船に乗れ! (3)

著者 :
  • ジャイブ
3.89
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  • (29)
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本棚登録 : 818
レビュー : 193
  • Amazon.co.jp ・本 (237ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784861767357

作品紹介・あらすじ

各紙誌で話題沸騰&読者の反応も熱い青春音楽小説三部作。津島と鮎川、伊藤…それぞれの心がぶつかり合い、再びふれ合う-感涙の最終楽章。

感想・レビュー・書評

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  • 表紙に描かれた指揮者のイラストに一縷の希望を繋いで開いた最終巻。

    こんなにも音楽への愛情と敬意があるのなら
    たとえチェリストとしての自分に見切りをつけても
    音楽のためにも、自分自身のためにも、音楽にしがみついてほしかった。。。

    祖父の、「食うために腕を上げていった芸術が一番好きだ」という言葉も
    祖母の、「音楽でも、音楽でなくても、どっちみち苦労するものね」という言葉も

    「ここまでだね」「僕はここまでだ」と自分の限界を見つめながら
    それでもオケでチェロを弾き、生徒に真摯なレッスンを続ける佐伯先生の姿も

    退学した南を飛び入りで迎えた『ブランデンブルク協奏曲』の
    今、そこにしか存在しない、生きる歓びに満ちた演奏も
    屋上で、たったひとりの聴き手のために伊藤慧が想いをこめて奏でた
    ドビュッシーの『シランクス』の調べも

    「許さない」と突き放しつつも、わざわざ自分の言葉で翻訳し
    原稿用紙に書きつけてくれた、金窪先生の「船に乗れ!」とのメッセージも
    18歳のサトルには届かなかったのが哀しい。

    確かに、一流のソリストとして聴衆を魅了することができるのは
    音楽を志す大勢の人の中の、ごくごく一部の限られた人だけだけれど
    音楽という芸術を支え、存続させるために
    できること、やらなければならないことは、もっともっとたくさんあるのに。

    情熱を注いできた夢だからこそ、ずるずる引きずりたくなくて
    どこかで区切りをつけて新しい一歩を踏み出したい、と思う気持ちが
    痛いほどわかるだけに、とりあえず合格できた大学を卒業し
    職を4回も替えるくらいなら、どんな形でも音楽に関わっていてほしかった。

    苦い悔恨を抱え、揺れる船に乗り続けることが生きることなのかもしれないけれど
    今、キラキラした瞳で音楽の道を志そうとしている子どもたちには
    あまりに苦すぎて、打たれ弱い私にとっては
    「読んでごらん」と気軽に薦められない本になってしまいました。

    • まろんさん
      わ~い、torachanさん、ひさしぶり~!
      しばらくレビューもコメントも読めなくて、実はかなりさみしかったのです(ノ_・。)

      でも、風邪...
      わ~い、torachanさん、ひさしぶり~!
      しばらくレビューもコメントも読めなくて、実はかなりさみしかったのです(ノ_・。)

      でも、風邪と夏バテとオリンピックのトリプルアタックだったとは。。。大変でしたね。。。
      私の苦手なレバーを、私の分も食べて元気になってね♪

      そして、この本は!
      読ませる本だし、音高の描写とかものすごくリアルだし、
      繊細な美少年♪フルートの伊藤慧くんとか、
      神々しいほどのバッハを弾くのにガラッパチなおじいちゃんとか
      魅力的なキャラも出てくるし。
      ずっと辛くて重いだけじゃないんだけど、なんていうんだろう、
      人生そのものは肯定してるんだけど、
      音楽で身をたてることに関しては、ものすごくシビアというか、苦いというか。。。
      でも、『Heart Beat』というアンソロジーに、この作品の後日談みたいなお話が載ってて
      そこまで読むと、救われた気分になるかもしれないです(*^_^*)
      2012/08/16
  • 第2巻の高校2年生時に心に傷を負った主人公が高校3年生になってからのハナシ。

    自分自身に見切りをつけた結果、いいイミで周囲との距離が縮まり、それまでのひとりよがりだった自分を清算すると同時に、「その他大勢」に埋没してしまった挫折を引きずりながら生きる「今」が描かれています。

    よく、10代というイタい時期に起こした失敗は「若気の至り」というコトバで片づけられがちですが、ホントのトコロ、若かったという理由でそれが許されるというワケではなく、その失敗を常に抱えながら、それを内包できるだけのヒトになって生きるしかないんだなー。とか考えながら読みました。

    そういうイミでは、誰もが共感できるハナシかもしれません。

    ただ。
    登場人物が総じてあんま魅力的じゃないので、あんまり感情移入できなかったのが残念。
    主人公のオニイチャンはうじうじした内弁慶だし、ヒロインのおねえちゃんに至っては、なんか容姿端麗って書かれてるのが唯一の救いってくらいで、読んでて「なにコイツ?」ってカンジのオンナだしね。
    あと。
    ハナシががさいごのほうになるに連れてでてくる、「あのときは気づかなかったけど、のちのち考えたらおれモテモテでした。」っていう描写もジャマでした。

