幽霊

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感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (307ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784861821332

作品紹介・あらすじ

アメリカを代表する女性作家イーディス・ウォートンによる、すべての「幽霊を感じる人」のための、珠玉のゴースト・ストーリーズ。静謐で優美な、そして恐怖を湛えた極上の世界。

感想・レビュー・書評

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  • 図書館でタイトルと背表紙に惹かれて手に取ったが非常に良かった。匂いや光の色までありありと浮かぶ美しい文章、日常に混じり合い陰鬱に影を潜める幽霊の存在。幽霊譚でありながら、深夜よりもしんと静まりかえった秋の午後に読みたい短編集でした。(あくまで上品でありながら)ホラー色の強い「ジョーンズ氏」「小間使いを呼ぶベル」、奇妙な高揚感と哀しみをたたえた「ホルバインにならって」が特に好き。

  • 1862年生まれのアメリカの上流階級の著者による、幽霊譚の短篇集。クラシカルでノスタルジックな趣だと思ったんだけど、うーん、なんか、ちょっと思ったのと違った。というか、オチまで行ってもわからないのが多いんだけど……。

  • 「良いな、好きだな」と言う作家をみつけると、
    すぐにその作家の本ばっかりを読むようになる
    と言う、私の特徴。

    もっと落ち着いて焦らなくても良いのに、
    ともう一人の私が言うけれど、
    こればっかりはしょうがない。

    そんな訳で、イーディス・ウォートンブームの中、
    お次はこちらの「幽霊」

    あっという間に「キャー!」と言う種類のお話ではなく、
    「そう言えばあれって…」と言うようなじわじわ怖い系の
    短編集。

    大きなお屋敷が出てくるお話が多くって
    こう言う舞台設定が好きな私はそれがまず嬉しい。

    でもさ、ファサードとか建築用語をそのまま説明無しって
    ちょっと不親切の様な気が…

    私はこの直前に読んでいる「歓楽の家」の中で
    ファサード(正面)とあったからわかるけれど…

    中でも特に「小間使いを呼ぶベル」は
    ちょっとヘンリー・ジェイムズの「ねじの回転」を
    彷彿させて、またあの本を読み返したくなった。

    こう言う「今思うとあれって…」と言うエピソード、
    それもこのお話に出てくるような立派なお屋敷で、と言うの
    体験する人がなんだかとってもうらやましい!

    また、著者略歴の「ニューヨークの富豪の家に生まれる」
    と言うところも、とってもとってもうらやましい!

    明日から読む本は「無垢の時代」、
    ウォートンの日々は続く…

  • ❖本作には今日的なホラー小説のたたみかけるような物語展開・・恐怖の亢進はない。作品の質感としてはどれも静的で、不穏(緊張感)の高まりによってじわじわ読み手をしめつけるというつくりである・・そんな筆致からさむけを味わう(愉しむ)もの。『カーフォル』は読んでいると霧がこめてくるようであった。『柘榴の種』は既読作かもしれない。最もおもしろく読んだのは『ホルバインにならって』(幽霊譚というより幻覚譚か)。特に最後の場面転換はあざやかで、晩餐会の絢爛の情景を一瞬間に色のない褪せた寂寞の光景に一変させ見事であった。

  • コワイの苦手だけど
    ぜんぜんコワくナカッタ

    元の文章がそうなのか
    訳がそうなのかわからないけど
    違和感のある文章が多かった
    情景の描写はフツーに読めるし
    上流な雰囲気が好きな人は気に入るかもしれない
    ただほんとに怖くない
    想像してもコワくない
    そりゃー死人が出ればコワいけど
    ホラーより怪談のほうが日本人の根幹に響くなー
    やっぱ日本人だなーと思いながら
    ギリギリなんとか読んだ感じ

    正直、ちっともおもしろくなかった
    洗練された文章だとも思わなかったし
    (訳のせいかもしれないけど)
    どう?コワいでしょ?
    この感じわからないかしら?って
    上品なおばさんに押し付けられてるイメージ

    品のよい紳士淑女は気に入るかもしれない
    個人的には庶民派なのでよくわからなかった
    星は2つ

  • 読書日記。

    幽霊はGに似ている?

