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本 ・本 (400ページ) / ISBN・EAN: 9784861821066
作品紹介・あらすじ
いかにして世界は再編されているのか?
21世紀世界を支配するに至った新自由主義の30年の政治経済的過程とその構造的メカニズムを世界的権威が初めて明らかにする
渡辺治《日本における新自由主義の展開》収載
新自由主義(ネオリベラリズム)とは――
「市場の公平性」こそが「倫理」であり、国家・社会の機能のすべて、人間の行為のすべてを導くことができるという指針である、という教義である。1970年代以降、小さな政府・民営化・規制緩和・市場の自由化などを旗印にして、先進国から途上国までグローバルに浸透していき、思想的にも現実的にも21世紀世界を支配するものとなった。
では、新自由主義とは、どうして発生し、どのように各国政府に取り入れられ、いかに各国民の同意をも取りつけていったのか? それは誰によって、誰のために推し進められてきたのか? そして世界をいかなるものに再編しているのか? 本書は、世界を舞台にした30年にわたる政治経済史を追いながら、その構造的メカニズム、その全貌と本質を明らかにするものである。
感想・レビュー・書評
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「新自由主義とは…強力な私的所有権、自由市場、自由貿易を特徴とする制度的枠組みの範囲内で個々人の企業活動の自由とその能力とが無制約に発揮されることによって人類の富と福利が最も増大する、と主張する政治経済的実践の理論である」(010頁)。このような新自由主義化がどこから生じたのか、それがどのようにして徹底的に世界に広がり増殖したのかを明らかにすることが、本書の目的とされる。
一億総中流社会と言っていた日本社会がこんなにも変わってしまったのかとただただ驚くばかりで、良く分からないうちに社会が変わってしまったというのが実感だが、確かに振り返ってみると、小さな政府・民営化・規制緩和・市場の自由化といった言葉群は、「改革」の名の下に散々聞かされたワードだった。それらの背景にあったのが、この新自由主義であったのか!
本書では、新自由主義が、どうして発生し、どのようにして各国政府に取り入れられ、各国民の同意を取り付けていったのか、そして先進国から途上国までグローバルに浸透し世界を再編していったのか、などについて、30年にわたる世界の政治経済史を辿りながら、その構造的メカニズムを明らかにしていく。
どうして現在がこのような社会になっているのか、それに代わるオルタナティブはあるのか、といったことについて多くのヒントを与えてくれると思います。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
〈新自由主義の結果、貧富の差の拡大という弊害が現れた〉ではなく、〈金持ちたちが貧富の差を拡大するために新自由主義を断行した〉というストーリー。
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■書名
書名:新自由主義 ――その歴史的展開と現在
著者:デヴィッド・ハーヴェイ、渡辺 治(監訳)
■感想
TOPPOINTで読了。 -
出版社(作品社)のページ
https://sakuhinsha.com/politics/21066.html
「編集室から BOOK『新自由主義 その歴史的展開と現在』デヴィッド・ハーヴェイ著 渡辺治監訳」(「MARR」2007年8月号)
https://www.marr.jp/marr/marr200708/entry/1004 -
登録番号:142126、請求記号:332/H34
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後半の比較は纏めずに各章都度載せた方が面白いと
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1960年代後半からどの先進諸国においても急速に経済成長に陰りが見え始め、もはや隠せなくなった。その打開策として、改革が盛んに叫ばれ始める。資本家側は、言葉巧みに、改革こそ行き詰った社会における唯一の打開策であり、バラ色の未来を約束するものであると、言葉巧みに政府をそそのかして、手始めにイギリスそしてアメリカから攻勢をかけ始めた。そして、民衆を騙しその同意を得るために、新自由主義こそが成長をもたらし、トリクルダウンを通じて隅々まで国民を豊かにするのだと盛んに吹聴する。しかし、これは詐欺の言説に過ぎなかったことが今や明らかになっている。資本家階級は、広く国民が豊かになることなぞこれっぽっちも望んでいない。彼らの関心はひとえに階級権力の回復にのみ向けられている。戦後約20年間においてじわじわと削られてきた彼ら資本家階級の資本蓄積を取り戻そうと、終戦間際からすでに彼らの画策は秘密裏に始動されていた。現代の社会は、ひとえに、彼らの飽くなき強欲の権力奪回闘争の結果に他ならないのである。