    まあ。
    振り返ってみる高校ジブンなんてみんなそんなモンなので、そのヘンはリアルでいいとおもいマス。
    あー。おれ、中卒だったよ…。


    http://blueskyblog.blog3.fc2.com/blog-entry-1733.html

  • 2011.3.21 初読 市立図書館

    おもしろかった。
    すごすぎて上手い言葉が出てこない。

    『船が揺れ続けていることを忘れてはいけない。』

  • .。.:*・o゚。♪。゚o +.。.:*・o゚。♪。゚o +.。.:*・゜+ o゚。♪。゚o

  • 船はずっと揺れ続けている、なんてこと、みんな教えてもらうまでもなく、日々の中で思い知らされてるんじゃないのかな。挫折の顛末にちょっと自己陶酔の気配を感じて、素直に読めなかった。合奏シーンの描写は素晴らしかった。

  • 44:確か、少し前の「ダ・ヴィンチ」でプラチナ本に選ばれていましたが、それにも頷ける面白さでした。作中で挙げられる音楽は、タイトルだけ言われてもぴんと来ないのですが(ネットで探せばすぐに聴けますし、いい時代になったものです)、演奏シーンや楽曲の説明シーンでは、どの曲もとても素敵なものに思えるんですね。リストアップしておきながらまだ聴いていない曲がほとんどなのですが、この「聴いたことのない人/ぴんと来ない人に音を伝える」という難しいことを、見事に成功させています。
    思春期の苦悩を乗り越えて、少年はひとつ大人になって……とか、そんな清々しさよりも、もっとどろどろとしたサトルの汚さや狡猾さ、弱さが前面に出され、丁寧に描写されるからこそ音楽のシーンの美しさが際立つのだと思うし、ラストシーンで少しだけほっと息をつけるのだと思います。
    キレイなだけではなく、汚いだけでもない。清濁が共存するからこそ深みが生まれ、ハーモニーを生み出す。そんな力強さに満ちた物語でした。

  • 楽器演奏をした事がある人には共感出来る部分があるかも。
    音楽のプロになるには、本人の才能、努力以外に親の経済協力も必要なんだよな…と改めて思った作品。
    でも南のよく分からない行動には全く納得出来ない。

  • スポーツでも音楽でもそうだけど、その道を突き進むって本当に難しいものだなぁと改めて感じた。
    伊藤君を屋上に一人残さなかったのが結果的によかった、というのは、サトルの返答次第では飛び降りてしまう可能性があったから?
    おじいさまの演奏したバッハの意味とか伊藤君のジャン・クリストフのオットーの章の話とか、サトルはいつでも真意を悟るのが周回遅れだなぁ。でも、その時分かったからと言って彼にできたことは何もないのかもしれないけれど。

  • 勉強こそあまりできなかったものの、金持ちで音楽の才能があって、挫折とは無縁の生活をおくっていた津島サトルが、高校二年生の時に初めて挫折する。

    夏休みに短期留学をすることになり、その事を彼女である南枝里子に告げた時から歯車が狂い始めた。
    自分の才能の限界、そして失恋。

    高校三年生になった今作では、新一年生たちの才能に圧倒される新三年生たちの姿が描かれる。
    真面目に練習をしていればいるど、自分に足りないものが見えてくるし、他人の長所が大きく見える。
    真剣であればあるほど、それは辛い。

    サトルが考えて出した結果は…。

    ストーリーのほろ苦さは若い人に任せる。
    私は音楽描写を、うっとりと堪能した

    文化祭でオーケストラが演奏する「ブランデンブルグ協奏曲」
    誰がどう演奏するのか。
    ひとりひとりの演奏があって、それが合わさってひとつの曲を作り上げ、合わさった中からひとりひとりの個性が光る。
    10ページ以上も費やして描かれたその曲の描写は、圧倒的な音のうねりが聞こえてくるよう。

    新生ホールのこけら落としで演奏された「ジュピター」と二度目の(つまりアンコールの)「ハフナー」の楽しいこと。

    美しい音楽を作り出す裏の、辛く苦しく長い長い練習。
    だから音楽は素晴らしい。

  • チンタラ ポンタラ タルイ

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著者プロフィール

1963年東京都生まれ。日本大学藝術学部映画学科卒業。2003年、『アンダンテ・モッツァレラ・チーズ』でデビュー。08年、『いつか棺桶はやってくる』で三島由紀夫賞候補。10年、『船に乗れ!』三部作で本屋大賞第7位。14年、『世界でいちばん美しい』で第31回織田作之助賞受賞。他の著書に『燃えよ、あんず』『綾峰音楽堂殺人事件』などがある。

「2019年 『花や今宵の』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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