- Amazon.co.jp ・本 (235ページ)
- / ISBN・EAN: 9784860730406
作品紹介・あらすじ
東京大学における講義の集成。建築と土木に通底する構造デザインとは何か。実践に裏打ちされた構想力による建築家の次代へのメッセージ。
感想・レビュー・書評
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構造について、経験知・体験知を大切にし、総合的に考える力を養うことの大切さ、そしてそれを翻訳するデザインという行為を行うにあたっての姿勢が語られている。
多くの例が挙げられており、わかりやすいだけでなく、具体的なレベルから理解を深めることができる。観念的なものばかりに触れつづけて、鈍ってしまっている部分が研ぎ澄まされていく感覚であった。
本当の意味での建築的な価値とは、「技術と芸術が結び合ったその時代の精神の表れ」のことであり、技術や表現が新しければ新しいほどそれを人間に結びつける深い思考と強靭な精神が必要になる、という内藤氏の言葉からは、最近よくある空間ではなくかたちのみを想像させる建築(っぽい何か)のあり方についての強い疑念を感じる(本文中でもそう言われている)。
自分の建築に対する姿勢はどのようなものなのか、ということを確認できる本。学生のうちに、それも若いうちに読むことがすすめられるだろう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
何度も読み返したいシリーズ
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積読していた本書を、設計事務所への転職にあたって手に取った。
内藤廣さんの声が脳内で再生されるくらいには、臨場感を感じた。
エンジニアには、コンピュータへの依存ではなく、想像力や経験知も不可欠であることが、いくつかの事故事例から実感できた。
構造の広義であり、素材の講義でもあると感じた。
pcコンクリートの本質などは、この書で初めてわかったような気がする。 -
構造形式ごとにその歴史背景・特徴を各論として紹介しながら、
筆者が考える、ものづくりに向き合う人間が持つべきデザイナ・エンジニア
としての感性を伝える本になっている。
タイトルそのままに、
構造を技術として実践し、その延長線上にデザインの役割を実現する。
デザインの役割とは、
いまという時代のエンジニアリングを形にし、時間と場所を表現(翻訳)する。
そして、それらのモノを社会・人へとつなぐことだと著者は述べている。
とても興味深かったのが、木造の話。
木造は、小さな矛盾を受け入れ、曖昧さを許容する「多矛盾系」の構造形式だということ。
反対の「無矛盾系」な構造とは。
「無矛盾系」を目指していくと、1点でも矛盾があるとそこに力が集中して、
破壊につながるという本質的な弱点を抱えてしまう。
つまり、無矛盾を目指せば目指すほど、徹底的に、それも隅から隅まで
無矛盾でなければならなくなってくるものだということ。
「多矛盾系」の木造は、
許容した矛盾・曖昧さがリダンダンシー(冗長性)を高めることにつながっており、
部分破壊が全体破壊に至らないという構造になっているという。
多矛盾系を支えているのは、工学知(理論)はもちろん、
経験知・体験知ともいうべき、ものづくりの人間が現場から吸収し、
積み上げてきた情報たち。
この2つの系の関係は、
1つの価値観で全体をコントロールしようとする(部分の矛盾を許さない)
グローバリゼーションの限界とこの思考方法の持つ排他性に気が付き始め、
小さな矛盾(多様性)を許容しながら、全体が成立するローカリゼーションという
価値観に振り返り始めた今の世の中を表しているかのよう。
ほかにも、日本の街並みが木造の外観を失ってしまったワケとか、現場の空洞化の話とか、
参考になる話が満載の本でした。 -
読了
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★図書館だよりNo.58「一手指南」
丸田 誠 先生(建築学科)紹介図書
コラムを読む https://www.sist.ac.jp/media/20170602-174228-7612.pdf
【所在・貸出状況を見る】
http://sistlb.sist.ac.jp/mylimedio/search/search.do?target=local&mode=comp&materialid=11603165 -
「技術と芸術が結び合ったその時代の精神の現れ」(p222)
という建築における価値観に初めて触れた
用語が素人には難しすぎる…笑 -
構造と様式(文化)のせめぎ合い・緊張関係が建築をつくっていくのだなぁと思った。
また手間賃がスティールの材料費よりも安いころは、部材を惜しんだ設計になっていた、という記述にハッとさせられた。
コンクリートダムで言うバットレス(笹流ダム等)や中空重力式に近い発想である。なるほど、スティールにもあったのか。
しかし鋼材が急騰した例えば2008年にあっても、そこまでの動きはなかったよなぁとも振り返る。あるいは昨今の分業体制(設計・施工の分離)が、そういう工夫を許さなかったのか。
いずれ、こうして「合理的な構造(設計)」は様式(宗教)や社会経済(システム)を受け、微調整されていくのだ。 -
とても興味深く、ページがどんどん進みました。
いかにも教科書的な書きっぷりではなく、筆者の実体験と主観をもって語られているからこそ、一見堅物な専門用語がすんなり頭に入ってきます。構造の見方・考え方が養われるのではないでしょうか。
建築をかじった身として、学生のうちに出会っておきたかった…
建築から離れたあとでも、構造・素材を扱う面白さ・奥深さを思い出させてくれる一冊です。 -
建築構法の大きな流れを汲み取ることができた。また各構法別に代表的な建築を知ることができた。