ヒトラーの特攻隊――歴史に埋もれたドイツの「カミカゼ」たち

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  • Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784861822247

作品紹介・あらすじ

第二次大戦末期のドイツにもカミカゼ=『特攻隊』があった。その名は「エルベ特別攻撃隊」。歴史の空白を埋めるスクープ!生き証人たちの証言で綴る衝撃のノンフィクション。

感想・レビュー・書評

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  • ナチスが牛耳っていた第二次世界大戦期のドイツにも日本の特攻隊のような自爆前提の「エルベ特別攻撃隊」というチームがあったという秘史を明るみに出す一冊。とはいえ、日本のようなものでなく、ナチス崩壊を目前にした1945年4月7日にひっそりと1回だけ試験的に行われたようなもの。
    自己犠牲的な死をヨーロッパ的価値観は是としないのだろうか。亡くなったあげく歴史に埋もれた若者は気の毒だけど、戦後の日本のように平和をお題目のように唱えながら、一方で特攻隊なんかが美しく描かれるのに違和感をもっているので、ドイツの現在の受け止め方はうなずける気がした。
    一方で著者があとがきで指摘していた点は熟考したい。曰く、戦後ドイツは国がナチス台頭を許した責任を一手に引き受けたから、実際にはナチスを黙認したり積極的に手を貸していた人たちは罪に問われたりすることはないが、逆に反省したり贖罪する機会を失ってしまったと。著者は10年たった今ではおそらく他界しているであろう作戦の考案者や隊員の話を聞けているのだが、作戦の考案者は過去の自分を何ら否定することなくネオナチたちの弁護士として活躍していたりすることもあったりするのだ。
    さらに著者は、かといって日本のように「一億総懺悔」と国民に責任をかぶせた日本のありかたも批判する。こちらもこちらで中枢にいて生き残った人たちはのうのうと戦後の繁栄を謳歌しているわけで、これでは駆り出された日独のカミカゼたちは浮かばれない。

  • 第2次世界大戦末期のドイツが敗北する約1カ月前にドイツ空軍が編成したゾンダーコマンド・エルベ(エルベ特別攻撃隊)により、実施された連合軍爆撃機への体当たり攻撃について、指揮官ハヨ・ヘルマン大佐を初め、生き残った隊員たちのインタビューをもとに綴ったノンフィクション(2009/02/17発行)。

    洋書を含め、ゾンダーコマンド・エルベのことについて取り纏めて書かれている本は少くなく、和書においては本書が唯一と思われる非常に珍しい本。
    生き残った隊員たちのインタビューは、非常に興味深い内容で、ドイツの近代史を知る上で貴重な証言だと感じました。
    又、歴史的背景や当時の戦況も上手く補足されており、非常に良い書籍だと思います。

  • ドイツ駐在中に「ドイツにも特攻隊があった」事を知り、存命していた作戦の考案者(ネオナチを支援する95歳の弁護士!)や生還者に綿密な取材を行った労作。

    連合軍の爆撃機に大打撃を与え戦意を喪失させ、一時的な戦機の回復を狙ったエルベ特別攻撃隊。
    ベテランパイロットは防空のため温存され、若い新米パイロットが志願で集められた。戦闘機から機関銃や装甲を取り外して軽量化し、高高度から爆撃機に向かって突入、敵機の尾翼を切り裂いて、パラシュートで脱出するよう指導された。
    1945年4月7日、およそ190機で敢行されたが、戦果は20機程度であり、効果的でないと一回の攻撃で中止された。

    神道とキリスト教の違いからか両者の趣はかなり異なる。ヒトラーもゲーリングも作戦に「生還できない作戦は非合理的でゲルマン的でない」と反対し、「あくまでパイロットの自発的行動」として黙認する姿勢を取った。
    最後はメンタルで気合いで解決する日本人と、独裁者から兵士まであくまで合理性を追求するドイツ人の気質の違いが表れているが、逆に戦後、神格化された神風特攻隊に比べ、エルベ特別攻撃隊はほとんど忘却されていた。
    この気質の違いが、ドイツと日本の戦後処理の有り様にも反映されていると筆者は綿密に分析している。

  • ドイツにも特攻隊がいたことが衝撃的だった。

    ただ日本と唯一違う点が、日本のカミカゼは、体当たり後、生き残る可能性が0%だったのに対し、ドイツのは、パラシュートで帰還できる可能性が残されていたことだ。
    加えて、攻撃自体も日本に比べて少なく、死傷者も少なかった。

    戦況が悪化すると、自爆攻撃をするのはなぜなんだろう?
    両国とも負けるのは明らかだったし、戦況が悪化し、敗戦を続けた1944年くらいに降伏していれば、犠牲者は減ったと思う。
    もちろん、たらればの話だけど、1年粘っても両国とも条件付き降伏ではなく、無条件降伏。
    はっきり言って、粘っても無意味だったわけだ。

    驚いたのは、特別攻撃に、ドイツは志願者を募り、実際にいたことだ。
    正直信じがたいが、その姿勢には本当に感服する。

    最後に、戦後の両国の対応だが、ドイツは国家として責任を負い、国民に責任を負わせなかった。
    対して、日本は責任の所在が曖昧のまま終了した。かつ、一億総懺悔と国民に責任を丸投げした。

    今と全く同じだ…

  • 38/100

  • 特攻隊なんて日本だけなのかと思っていた。まあこちらの特攻隊は日本のそれに倣ったようだけど・・・規模が違うとはいえ、日本とは違って振り返られることのない彼らは気の毒だし、歴史を直視しているようでできない国民も気の毒。

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著者プロフィール

1970年岐阜県生まれ。京都大学経済学部卒。中日新聞生活部記者。
92年に中日新聞社入社、支局勤務を経て96年から政治部へ。2006~09年までベルリン特派員を経て政治部に帰任。報道の最前線で活躍するも、過労でウツとなり5カ月間休職。復帰後、政治部から生活部へ異動した頃、老老介護を担っていた母が認知症を発症。遠距離介護が始まる。両親の介護を理由に転属を申し出て、14年に岐阜支社デスク、15年に名古屋本社生活部に異動。その1年後には、自身が難病「パーキンソン病」の診断を受けた。主な著書に『ヒトラーの特攻隊――歴史に埋もれたドイツの「カミカゼ」たち』(作品社)『兵士を守る――自衛隊にオンブズマンを』(作品社)『わけあり記者 』(高文研)

「2020年 『わけあり記者の両親ダブル介護』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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