    いるかいないかよくわからない。
    が、つねにいるのではないかと疑いは抱いている。
    出会うときは夜中が多い。
    ふと気づいたら、いる。
    いきなり出会うことになるので、どこか驚愕する。
    こわがっている人ほど出会いやすい。
    探しているときにはなかなか見つけられない。
    ことに悪さをしていないように思われるのに、なぜか恐ろしい。
    古めかしい洋館よりも、むしろ現代的な住宅に出たときの方が恐ろしい。
    出会う機会は減ってきている。

    さてじつはこの文、イーディス・ウォートンの「幽霊」という短編集の読書感想なのだ。

    この品のいい物語群をゴキブリと対比するのも申し訳ないが、なぜかあの黒光りするヤツを思い出してしまったのだ。
    それで、類似点を考えてみたのだが。

    最近の恐怖モノは、怖がらせることにはおそろしく進化している。
    しかし、どこかガサツでもある。
    びっくり箱的であり暴力的でもある。
    情緒はない。

    幽霊はやっぱり情緒的でなければねと物足りなく感じられる方には、こういうしめやかな幽霊譚はおすすめできる。
    さほど怖くはないが、ファンタジーとして上質かと。

    ことに好きなのは犬が出てくるやつ。
    くわしく書くと興ざめなので、ここまでにとどめておくが。(2010年02月04日読了)

  • エイジ・オブ・イノセンスの原作者として有名な
    イーディス・ウォートンのゴシックロマンス作品集。
    『カーフォル』『祈りの公爵夫人』『ジョーンズ氏』
    『小間使いを呼ぶベル』『柘榴の種』
    『ホルバインにならって』『万礼節』が収録されている。
    いずれも映画のワンシーンとして登場しそうなほど
    具体的な描写で想像力をかきたててくれる。
    明るい真昼の幽霊ってのは日本的な感覚ではないなぁ。
    それがとても興味深い。

  • 後ろが気になってしょうがない、そんな忍び寄ってくるような怖さは皆無。静謐さ漂う時代、空間表現はさすがだなぁ、とは思うものの、ストーリーに目新しさは感じられず、全体を通して、ややもの足りない気がする。ただ、このレベルなら十分、珠玉の短編集と呼べるかな。

  • いわゆるひとつのゴーストストーリーの短編集。家付き幽霊の話が中心です。

    著者のウォートン女史はデンマーク系の裕福なアメリカ移民とのことで、アメリカ人とはいってもイギリス系の文化の中で育った人のよう。
    お金持ちの奥様らしく、上から目線のあとがきが少々うざいですが、作品自体は、素朴で典型的な怪談とはいえ、詩的な雰囲気と美しい場面描写がすてきです。


    カーフォル: 犬の青髭の話。幽霊よりも人間のほうが怖い。古い屋敷のたたずまいが美しい。

    祈りの公爵夫人: カーフォルと似た設定の話です。いくら政略結婚でも、今ではさすがにこれほど無茶な話はないでしょうね。ラストがポオに似ています。

    ジョーンズ氏: ああ鬱陶しい! こんなもんが憑いてたら、売れるもんも売れんがな。これも不幸な政略結婚の話ですが、恨めしいのは女性のほうなのに、加害者の怨念が残るって不思議。

    小間使いを呼ぶベル: 忠義者の小間使いの話。せっかくの機転もあまり役に立ちませんでしたが…。これも不幸な結婚にまつわる話。

    柘榴の種: タイトルはギリシャ神話のペルセポネの話から。イザナギ・イザナミの神話とか、この手の伝説は世界共通ですね。そういえば、この短編自体がハーンの『怪談』に採録された日本の幽霊話と似たようなシチュエーションなのですが、オチは逆さま。国民性の違いなのでしょうか。

    ホルバインにならって: ボケちゃったかつての名流夫人の晩餐会にやってきた老紳士。ここでの「幽霊」は、まぼろしの晩餐会そのものでしょうか。オチが秀逸。

    万聖節: とは、お盆のようなものかな。これは厳密にはゴーストストーリーではありませんが、何が起きたというわけでもないのに、いやそれだからこそ、現実にありそうな怖い話です。

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著者プロフィール

Edith Wharton 1862–1937 ニューヨークの名家に生まれ、幼少時よりヨーロッパ各地に居住。中・長編小説22冊、短編小説集11冊、詩集、室内装飾本、紀行文、文学論、伝記などを出版。
代表作は、ニューヨーク上流社会の人間模様を描いた『歓楽の家』(1905)や
女性初のピューリッツァー賞を受賞した『無垢の時代』(1920)、ニューイングランドを舞台にした『イーサン・フローム』(1911)、『夏』(1917)など。



「2022年 『夏』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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