ピュアフル・アンソロジー もうひとつの夏休み。 (ピュアフル文庫)

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レビュー : 5
  • Amazon.co.jp ・本 (228ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784861765285

作品紹介・あらすじ

6人の作家が個性豊かに紡ぎ出す、少年少女の夏の日の物語。全編書き下ろし短編による、オリジナル・アンソロジー。

感想・レビュー・書評

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  • “走って廊下に出ると、亜子が廊下の隅に腕を押さえて倒れていて、静かに声を殺して泣いていた。
    振り返ると、優美が平然と自分の席に座って、隣の子とにこにこしゃべっているのが見えた。かたや亜子は廊下の隅っこで、薄い唇をかみ締めて泣いていた。声を殺して、もう限界が来たよって、言っているのがわかった。亜子が実際にそう言ってなくても、私には聞こえた。亜子は白い給食当番のエプロンを、ぎゅうっと力いっぱい握っていた。
    亜子、もういいよ。苦しまなくていいよ。
    そこから先の記憶はあいまいで、でもところどころが鮮明だ。勢いよく走っていって、私は優美に摑みかかった。驚いた顔をしている優美を立たせ、頭から牛乳をかけた。頭から顔にかけて、牛乳が落ちていく。優美が目をつぶった隙に、カレーの具を手摑みで顔に投げつけた。にんじんやジャガイモがぐちゃぐちゃになって飛び散った。近くにいる女の子は悲鳴を上げ、男子たちはおもしろがって見ていた。
    亜子を元通りにしてよ、前の亜子のきれいな笑顔がなくなっちゃったじゃない。
    優美が顔をぬぐっているうちに、フルーツヨーグルトもかけて、優美の机を倒し、優美も床に倒した。椅子を持ち上げて床に転んだ優美に投げつけようとしたとき、先生がうしろから私のことを押さえた。
    黙っていればいい気になって。
    私はなにも声にしなかったけれど、心の中では優美に汚い言葉をたくさん浴びせた。そして実際には給食をかけた。優美は汚い。とても汚い。
    私も汚かった。食べ物の飛び散った制服をきて、椅子を頭の上に持ち上げていたのだから。”

    草野たき「いつかふたりで」
    前川麻子「プルートへようこそ」
    藤堂 絆「田園の城」
    沢村 鐵「アイム・ノット・イン・ラブ 〜劇団・北多摩モリブデッツの夏休み〜」
    香坂 直「青田わたる風」
    芦原すなお「東京シックスティーン」

    切ないのは特になかったかな。
    ちょっと胸が傷むような。

    “「ここから、町が見渡せるだろ。国道のほうまでずっと。小さい町だよな。みんな小さくて、ここにあるとこだけがすべてじゃないのに、それに気づいていない。みんないじめられたくなくて、必死なんだってわかってたんだ。いじめられると、一人になるから、冷静になっちゃうんだよね。みんなの行動が手に取るようにわかる。みんな必死な目をしていじめてるんだ。いじめるほうも辛いんだろうなって思った」
    「ほう、余裕だね。私は許せないけど......。亜子も、もしかしたらそう思っていたのかもしれない」”

  • 母も読んだ

  • 全体的に読んだ後の満腹感が少ない。
    「東京シックスティーン」 は
    淡い恋や、田舎から都会へ行くときの
    実際にありそうなことが描かれていて好きだが
    他はいまいち、ピンと来るものが無かった。
    「アイム・ノット・イン・ラヴ〜劇団・北多摩モリブデッツの夏休み〜」は
    まだ良かった。

  • 草野たき「いつかふたりで」
    前川麻子「プルートへようこそ」
    藤堂絆「田園の城」
    沢村鐵「アイム・ノット・イン・ラヴ~劇団・北多摩モリブデッツの夏休み~」
    香坂直「青田わたる風」
    芦原すなお「東京シックスティーン」

  • すごく爽やかで、瑞々しくて、おバカで、かわいらしくて、切なくて、痛々しくて、でも特別な…「夏休み」。夏だからこその若かりし頃の思い出をぎゅっととじこめた、いとおしい一冊だ。
    どの短編も印象的だけど、個人的には藤堂絆作品がお気に入り。息苦しかった学校生活と、田舎町にできた新しいショッピングセンターでの夏休みの日々との対比の描き方がうまかった。
    いくつになっても、「夏休み」という言葉が大好きだ。私のような大人の方、是非この本で夏休みを味わい直してみて欲しい。「甘酸っぱい」というたとえが見事にハマる一冊。

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