観念的なものばかりに触れつづけて、鈍ってしまっている部分が研ぎ澄まされていく感覚であった。

    本当の意味での建築的な価値とは、「技術と芸術が結び合ったその時代の精神の表れ」のことであり、技術や表現が新しければ新しいほどそれを人間に結びつける深い思考と強靭な精神が必要になる、という内藤氏の言葉からは、最近よくある空間ではなくかたちのみを想像させる建築(っぽい何か)のあり方についての強い疑念を感じる(本文中でもそう言われている)。
    自分の建築に対する姿勢はどのようなものなのか、ということを確認できる本。学生のうちに、それも若いうちに読むことがすすめられるだろう。

  • 『海の博物館』などで知られる建築家・内藤廣が、東大工学部土木学科の教授として行った講義を本にしたもの。『環境デザイン講義』『形態デザイン講義』と続くシリーズ三部作の第一作である。

    この『構造デザイン講義』においては、建築家としての内藤が、これまでに積み重ねて来た建築家としての経験の中から、建築における構造とは何か、デザインとは何か、構造とデザインはどのような関係にあるのか、といった根源的な問いに対し、逃げることなく、内藤自身の考え方を明確に示すことを目指している。

    といっても、抽象的な言葉を連ねている訳ではない。本書の最大の特徴は、その具体性だ。内藤は、古今東西の建築物、建築家を取り上げ、それらへの自身の見方を提示する。また、自らの作品を取り上げ、その中で、自分がどのように問題に取り組んだのかを具体的に示していく。そこで貫かれているのは、そうした経験に根差したエンジニアとしての感性の重視だ。抽象的な思考から導かれた思想ではなく、モノとのぶつかり、素材との触れ合いの中から生み出され、養われる感性だ。現場主義と言ってもいいだろう。

    本書、あるいは本書の元となった講義の構成は、現代の建築における主要な構造あるいは素材である、組積造、鉄、コンクリート、プレキャストコンクリート、木、について順に取り上げ、それらの構造・素材の歴史、現状、長所と短所、使用するときに留意すべき点、内藤自身の考え方について、様々な建築物や内藤の作品を題材として語るのだから、これが面白くないはずがない。

    現場主義と言いながらも、経験に裏打ちされた内藤の言葉は、一流の思想家のような深みを持ち、本書も名言、抜き出しておきたい箇所、目から鱗な発想のオンパレードだ。

    「デザインがなければ、どんなに優れた技術もそれを享受する人々の心に届かない」「技術と人を繋ぐ、モノの論理とヒトの論理を繋ぐ、それがデザインなのだ」「デザインとは翻訳すること」「場所の持っている固有の価値を翻訳出来なければ、すなわちデザイン出来なければ、構築物はその場所に存在する必然性を失ってしまいます」「その時代の最先端の技術を駆使した構築物というのは、その時代の最上の文化を組み込んでつくられるべきです」「技術と文化の融合こそが最高の成果物なのだ」「木こそが近代の枠組みや思考を乗り越えることができる素材だ」「土木でも建築でもリダンダンシーか、今後の構造のメインテーマ」「情け容赦ない非情な技術というものを人間の感情やモラルにどう繋げられるか」・・・。キリがない!

    現代の建築の流行に対する批判的な見方も内藤ならではだ。本来のコンクリートの荒々しさを忘れ、表面的な綺麗さを追求する打放しコンクリート建築への懐疑。国立競技場のコンペを勝ち取ったザハ・ハディドは、観念的なことが大好きで、建築の既成概念を壊したい、建築を通して社会に対してインパクトのあるものを提案したいという欲望に支配された学生のようなプロジェクトの元祖のような建築家、だそうだ。国立競技場コンペの審査員であった内藤は、まさか自分を含む審査委員会が、ザハの建築を選ぶことになるとは思わなかっただろう。

    ユーモアを交えつつ、温かい人柄の伝わってくる講義で、大変読みやすいのも本書の特徴だ。建築を志す学生のみならず、建築に関心のある全ての者に読んで欲しい。評者自身も、20歳、いや、30歳までにこの本に出会っていたら、建築家を目指していたことだろう。

    (2014/3/9読了)

  • 構造形式ごとにその歴史背景・特徴を各論として紹介しながら、
    筆者が考える、ものづくりに向き合う人間が持つべきデザイナ・エンジニア
    としての感性を伝える本になっている。

    タイトルそのままに、
    構造を技術として実践し、その延長線上にデザインの役割を実現する。
    デザインの役割とは、
    いまという時代のエンジニアリングを形にし、時間と場所を表現(翻訳)する。
    そして、それらのモノを社会・人へとつなぐことだと著者は述べている。


