船に乗れ! (3)

著者 :
  • ジャイブ
3.89
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感想 : 199
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  • Amazon.co.jp ・本 (237ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784861767357

作品紹介・あらすじ

各紙誌で話題沸騰&読者の反応も熱い青春音楽小説三部作。津島と鮎川、伊藤…それぞれの心がぶつかり合い、再びふれ合う-感涙の最終楽章。

感想・レビュー・書評

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  • これが現実なんだよな。すとんと腑に落ちた。

  • キラキラ青春系かと思いきや、苦悩が多く哲学的なところが、さすが芸術ものだなと思いました。
    哲学的な思考の主人公、文学や芸術が好きな男女と、うまくいかなかったりこじらせちゃう小説あるある要素がふんだんで、微笑ましくすら感じました。
    音楽を専門にした高校とはいえ、合奏するときの部活のような雰囲気には懐かしさを覚えました。

  • 表紙に描かれた指揮者のイラストに一縷の希望を繋いで開いた最終巻。

    こんなにも音楽への愛情と敬意があるのなら
    たとえチェリストとしての自分に見切りをつけても
    音楽のためにも、自分自身のためにも、音楽にしがみついてほしかった。。。

    祖父の、「食うために腕を上げていった芸術が一番好きだ」という言葉も
    祖母の、「音楽でも、音楽でなくても、どっちみち苦労するものね」という言葉も

    「ここまでだね」「僕はここまでだ」と自分の限界を見つめながら
    それでもオケでチェロを弾き、生徒に真摯なレッスンを続ける佐伯先生の姿も

    退学した南を飛び入りで迎えた『ブランデンブルク協奏曲』の
    今、そこにしか存在しない、生きる歓びに満ちた演奏も
    屋上で、たったひとりの聴き手のために伊藤慧が想いをこめて奏でた
    ドビュッシーの『シランクス』の調べも

    「許さない」と突き放しつつも、わざわざ自分の言葉で翻訳し
    原稿用紙に書きつけてくれた、金窪先生の「船に乗れ!」とのメッセージも
    18歳のサトルには届かなかったのが哀しい。

    確かに、一流のソリストとして聴衆を魅了することができるのは
    音楽を志す大勢の人の中の、ごくごく一部の限られた人だけだけれど
    音楽という芸術を支え、存続させるために
    できること、やらなければならないことは、もっともっとたくさんあるのに。

    情熱を注いできた夢だからこそ、ずるずる引きずりたくなくて
    どこかで区切りをつけて新しい一歩を踏み出したい、と思う気持ちが
    痛いほどわかるだけに、とりあえず合格できた大学を卒業し
    職を4回も替えるくらいなら、どんな形でも音楽に関わっていてほしかった。

    苦い悔恨を抱え、揺れる船に乗り続けることが生きることなのかもしれないけれど
    今、キラキラした瞳で音楽の道を志そうとしている子どもたちには
    あまりに苦すぎて、打たれ弱い私にとっては
    「読んでごらん」と気軽に薦められない本になってしまいました。

    • まろんさん
      わ~い、torachanさん、ひさしぶり~!
      しばらくレビューもコメントも読めなくて、実はかなりさみしかったのです(ノ_・。)

      でも、風邪...
      わ~い、torachanさん、ひさしぶり~!
      しばらくレビューもコメントも読めなくて、実はかなりさみしかったのです(ノ_・。)

      でも、風邪と夏バテとオリンピックのトリプルアタックだったとは。。。大変でしたね。。。
      私の苦手なレバーを、私の分も食べて元気になってね♪

      そして、この本は!
      読ませる本だし、音高の描写とかものすごくリアルだし、
      繊細な美少年♪フルートの伊藤慧くんとか、
      神々しいほどのバッハを弾くのにガラッパチなおじいちゃんとか
      魅力的なキャラも出てくるし。
      ずっと辛くて重いだけじゃないんだけど、なんていうんだろう、
      人生そのものは肯定してるんだけど、
      音楽で身をたてることに関しては、ものすごくシビアというか、苦いというか。。。
      でも、『Heart Beat』というアンソロジーに、この作品の後日談みたいなお話が載ってて
      そこまで読むと、救われた気分になるかもしれないです(*^_^*)
      2012/08/16
  • 一体自分はどこまでいけるんだろう?
    何者になれるんだろう?
    そんなもやもやとしたことを考える時期ですね。
    そして、自分はどうやっても音楽家にはなれない。
    そう思ってしまったサトルが、それでも最後にみんなと素晴らしい曲を奏でるところがじーんときました。
    辞めなきゃいけないの?
    まだ続ければいいじゃない!
    と、伊藤君みたいなことを思う。

    伊藤君といえば、私は一巻から気づいていたよ。やっぱりサトルは鈍感だね(まさか!と思うからかな?)
    秘密音楽会、とても素敵でした。
    君のフルートには何かがあるね。

