ききゅうにのったこねこ

  • 長崎出版
3.44
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本棚登録 : 122
感想 : 20
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  • Amazon.co.jp ・本
  • / ISBN・EAN: 9784860954444

感想・レビュー・書評

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  • いつもの図書館で借りてきた、「猫の日」絵本のラストは、「マーガレット・ワイズ・ブラウン」と、「レナード・ワイスガード」の名コンビによる、ノスタルジーに溢れた(オリジナルは1952年)、『ここではないどこかへ』の物語です。

    まずは表紙の素敵なデザインに注目がいき、スカイブルーの外枠は、大空の爽やかさをイメージさせ、これから始まる物語の期待を高まらせるし、周りの風景に、どこか素朴な美しさを感じられるのは、レナード・ワイスガードの、下地の白を生かした、シンプルで手作り感のある温かい絵柄であり、気球に乗った「こねこ」も、どこか楽しそうです。

    しかし、表紙をめくって現れた、見返しの絵柄は、コーラルピンクを下地にした、白抜きの絵で、そこに描かれていたのは、無人の気球たちの飛んでいる姿であり、周りの風景は、一枚の葉っぱも無い裸の木々が目立つ、どこか寂れた感じであり、この差は何だろうと驚きました。

    そこで、コーラルピンク色の意味を調べてみたら、いくつかある中に『繊細』の意味があって、まさに、硬い殻で守られた中にやわらかい部分をもった、「コーラル(珊瑚)」を想起させられて、それはちょうど、物語のこねこの、ごく普通の猫を装いながらも、実は、ねずみが苦手だったという、決して触れられたくない、心の繊細さを表しているのだと思いました。

    改めて物語を読んでみると、ねずみのいないところへ行こうと、気球に飛び乗ったこねこが、風の吹くまま気の向くまま、世界をのんびりと漂う話で、行く先々で様々に移り変わってゆく、美しくも郷愁的な景色を眺めることができ、楽しく味わい深い一面もあるが、白黒とカラーの絵柄を繰り返す構成には、どこか緊張感漂うものがあり、時には、ねずみより怖いものにも遭遇して、決して順風満帆の旅ではありませんでした。

    また、そんなこねこの繊細な思いに、気球から見下ろした世界の住人たちは気付きません。

    「ぼくは いま、どこに いるの?」

    「あなたは、いま、ききゅうに のっているじゃありませんか」

    そう、下の世界に住むものたちは、気球に乗って旅をしている、こねこの様子に、さぞ楽しいのだろうなと感じるだけで、誰もこねこの質問の、真に意味するところを、理解してくれそうにありません。

    せっかく、ここではないどこかへ向かおうとしているのに、これでは、いつまで経っても変わらなそうで不安になりますが、これは、おそらく人生に擬えてもいるのではないかと思われて、時には、自分の直感を信じて(ここ、とても大事)、飛び降りてみる勇気も必要だと、言われているように感じられました。

    「ぼく、おりてみるよ。いい ところに ついたみたいだから」

    こねこも、その周りの景観から何か感じ取るものがあったようで、ついに心を決めて気球から降りてみた、その場所は、果たして理想郷だったのでしょうか?

    いえ、場所ではなくて、最も大切なものは他にあったという、読めば納得の結末だったのですが、ここまで辿ってくる物語の構成が見事で、読んでいて、旅を通した、こねこのひとつの成長を垣間見た思いがしたと共に、世界とは、案外孤独では無いのかもしれないということを実感させられて、本書はある意味、マイノリティ達への人生に捧げる、ささやかなエールのようでもありました。

  • 昔むかし、あるところにいた<一匹の仔猫>の冒険ファンタジ-絵本です。 その仔猫は、いつもネズミに追いかけられてばかりいました。ある日、子猫は「気球」に飛び乗ります 「さようなら ぼくはネズミのいない処へ行きます!」・・・山を越え、湖の上を抜け、雷に打たれながら、ネズミのいない新天地を求めて〝気球に乗った一人旅〟の先には、思わぬハッピ-エンドがまっていました・・・。マーガレット・W・ブラウンの語りにレナ-ド・ワイズガードの絵で描かれた、ネズミを捕まえなくなった猫たちのメルヘンチックな物語です。