    とても興味深かったのが、木造の話。

    木造は、小さな矛盾を受け入れ、曖昧さを許容する「多矛盾系」の構造形式だということ。

    反対の「無矛盾系」な構造とは。
    「無矛盾系」を目指していくと、1点でも矛盾があるとそこに力が集中して、
    破壊につながるという本質的な弱点を抱えてしまう。
    つまり、無矛盾を目指せば目指すほど、徹底的に、それも隅から隅まで
    無矛盾でなければならなくなってくるものだということ。

    「多矛盾系」の木造は、
    許容した矛盾・曖昧さがリダンダンシー(冗長性)を高めることにつながっており、
    部分破壊が全体破壊に至らないという構造になっているという。
    多矛盾系を支えているのは、工学知(理論)はもちろん、
    経験知・体験知ともいうべき、ものづくりの人間が現場から吸収し、
    積み上げてきた情報たち。


    この2つの系の関係は、
    1つの価値観で全体をコントロールしようとする(部分の矛盾を許さない)
    グローバリゼーションの限界とこの思考方法の持つ排他性に気が付き始め、
    小さな矛盾(多様性)を許容しながら、全体が成立するローカリゼーションという
    価値観に振り返り始めた今の世の中を表しているかのよう。



    ほかにも、日本の街並みが木造の外観を失ってしまったワケとか、現場の空洞化の話とか、
    参考になる話が満載の本でした。

  • 読了

  • ★図書館だよりNo.58「一手指南」 
     丸田 誠 先生(建築学科)紹介図書
     コラムを読む https://www.sist.ac.jp/media/20170602-174228-7612.pdf

    【所在・貸出状況を見る】
    http://sistlb.sist.ac.jp/mylimedio/search/search.do?target=local&mode=comp&materialid=11603165

  • 「技術と芸術が結び合ったその時代の精神の現れ」(p222)
    という建築における価値観に初めて触れた

    用語が素人には難しすぎる…笑

  • 構造と様式(文化)のせめぎ合い・緊張関係が建築をつくっていくのだなぁと思った。
    また手間賃がスティールの材料費よりも安いころは、部材を惜しんだ設計になっていた、という記述にハッとさせられた。

    コンクリートダムで言うバットレス(笹流ダム等)や中空重力式に近い発想である。なるほど、スティールにもあったのか。
    しかし鋼材が急騰した例えば2008年にあっても、そこまでの動きはなかったよなぁとも振り返る。あるいは昨今の分業体制(設計・施工の分離)が、そういう工夫を許さなかったのか。

    いずれ、こうして「合理的な構造(設計)」は様式(宗教)や社会経済(システム)を受け、微調整されていくのだ。

  • とても興味深く、ページがどんどん進みました。

    いかにも教科書的な書きっぷりではなく、筆者の実体験と主観をもって語られているからこそ、一見堅物な専門用語がすんなり頭に入ってきます。構造の見方・考え方が養われるのではないでしょうか。

    建築をかじった身として、学生のうちに出会っておきたかった…
    建築から離れたあとでも、構造・素材を扱う面白さ・奥深さを思い出させてくれる一冊です。

  • 建築構法の大きな流れを汲み取ることができた。また各構法別に代表的な建築を知ることができた。

  • 140517 中央図書館
    ローマ、ロマネスク、ゴシック、ルネサンス・・の様式、スティール、コンクリ、PC、木などの材料の面から、構造技術の進化が新しいデザインの登場を促す歴史について、一覧できる。

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著者プロフィール

1950年神奈川県横浜市生まれ。建築家。1974年、早稲田大学理工学部建築学科卒業。同大学院理工学研究科にて吉阪隆正に師事。修士課程修了後、フェルナンド・イゲーラス建築設計事務所、菊竹清訓建築設計事務所を経て1981年、内藤廣建築設計事務所設立。2001年、東京大学大学院工学系研究科社会基盤学助教授、2002-11年、同大学教授、2007-09年、グッドデザイン賞審査委員長、2010-11年、東京大学副学長。2011年、東京大学名誉教授。建築作品に海の博物館(日本建築学会賞、吉田五十八賞、芸術選奨文部大臣新人賞)、安曇野ちひろ美術館、牧野富太郎記念館(村野藤吾賞、毎日芸術賞)、倫理研究所 富士高原研修所、島根県芸術文化センター、虎屋京都店、静岡県草薙総合運動場体育館、富山県美術館、高田松原津波復興祈念公園 国営追悼・祈念施設(芸術選奨文部科学大臣賞)、東京メトロ銀座線渋谷駅など。著書『素形の建築』『構造デザイン講義』『環境デザイン講義』『内藤廣と若者たち』『内藤廣の頭と手』『形態デザイン講義』『内藤廣の建築1』『内藤廣の建築2』『内藤廣設計図面集』『空間のちから』ほか。

「2021年 『建築の難問 新しい凡庸さのために』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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