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<blockquote>新自由主義とは何よりも、強力な私的所有権、自由市場、時ひゅう貿易を特徴とする制度的枠組みの範囲内で個々人の企業活動の自由とその能力とがm制約に発揮される事によって人類の富と権利が尤も増大すると、主張する政治経済的実践の理論。(P.10)</blockquote>
ハヴェーイは世界の新自由主義への流れの始まりを1978年に置いている。
<blockquote>未来の歴史家は、1978〜80年を、世界の社会経済氏における革命的な転換点とみなすかもしれない(P.9)</blockquote> -
【要約】
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【ノート】
・正剛さんが鳩山首相に推薦
・果たして今の自分で読めるかどうか -
現今、日本や世界の問題を語るうえで「新自由主義」の概念を抜かすことはできない。そして新自由主義をめぐる議論で、頻繁に引用・参照されるのが本書である。あまり軽々しく使うべき言葉ではないが、この問題を論じるうえでの「必読書」だと言っていいだろう(原著は2005年刊)。
本書は見た目には結構ボリュームがありそうだが、ハーヴェイによる本文は全体の4分の3ぐらいで、300ページに満たない。残りは渡辺治による付録論文、訳者あとがき、用語解説、参考文献、索引である。特に渡辺による付録論文「日本の自由主義」が重要である。新自由主義の「地理的不均等発展」に着目するハーヴェイは、米英はもちろんチリや中国の事例の検討にも紙数を費やしているが、惜しいかな、日本への言及は限定的だ。渡辺論文はその点をしっかり補足してくれる。
本書は読み通すのに深い専門知識などは要さない。訳文は十分整っているし、訳注も豊富だ。広く読まれるべき一冊だと思う。 -
新自由主義とは
⇒強力な私的所有権、自由市場、自由貿易を特徴とする制度的枠組みの範囲内で個々人の企業活動の自由とその能力とが無制約に発揮されることによって人類の富と福利が最も増大する
と主張する政治経済的実践の理論である
・市場取引の範囲と頻度を最大化することで社会財は最大化されるという考え方
・グローバル市場においての決定の指針たるデータベース
→ITに対する興味関心増大 -
マルキストの本て、実証的なデータなどがほとんどなくて、文章ばっかりで、説得力がない。
でも、ウォーラーステインの文章よりはいいと思った。
表紙に、小泉の写真があるのは、おかしいよね。ハーヴェイは、完全な日本パッシングで、中国にはかなり触れているけど、日本にはほとんど触れていない。
日本の政治なんて、国際的には影響力ゼロなんだから。アメリカ合衆国の属国みたいなものだし。 -
新自由主義の本質と歴史的展開をクリアーに描き出している。本書では新自由主義が「市場原理」の活用によって資本蓄積を実現する事には失敗していると否定的に見たうえで、資本家等の「階級権力」が自己権力の維持・再強化を目指すために新自由主義政策をするとした。
そのため、国家による介入は当然許容される。
なぜなら、資本家階級による「階級権力」の再強化が最優先であり資本蓄積は二の次だからである。
まさに名書 -
新自由主義を「支配階級の権力の回復あるいは創設」のための試みとして捉えている。金融資本の問題性など本書の指摘に肯定する部分もあるものの、「階級」という切り口での分析は個人的にどうしてもなじめなかった。支配階級といっても、新自由主義のもとでの上層レベルの人々はある程度流動的なものであり(ホリエモンしかり)、それを階級と意義づけることに疑問がある。また、労働者階級や福祉国家を完全に善なものという前提での語り口にも違和感を覚えた。ただ、全体として、新自由主義を包括的に分析した書物として意義のある本だとは思う。
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レーガン・サッチャーから始まる新自由主義。ネオリベを読み解く必読書。
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新自由主義を、論理と実践の双体として眺める。
そんで筆者はどういう立場なのよ!、と突っ込みたくなる気持ちが暫く続いたのはともかく、とても面白かった。日本のネオコンについても訳者の人々が力を入れて書いている。
しかしながら、やっぱり金回りだけを見ているのでは足りないんだなぁということも痛感。 -
1947年にハイエクの周囲でモンペルラン協会が組織され、 フリードマン、ミーゼズ、ポパーらが集い新自由主義の理論化が始まった。
彼らは自由市場原理主義を標榜し、国家の市場への介入を最低限にしなければならないと考えた。そこでは個人の自由は市場と商取引の自由により保証される。
その思想は階級の再編成のために援用されるようになる。金を持つものが、更に多く持てるようなシステムを作る為にである。そのために、公的資産の民営化、社会保証の縮小、自由貿易の促進のための規制緩和といった政策が行われる。完全雇用や社会的保護に重点を置く従来型のケインズ型の福祉国家の解体である。