  • 息子のお気に入り。

  • K
    6歳4か月

    Y
    4歳0か月

  • 主人公は
    ねずみを追うのではなく
    ねずみに追われるこねこです。
    ここではないどこか新しいところを求め
    気球に乗り込み旅を始めます。

    うろ覚えですが
    静かで空気がおいしくて
    落ち着ける土地を求めての旅です。

    都市の喧噪をはじめとして
    サーカス、汽車、飛行場…、
    読み手も感情移入しそうな
    人為的な冷たい仕打ちを受けます。
    人生の縮図かよというような。
    最後は激しい雷までこねこに襲いかかり
    天はこねこを見放したのか…
    と思いそうになります。

    しかし最後に待っていたものは
    最高の結果です。
    誰もが予想し期待するような結末です。
    極めて正統的な物語です。

    最後に感想を。
    オーソドックスが嫌い
    というわけではありません。
    オーソドックスに終わらせるつもりなら
    予感できる言葉を最初から使っていては
    途中の苦労や苦難が薄まってしまいます。
    ああ、やっぱり、そこに落ち着くのね、とか
    別に苦労話はあってもなくても
    そこに行き着く予定じゃん、とか。
    苦労をもっと薄くした自分探しの
    ストーリーにしたほうが気楽に読めて好きです。
    艱難辛苦をへて最高の結末に至るのだから
    それ相応のやむにやまれぬ旅の理由がほしい。

    ここではないどこかを求めて
    旅立ってみたけれど
    一回り大きくなって帰ってみると
    逃げ出して居場所を探しあてるより
    旅の中で自分を変えたように
    今いる場所を自分で変えていくほうが
    大事だと気づいたとか
    そっちのほうが好きだなあと考えました。
    根性論が好きな日本人だからでしょうか。

  • それはまるで、人生みたいだ。

    ねずまにおいかけられてばかりの暮らしにうんざりしたねこは、ある日気球に飛び乗った。

    「ぼくは ねずみのいない ところへ いこう。たかいきが あって、くうきもきれいな もりがあるといいな。」

    ききゅうとともに流れゆくねこ。いろんな場所をとおり、カミナリにあったり、ピエロに邪魔者扱いされたり。。

    ちょっとした冒険の末には…素敵なことが、待っているのです。

  • [墨田区図書館]

    著者は言わずと知れた、マーガレット・ワイズブラウン。けれども、本書は全く知らず、今回アーサー・ガイサードの「ふわふわブイブイ気球旅行」を読んで登録する際に、題名から一緒に検索されて知った本。

    題名からわかる通り、やはりブタとネコの差はあるけれど、「ききゅうに乗った動物」という点では同じコンセプト。でもこれは「ぼくは今どこ(住所的な質問)にいるの?」「ききゅうの中にいるよ」というやり取りに含まれる言葉あそび?もじり?的な要素や、一人っきりの迷子からパートナーを見つけるという、よくあるサクセスストーリー的な展開が、王道の絵本路線でやはり"ふわふわ~"とは違う。まぁ向こうの方が特殊路線だから、それは当たり前だけれど。

    また一つ本を"発見"できてよかった。横検索や、こういう思いがけない類似検索に出会えるのも、また本を登録していく楽しみの一つだな。

  • 請求記号:Eワイス
    資料番号:020222717

  • ねずみに追いかけられてばかりいた子猫は、ねずみのいないところへ行こうと気球に乗って旅に出ます。
    海に浮かんでいるヨット、サーカス、豊かな自然、大きな街の様子、嵐など次々と変わる風景を眺めながら気球は進みます。
    子猫が最後に辿り着いた場所で待っていてくれたものとは・・・

    >こねこは、じぶんがかぜになったようにかんじました。

    >ながれゆくけしきをながめていると、まるでききゅうがとまっていて、じめんのほうがうごいているようにみえました。

    など、気球に乗ったらこんな感じなんだろうなと想像してわくわくしてしまいました。

  • ねずみがこわいこねこ(かわいい)が新天地を求めて気球で旅をする

    嵐や街や工場やいろんなところを通過する

    最後は静かな森で連れ合いみつけて落ち着く

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