    ちょっともやもやラストかなーと思っていたけど、今、もう一度振り返ると、懐かしくて、キラキラしていて、かけがえのない学生時代を思い返すようです。

    船に乗れ!って、
    海外に行く話だと思ってたけど、
    私たちは一人一人、船に乗っているって話でした。
    青春時代の船酔いを忘れてしまっても、船は揺れ続けているって話でした。

    そういえば、ちょうど最近、ゴーストライター事件が騒がれていますが、サトルが高校3年の時に感じたことをあの人も感じたのかなーと思ったり。
    自分は音楽家にはなれない。
    サトルは別の道を選んで、さむらこうじ(漢字わからん)さんはどんな手を使っても音楽家になろうとしたんかなーとか。
    家族から音楽家になることを期待されていたところは(確か)同じだったから、そう思ったら、サトルって凄いね。

  • (2010年本屋大賞7位)

    最上級の星5つ!

    南のヴァイオリンも津島君のチェロも
    三巻まで意味のあるものだった よかった

    一巻から哲学の金窪先生の言葉が響いてきてたけど
    三巻での金窪先生が本題を言って締めくくり
    よかった

    新生学園大学附属高校音楽科のメンバー
    十人十色の今
    でも
    人生に音楽があった
    ってことは幸せな人生だったと
    思うんじゃないかな



    「ラブカは静かに弓を弾く」
    に次いで2冊めのチェロの本 

    ステキな本に出会えました
    感謝。

  • 高校三年生。この小説は、青春挫折小説なのだな、と前巻から思ったり。
    サトルは音楽をやめて、一般大学に入ることを決意。浪人してでも一流大学に入れ、と父。結果的には入れなかったが。4回天職したようだし。
    最後のオケ、みなみが現れ、バイオリンを弾いた。退学者が弾くなんて先生たちは怒ったが。そして、みなみの手紙。あの頃、サトルに何も言わなかったのはおなかの赤ちゃんに聞こえるから。自分の子供には母は父が一番好きなんだと思っていてほしい。なんという高校生でしょう、そして腑に落ちる。
    現在のみなみの子供が30歳ってことは、おそらくサトルたちは47歳くらい。鮎川とは友達で、オケしようかって話も出ている。挫折して、社会に出て仕事し、家族も作り。そして高校時代の友人と再会。挫折小説と書いたが、そう珍しい話でもないのかも。

  • よかった。一気に読んだ。
    音楽の知識はあんまりないけど、臨場感が伝わってくる。何か一つをみんなでつくりあげるっていいなぁー。
    そして、親が子どもにできるのは、安心させること、望まれて生まれてきたのだと感じさせること。とても心に響いた。南がそれを選べたのは、本当にすごい。

  • 第2巻の高校2年生時に心に傷を負った主人公が高校3年生になってからのハナシ。

    自分自身に見切りをつけた結果、いいイミで周囲との距離が縮まり、それまでのひとりよがりだった自分を清算すると同時に、「その他大勢」に埋没してしまった挫折を引きずりながら生きる「今」が描かれています。

    よく、10代というイタい時期に起こした失敗は「若気の至り」というコトバで片づけられがちですが、ホントのトコロ、若かったという理由でそれが許されるというワケではなく、その失敗を常に抱えながら、それを内包できるだけのヒトになって生きるしかないんだなー。とか考えながら読みました。

    そういうイミでは、誰もが共感できるハナシかもしれません。

    ただ。
    登場人物が総じてあんま魅力的じゃないので、あんまり感情移入できなかったのが残念。
    主人公のオニイチャンはうじうじした内弁慶だし、ヒロインのおねえちゃんに至っては、なんか容姿端麗って書かれてるのが唯一の救いってくらいで、読んでて「なにコイツ?」ってカンジのオンナだしね。
    あと。
    ハナシががさいごのほうになるに連れてでてくる、「あのときは気づかなかったけど、のちのち考えたらおれモテモテでした。」っていう描写もジャマでした。

    まあ。
    振り返ってみる高校ジブンなんてみんなそんなモンなので、そのヘンはリアルでいいとおもいマス。
    あー。おれ、中卒だったよ…。


    http://blueskyblog.blog3.fc2.com/blog-entry-1733.html

  • 2011.3.21 初読 市立図書館

    おもしろかった。
    すごすぎて上手い言葉が出てこない。

    『船が揺れ続けていることを忘れてはいけない。』

  • 共感しまくりながら読みおえました。自分の過去までいとおしく感じるほどでした。

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著者プロフィール

1963年、東京都生まれ。2003年、『アンダンテ・モッツァレラ・チーズ』(小学館)でデビュー。2014年、『世界でいちばん美しい』(小学館)で織田作之助賞を受賞。主な作品に『おがたQ、という女』(小学館)、『下北沢』(リトルモア/ポプラ文庫)、『いつか棺桶はやってくる』(小学館)、『船に乗れ!』(ジャイブ/ポプラ文庫)、『我が異邦』(新潮社)、『燃えよ、あんず』(小学館)など多数。エッセイ集に『小説は君のためにある』(ちくまプリマ―新書)など。

「2021年 『睦家四姉妹図』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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