アメリカの経済界は「政治活動委員会pacs」を形成し、共和、民主両政党に制限なしに献金出来ることで政治に強大な影響力を持ち、彼らに優位な政策を作り出している。
1970年代に金融界の策略により、チリ、そしてニューヨークにおいて最初の新自由主義政策が行われた。チリでは軍事クーデターにより、ニューヨークでは倒産に追い込むことで、既存の組織を解体し、そこで金融界に優遇的な政策を再編成するように要求する。その後も、このような方法をモデルケースとしてアメリカとIMFなどの機関により様々な国家において新自由主義体制への変更が遂行された。
IMFは外貨の不足した国を対象に緊急融資を行うが、その条件として民営化、規制緩和を強要する。そうして多国籍企業が新たな市場を得ることができ、より安価な労働力を得ることが可能となる。IMFの目的と機能は世界の主要金融機関を国の債務不履行の危険性から守ることである。つまり投資へのリスクを投資家が軽減できる仕組みとなっている。 国民を犠牲にさせてでも債務返済をさせようと国家に介入するのだ。
新自由主義体制は財政の危機の局面を利用して、または作り出し、その対策として採用される。レーガンもサッチャーも小泉もそうだった。危機において財政支出を緊縮し、制度を効率的な仕組みに改革する。
、国家介入を否定する新自由主義だが、良好な市場環境を作り出す為に、国家介入が極端なかたちで採られることが多くある。民主主義を否定するようなかたちで、金融システムの保全や金融機関への支払いを住民の福祉や環境の質より優先させる。 多数決よりも、司法、行政が好まれる。
個人単位での影響として、企業に優位なフレキシブルな雇用形態に変わることで雇用不安が生まれる、福祉、社会保証が縮小される。また社会的連帯の絆が解体されるため、宗教、ナショナリズムの勃興が現れるようになる、様々な局面で、自己責任というタームが自由と一緒に使われる。
新自由主義の本質は富と権力の集中だけであり、 その目標であった資本の蓄積という面においては完全に失敗している。 -
1356夜
読みたい。 -
新自由主義に批判的な立場から、現在の政治情勢を問う著。
一見するとマルクシズム的陰謀論に見えるが、その中で、新自由主義の重要な側面を指摘している。すなわち、新自由主義は階層上位、企業経営者(本書では支配階級とされている)が自らの利益を回復・増大させるための格好の理論づけとなっているという点である。
この指摘が非常に興味深い一方、現在の新自由主義的な政治展開が問題である、と指摘するための論拠が、格差が拡大している・貧困層が増加していると言うものであり、それ自体には頷けるものの、「新自由主義的政治展開」と「格差の拡大・貧困層の増加」のつながりの説明がほとんどなかったのが残念。 -
新自由主義とは何よりも、強力な私的所有権、自由市場、自由貿易を特徴とする制度的枠組みの範囲内で個々人の企業活動の自由とその能力とが無制約に発揮されることによって人類の富と福利が最も増大する、と主張する政治経済的実践の理論である。
国家の役割は、こうした実践にふさわしい制度的枠組みを創出し維持することである。
たとえば国家は、通過の品質と信頼性を守らなければならない。
また国家は、私的所有権を保護し、市場の適正な働きを、必要とあらば実力を用いてでも保障するために、軍事的、防衛的、警察的、法的な仕組みや機能をつくりあげなければならない。
さらに市場が存在しない場合には(たとえば、土地、水、教育、医療、社会保障、環境汚染といった領域)、市場そのものを創出しなければならない――必要とあらば国家の行為によってでも。
だが国家はこうした任務以上のことをしてはならない。
市場への国家の介入は、いったん市場が創り出されれば、最低限に保たなければならない。
なぜなら、この理論によれば、国家は市場の送るシグナル(価格)を事前に予測しうるほどの情報を得ることはできないからであり、また強力な利益集団が、とりわけ民主主義のもとでは、自分たちの利益のために国家介入を歪め偏向させるのは避けられないからである。
そのような新自由主義国家が、どのように同意形成してきたのか、アメリカ、イギリスでの過去の経緯を分析している。
そして、メキシコ、アルゼンチン、韓国、スウェーデンなのにおける地理的不均衡発展について言及し、中国的特色のある新自由主義にも触れている。
結論に向け、審判を受ける新自由主義を述べたのち、自由の展望としてルーズベルトが示した議論を出発点とし、国家機構に対する民衆のコントロールを再獲得し、それによって市場の権力という巨大なジャガーノートのもとにある民主主義的な実践と価値観を――空洞化するのではなく――より深く推進するための同盟が、アメリカ内部で構築されなければならない。
新自由主義が説く自由よりはるかに崇高な自由の展望は存在する。
新保守主義のもとで可能となるよりはるかに有意義な統治システムは存在する。
われわれはそうした自由を獲得し、そうした統治システムを構築するべきなのだ。
と締めくくられている。
実行可能なオルターナティブ、現実的な可能性を特定することにつながる政治プロセスを創り上げて行くのは民衆一人ひとりの不断の努力が求められているのである。
デヴィッドハーヴェイの作品





