ミスターオレンジ

制作 : 平澤 朋子  Truus Matti  野坂 悦子 
  • 朔北社
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本棚登録 : 42
レビュー : 6
  • Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784860851248

感想・レビュー・書評

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  • 1943年ニューヨーク。八百屋を営む両親と兄二人弟二人妹一人の8人で暮らす少年ライナスは、長兄のアプケが志願して戦争に参加したため、配達の仕事を手伝うことになった。週に1回ある画家にオレンジを届けるうち、彼のアトリエの真っ白な壁とそこに貼られた原色の四角に魅了される。ライナスは彼を「ミスターオレンジ」と呼び、親しくなっていくが、その頃、アプケの友人が戦死し、アプケも塹壕足で戦線を離れた。戦争の現実を知って打ちひしがれるライナスに、ミスターオレンジは想像力は強力な武器で、絵を描くことは未来の追求だと語るのだった。

    戦争の不安に翻弄されながらも、画家と出会によって自分自身の考えを持ち成長する少年を描く。

    実在の画家ピート・モンドリアンと架空の少年との出会いを描くフィクション。
    バーグ市立美術館のモンドリアン展のために創作された。


    ライナスが戦争の現実に触れてショックを受け、失った希望を取り戻す過程には共感できる。
    また、想像力の象徴として描かれるミスタースーパーとのやり取りにもほのぼのとさせられる。また、このスーパーが、パトリック・ネスの「怪物はささやく」のように、現実世界に影響を与えないところにも安心感を持つ。

    ただ、後半に行くにつれ物語の主役がライナスからミスターオレンジに移ってきているようで、その点が少しこの物語を弱くしているように感じる。
    (モンドリアンのために書かれたお話なので当然ですが)。

    ライナスの年齢はわかりませんでした(書いてあったのかも知れませんが、私には見つけられませんでした)が、長兄が17歳、その3歳下の次兄は14歳。ということは、彼は12歳くらいでしょうか。
    戦争を扱ってはいますが、難易度は高学年で十分です。

  • 抽象画家モンドリアンをモデルに、彼のところへ毎週オレンジを配達する八百屋の少年を主人公にした作品。舞台は第二次大戦中のNYで、主人公ライナスの兄もみずから志願してヨーロッパ戦線に出征したばかり。そんな兄を誇りに思い、はじめはただ勇ましい兵士の姿を思い描くばかりだったライナスは、戦火を逃れてアメリカに亡命してきた「ミスター・オレンジ」との交流を通じて、勇壮なばかりではない戦争の実態を知り、戦火のなかに身を置く兄のことが心配でたまらなくなる。
    しかし同時に「ミスター・オレンジ」は、そんななかでも想像力を持ち続けることが自由を勝ち取るために大切なのだと説き、ライナスに真の楽観主義を教えてくれる。

    巻末の解説によれば、この作品はそもそも作者が、モンドリアン展のために物語を書いてほしいと依頼されて書きはじめたものだったとのこと。でもとってつけたようなものではなく、「ミスター・オレンジ」もライナスも、出征した息子のことを心配する両親も、この時代のなかで生き生きと呼吸している。暗い時代と、そんななかでも明日を思う気持ちとが自然に伝わってくる佳作。モンドリアンの作品をあらためてよく見たくなる。

  • ナチスやユダヤ人の悲劇が語られるかと思ったが、少年の成長物語だった。実在した画家の展示会に合わせて作られた架空の物語とのこと。

  • 第二次大戦中のニューヨーク、八百屋を営む両親のもと、ライナスは兄や妹たちと暮らしているが、兄のシモンが軍隊に入ることになり、ライナスが店の配達を手伝うことになる。
    そこでヨーロッパから避難してきた画家と出会う。
    兄の出征と画家のミスターオレンジの言葉に、少しずつ自分と回りの社会を考えるようになっていく。

    なかなか地味なテーマ。
    画家はピエト・モンドリアンがモデル。

  • ニューヨーク 
    1943年から1945年
    遠い戦争を身近に感じるようになるライナス
    モンドリアンを検索して絵をみてみた
    なるほど「ミスターオレンジ」
    ちょっと焦点が合わせないくかったかな
    ≪ 原色は 未来の色だ においまで ≫

  • [江東区図書館]

    ふと図書館の新刊コーナーで目にして手に取った本。ちょうどその数日前に違う図書館で「ヨネス・ヨナソン」という作家を知り、その著者の本を一冊読みあげたタイミングだったので、その手の本、、、分厚くて一見とっつきにくそうに見えるけれど、大人向けのライトノベルのように一旦読みだすと物語の中に引き込まれて行くような本、、、に久しぶりになじんでもっと欲していたところだった。でもできれば読んでいて楽しいだけでなく、その中から「何か」を得られるような。

    ヨネスの本は今借りている二冊目で現在の全著書であることを既に知っていたこともあって、惹かれたのが表紙絵だけでないことを少し中を読んで確認すると、借りてきた。そしてその日のうちに読み終わってしまった。

    美術に疎い私には、読み終わった後に説明された「モンゴリアン」についても知らなかったし、この画家の感覚についても共感など同一視するまでには至らず、それよりも戦争批判というか、戦いや征伐といった勝つことに関しての"憧れ"を抱く少年に対して、戦争という現実と身近な恐れを喚起させる存在として捉えられた。そして、この本自体は、モンゴリアンそのものを紹介&内包する話ではなく、"戦争"時の人々に関する冷静な描写本として読めた。

    きっとこれが日本での話であれば、モンゴリアンは「非国民」の1ケースとして出てくる存在なんだと思う。でもこの作者の筆運び以上に、海外を題材とすると、現実的にも違いがあってこうなるんじゃないかな。太平洋戦争当時の狂った日本の国内事情と日本人という国民性との差からもそうなる気がする。

    モンゴリアン展のためにモンゴリアンを題材に書かれた本と聞いたが、私のように無知な人からすれば戦争時代の描写とも取れる本。それでも表題と表紙絵、そして中身からは、瑞々しい"オレンジ"の印象は湧いていた。モンゴリアン=オレンジで覚えたかな。

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