環境デザイン講義

著者 :
  • 王国社
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本棚登録 : 256
レビュー : 20
  • Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784860730499

作品紹介・あらすじ

「光」「熱」「水」「風」「音」-我々をとり巻く空気環境や設備環境について人間の身体経験や感性の側からとらえなおす。

感想・レビュー・書評

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  • 2011/4 読
    東大の講義の採録。建築、環境という側面から、ちょっと哲学的な面も交えている。
    単なる建物、環境を考えるにあたって、光、熱、水、風、音というヨウ素から見方、盲目点を指摘された気がする。
    最後の講義での「ボクらのセンサーは鈍ってませんか」との問いが印象的。デジタル時代、合理主義、データで画一化された見方で現在分かっているつもりが生で感じていない、人間の感覚を今一度感じ直したいと感じた。

  • 建築家の視点から、エネルギーミニマムなデザインを光・熱・水・風・音という視点から捉えた本。
    これまで快適な住環境というものを外界と遮断しその閉空間のなかで内側をテクノロジーで変えてきた。しかし環境負荷を低減、すなわちエネルギーミニマムという視点に立つとこれを開いた空間にしてどう自然と調和させて快適にしていくかという視点が欠かせないと説いている。
    我々は外界からの膨大な情報を減衰させて絞って感受しているが、閉じた環境での生活によって自然への感度を失っているのではないか。


    以下メモ

    ◯序章
    ・環境に合ったパッシブなデザインでエネルギーミニマムな建物を目指してきた。
    ・湿度が高い状態を維持するために土を湿度調整につかったり、低い状態を維持するために気が膨張して湿度が上がると遮断されるような構造をとったりした。

    ◯光
    ・建築や空間に生命をもたらす、経済成長に伴いどんどん明るくなってきた。
    ・暗さは想像力を働かせる、これからは心地良い暗さという視点が大事ではないか
    ・ピレネー山脈を隔て南はカラッと晴れて光と影がはっきりして直裁的、北は曇りがちでもやもや、抽象的な発想が強いゴシック様式や交響曲は北側で生まれている。気候は考え方に大きく影響する。
    ・夕暮れ時と日中で照度は10の7乗倍も変わる、瞳孔は2〜8mmまで変化するがこれでは16倍までしか調整できないため、残りは脳内処理
    ・ヒトラーの演出や9.11メモリアルイベントのように光は人の心を揺さぶる力があり、光は使い方によっては危険にもなる。
    ・熱帯モンスーンの日本では暖かさや湿気、雑菌との戦いを考えると方位が大事。

    ◯熱
    ・床の高さを70cmくらいにすることで地面からの湿気を逃すための風を通せる。日射で屋根が高温になるため、天井を張って裏で熱い空気を抜く。熱を伝えすぎない工夫
    ・三州瓦は800度と低い温度で焼かれるぎ、湿度が高いときに湿気を含める、そこに陽が当たると水が蒸発し気化熱で冷える。
    ・人が暑い寒いと思うのは、温度、湿度、風速、輻射熱の4つが関係する。木造は輻射熱に強いがコンクリートや石造りは熱を溜め込む。具体的にこの4つの指標がどの値を示しているときに体感的に気持ちいいか知っておくといい。
    ・こたつは全てが完結した、省エネのシステム。ゲルは-40〜40の幅を許容でき、30分でたためて250kgしかない優れた家。
    ・空気で温度環境を整えること自体が非効率、うまく輻射熱を使えないか。

    ◯水
    ・時間のメタファー、時に死も暗示
    ・最短ルートで水が流れる屋根の形は切妻、寄棟、入母屋(お金かかるからあまりやらない)の3つだけ
    ・自然から外れた複雑な形をするほどコーキングに頼ることになり雨漏りしやすくなる。コーキングは3〜10年しか持たない
    ・我々が惹かれる水の姿はコントロールされた水ではないか、その際たるものが美しい水田。コントロールし切れない水は恐怖の対象。

    ◯風
    ・建築の構造には重力系と風系の二つのパラダイムしかない。スティール造が出てきて構造体がどんどん軽くなっているため、より風の影響が大きくなってきている。均一な重力と違いは風は局所的に荷重がかかること
    ・風に対処するように木が植えられている、松本の辺りは北上していくとだんだん住居の北側に木の配置が変わっていく、これは南風から抑えたい風が来る方向によるから。まさに風景は風の景
    ・風はつながっている。建物だけを考えるのではなく、都市全体として風をどう使い防ぐかと言う設計をしていくことが最適化につながるのではないか。
    ・風力発電は風光明媚なところに置きやすいら今後景観とのバランスが問題になるのではないか。

    ◯音
    ・知識人は危ないところに立って発言するものだ by EHサイード
    ・音は空間に最終的な質を与えるもの、体験しないと絶対にわからないもの。
    ・遮音は壁の厚さを変えて音を減衰させる、吸音は残響をどれくらいにするか、反射しすぎると聞きにくい。
    ・吸音性を良くしておくと、周りの音が気になりにくく、ちょっと混み入った話がしやすい
    ・コンサートホールは残業がなくなるまで(60dBの減衰)の時間が2秒だと良いと言われているようだが、必ずしもそうではない。モーツァルトは6秒でいい曲を作ったりもした

  • 内藤廣の東大連続講義録。
    光・熱・水・風・音の環境要因を踏まえた設計とグランドデザインの概論。都市設計から建物まで、環境が与える環境に与える要因を実経験を踏まえて伝えてくれる。
    どうでもいいけど、オリンピックのために電通は汐留ビルを解体してくれないだろうか?それだけで気温が何度か下がるはず。

