船に乗れ!(2) 独奏

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  • ジャイブ
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  • Amazon.co.jp ・本 (297ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784861766817

作品紹介・あらすじ

続巻待望の青春音楽小説、「光と影」のさらに色濃い第2楽章へ。

感想・レビュー・書評

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  • 初めてオペラ『魔笛』を(それも原語で)観る南のために
    試行錯誤を繰り返し、単語カード6冊を費やして
    最終的にはオペラ全体を126の場面に分け、
    シーンの説明を2冊の単語カードに書き込むという
    デートに向けてのサトルの涙ぐましい努力が微笑ましく

    先輩の努力に感銘を受け、
    「一緒に芸大に行こうね♪」と希望に燃えるふたりに
    うんうん、見守ってるこっちのほうが気恥ずかしいけど
    とにかく仲良くがんばれ♪と陰ながら応援していたのに。。。

    家族が良かれと思ってお膳立てしたドイツ留学を機に
    挫折と後悔に向かって、坂道を一直線に転がり落ちるような急展開。

    学内で押しも押されぬトップ奏者として認められた子が
    留学先では、持って行った楽譜を開くことも許されず
    スケールの練習だけ延々とさせられて帰国したり
    音楽漬けだった音高生が、恋に落ちて
    ひとたび音楽以外にも愛する対象を得た途端、
    理解に苦しむほど恋愛に依存したり情緒不安定になったり、というのは
    実際ほんとによくあることなのだけれど

    自信を失い、恋を失い、一番尊敬できる先生まで卑怯な手で貶めて、
    自分で自分の首を絞めるように、ひとりの闇に落ちていくサトルの姿は
    痛ましすぎて見ていられない。

    1巻でやっと「協奏」し、「合奏」し合える仲間を得た後だからこその
    これからの「独奏」の辛さがわかってしまう歳になった私には
    どうかどうか、音楽を目指す若者の意欲を削ぐ結末になりませんように、と
    祈るしかない、第2巻なのでした。

  • 第1巻にあたる「船に乗れ!〈1〉合奏と協奏」で高校1年生だった主人公の少年が、2年生に進級してからのハナシとなっています。
    前作は、とくに何も起きない学生生活を淡々と描いた作品だったのに対して、コチラは、主人公の少年を取り巻く環境が、高校生には重すぎるホド大きく展開をみせる内容となっています。

    周囲から半ば強制のように強いられた出来事、自分の力ではどうすることもできない出来事、弱さ故に自らが引き起こした出来事。
    次々につきつけられる逃げ場のない「事件」に対して、温室育ちの少年はあまりに弱く、順調にまわっていた歯車が噛み合わなくなっていき、打ち込んでいるハズだった「音楽」ですら、少年にとって「喧騒」に感じられるようになっていくさまには、読んでいてなんか緊張するかのような感情をおぼえました。

    まあまあ。
    17歳というこの時期、多かれ少なかれ、誰しもこんなふうにオロオロしてるモンだよな。
    とかおもいながら読みました。
    私自身、家を出たのは17んときだったし。

    完結となるつぎの第3巻で、主人公のとっ散らかった感情がどのような纏まりを見せていくのか、気になるトコロです。


    http://blueskyblog.blog3.fc2.com/blog-entry-1730.html

  • 待望の第二弾!恋に音楽にひたむきな津島サトル君のまぶしいことまぶしいこと。将来を見据え、ヴァイオリンに並々ならぬ情熱を注ぐ南に圧倒され、そんな彼女に懸命に追いつこうとするサトルの成長っぷりは目を見張るものがあった。今回も作曲家や演奏家の薀蓄たっぷりで、ポリーニやランパルは私もよく聴いてたよ〜と懐かしかった。
    ついには海外短期留学までしちゃって、順調にキャリアを積んでいる感じのするサトルだったが、後半、こんな衝撃の展開になろうとは。正直、いまだにその衝撃を受け止めきれずにいる私である。それ故、あまり詳しくは書けないのだが…。サトルの視点から描かれているため、当事者たちの気持ちがどうだったのかちょっとわかりかねるところがあり、何とかならなかったのかなと思ったりもする。
    一体、3巻でどう展開させるのか全く予測がつかないのだが…辛さや痛みを昇華させ、より深く心に響く音楽を奏でて欲しい。私が願うのはそれだけ。

  • あー、衝撃の展開。

  • 前巻末のホームコンサートを機に、サトルは順風満帆な高校生活を歩んでいたかのように見えた
    美しい彼女、南里枝子との初めてのデートをかなえ、芸大進学という目標も共有さえしていた。
    そして、夏休みには短期留学にも行くことになる。

    しかしそこから運命は暗転していく。
    ジェットコースター級の展開だ。
    物語はここから、俄然目が離せなくなる。

    留学では成長できたこともあるが、音楽を表現することの難しさを突き付けられる。
    そして、不在の間に里枝子との間に亀裂が生まれる。
    そして、その苦しみを、卑劣な方法で晴らそうとする。
    そんなサトルの暗黒時代が、現在の目から描かれる。

    負けず嫌いで、音楽にも一本気な里枝子の変化が納得がいかない。
    それは大人になったサトルの視点から相対化されてもだ。
    それは次の巻まで読んだら、折り合いがつけられるものなのだろうか?

  • ((´=д=`)))).....♩

  • 42:00:00

  • オペラを楽しんでいた音楽の道に邁進しようと決意したところから一転、ドイツ留学、恋人の妊娠、結婚などジェットコースターのようにめまぐるしく展開していった。でも、なんと言っても金窪先生の最後の授業、分かる人にしか伝わらない、静かだけど苛烈な怒りには迫力があった。

  •  南が外に出たところに自動販売機を見つけて、あそこで缶ジュースを買ってベンチに座っていれば、一時間くらいすぐ経っちゃうよ、といった。いったん暖房にあたった身体に、外はいっそう寒く感じられたが、南の僕への口ぶりが嬉しくてしょうがなくて、温かいレモンティの缶をカイロ代わりにしながらベンチに並んで座った。彼女が何でもないことを何でもないことのように僕にいうのは、それだけ僕といることが彼女にとって自然だ、いまや自然なことになったということを表していた。

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著者プロフィール

1963年、東京都生まれ。2003年、『アンダンテ・モッツァレラ・チーズ』(小学館)でデビュー。2014年、『世界でいちばん美しい』(小学館)で織田作之助賞を受賞。主な作品に『おがたQ、という女』(小学館)、『下北沢』(リトルモア/ポプラ文庫)、『いつか棺桶はやってくる』(小学館)、『船に乗れ!』(ジャイブ/ポプラ文庫)、『我が異邦』(新潮社)、『燃えよ、あんず』(小学館)など多数。エッセイ集に『小説は君のためにある』(ちくまプリマ―新書)など。

「2021年 『睦家四姉妹図』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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