猫ヲ祭ル

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  • Amazon.co.jp ・本 (202ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784861822698

作品紹介・あらすじ

猫と老嬢、人生の終末を支え合う最愛のパートナー。

感想・レビュー・書評

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  •  戦争で足を悪くしてしまい、80歳近くまで未婚・子なしのまま一人きりで暮らしてきた女性が、ある日「ナイル」という猫と一緒に暮らすことになり、その静謐な暮らしを描いた一冊。時々憂う。高齢で非力な自分自身と、凛とした中年猫のどちらが先かーー。出版されたのは2009年。現在も変わらぬ生活が続いていますように、と願うばかりである。
     著者と重なる語り手の女性は、ほぼ著者の姿を描いているそう。俳人なだけあって、言葉をぐんと抑制しているような印象がある。語られない部分を読み取る力がわたしには足りなくて、少々読み進めにくくも感じたが…。言葉の余韻に耳を澄ませる、新鮮な読書の時間であった。

  • 未婚で老いるということを、孤独感とかなんとはなしの哀しみとか猫への愛情とか慈しみとかそんなものも全て含めて、真正面から受け止めて生きる姿が静かに沁みてきます。

  • 主人公は70を過ぎた女性だけど、ものの感じ方が
    とてもみずみずしく可愛らしくて好感を持てた。
    猫を家に迎えるにあたって購読し始めた『ねこのきもち』。
    私も購読していたので「あるあるある」と思うことが
    随所にあってふと笑ってしまった。
    こういう物語だとラストは主人公か猫かどちらかに
    死が訪れるのがいやだなぁと読み進めていたけれど、
    老いたる乙女も猫もまだ当分は寄り添って同じ時間を
    過ごせそうでホッとした。

  • 70歳を過ぎてからアビシニアンの雄猫のナイルと暮らし始めた葉子さん。戦争中に空襲の機関銃掃射で左脚を複雑骨折し、今、また加齢による不具合が右脚に。



    作者の千田佳代さんは1930年生まれ。恋人はいたけれど生涯独身で過ごし、64歳まで出版社勤務。俳句や詩・小説などを同人誌に書かれていたところ、老いてからの猫との暮らしを書いた本著が「小島文学賞」を受賞。出版当時にかなり話題になったようなのですが、私は全く存じ上げなくて、ミクシィのお友だちから教えてもらいました。

    千田さんの書かれる「私」、葉子さんはほぼご自身のお姿のようです。
    猫との距離感がクールであるように思えるのは、繰り返し出てくる、生涯独身だったこと、出産を経験しておられないことをご自分のアイデンティティと考えられていることと深い関係があるような気がします。
    育児書を読むように当時創刊された「猫の気持ち」を読み、(私も定期購読しようかどうか、すごく迷った雑誌でした。今でも新聞広告にそそられてしまう時があります。)丁寧にナイルの気持ちや体調に沿った対応をされている・・・。
    でも、老いを迎えて1人で暮らす心細さ、特に身体が御不自由であることを思うと、そのお気持ちはお察し申し上げるしかないのですが、気丈な葉子さんのその強さから、ナイルにべたべたな気持ちにならないようにしよう、と思われている気がしてなりません。

    出版されたのは2009年。
    そのころのナイルはたぶん、10歳前後だと思うのですが、獣医さんの言葉として「猫の寿命は10歳ほど」と出てくるのにドキッとさせられます。(うちの猫たちの獣医さんは平均寿命は13歳、と言っておられましたが。)ナイルがどうぞ今も元気で千田さんと暮らしてくてくれますように、と願っております。

  • 戦争で足を射抜かれた老嬢の、それでも肩の荷の下りた孤居に、共住まう猫。歳を経なければ分からない、ひしひしとした孤独と哀しみが胸を打つ。しかし「猫」という動物の持つ秘めた力はどうだ!
    決しておもねることのない倣岸で容赦ない存在。私は猫を身近にしたことのない「犬派」。もう猫を飼うことはないだろう。

  • 宋代の詩人梅堯臣、知りませんでした。飼い猫の死を悼む漢詩から表題がとられています。作者を投影したと思われる主人公とアビシニアンの「ナイル」。なんといっても主人公が終戦の一か月前に機銃掃射により片足を砕かれた70代後半の女性というのが新鮮です。俳人でもあるこの星川さんの愛読書が「エロイカより愛をこめて」であるところにぶっ飛びました。わが老母と数か月しか違わないんですがね、母が青池保子を楽しむのはあり得ません。私、リアルタイムで隠れて読みましたから…。登場人物は東京近郊の裕福な人々で、みな年齢よりも「若い」です。佳品です。ところどころ気になる奇妙な箇所があります。たとえば猫先生の「50キロが限界」猫の体重としては5キロだと思うのです。

  • 読んで良かった。

  • 一人住まう女性が、猫とともに老いを迎える。猫と人との関わりが絶妙に描かれる……。人生の根源に触れた哀しみと孤独とが匂い立ってくる。
    猫と老嬢、人生の終末を支え合う最愛のパートナー。

    一人暮らしの女性(老婆ではなく老嬢)が、猫と過ごす日常を淡々と綴られています。
    動物の寿命は長くないし、自分の老い先も長くない。
    孤独で寂しいけれど、生き続けることは意味のあること。

  • 一人で暮らしている女性が身内から猫をもらいうけ、いっしょに年月を過ごす。老いて介護を受けている女性と猫の暮らしが哀切をともなって描かれています。(rumblefishさん)

    一人で暮らしている女性が身内から猫をもらいうけ、いっしょに年月を過ごす。老いて介護を受けている女性と猫の暮らしが哀切をともなって描かれ、猫の命、人の命、生きているもののもつ体温を感じる小説。とてもよかった。(rumblefishさん)

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