レナレナ

  • 朔北社
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本棚登録 : 63
感想 : 3
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  • 本 ・本 (40ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784860851347

感想・レビュー・書評

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  • 約40年前に出版されたオランダの絵本。独特で不思議。髪の長いレナレナという名の少女が、その長い髪を生かして思いもつかない様々なことをするのですが、最初は子供が描いたのかな?と思っていたら、あれ?くせになってくる・・・いや、読み終わる頃にはもう一度読みたくなる不思議な絵本です。

  • 宇野常寛さん責任編集の雑誌「モノノメ」創刊号の特集記事で、作家の川上弘美さんが自分の本棚からお薦めの絵本として持ってきたうちの1冊。

    川上さんは言う。-「絵本を買うとき、つい子どものためになるようなという視点で絵本を選んでしまう、たしかにそんな本は押しつけがましくなく、何かしらの「意味」も含んでいて、ためになる。」
    でもレナレナについて、川上さんはこう言う――「もう全然違うでしょ。ひたすら、無意味で無教訓」――たぶん実際はここに(笑)がついていたと思う。

    そこで私も読んでみようと図書館で借りたのは、現在刊行されているものとは出版社が違う、1989年初版のもの。
    中身はすべて見開き2ページで1つのストーリーになっている。そして左側に16コマ(または8コマ)のマンガのような絵があって、セリフはまったくない。その代わりに右側にナレーションのような文章と1コマだけのマンガのような絵があるという構成。

    それにしてもレナレナはつかみどころがないと言うか、不思議な女の子だ。一番特徴的なのは髪型。頭のてっぺんから長い髪の毛がたばねられたようにまっすぐ上に突き出ている。私の妻が「辮髪(べんぱつ)?」と言ったといえばわかるかな?(でも編まれている様子はない。)それが1話目早々からネズミにかじられる。別の話ではウマにも食べられてしまう。うーん、この髪型って、なんなんだろう?

    でもよく見ると、レナレナの服装はシックな色彩のミニ丈のワンピースだったり、長そでシャツにタイトなパンツだったりと、年齢的に少し背伸びをした感じの服装の女の子。と言うことは、作者は別に特別ではなくて、どこにでもいる女の子を描こうとしているはずだ。

    そういう視点に気づくと、レナレナを見る眼は180度変わる。つまりレナレナは読者自身であり、レナレナがしていることを、自分も似たような感じでしてきたのだと。

    例えば2話目でレナレナはミミズの引越し用の「ミミズ箱」をちゃんと持っていて、その中には草が敷かれて蓋には棒で空気穴があけられていて、ミミズを土から指でつまんでは箱に入れて、花や草がたくさんはえている場所に連れていく。
    私は幼稚園児のとき、ミミズは土をこやすと聞いていたので、ミミズを見つけると、やせた土がこえるように移動させたりしていた。そのほかダンゴムシやハサミムシやオケラもつかまえては、(理由なんてあってないようなもので)移動させていた。
    つまり、みんな大人になって偉そうにかっこつけたとしても、“レナレナだった”経験は誰にでもあるはずなのだ。

    いや、レナレナは私のさらに上をいっている。友だち(?)のミーと外に出て小川に行って「およがない?」「さんせーい」と言いながら、2人ともスッポンポンになって泳いでいるよ。負けた。私は田舎の小川で泳ぎたくなって水着を持っていなかったけれど、ブリーフだけはいて水に飛び込んでいたから。

    最後に、今から書くことはほかのレビューにも書いたけれど、今の大人や親って、子どもに「体験」をさせようといろいろ企画するけれど、テーマパークやイベント会場に行ったり、お金をかけてスポーツをさせたり… でもそれってほんとうに子どものためになってる?

    この絵本を読み終わって気づいたのは、大人が1人も出てこないところ。つまりレナレナがなにか楽しんだり、いろんな体験をするのに、大人なんてほんとうは必要ないって話。
    Z世代とか言って情報端末を使いこなす世代が大人になって社会に進出することは怖くはないけれど、レナレナのような体験をしたことがない子どもが大人になってくるのは、正直怖い。

    今の大人が子どものためにしてあげられる一番簡単な方法、それは「ためになるかどうか」で子どもに何かを選んだり、してあげないことだ。

  • レナレナは日常の中にあるささやかな不思議なこと、おもしろいことを、すごく楽しむことができます。かんだ後のガムはおもちゃで、ミミズは友だちです。この絵本を読んで「えっ!? そんなことして大丈夫!?」と思う人は疲れていると思います。レナレナみたいにいろいろ自由にやってみましょう。
    (YA担当/なこ)令和3年5月の特集「元気がでる本」

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著者プロフィール

1957年、オランダのライデン郊外に生まれる。金の石筆賞を受賞したデビュー作『レナレナ』は新しい感覚の絵本として日本でも注目を浴びた。長年スヴォレ市の美術大学でイラストレーションを教えている。2019年にはボローニャ・ブックフェアのイラストレーター展で国際審査員をつとめた。

「2023年 『エーディトとエゴン・シーレ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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