金川 晋吾 father

著者 :
  • 青幻舎
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本棚登録 : 14
レビュー : 3
  • Amazon.co.jp ・本 (172ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784861525261

作品紹介・あらすじ

失踪を繰り返す父、父を撮る息子。人間の「わからない心」を写真を通して見つめ続けた彷徨の軌跡。金川晋吾、待望の初写真集。

感想・レビュー・書評

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  • 表紙と内容紹介だけ読むと、この写真家の父はこの世に順応できないダンディなアウトサイダーという先入観があったが、後半の日記を読むとただのめんどくさがり屋のダメ人間という印象がぬぐえませんでした。

    写真というフィルターを通すと何でも美しくなると思う。撮影対象を見つめる写真家のまなざしが美しいのだろうと思う(それも錯覚かもしれないけれど)。

  • 「やっぱり生きていくのが面倒くさい」

    写真家の息子が父の写真を撮る。
    それだけならさほど珍しいことではないかもしれないが、この写真集が特異なのは、父が母と離婚した末、「蒸発」を繰り返し、多額の借金も抱えていることである。
    息子は父の自己破産に向けての手伝いをしつつ、写真を撮る。

    短い序文の後、10ヶ月ほどにわたる、父や父の家、父の犬の写真が続く。
    間に息子の日記が入り、その後の父の写真が収録される。この部分はほぼ「自撮り」のようである。
    序文と日記には英訳文が付く。

    父の「蒸発」や借金にはさしたる理由が見あたらない。
    ただただ、人生を「降りてしまった」ようにしか見えない。
    酒は飲む。パチンコもする。夜の女とも遊ぶ。
    けれどそれらはどれも、耽溺しているとか引きずられているという感じではない。
    アル中とかギャンブル中毒とか女に騙されているというわけではなく、何だか惰性であるようにしか見えないのだ。鬱病というのとも違いそうだ。
    定職にも就いていたが、何だかただただやる気がなくなったように、無断欠勤の末、やめてしまう。
    冒頭のひと言は、父自身が走り書きしたメモである。
    つまりこの写真集は、人生が「面倒くさ」くなってしまった人のポートレートである。

    著者も兄も、父の暮らしが何とか立ちゆくようにいろいろと手助けをしはするのだが、いかんせん、本人の「やる気」がない。
    自己破産の手続きをするのだって、カネは掛かるのだ。煩雑な事務作業も経なければならない。
    周囲の焦燥を余所に、父はまったく自分の立場がわかっていないようである。飄々と息子にカネをもらっては、後先を考えるでもなく使ってしまう。
    日記に収録された父と息子の会話は信じがたく噛み合っていない。
    働きかけ次第では、父が「心を入れ替える」のではないかという期待も徒労に終わる。

    何だか、これは異様に怖い話で、徹頭徹尾「リアル」な話なのに、非常に「シュール」な感じがある。
    初老の「おっさん」がそこにいるのに、こちらの声が伝わるのか伝わらないのかさっぱりわからない。それでいて、自分とこの「おっさん」がどれほど遠いものなのか、もしかしたら自分もふとすべてが「面倒くさ」くなることがあるのではないか、ふとそんな思いに囚われる。
    アスファルトの道の真ん中に、底の見えぬ穴がぽっかり空いているかのようだ。

    最後の数頁が怖い。
    父はこの後、どうなったのか。どこへ行ったのか。
    その後の解説がないところもまた怖い。

  • 2ページで1枚の写真を掲載。
    綺麗な写真だからそれがなんとも印象的。

    家族と向き合うこと。避けられないこと。この写真集はお互いの解決点と妥協点を探す存在なのかもしれません。

    写真1枚1枚に説得力があります。写真のあとに長いキャプション(日記)があります。
    構成の勉強にもなりました。

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