氷の海のガレオン,オルタ (ピュアフル文庫 き 1-1)

著者 :
  • ジャイブ
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  • Amazon.co.jp ・本 (217ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784861763557

感想・レビュー・書評

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  • 『ほんとのこと』が書いてある恐ろしい本。

    ある人にとっては福音書になり得るだろうし、ある人にとっては黙示録のようなものかもしれない。
    思春期に読むのと、大人になってから読むのとでは読み方が変わってくるだろう。

    『氷の海のガレオン』
    斉木杉子(さいきすぎこ)。十一歳。
    この響きのいい、古風な名前のセンスが理解できるような子供は、ひとりもいない。そう思っている孤高の存在。
    詩人のママと、職業は「ムーミンパパ」と言って憚らないパパ。
    兄の周防(すおう)と弟のスズキ。
    畑と図書館と大きなナツメの木「ハロウ」がある家。

    自分の子供の成長とともに、また読み返すことになるかもしれない物語。

    『オルタ』
    物語というよりも育児日記のような感覚。


    世界観は嫌いではないし、感覚も言いたいことも分かる。
    なんだかもやもやするのは、その「閉じた」感じ。
    でも、時間が経てばまた読み返すかもしれない。

    自分の子供には「自由であろうとすること」からも自由であってほしい。

    • kwosaさん
      ユウさん

      コメントありがとうございます。

      思春期をふり返ってみれば、おかしな話ですが「自由」や「個性」といった言葉に縛られ、がんじがらめ...
      ユウさん

      コメントありがとうございます。

      思春期をふり返ってみれば、おかしな話ですが「自由」や「個性」といった言葉に縛られ、がんじがらめになって身動きが取れなくなっていた気がします。
      諦めや投げやりな意味ではなく、誤解を恐れずに言えば「そんなことはどうでもいい」
      そう思えば軽やかに生きていけそうな気がします。
      2013/01/22
    • ユウさん
      30年と少し生きてきて、いまのところ30代が一番生きるのが楽だと思えます。
      経済的にじゃありません。精神的にです。

      10代は早く大人...
      30年と少し生きてきて、いまのところ30代が一番生きるのが楽だと思えます。
      経済的にじゃありません。精神的にです。

      10代は早く大人になりたくて、なのに大人になるってことが具体的には何を意味するのか、よく考えてはいませんでした。
      大人なわたしはいまよりも絶対不幸ではない、そう思えていたのです。
      この頃はみんなと同じであることが良いこと、突出してもいいのは学校の成績だけ。
      それ以外の何かがまわりと違うということは、日々生きる上で相当の摩擦と負担になって返ってきました。

      20代は迷いの連続。
      それまで同じであることが良いことだったのに、自由と選択肢が与えられると、途端に別の息苦しさが襲ってきました。
      はじめて知りました。
      わたしが自由でいられたのは、自由であることを許された世界の中にいたからだってこと。

      そして30代。正直なところ、10代の頃と何が変わったのだろうと思います。
      若さを理由に無下に扱われることに反感を覚え、今度は年相応であることを強要されて、そうなれない自分に悩む。
      けれど30代になり肩の荷がおりました。
      結局同じところに行き着くのです。
      何をしても、どうやっても、わたしはわたし。
      枷を嵌めていたのは世間ではなく自分自身だったのですね。

      自由って、深い単語ですね。
      自らに由る、 全て自分次第。

      個性
      個々の性、それぞれ生まれ持った性質、宿命、そして魂。

      本来の意味を思えば、狭義の自由や個性など陳腐なもんです。
      広大だと思えた脳内の都合良過ぎる世界より、もっと多彩で残酷で、だけど耽美で輝かしい世界にいまわたしはいます。
      これが現実。自らに由る、自由を勝ち得る世界です。

      まだダメ、胸がきゅいんきゅいんするので、ここまでにしておきます。。(>_<)
      長々と失礼しました。
      2013/02/04
    • kwosaさん
      ユウさん

      しっかりコメント受けとめています。
      ありがとうございます。

      「自らに由る」深いですね。
      心に響きます。
      ユウさん

      しっかりコメント受けとめています。
      ありがとうございます。

      「自らに由る」深いですね。
      心に響きます。
      2013/02/05
  • 『氷の海のガレオン』

    何かすごいものを読んでいるという自覚はあるのだけれど、いまひとつ掴みきれなかった。

    「わたしはわたしの言葉を、文学とパパとママの言葉で培ってきた。考えごとも想像も、すべてはその言葉たちで組み立てられる。それが学校ではまったく通用しないということに気づいたのは三年生のときだった。」

    杉子は学校でいつも一人で本を読んでいる。小学六年生。どの女子のグループにも属さないと固く決めている。母は詩人、父はムーミンパパのような人。家には図書室がある。

    杉子は、私と似ているところも多々あり、学校で周りに馴染めず、周りの人達の言動に違和感を感じ、距離をとって関わらないようにする気持ちはとてもよくわかる。当時、私も、女子特有の依存し合い、そして排除し合う世界に辟易したのを覚えている。だから、それを特に可哀想とか痛いとは思わない。
    ただ、いつか魂の合う人と出会えれば、それは一人よりも楽しいことも知ったので、杉子にそういう時が来たらいいなと思う。
    杉子はとても親や兄弟に恵まれていると思う。特殊な考え方の親であっても、それは素敵な独自のスタイルで、羨ましいくらいの環境だと思う。でも、他との交流が極端にないと、見識を広げたり、今までの価値観に新たな風を入れることが、本の世界だけでは割と難しい気がする。この先、家族から離れて、その家庭独自の生き方とは別の新たな生き方を知っていく様子も読んでみたいと思った。