  • 熱の話が特に面白かったな
    途中、内山節みたいだなと思っていたら案の定内山節が引用されていた。建築とか構造デザインとか(どこまでどうくくっていいのか分からないけど)って、人間にとっての環境を改善しようとして常に工学的に、デザインやら材料やらの観点からも進歩し続けているわけだけど、人工的な技術の効率には限界がある。システムを細分化していって、各部分での効率を最大化していく時代は終わりが近い。人間含む自然を総体としてとらえることが必要であり、そこに溶け込む私たちの文化もハードな技術からソフトな生活スタイルまで総合したデザインをしていくことになるのだろう。

  • ★図書館だよりNo.58「一手指南」 
     丸田 誠 先生(建築学科)紹介図書
     コラムを読む https://www.sist.ac.jp/media/20170602-174228-7612.pdf

    【所在・貸出状況を見る】
    http://sistlb.sist.ac.jp/opac/volume/201923

  • 光、熱、水、風、音という5つの項目について、内藤さんが設計を通して得た最先端の科学的知識や経験、将来への展望などを語る講義録。情報としても十分興味深い。だが、一人の設計者のなかで科学的知識、自身の感覚と経験、詩的宗教的感性にいたるまでがどのように捉えられ、関連づけられているか、そんな見取り図としてとても参考になり、味わい深いもののように思った。

  • 内藤廣が自身の経験に基づいて建築設備・空気環境について語った本。
    光・熱・水・風・音の「五輪」の観点から環境とデザインについて述べている。

    彼自身の感覚について解説している本なので、一冊目「構造デザイン入門」よりも観念的な話が多くなっている。(もちろん実際の建築物によるデザインの具体例も多く収録されている。)
    だからこそ自分が氏の主張について深い理解に至っていない感覚を持ってしまう。再読を試みたい。

    構造に引き続き、風・空気とそのシミュレーションが将来の道を開くという主張がみられた。これは建築・都市・土木といった近代的な境界のあり方を根底から見直すべきだという思想にもとづくものであった。
    また己の感覚を研ぎ澄ますことの重要性についてもことあるごとに触れられていた。

    そのほか、近代のモノのとらえ方における離散性、こたつの可能性、生物学から得られたフィード・フォワードの思想、文化と地域の思想の関連性、脳は知覚器官から得られた情報を絞っているといった仮説など、新しい知見が多く得られた本であった。

  • 間々面白い話はあるが、技術的な話を覗けば、いくつかの主張に集約されると思う:

    ○建築だけで「閉じて」考えない方がよい
    熱にしろ風にしろ水にしろ、本来はまちや都市との連続的な系。それを、いままでの建築や都市はスケールごとに分節してとらえようとしてきたが、もっと丸ごとの連続体として考えた方がよい。また、IT技術が進歩すればそうした全体的な視座でのしみゅーレーションも可能。

    ○身体を開いて、センサーを全開にするべき。
    著者が温度計などを常時携帯して感覚を身に着けたっていう話が象徴的だが、ほかにも、音や風についても、とにかく「体験的」な感覚なのだという。構造デザインの時(前著)に「シミュレーションに頼らず、力の流れを読む」重要性を語っていたのに近い。「僕らのセンサーは鈍っていませんか」と問うてくる。

  • 140816 中央図書館

    建築分野は、構造、設備、意匠に大別される。その内の設備環境(特に空気環境)について、<span style='color:#ff0000;'>光(空)、熱(火)、水、風、音(地)</span>に分けて、内藤の経験から得たエンジニアリング思想を講義する。東大の講義録がベースとなっている。

    構造や素材やシミュレーションという個々の技術の進歩を取りいれて、望ましい「環境」を構築しようとする営みは、内藤が「<span style='color:#0000ff;'>スペースシップモダニズム</span>」と呼ぶ、<span style='color:#0000ff;'>外界と遮断された閉鎖的な領域でアクティブな制御を活用する方向</span>へと進化してきた。

    内藤は、逆に「<span style='color:#ff0000;'>開放系」への転換が、効率性や環境負荷などの諸課題を解決する鍵になる</span>という。ヒトの生物学的センサーは、温度、湿度、音、風、匂いなど大量の情報をインプットするが、脳はそれらを適切にスクリーニングしたりスケール処理することで効率的な情報処理を可能としている。しかし、情報処理の効率性を追い求めるあまりに、外界情報を選別しすぎて<span style='color:#ff0000;'>ヒトとしての環境への感覚が鈍りつつあるのではないか</span>、という問題意識を内藤は持つ。デザインは、ヒトとモノをブリッジするものである。小さく管理された環境にヒトを置くのではなく、<span style='color:#ff0000;'>大きな自然環境の流れをできるだけパッシブに活用</span>したデザインをこころがけるべきではないか。たとえば、<span style='color:#ff0000;'>棚田や砺波の散居村</span>を美しいデザインと感じるが、それらは合理的でエネルギーミニマムのデザインが風景に表出しているのだ。

  • 内藤廣の東大での講義「構造デザイン講義」「環境デザイン講義」「形態デザイン講義」の3部作のうち第2弾。
    環境を光、熱、水、風、音に分け、それらと建築のあり方を論じている。
    光の回の、闇を設計する必要性には納得させられるし、熱の回の、温度、湿度、風速、輻射熱を測定する機器を持ち歩いて人が感じている環境に対する感覚を身につける姿勢には感心させられる。
    水が入り込まない設計は、私も常々難しさを感じている。雨と屋根の関係が、「切妻」「寄棟」「入母屋」の3つだけの応用だけで成り立っていることや、水が熱環境や人の心理に与える影響も勉強になった。
    また、建物が軽くなったり、高層化すると、構造も重力系より風力系による影響が大きくなるという事も参考になった。

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