     この本を読んで、学校に通っていた頃、グループになって騒いでいた集団がとても恐怖だったことを思い出した。そこは楽しいんだろうか?という、ある種の羨ましさや憧れも混ざっていたのかもしれない。あちら側の人とこちら側の人。生きている限り永遠に交わることがないと思っていた。大人になると、そして子供を持ったりすると、交わらざるを得なくなる時が来る。そこでまた、思春期の悩みの続きが始まる。そして、親になっていくのだと思う。

  • 自分のことを読んでるのかと思った作品。
    高校のときに読んだのですが、結構衝撃でした。
    複雑な心理状態というか、葛藤とか、意味もなく泣きたいとか
    そういうぐちゃぐちゃな心理のときに読むと共感できると思います。
    私もこの話に出てくるお父さんに会ってみたい(笑)

  • ものすごく熱烈に支持されている本らしいし、好きな人が好きなのはわかるんだけどいまひとつ乗り切れないのは自分の中に杉子と、杉子になれないまりかちゃんがいてまりかちゃんが「ダサい」と切り捨てられるのがかわいそうに思えてしまうからだと思う。

  • なんだか昔のことを思い出した。学校、大変だったなあ。しかし、自分が親になり、子供が学校に行きたくないと言い出したとき、それを支持できるか、正直なところあまり自信がない。子供の決断を支持するためには事前の準備がいろいろ必要になるように思った。早めに支度をしておきたい。いま読むことができてよかった。

  • 読み終わったからいらない、と処分を頼まれた一冊。
    もしこの作品を中学生の頃に知ったならば、もっと楽に当時を生きられたかも知れないなぁと感じました。
    「西の魔女が死んだ」にも同じような思いを抱きましたが、こちらのほうが強くそう思えました。

    • kwosaさん
      ユウさん

      本棚に花丸とコメントをありがとうございます。そちらの方にも返事を差し上げています。

      たしかに中学生の頃に読んでいたら、もっと楽...
      ユウさん

      本棚に花丸とコメントをありがとうございます。そちらの方にも返事を差し上げています。

      たしかに中学生の頃に読んでいたら、もっと楽に生きられたかも知れませんね。僕もそう思います。
      2013/01/22
  • 氷の海のガレオンは面白かったです。
    子供の時に読んだら、どう感じたんだろうなー。
    体験出来なかったのが悔やまれます。

    今は、「あったあったそんな時…」と、とても懐かしいです。落ち着いたものです。

    1番共鳴したのは、ハロウの根元で雨に降られるシーン。
    うちに樹は無かったけれど(笑)
    落ちるとこまで落ちたら、上がるだけ。落ちたと思っても振り返ってみれば、落ちるなんてとこまで落ちてないことが殆ど。
    上手くできてるものだなー。

    解説では、杉子に共感する人は多いのでは、と書いてありました。
    飲みながら、話してみたいものです。


    オルタに関しては…なんだろう、リアル過ぎるのか、受け入れきれていません。
    これはまた10年経てば、受け方が違うのかな。

  • ここ最近読んだ本のなかで、一番面白かった!
    なんでいままでこの本に出会わなかったのか、
    ものすごく悔やまれる。

    <自分のことばをもつ>が故に
    外界とうまくかかわれない斉木家の人々が印象的。
    特にお父さんとお母さんは、
    こんな人たちが両親だったらよかったのになと思う。

    それから、多恵子さん。
    彼女も<自分のことばをもつ>人のひとり。

    杉子たちみたいに、
    家族とか身の回りに同じ人がたくさんいるのは
    少しうらやましいなと思った。
    だって、もし杉子が『まりかちゃん』みたいな人の家に
    一人ぼっちだったら、
    今以上にいきているのがつらかったろうから。

    それでもハロウに抱きついて涙をこぼす
    杉子は<ふつう>の女の子で。
    そんな姿が印象的でもあった。

    裏のあらすじ(?)に
    「何度でも読み返したくなる一作」とあったけど、
    本当だなと思った。
    実際、読み終わってすぐに読み返してしまった。
    この作品を読んで見えたなにかを逃すまい、と
    どこか必死になっている自分がいた。


    [2009/11/14]

  • 子供の頃を思い出した。
    杉子が今後どうなるのかはわからないけど、自分は自分を社会に適合するように矯正する努力をしてしまったので懐かしい気持ちになった。
    自分が信じている世界が壊れている感覚、耐えられない。

  • 自分を天才だと称して「学校なんてなけりゃいい」と思う少女。隣の席の子の行為に恐怖を感じるが担任に通じず学校に行かない選択をした少女。「普通」とは何なのだろう。

    強烈な刺激で頭に心に溢れ出す想いを言葉にできず身体が痺れたようになった。
    僕は今でもなぜ「普通」に生きられないのだろうかという想いに囚われている。子どものころは「普通」でないことを武器にしなくちゃ生きていけなかった。
    だからこそ今こんな風に思っている子どもたちに「普通」なんてものはないのだよと伝えなきゃいけない。そして「この世界には楽しいことがたくさんあるよ」と伝えなくちゃいけない。子どもたちが進み出すそんな世界を作らなくちゃいけないと思っている。
    そしてこの本を手渡そう。

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著者プロフィール

1971年石川県生まれ。作家。
日本大学芸術学部演劇学科卒業。1993年「氷の海のガレオン」(群像新人文学賞優秀作)でデビュー。作品に『ねこの小児科医ローベルト』『悦楽の園』「マイナークラブハウス」シリーズ、『あたたかい水の出るところ』『夢界拾遺物語』『ぼくらは、まだ少し期待している』などがある。

「2023年 『ステイホーム』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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